寵姫は正妃の庇護を求む

香久乃このみ

第十五話 国境を越えて(脚本)

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〇城の会議室
  ◆あらすじ◆
  賊を撃退後、一行は
  東の離宮へ行かず、国境を越え、
  ヒノタテ国のメルクの宮殿へ
  身を寄せることとなった
チヨミ・アルボル「いいのかな、 勝手に国を出てしまって・・・」
チヨミ・アルボル「私たちが離宮に到着してないとなれば、 国は大騒ぎになるような・・・」
メルク・ポース「あんな賊をけしかけてくる相手だよ? 言われた通りに離宮に入ってみなよ」
メルク・ポース「寝てる間に火を放たれたり、 食事に毒を盛られたりするかも しれないねぇ」
チヨミ・アルボル「まさか・・・、ヒナツが私の殺害を 命じたって言うの!?」
チヨミ・アルボル「そんなはずない。 あの賊はたまたま通りかかった私たちを ターゲットにしただけよ」
メルク・ポース「だといいね」
タイサイ・アルボル「姉さん、現実から目をそらすなよ。 『殺すよう命じられて、金を受け取った』 ヤツらはそう言っていた」
タイサイ・アルボル「じゃあ誰が命じたか。 少し考えれば、黒幕は絞られるだろう?」
チヨミ・アルボル「・・・・・・」
タイサイ・アルボル「あの使用人め、ふざけやがって・・・!」
ソウビ・アーヌルス(ヒナツじゃないんだよねぇ・・・)
  あの賊を雇ったのは、原作では
  ソウビを擁立したい貴族だ。
  今はラニの取り巻きになってるだろう
  彼らはヒナツを一番の敵とみなしてる、
  元王家への忠誠度が極めて高い人たちだ
ソウビ・アーヌルス(教えてあげた方が いいんだろうけど・・・)
  チヨミは、
  戦の策を講じていたのが自身であると
  知っていた私に疑念を抱いていた。
ソウビ・アーヌルス(余計なことを言わない方がいいのかな。 でも、ヒナツに命を狙われたと 思ってる方がつらいよね・・・)
チヨミ・アルボル「ソウビ」
ソウビ・アーヌルス「え? 私?」
チヨミ・アルボル「何か知っていることがあったら教えて」
ソウビ・アーヌルス「えぇっと・・・」
チヨミ・アルボル「賊が来た時、あなたは私に言ったよね。 狙われてるのは私だって・・・」
タイサイ・アルボル「なんだって!?」
ソウビ・アーヌルス(あっちゃ~・・・。 すでにやらかしてました)
チヨミ・アルボル「あの賊は誰に雇われてたの? 知っているなら教えて」
ソウビ・アーヌルス(どうしよう・・・)
タイサイ・アルボル「・・・そういや、てめぇ、 妙な事いろいろ知ってたりするよな」
ソウビ・アーヌルス「枕の下のこと?」
タイサイ・アルボル「それは、今はいい!!」
ソウビ・アーヌルス(そっちから話振ったくせに)
タイサイ・アルボル「てめぇは何でいろいろ知ってんだ? どういう立場にあるんだ!? 味方だって、信用してもいいんだろうな?」
ソウビ・アーヌルス(ぇえ・・・)
テンセイ・ユリスディ「ソウビ殿」
ソウビ・アーヌルス(テンセイに手を握られた・・・)
テンセイ・ユリスディ「自分は、貴女の味方です。 貴女が今、どんな立場であろうと」
ソウビ・アーヌルス「・・・・・・」
ソウビ・アーヌルス(テンセイ、少し緊張した目をしてる。 そうだよね、事情をいろいろ知ってて スパイみたいだもんね、私)
ソウビ・アーヌルス(話しても話さなくても怪しいよ。 どうすればいいんだ、これ・・・)
ユーヅツ・アモル「あのさ」
ソウビ・アーヌルス「何?」
ユーヅツ・アモル「ひとまず今は、 なぜ君がいろいろ知ってるかとか、 立場とか事情とかどうでもいいよ」
