あの日も暑かった……(脚本)
〇空
あの日の空も、こんな色をしていた・・・
俺と彼女を結びつけた、思い出の日。
〇空
そう、抜けるような青空をしていた。
爽快感を色にしたような青だ。
もし翼があったらどこまでも舞い上がれる
そんな柄にもないことを思ったもんだ。
そして、焼けるような日差しに、
頬からも背中からも汗が流れ続けた。
その年一番の最高気温を更新、
ニュースではそんなことを言っていたな。
こんな酷暑日、普段なら絶対に出歩かない
しかし、向かう先が彼女の家のため、
不思議と足取りは軽かった。
胸の内も熱く滾っていた。
空高く燃え続ける太陽よりもだ。
〇川のある裏庭
彼女の家の庭だが、
小ぶりながらよく整えられていた。
芝生は綺麗に刈り揃えられており、
暴力的に青々としていた。
丁度刈ったばかりだったのだろう、
独特の緑の香りが立ち込めていた。
夏特有の重たい空気と相まって、
青臭い空気が俺の全身に
べっとりと纏わりついてくる感じだ。
庭にはウッドテーブルもデッキもあり、
オシャレな空間を作り出そうとするのが、
一目で理解できた。
その空間に、日常感の代表ともいえる
物干し竿が何ともミスマッチだった。
この庭で、俺と彼女を結びつける、
大事なものと出会ったのだった。
〇花模様
それは、手にするだけで、
感じたことのない高揚感というものを
俺に与えてくれた。
彼女が大事にするもので、
俺もそれを何よりも愛した。
俺と彼女の意識は、それを介して
1つになったと感じている。
それさえあれば、何も怖くない、
どこにだって行ける、
俺に勇気を与えてくれる。
そう、俺にとっては、
換えがたい宝物とも言えるものだ。
そう・・・
〇モヤモヤ
俺は、彼女の声すら聞いたことがない。
名前も知らない、年齢すらもだ。
彼女も、俺のことなんか、
存在すら認識していないだろう。
それでもいい、
この布1枚で俺たちは繋がっているのだ。
型崩れしたフリル、
変色したクロッチ、
これは彼女が愛用し続けた証拠だ。
彼女の愛用品を俺も愛している。
それだけで十分だろう。
他に何が必要だというのか。
俺の心は完全に満たされている。
彼女と愛を共有できているのだから。
〇空
今、俺は何も怖くない。
どこにだって行ける!
何だってできる!
あの日と同じ、この青空の下で!
さあ、行こう!!
途中から、もしかしてやばくない?って思ってたんですが、まさかの下着泥棒!
最後のパトカーの音がいい味出してました!笑
構成めちゃうまいですね!
おもしろかったです。
後書きにある、【逮捕直前】!という記述に、主人公の興奮具合がより伝わってきました(笑)。持ち上げられて振り落とされたような心地よい裏切られ感です!
素敵で綺麗なストーリーだなと途中まで読んでいました。大どんでん返しが来ました。まさかの下着泥棒の戯言でしたか。泥棒はダメです。下着を買いなさい。