パンイチ冒険者ケンイチ

紅月桜

第四話 ごめん、君の気持ちには応えられない(脚本)

パンイチ冒険者ケンイチ

紅月桜

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〇教室
  第四話 ごめん、君の気持ちには応えられない
女子A「ねぇ聞いた? ゆきが今日休んだのって・・・」
女子A「実は・・・で・・・・みたいで・・・」
朝日ケンイチ(肝心のところが聞こえない! 【聞き耳】の鍛えが足りないのか!?)
朝日ケンイチ(待てよ? 【聞き耳】・・・)
朝日ケンイチ(もしも【聞き耳】で他プレイヤーのマイクに入った音を聞き取れたなら?)

〇古いアパートの部屋
母「ケンイチ!もう一時間経つわよ!」

〇教室
朝日ケンイチ(本名がわかる!他の情報も手に入る!あいつはそれを利用してるんじゃないか!?)
朝日ケンイチ(住所までわかるなんてハッタリのはず。それっぽいこと言って何でも知ってるふうを装ったんだ)
朝日ケンイチ(でも・・・本当に【聞き耳】でそこまで聞こえるか?体感だと無理っぽい気がする・・・)
朝日ケンイチ(いや、もっと耳を良くする方法があればきっとできる!確かめなきゃ!)
朝日ケンイチ(この学校で一番GFに詳しいのはシン! シンに訊けば・・・)
朝日ケンイチ(いや無理!絶っ対っ無理っ!カースト頂点に最底辺が話しかけるなんて!大名行列を百姓がさえぎるようなもの!)
朝日ケンイチ(でも・・・それでも)
朝日ケンイチ(ゆきちゃんを助けられるのなら!!)

〇学校の昇降口
朝日ケンイチ「あっ・・・あのっ!!」
「!!」
十七夜月シン「・・・なんだい?」
朝日ケンイチ「えっと・・・」
朝日ケンイチ(「あ、スキルのことで聞きたいんだけど」って言うんだ!「あ、スキルのことで聞きたいんだけど」って言うんだ!!)
朝日ケンイチ(スキルのこと!スキルのこと!スキル!スキル!)
朝日ケンイチ「ス・・・ス・・・」
朝日ケンイチ「すきっ・・・!!」
「・・・・・・!!」
十七夜月シン「それは・・・」
十七夜月シン「・・・・・・」
十七夜月シン「・・・気持ちはうれしいけれど」
十七夜月シン「ごめん」
十七夜月シン「君の気持ちには応えられない」
朝日ケンイチ「ちっ、違うっ!!」
朝日ケンイチ「GFのスキル【聞き耳】より耳を良くする方法があるか知りたいんだ!」
十七夜月シン「あるよ」
朝日ケンイチ(即答!?)
十七夜月シン「【聴力強化】の魔法がある 発動中は魔力を消費し続ける代わりに【聞き耳】より効果は大きいはずだよ」
朝日ケンイチ「それを使えば、他のプレイヤーのリアルの環境音も聞き取れる?」
十七夜月シン「それは・・・わからないな」
十七夜月シン「僕は【聞き耳】も【聴力強化】も未取得だから。たしか取得条件がかなり特殊だったはずだ。でも可能性はあると思うよ」
朝日ケンイチ「あ、ありがとう!」
十七夜月シン「どういたしまして また何でも聞いてね・・・ってもういないや」

〇兵舎
  「有志連合会」、通称「連合」。最大派閥。有志クエスト斡旋、攻略掲示板運営、治安維持等、活動は多岐に渡る
会長「なるほど、個人情報をダシにパーティー加入を迫られたと」
スノー「はい・・・怖くて今日は学校も休んでしまって」
会長「ハッカーか、リアルのストーカーの可能性もあるか」
スノー「現実の警察に相談したほうがいいでしょうか?」
会長「いや、よくぞ我ら連合を頼ってくれた、我々に任せてくれたまえ」
会長「GFの運営は放任主義が過ぎるからな、悪質なプレイヤーも野放し状態だ」
会長「安心してくれたまえ、GFの治安は連合が守る!」
スノー「ありがとうございます」
会長「別件だが、ここ数日ブリーフ一丁の露出狂が目撃されている くれぐれも気をつけてくれたまえ」
スノー(ケンイチさんだ・・・!)
会長「なぁに心配には及ばん GFの風紀を乱す輩は我々が成敗する!」

〇城壁
スノー(ケンイチさん・・・ せめて街中では服着たほうがいいかも)
プレイヤー狩り「あんな連中に頼ったって無駄だよぉ?」
プレイヤー狩り「なぁにが連合だ、ヴォロドィームィルひとり討ち取れないクセにさァ。あんなの頭数が多いだけの暇人グループさァ」
プレイヤー狩り「さぁボクとパーティー組もうよォ それとも先にリアルで出会いたいかい?」
ケンイチ「パンイチ・パンチ!」
スノー「ケンイチさん!」
プレイヤー狩り「出やがったな露出狂がァ」
ケンイチ「彼女に手を出すな!」
プレイヤー狩り「よくもボクの邪魔をォ・・・」
ケンイチ(母さん、打合せ通りに頼むぜ!)

〇古いアパートの部屋
母「タケシー!ごはんできたわよー!」
母(言われた通りにしたけど、これでいいのかしら?)