ユーヅツ・アモル「情報が欲しい」
ユーヅツ・アモル「ボクらにとって 有益な情報を持っているなら、教えて。 それ以上は聞かないから」
ソウビ・アーヌルス「ユーヅツ・・・」
ユーヅツ・アモル「いいよね、タイサイ? チヨミのためだ」
タイサイ・アルボル「・・・わかったよ」
メルク・ポース「よし。 チヨミもそれでいいよな?」
チヨミ・アルボル「うん。 私は元からそのつもりよ」
ソウビ・アーヌルス「・・・・・・」
ソウビ・アーヌルス「命じたのはヒナツじゃないよ」
ソウビ・アーヌルス「彼らを雇ったのは、おそらく ラニを女王に擁立したい貴族たち。 ヒナツが王座にいるのが気に食わないんだ」
タイサイ・アルボル「だったら、ヒナツをつぶせよ! なんで姉さんが 狙われなきゃなんないんだ!」
ソウビ・アーヌルス「チヨミは王の妃だから。 彼らにとっては王の身内。 ・・・そういうものでしょ?」
タイサイ・アルボル「クッソ! つくづく疫病神だぜ、あの男!」
チヨミ・アルボル「・・・良かった、ヒナツじゃなくて」
タイサイ・アルボル「姉さん?」
チヨミ・アルボル「ありがとう、ソウビ。 教えてくれて」
ソウビ・アーヌルス「ううん。 ・・・でも、私の言ったこと信じるの?」
チヨミ・アルボル「うん。 私の直感が告げているの。 ソウビはうそを言ってない、って」
ソウビ・アーヌルス「・・・・・・」
ソウビ・アーヌルス(乙女ゲーヒロインの『信じる』。 甘っちょろいお約束と思ってたけど、 今は助かったな)
メルク・ポース「奴らは国境を越えて、 ここまで追ってきたりする?」
ソウビ・アーヌルス「ううん、そんな展開はなかったはず」
メルク・ポース「展開、ね・・・」
ソウビ・アーヌルス(一周しかプレイしてないから、 彼らが別のルートでどんな行動を 取ったかまで知らないけど)
ソウビ・アーヌルス(でもネットの感想を見る限り、 攻略キャラによって展開が大きく 変わることはなかったと思う)
メルク・ポース「・・・・・・」
メルク・ポース「とりあえずさ、飯にしようぜ、飯!」
チヨミ・アルボル「え?」
メルク・ポース「姫さんの話だと、 魔の手はここまで伸びないらしい。 なのに、気を張り続けたら 疲れちまうだろ?」
  メルクがベルを鳴らすと、
  皿を手にした使用人たちが
  次々と部屋へ入ってきた。
  私たちの目の前に、
  湯気の立つ料理が並べられる。
メルク・ポース「今日は大変なことがあって 疲れてるはずだ」
メルク・ポース「ヒノタテの料理、 たっぷり用意させたから 心ゆくまで食べてくれ」
メルク・ポース「浴場には、 近くの温泉地から湯を引いてある。 あとでゆっくりと楽しむといい」
ユーヅツ・アモル「わぁ、それは興味深いね」
テンセイ・ユリスディ「かたじけない、メルク殿」
メルク・ポース「なに、チヨミちゃんは命の恩人だからね。 命の礼は命で返す」
メルク・ポース「ここにいる限りは、手出しさせやしないさ」

〇空

〇空

〇大樹の下
ソウビ・アーヌルス「食事は美味しいし、温泉付きだし。 ヒノタテって、いい国だな」
ソウビ・アーヌルス「あっ、あれは・・・」
  第十五話 国境を越えて ──終──
  
  第十六話へ続く

次のエピソード:第十六話 知るがゆえに

コメント

  • チヨミの情は予想以上に深そうですね。
    ヒノタテ、温泉もあるんだ~、いいなー💕

  • 束の間の休息、ですね。
    乙女ゲー主人公の『信じる』は強いw

  • 焼き討ちフラグ回避!

    僕の方は(血涙)

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