月よりの耽美(脚本)
〇荒廃した国会議事堂
1938年──日本
〇英国風の図書館
タツモト「竹取物語・・・ですか?」
上官「ああ。 知ってるよな?」
タツモト「ええ。 もちろん・・・」
上官「まあそんなわけでさ。 竹取物語の中にも戦意高揚に繋がるモノを見出してくれってことなんだわ」
タツモト「いや、竹取物語ですよ? 竹割ったら、ちっこい美少女出てきて──ってやつですよ?」
タツモト「どこに戦意高揚の要素あるんすか!?」
上官「・・・二択だ」
タツモト「え?」
上官「つべこべ言わずにヤるか」
上官「ドイツと共同研究中の、月面探査ロケットの搭乗員になるか・・・」
上官「ちなみに、 燃料は片道分のみだ」
上官「どうする?」
タツモト「や、やります・・・」
〇荒廃した国会議事堂
当時、日本は軍国主義の真っ只中であった
それゆえ
文化教育に関しても、国家への忠誠と戦意高揚につながる題材が盛んに用いられた
とりわけ、
日本固有の精神が凝縮された古典文学は格好の教材とみなされたのである。
タツモト「だからって・・・」
タツモト「竹取物語だぞ・・・ ラブコメじゃんかよ・・・」
タツモト「著者が違うと思われる原版はどれも大差ない内容だった。 残ったのはこの一冊・・・」
タツモト「はぁ・・・ 何の成果も得られなかったら、月に行くのかよ俺・・・」
タツモト「!!」
タツモト「泣いても何もならん!! 男タツモト、この一冊に全てを賭ける!!」
タツモト「いざぁッー!!」
〇うどん屋台
その晩──
おでん屋「へいらっしゃい!!」
タツモト「おやっさん。 大根とがんも、あと玉子お願い。 熱燗もね」
おでん屋「あいよ!!」
タツモト「さて・・・」
タツモト「読んでいくか・・・」
〇黒背景
っても、
どうせお決まりのパターンだろうな・・・
お爺さんが竹を切りに・・・
〇森の中
──竹林──
翁「さて、竹切るバイトすっか」
翁「あ、翁です。 竹取の翁です」
〇うどん屋台
タツモト「・・・ん?」
タツモト「この翁・・・ いいのかこの翁で・・・」
タツモト「ま、まあいいか・・・ 読み進めていこう」
〇清潔なトイレ
そんなわけで、
翁はいつものように竹を割ったわけだが
その日は普段と状況が違っていた
なんと、竹を割ったら・・・
背景のような謎の物体が入っているではないか!!
タツモト「いや、便器ですよねこれ?」
すると、便器の蓋がおもむろに開いたのである!!
タツモト「やっぱ便器じゃねえかよ」
中から現れたのは・・・
〇森の中
タツモト「はいはい出ました出ましたー。 女の子でましたー。おつかれーっす」
かぐや「・・・」
かぐや「わっち、男の子だけど?」
〇うどん屋台
タツモト「・・・ん?」
おでん屋「あいよ!! がんもお待ちぃ」
タツモト「・・・」
タツモト「!?」
〇黒背景
タツモト「男の娘じゃねーかよオイ!!!!」
かぐや「ゴリゴリのオトコでありんす」
〇うどん屋台
タツモト「作者不詳の古典だからな・・・ 一人くらい趣味に走る奴がいても不思議じゃない」
タツモト「いかんいかん!! 男の娘はどうでもいい。戦意高揚だ!! とにかく戦意高揚ポイントを探すんだ!!」
〇黒背景
かぐや「ひとつだけ、 言わせてください」
かぐや「いちばん耽美(たんび)なのは・・・ 男の娘なんだよ!!」
タツモト(耽美ってなに!?)
〇神社の石段
その後
かぐやは美しく成長した
かぐや「モテすぎて困りんす」
タツモト(バンギャになってんぞおい)
かぐやの容姿は、耽美の権化と呼ぶにふさわしいものであった
タツモト(出たよ、耽美)
一見すると美少女そのものであるが
ほのかに薫る、オトコの残り香が鼻腔をくすぐるのである
その怪しげな、曖昧な境界に鎮座する美・・・
それこそが・・・
『耽美』である!!
