第十八話 変わらない流れ(脚本)
〇城の会議室
◆あらすじ◆
ヒノタテ国に身を寄せるチヨミの元へ
父・アルボル卿の追放の知らせが
飛び込んできた。
チヨミ・アルボル「父の元へ行かなくちゃ」
メルク・ポース「大丈夫、部下に命じて こちらに案内するよう伝えてある。 この国で、親子三人で暮らせるさ」
チヨミ・アルボル「それは良かった・・・」
メルク・ポース「だが、迎えに行った方がいいだろうな。 チヨミちゃん、君が離宮に 移動した日のことを思い出して」
タイサイ・アルボル「父さんも襲撃されるってことか!?」
メルク・ポース「可能性は高い」
チヨミ・アルボル「みんなお願い、手を貸して! 父を無事に脱出させたいの!」
テンセイ・ユリスディ「承知した!」
ユーヅツ・アモル「任せて」
〇空
〇草原の道
メルク・ポース「この道を通るはずなんだが」
ユーヅツ・アモル「ねぇ、あそこに見えている あれじゃない?」
チヨミ・アルボル「馬車が、襲撃されている!」
タイサイ・アルボル「父さん!!」
テンセイ・ユリスディ「行くぞ、タイサイ!!」
タイサイ・アルボル「はいっ!」
〇空
〇黒
〇立派な洋館
〇城の会議室
アルボル卿「メルク王子、 改めて礼を言わせてください」
アルボル卿「命を救ってくださった上、 こちらへ招き入れてくださり ありがとうございます」
メルク・ポース「あー、そういう堅苦しいのはなしで」
メルク・ポース「命の恩人であるチヨミちゃんのお父上を、僕が手を差し伸べないわけには いかないでしょう」
アルボル卿「それでも礼を言わせてください。 私だけでなく、娘と息子の命まで・・・」
チヨミ・アルボル「お父さん・・・」
タイサイ・アルボル「なぁ、父さん。 イクティオで何があったんだよ」
タイサイ・アルボル「あの使用人がバカやったってのは 大体予測ついてるからさ」
アルボル卿「・・・・・・」
アルボル卿「あの男を取り立てたのは、私だ。 きっと稀代の英雄となる、 そう見込んで力と機会を与えたのが 間違いだった」
アルボル卿「私は、娘を不幸にし、 国を亡ぼす悪魔を育ててしまったの かもしれない・・・」
チヨミ・アルボル「お父さん・・・」
チヨミ・アルボル「ねぇ、どうしてお父さんが 追放されなきゃいけなかったの?」
アルボル卿「正妃であるお前をないがしろにし、 愛妾にうつつを抜かしていることに まず苦言を呈した」
アルボル卿「そして、愛妾のために 神聖なるドラゴンミルクを 毎日のように献上させていることも」
ソウビ・アーヌルス(やっぱりドラゴンミルク来ちゃった・・・)
チヨミ・アルボル「ドラゴンミルクを毎日!? 一体何のために?」
チヨミ・アルボル「まさか毎日、何かと理由をつけて 祝宴を開いて乾杯してるってこと?」
アルボル卿「それならまだましだったかもしれん。 ドラゴンミルクが本来の役割を 果たしているのだから」
アルボル卿「あろうことかあの男は、 その神聖なるミルクを 愛妾の入浴に使っているのだ」
チヨミ・アルボル「ひどい・・・! なんて罰当たりな・・・!!」
ソウビ・アーヌルス(あー、やっちゃってる・・・。 やらかしちゃってるよ、ラニ・・・)
ソウビ・アーヌルス(でも、13歳よ!? お肌のコンディションとか 気にする年齢じゃないでしょ!?)
アルボル卿「ラニ様はお年頃だ。 あの年齢特有の吹き出物が 顔に出るようになったらしく」
ソウビ・アーヌルス(ニキビかぁ。 そっちかぁ。 あの年齢だと出ちゃうよねー・・・)
ソウビ・アーヌルス(いや、出るの!? 物語の美少女にも ニキビってできるの!?)
アルボル卿「怪しげな妖術師がそそのかしたのだ。 ドラゴンミルクが肌に良いと」
アルボル卿「すっかりそれを信じたラニ様は、 ヒナツにドラゴンミルクをねだり、 ヒナツはそれに応えるため、 民に負担を・・・」
ソウビ・アーヌルス(うぅ、同じだよ・・・。 ソウビの時と展開同じだよ。 妖術師、お前も来ちゃったかー・・・)
アルボル卿「仮にも元はあの男の主であった私だ。 娘を嫁がせた義理の父親でもある」
アルボル卿「少しは聞く耳持ってくれるものと、 信じていたのだが・・・」
タイサイ・アルボル「やっぱサイテーだな、あの使用人。 恩をあだで返しやがって!」
ユーヅツ・アモル「逆だよ」
チヨミ・アルボル「逆?」
ユーヅツ・アモル「ヒナツはずっと コンプレックスを抱えていた。 もともとは一貴族の使用人に過ぎず、 貴族の血を継いでいないことを」
ユーヅツ・アモル「自分が使用人だった頃の主人を、 今は見たくないんだ。 何も持たなかった頃の自分を 思い出すから」
ユーヅツ・アモル「苦言を呈してなくても いずれ理由をつけて、 アルボル卿を追放してた可能性は高い」
タイサイ・アルボル「・・・・・・」
アルボル卿「ふ、ふふふ・・・、なんということだ」
アルボル卿「私は人を見る目に自信があった。 事実、養子に迎えたタイサイは こんなに立派に育ってくれた」
タイサイ・アルボル「父さん・・・」
アルボル卿「・・・あれが王位についた時は、 高揚を覚えたよ」
アルボル卿「国を背負う男に娘を嫁がせてやれた、 そう思ったのだが・・・。 私の目は、くもっていたのだな」
アルボル卿「今、国内でも ヒナツに反感を持つものが増えている。 また、大きな戦になるかもしれん」
アルボル卿「私の育てた悪魔のせいで、 再び国が戦火にさらされるのか・・・」
チヨミ・アルボル「お父さん・・・」
ソウビ・アーヌルス「・・・・・・」
ソウビ・アーヌルス(現時点で、 ソウビとラニが入れ替わっている以外は、原作通りの流れだ)
ソウビ・アーヌルス(愛妾がドラゴンミルクをねだり、 王がそれに従い、負担を強いられた民が 王に反感を持つようになる)
ソウビ・アーヌルス(このままでは、ソウビの代わりにラニが あの最期を迎えることに・・・!)
第十八話 変わらない流れ ──終──
第十九話に続く
アルボル卿、渋イケオジで素敵……!無事で良かった!
ユーヅツは観察眼に優れていそうですね。分析が的確。
危険な方向に流れているのに、離れていて干渉できないのはもどかしいですね。ヒナツはちょっと憐れになってきました。
アルボル卿、渋イケオジのお父様がご無事で何よりでした。
かつての主が側に居ることで、顔を見るたびに自分が使用人だった事を思い出してしまう、というのは何となく納得してしまいました。いや、だからと言って追放とか💢😠💢なんですが。
ヒナツはもうどうにでもなれって感じですが、ラニの運命は変わって欲しいと願ってしまいます。
ファンタジーの美少女にもできるニキビ…!!