〇城壁
プレイヤー狩り「ふふふ・・・君みたいな身の程知らずにはリアルで痛い目に遭ってもらおうかなァ? タケシ君?」
ケンイチ「やっぱりな」
プレイヤー狩り「はぁ?」
ケンイチ「【聴力強化】だろう?」
ケンイチ「おまえはプレイヤーのマイクが拾った音声を盗み聞きしてるだけだ」
ケンイチ「本当は相手の顔も住所もわからない ただのハッタリだ!」
ケンイチ「教室で机に突っ伏して寝たフリをしながら女子の会話に聞き耳を立てる・・・おまえはそんな奴だ!」
パンツくん「やけに生々しいのう」
プレイヤー狩り「言いたい放題言いやがって・・・ ボクよりレベル低いくせに! この場でぶっ殺してやる!!」
ケンイチ「パンイチ・パンチ!」
プレイヤー狩り「クソがっ・・・!」
ケンイチ「パンイチ!」
プレイヤー狩り「!」
ケンイチ「パンイチ!パンイチ!」
プレイヤー狩り「!?」
ケンイチ「パンチ!パンイチ!パンチ!パンチ!パンイチ!パンチ!パンイチ!パンチ!パンイチ!パンチ!パンチ!パンイチ!パンチ!」
スノー(フェイントを織り交ぜた乱撃!次に来るのが「パンチ」か「パンイチ」か読めない!謎の二択を迫り続けて相手を翻弄してる!)
プレイヤー狩り「なぜだぁ、ボクのほうが高レベルなのにぃ」
ケンイチ「まともに戦ったことなんてないんだろ?」
ケンイチ「おまえのレベルは偽りだ」
プレイヤー狩り「このボクを侮辱しやがってェ!!」
プレイヤー狩り(こんな格下に使うのは癪だが奥の手・・・針に仕込んだ猛毒!かすり傷ひとつであの世行きだ!)
プレイヤー狩り(二択をミスって死ぬのはテメェのほうだ!さぁ次はどっちだ?パンチか?パンイチか?)
ケンイチ「あっ、ゆきちゃんのパンチラ!」
プレイヤー狩り「何ィッ!?」
スノー「え!?」
ケンイチ「嘘だ!パンチラ・パンチ!」
プレイヤー狩り「ぎゃあっ! 卑怯者ォ・・・!」
ケンイチ「二択に囚われた時点でおまえの負けだ!」
プレイヤー狩り「は、針が!?い、今ので指に刺さった!毒消し!早く毒消し薬をォオオオ・・・オ・・・」
ケンイチ「血を吐いて倒れた!?」
パンツくん「敵プレイヤーを倒した! ケンイチはレベル三に上がった!」
ケンイチ「何とか勝てた・・・」
ケンイチ(盗み聞きの得意なぼっち・・・ 一歩間違えば俺もこんなふうに・・・)
ケンイチ「ゆきちゃん、大丈夫だった?」
スノー「本名で呼ばないでくださいっ!」
ケンイチ「ご、ごめん!」
スノー「助けてくれてありがとうございます」
スノー「私のことはスノーって呼んでくださいね ケンイチさん」

〇散らかった居間
中年男「ちくしょう、このボクがあんな露出狂にやられるなんて!デスペナルティが明けたら絶対に復讐してやる!」
中年男「だがどうやる?「無敵の人」を騙れば常識人ならビビるが、ガチでイカれた露出狂にそんなブラフは通じない・・・クソッ」
老母「ごめんねぇ、ちょっとええかい?」
中年男「ノックしろっていつも言ってんだろクソババア!」
老母「ごめんよぉ、玄関に・・・」
中年男「ふん、やっとピザが届いたか、遅ぇんだよ!」
中年男「け、警察・・・!?」
中年男「ボ、ボクが脅迫ゥ? ち、違うんだ、アレはゲームの中の話で・・・」
警官A「続きは署で聞こうか」

〇森の中の沼
  五階層
ヒカリン「お、運営からお知らせや」
ヒカリン「ノイズキャンセラーのアップデート? さては【聴力強化】でおイタできんようになったか」
ヒカリン「さて今日のランキングは・・・んっ!?」
ヒカリン「ケンイチ君、やるやないか」

〇兵舎
会長「聖騎士ニュクスの記録が塗り替えられた!?」
弓兵「総プレイ時間三時間足らずでレベル三!?」
槍兵「さすがに不正改造では!?」
弓兵「このケンイチって・・・パンツ一丁でうろついていると通報があった奴だ!」
会長「パンイチのケンイチ・・・要注意だぞ」

〇児童養護施設
オータ「グンマァ!」

〇炎
  四階層
ヴォロディームィル「ちっ、ブリーフ太郎が!」

〇雪山
  三階層
ニュクス「僕より早いレベルアップだと・・・?」
ニュクス「ケンイチ・・・あのときの彼か」

〇教室
朝日ケンイチ(金曜の朝―― ゆきちゃん今日は学校来るかな?)
小枝ゆき「おはよー」
「おはよー!」
朝日ケンイチ(よかった・・・)
十七夜月シン「小枝さん」
小枝ゆき「およよう、シン君」
十七夜月シン「おはよう」
十七夜月シン「このまえ一階層で一緒にいた下着姿の彼とは親しいのかな」
小枝ゆき「ケンイチさんのこと? うん、何度も助けてもらったよ」
十七夜月シン「彼に興味があるんだ 彼を誘って僕と一緒にダンジョン探索できないかな?」
朝日ケンイチ「・・・!?」

次のエピソード:第五話 手をつないでいい?

コメント

  • イケメンからのお誘い!

  • ケンイチ、最高!
    パンチ!パンイチ!パンチラ!クセになる。
    爆笑です。
    ストーカーは現実世界でも逮捕されて、良かった〜!
    ゲームと現実世界の色んなキャラクターが交錯して、本当に面白いです。

  • パンチとパンイチの2択…だと…

    名前がわかっていただけであそこまで脅せるのは、才能を感じますね。

    そして、あらゆる層(二重の意味で)から注目をあびるケンイチ…

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