タツモト(なるほど・・・わからんッ)
かぐや「痛っ!!」
ガキ「オカマがいるど!! キメエど!!」
ガキ「人類の失敗作だど!! 仕方ねえど・・・オラたちがぶっ殺すど!!」
かぐや「や、やめぇ・・・ わっちは、ただの可愛くて耽美なだけの男の娘でありんす」
ガキ「耽美ってなんだど!? 読み方わからんどー!!」
ガキ「オラのキャンディーのような鈍器で撲殺するど。 ぐっちゃぐちゃにしてやるど」
???「痴れ者どもが」
ガキ「なんだど!?」
ガキ「ひでぶっ!!」
かぐや「これは・・・詠春拳・・・!!」
主上「危ないところでしたね。 お怪我は?」
かぐや「はぅ!?」
かぐや「む、胸が・・・ぺったんこの胸が・・・ 破裂しそうでありんす・・・」
主上「破裂!? それはいけないッ!!」
主上「どれ、見せてみなさい。 朕には医術の心得もあるゆえ」
かぐや「喜んで・・・」
かぐやと主上、運命の出会いであった
〇うどん屋台
タツモト「主上・・・ なぜ最高権力者がその辺を散歩しているのか・・・ そしてなぜ詠春拳を・・・」
タツモト「いや最早ツッコむのも野暮だな」
タツモト「しかし、良いのか? かぐやは男だぞ・・・」
タツモト「!!」
タツモト「まさか・・・」
〇屋敷の一室
そのまさかである
主上「かぐや。 そなたの想いを聞きたい。 今宵こそは」
かぐや「わっちは・・・人間は嫌い。 でも主上は好きでありんす」
主上「それでよい。 人間と異星人、共に生きる道を探そう」
かぐや「でも・・・わっちには・・・主上の知らない秘密が。 それを知ったらきっと・・・」
主上「秘密・・・?」
かぐや「わっち・・・ わっちは・・・」
かぐや「主上を・・・騙していたでありんす。 わっち、本当は・・・」
〇地球
かぐや「オ ト コ で あ り ん す !」
〇うどん屋台
タツモト「く・・・ なんで言っちまうんだよバカやろう」
タツモト「惚れた女だと思っていた人が男だったなんて・・・ 絶望だろうが・・・!!」
タツモト「チクショウ・・・ もうバッドエンドしか見えねぇ・・・」
タツモト「イチャイチャしとけばいいんだよ! ラブコメやっとけよチクショウ!!」
〇屋敷の一室
主上「・・・」
かぐや(終わった・・・ 身投げしよう。 月のコペルニクス(クレーター)から・・・)
かぐや(主上もきっと、 わっちを気味悪がって・・・)
主上「来い・・・!」
主上はかぐやの手を引き、奥の座敷へと向かった
〇うどん屋台
タツモト「お、おい・・・ まさか、かぐやを叩っ斬るつもりかよ!?」
〇屋敷の寝室
主上「・・・」
かぐや「主上・・・ここは・・・」
──閨(ねや)──
寝室のこと。
二人ぼっち、踏み越える境界線。
主上「朕の閨(ねや)だ」
かぐや「え・・・閨って・・・ でも・・・」
主上「かぐや・・・ みくびるな」
かぐや「へっ!?」
主上「そなたがオトコであることなど・・・とうに気づいておる。 出会った時からな」
かぐや「嘘・・・ だって、わっちこんなに可愛いのに・・・」
主上「嘘ではない」
主上「そなたのような、耽美な女子(おなご)がおるか。 耽美とは、男の娘のための言葉ぞ」
かぐや「じゃあ・・・ 主上は、わっちをオトコだと知っていて・・・それでも?」
主上「むしろそれがいい」
かぐや「わっちに・・・立派な大蛇が・・・アナコンダが鎮座していても?」
主上「望むところぞ」
かぐや「・・・もう・・・主上ったら・・・」
かぐや「主上、わっち嬉しい。 この気持ちを、歌で詠みたいでありんす」
主上「聞こう。 耽美の君よ」
〇地球
じつはいま
蜜のしたたる
アナコンダ
じつはいま
蜜のしたたる
アナコンダ
かぐや
それは
何万年も昔、
月の都で流行った
当たり前のラヴソング
〇屋敷の寝室
主上「ふむ・・・」
主上「雅な歌ぞ・・・」
かぐや「愛・・・」
〇うどん屋台
タツモト「おぼえていますか?」
〇屋敷の寝室
主上「かぐや」
かぐや「はい」
主上「朕のご先祖はな、 頭が八つある大蛇を退治したという」
主上「かぐやの大蛇・・・ 朕が退治してくれようぞ。 覚悟はよいな?」
かぐや「主上ぉ・・・」
かぐや(わっち、退治されちゃう・・・!!)
〇花火
その夜
主上の閨、
御所では花火が上がった
何度も・・・何度も・・・
鮮やかに咲き、
儚く散ってゆく
それはまるで
かぐやを・・・
『耽美』を描いているように見えた
〇黒背景
おわり
〇うどん屋台
タツモト「・・・」
タツモト「耽美・・・か」
タツモト「よいものだな。 耽美とは」
タツモト「・・・あっ!!」
〇荒廃した国会議事堂
タツモト「任務のこと忘れてたぁぁぁッ!!」
〇地球
おしまい
めっちゃ笑いました!
サイコーに好きです!
かぐ、太郎‥🤣🤣🤣ノシ⭐︎⭐︎
アナコンダ…
アナコンダに全部持っていかれました…
爆笑🤣🤣🤣