選択屋~心の汚れ、落とします~

Akiyu

選択屋との出会い(脚本)

選択屋~心の汚れ、落とします~

Akiyu

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〇開けた交差点
中野(あっ、財布だ。財布が落ちている。どうしよう?)
  その男、中野は、辺りをキョロキョロと見回した。
中野(まあ当然、落とした奴が悪い。これはラッキーだ。有難く頂くとしよう)
中野(おう、結構な金額入ってるじゃないか)
選択屋・瑠璃「こんにちは」
中野「う、うわぁああ!!」
中野(い、いつの間に!?足音なんてしなかったし、誰もいなかったのに)
  いつの間にか背後に少女がいた。その少女は、幼く見える。
選択屋・瑠璃「私は瑠璃」
中野「ロリ?」
選択屋・瑠璃「るり!!ロリではありません!!」
選択屋・瑠璃「私が気にしている事を言わないで下さい」
中野(気にしてるんだ。確かに幼く見えるもんな)
選択屋・瑠璃「私は選択屋をしています」
中野「洗濯?クリーニング屋?」
選択屋・瑠璃「お兄さん。選択物が汚れているので私が洗濯してあげますよ」
選択屋・瑠璃「ここで出会ったのも何かの縁。料金はサービスさせて頂きますよ」
中野「えっ?洗濯?何?俺、別に洗濯物なんて持ってねえよ」
選択屋・瑠璃「洗濯ではなく、選択です。選択は心の決断の事なんです」
中野「心の決断?」
選択屋・瑠璃「普通は、財布を拾ったら交番に届けるものなんです。でもあなたは、財布を盗むという選択をした」
選択屋・瑠璃「それは、あなたの選択物が汚れているという証拠です。私、綺麗好きなんです。選択を洗濯させて下さい」
中野「選択を洗濯・・・。ふざけてるのか?」
選択屋・瑠璃「いいえ」
中野(ここは、とりあえず上手く話を合わせておいて、隙を見てトンズラしよう)
中野「まあタダで洗ってくれるならいいけどよ。それでどうすればいいんだ?」
選択屋・瑠璃「これを使います」
中野「きなこ?」
選択屋・瑠璃「間違えた。これは私のおやつに使うやつです。あげませんよ」
中野「いや、いらないよ」
選択屋・瑠璃「これです」
中野「それは?」
選択屋・瑠璃「これは”選剤”という特殊な洗剤です」
選択屋・瑠璃「あなたの心の選択肢の汚れである”選罪”を洗い流すのに使います」
中野「選剤・・・」
  そう言うと選択屋の少女、瑠璃は、中野の頭に選罪という特殊な洗剤を振りかけた。
  そしてフッと息を吹きかけた。
  粉は空中を舞い散り、風に乗ってどこかへ行ってしまった。
中野(な、なんだ!?心が・・・晴れ渡っていく・・・)
選択屋・瑠璃「どうですか?」
中野(俺は財布を盗もうとしたのか。なんて馬鹿なことを・・・・・・)
中野「財布、交番に届けるよ」
選択屋・瑠璃「そうです。それが正しい選択です。正しい選択を選ぶと、素敵な人生があなたを待っていますよ」
中野「ああ、ありがとう」

〇警察署のロビー
中野「こんにちは」
警察官「はい。どうされましたか?」
中野「あの・・・財布を拾ったんですが・・・」
警察官「拾得物ですね。こちらの席にどうぞ」
  手続きをした。

〇一人部屋
  それから数日が経った頃、知らない番号から電話がかかってきた。
中野「もしもし」
木村「あの。財布を交番に届けてくれた方ですか?」
中野「はい」
木村「本当に助かりました。ありがとうございます」
木村「財布の中には、入院している母の治療費を払うお金が入っていたんです。なんとお礼を言えばいいか」
中野「いいえ、俺は当然の事をしただけです」
木村「お礼をさせて頂けませんか?」
中野「いえ。そんなの結構ですよ」
木村「お願いします!!私の気が収まりません」
  中野は断ったが、物凄く食い気味に何度も言われたので根負けした。
中野(うーん・・・。まあ人の行為は素直に受け取るべきか)
中野「分かりました」
木村「ではご都合の良い日を教えて下さい」
  そうして中野は、数日後にカフェで財布の落とし主と会う事になった。

