読切(脚本)
〇映画館のロビー
チケット係「次でお待ちの方、どうぞ」
客「大人一枚」
チケット係「何の映画でしょうか?」
客「あ~! 間違えちった。間違えちった。あの、次の回のやつ」
チケット係「ええと、タイトルの方はお分かりになります?」
客「ええとねえ、何だっけなあー。ど忘れしちゃったよ」
客、しきりに思い出そうとする。
チケット係「そしたら、洋画でしょうか、邦画でしょうか?」
客「へっ? 何?」
チケット係「ですから、洋画ですか、邦画ですか?」
客「映画です」
チケット係「いや、映画は分かってますよ。外国映画か日本映画かを聞いてるんですが」
客「手続きとか変わるんですか?」
チケット係「そういうことじゃなくて、洋画か邦画かが分かれば、タイトルを探しやすいでしょう?」
客「今までそういう風に映画を区別したことないんすよねえ。どこで作ってもいいものはいいし、だめなものはだめなんでねえ」
チケット係「あの、いいとか悪いじゃなくて、ただ作ったところを知りたいだけなんですけど」
客「国とか気にしないからなあ」
チケット係「困りましたねえ。じゃあ、監督は? 日本人、外国人?」
客「監督が日本人だから日本映画とはかぎらないしねえ? 国際化社会なんだから」
チケット係「まあ、そうですけど、だいたいどっちか分かるんじゃないですか?」
客「監督いたかなあ~?」
チケット係「いや、いるでしょ! 監督は、必ず」
客「北野たけしさんみたいに、主演兼監督ってこともあるしね?」
チケット係「北野たけし監督ですか?」
客「そうじゃないよ! それなら覚えてるでしょうよ。名前まで出てきてるんだから」
チケット係「思い出せませんか?」
客「中肉中背、40代から60代くらいの男性だったと思うんだけど」
チケット係「だいたいそう! 監督って、だいたいそうだよね?」
客「もしかしたら、70代以降だったりして?」
チケット係「ぜんぜんヒントになってない! 範囲広がっちゃってるから!」
客「何だよ~。監督のこと知らないの~?」
チケット係「あんただよ! 監督はもういいですよ。主演は?」
客「わかった!」
チケット係「・・・・・・・・・」
チケット係「何だよ?! 何がわかったんだよ?!」
客「昨日のクイズ番組、答えは「グミ」だな」
チケット係「それ思い出したのかよ。どんな問題だよ?」
客「『お正月に放送するのは、”お正月番”何?』」
チケット係「そのグミかよ?! 何だよ、その問題!」
客「いまわかっちゃった。ははは・・・・・・」
チケット係「すぐわかれよ! 変な問題!」
客「早押しだからね」
チケット係「早押し関係ねえよ! ピンポーン、グミっだよ!」
客「ピンポーン、グミっ!」
チケット係「いいよ、まねしなくて!」
客「バカみたいだなあって思って」
チケット係「うるさいよ! だいたい、映画観たいなら、タイトルぐらい覚えてこいよ!」
客「記憶が苦手でね~。こびとが仲間と、世界を滅ぼすことのできる指輪を遠い火山まで捨てにいくっていう物語なんだけどね」
客「何の映画だか、ぜんぜん思い出せない」
チケット係「明らかに、『ロードオブザリング』ですね?」
客「ピンポーン、グミっ!」
チケット係「グミ関係ねえよ! はい、12時20分から3番シアターで上映です」
客「いや、その映画に出てる村娘Bが出演する別の作品を探してるんだけど」
チケット係「ピンポーン、無理っ!」
「ありがとうございましたー!」
== おわり ==
最終的にズバリその映画につながるヒントが頭に入っていたところが、私はチケット係ではないけど、イラ!っときました(笑)早くそれいってくれよ!話の脱線具合がツボでした!
チケット係の人の言葉遣いが、どんどん乱暴になっていくのが笑えました。笑
最初は丁寧でしたよね!
観たい映画を思い出せなくて、話が脱線していくのがおもしろかったです。
タイトルを思い出すのも大変ですね。数多い映画からどの映画を見たいのか。様々なヒントを出して絞っていくしかないでしょう。てか、案内人が大変でした。