〇テーブル席
木村「えっと・・・中野さん?」
中野「はい。中野です」
木村「この度は本当にありがとうございました」
  木村と名乗った財布の落とし主の男は、深々と頭を下げた。
木村「こっちは妹の綾です」
綾「綾です。この度は本当にありがとうございました」
  妹の綾も深々と頭を下げた。
  適当にコーヒーを注文し、座って話をする。
木村「正直落とした時は、もうダメだと思いました。母の治療費が払えなくなって困るところでした」
中野「そうですか。見つかって本当に良かったです」
綾「中野さんのような良い方に拾ってもらえてよかったです」
中野「いいえ、俺なんて・・・」
中野(本当は盗もうとしたんだ。あの少女に出会っていなければ・・・俺は・・・)
木村「母は原因不明の病に侵されています。熱が下がらないのです」
中野「それは大変ですね。医者でも分からないとは・・・」
木村「ええ。坂下大学病院に入院してるんですけどね」
中野「ああ。俺の家の近所の病院です。いつも調子が悪くなると行ってます。色々な科がまとまって入ってるから」
綾「そうなんですね」
  それから中野達は、色々な話をして仲良くなった。
中野「それじゃ、俺はそろそろ・・・」
綾「楽しかった。中野さん。また今度遊ぼうね」
中野「ああ。そうだな」
木村「本当にありがとう。それじゃ、またね」
  素敵な出会いがあった。中野は、不思議な洗濯屋の少女、瑠璃の言葉を思い出していた。
中野「正しい選択を選ぶと、素敵な人生があなたを待っていますよ・・・か」

〇病室
  綾さん達と仲良くなった俺は、綾さんのお母さんの病院にお見舞いに行く事になった。
お母さん「綾・・・。来てくれたのね」
綾「うん。来たよ。お母さん。この人が中野さん。お兄ちゃんの財布を届けてくれたの」
お母さん「ありがとうございます。おかげで助かりました」
中野(あれ・・・。この人・・・)
中野(心が・・・汚れてる?)
中野(でも俺・・・なんでそんな事分かるんだ?)
お母さん「ごほっ・・・ごほっ・・・」
綾「お母さん?大丈夫?」
お母さん「ええ。大丈夫よ」
中野(あのロリ・・・いや、瑠璃にまた会えれば、綾さんのお母さんを治してあげれるかもしれない)
中野「綾さん。お母さん。俺、ちょっと用事を思い出したので、行きますね」

〇開けた交差点
中野「確かこの辺だったよな・・・」
  中野は少女、瑠璃を探していた。
選択屋・瑠璃「こんにちは」
中野「うわああああああ」
中野(また背後から。急に現れたな)
選択屋・瑠璃「私を探してたんですよね?知ってますよ」
中野「なんで知ってるの?」
選択屋・瑠璃「選択屋のアフターサービスです。見守りです」
選択屋・瑠璃「あなたの心を通して見ていました。綾さん、美人で可愛いですよね」
中野「それはアフターサービスという名の、覗きじゃないか」
選択屋・瑠璃「それで私に何の用ですか?ああ、大丈夫ですよ。言わなくても分かります」
中野「なんで聞いたんだよ」
選択屋・瑠璃「綾さんのお母さんの選択を洗濯して欲しいんですよね?」
中野「ああ。話が早くて助かるよ」
選択屋・瑠璃「でも今回は、きちんと料金を頂きますよ。前のはサービスですから」
中野「いくらだ?」
選択屋・瑠璃「きなこ」
中野「へ?」
選択屋・瑠璃「私、きなこが好きなんです。きなこを買ってください」
中野(思ったよりも安く引き受けてくれるんだな)
中野「ああ。いいよ。いくらでも買ってやるよ」
選択屋・瑠璃「では早速、綾さんのお母さんの所にいきましょうか。綾さんに良い所見せたいんですよね?」
中野「ひ、人の心を覗くな!!」

〇病室
綾「はい、どうぞ」
綾「って、あれ?中野さん。用事があったのでは?」
中野「その用事がこれなんだ」
選択屋・瑠璃「こんにちは」
綾「えっと、どちら様ですか?」
選択屋・瑠璃「選択屋の瑠璃です」
綾「ロリさん?」
選択屋・瑠璃「るり!!ロリじゃないです!!気にしてる事言わないで下さい」
綾「ご、ごめんなさい」
中野「俺から説明するよ」
中野「瑠璃は、えーと・・・心の汚れ?を落とせるんだ」
綾「心の汚れ?」
中野「綾さんのお母さんは、心に汚れが溜まっているんだ。それで体調が悪くなってる」
選択屋・瑠璃「そういう事です。だから選択屋の私が来ました」
綾「ちょっとよく分からないんだけど・・・」
中野「まあ実際に見た方が早い」
選択屋・瑠璃「では今から選択を洗濯します」
  綾のお母さんの頭に選剤振りかけた。そしてフッと息を吹きかけた。
お母さん「なんだか心が軽くなった気がするわ」
選択屋・瑠璃「うん。綺麗になった」
綾「な、何!?今のキラキラしたの!?」
選択屋・瑠璃「選択を洗濯したんです」
選択屋・瑠璃「これでお母さんの病気も良くなりますよ。よかったですね。綾さん」
綾「瑠璃さん。ありがとうございます。あの、お礼はどうすれば・・・」
選択屋・瑠璃「選択の料金なら、中野さんから頂いてますから」
綾「えっ!?中野さん。いくらだったの?払うよ」
中野「いや、いいよ。スーパーで130円だったから」
綾「えっ?」
選択屋・瑠璃「はい。これできなこ団子を作るんです♪」
綾「・・・」
綾「ぷっ・・・。あはは」
中野「あははは」
選択屋・瑠璃「では、私は、おやつを作るので帰りますね」
綾「なんか不思議な子だね。瑠璃さんって」
中野「だな。でも悪い子じゃない事は確かだよ」
綾「そうだね」

〇開けた交差点
中野(でも、どうして俺は、人の心の汚れが見えたんだ・・・?)
選択屋・瑠璃「こんにちは」
中野「うわああああああ」
中野(また背後を取られた!!)
選択屋・瑠璃「中野さん。あなたには、報酬を支払ってもらいますよ」
中野「えっ?きなこ買ってあげたじゃん」
選択屋・瑠璃「そんな安く済むわけないじゃないですか」
中野「・・・いくらだ」
選択屋・瑠璃「お金ではありません」
中野「じゃあ何で払えっていうんだ」
選択屋・瑠璃「その体で払ってください」
中野「体・・・だとっ!?」
選択屋・瑠璃「はい。労働力です。私の元で働いてください。選択屋のアルバイトです」
中野「えええ!?」
選択屋・瑠璃「最近忙しいんですよ。働きによっては正社員登用の道もありますよ」
中野「断る!!と言ったら?」
選択屋・瑠璃「断れませんよ。すでにあなたの心は、私の手の中にありますから」
選択屋・瑠璃「あなたの心を覗き放題。恥ずかしいあんなところやこんなところを色んな人に・・・」
中野「あー!!やめろやめろ!!脅迫するな!!わかったよ!!手伝う!!手伝うから!!」
選択屋・瑠璃「中野さんには最初に出会った時に”良い目の力”を与えました。心の汚れが見える力です」
中野「なるほど。だから綾さんのお母さんの心の汚れが見えたのか」
中野「でもなんで俺なんだ?」
選択屋・瑠璃「あなたは良い選択屋さんになれます。私程の選択屋になると、人を見る目が養われるんです」
選択屋・瑠璃「これからは先生と呼んで下さい」
中野「それは、なんか嫌だ」
選択屋・瑠璃「では師匠と」
中野「ロリだな」
選択屋・瑠璃「だからロリって言わないでください!!私、傷つきます!!私は瑠璃です!!」
中野「わかったよ、よろしくな。瑠璃」
  こうして中野は、選択屋のアシスタントになった。

次のエピソード:万引きおばさん

コメント

  • 選択屋という職業がおもしろかったです。
    人間っていつも選択をすることになるんですが、それを正せるっていいお仕事だと思います。
    大抵の人は過去に間違えた経験があると思うんですよ。

  • 瑠璃さんの仕事は本来なら、親や学校で教わるようなことなはずですが、人との関わり方が変わってしまった今、こうして私達の行く道をアシストしてくれる存在が必要な世の中ですね。何はともあれ、社会の潤滑油になってくれること間違いなしです!

  • このお仕事はやりがいがあって人を幸せにできる最高のお仕事ですね。今の世の中、幸か不幸か、彼らの仕事がなくなることは一生ないでしょう。

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