寵姫は正妃の庇護を求む

香久乃このみ

第十一話 幼い決意(脚本)

寵姫は正妃の庇護を求む

香久乃このみ

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〇西洋の街並み
  ◆あらすじ◆
  反乱軍を制圧したヒナツ。
  誇らしげに笑うヒナツの視線の先に
  いたのはソウビの妹ラニだった。
ヒナツ・プロスペロ「惚れ直したか! ははははは!」
ラニ・アーヌルス「えぇ、大変素晴らしゅうございましたわ」
ラニ・アーヌルス「まるでサーガに出てくる英雄のよう。 私、胸の高まりが抑えられませんでした」
ヒナツ・プロスペロ「はははは、愛いやつよ!」
ヒナツ・プロスペロ「さて、城へ戻るぞラニ。 お前の目に俺がどう映ったか、 たっぷりと聞かせてくれ」
ラニ・アーヌルス「えぇ、わが敬愛なる君」
ソウビ・アーヌルス(え・・・)
チヨミ・アルボル「ソウビ、あれはいったい?」
ソウビ・アーヌルス「わからない・・・」

〇西洋の城

〇宮殿の部屋
チヨミ・アルボル「ラニを側室にする!?」
ヒナツ・プロスペロ「・・・・・・」
チヨミ・アルボル「なにを考えているの、ヒナツ! あの子はまだ幼い子どもよ!?」
チヨミ・アルボル「そんなことが民に知れれば、 きっとあなたは信頼を失う! お願いだから、絶対にやめて!」
ヒナツ・プロスペロ「確かに今のラニはまだ幼い。 だが5年もすれば ソウビと同じ年齢になる」
チヨミ・アルボル「ヒナツ!」
ヒナツ・プロスペロ「別に今すぐってわけじゃない。 俺にそんな趣味はないからな。 大人になるまでゆっくり待つさ」
ヒナツ・プロスペロ「ラニは俺を深く慕っているようでな。 潤んだ瞳で想いを打ち明けてきた。 クク、可愛いではないか」
チヨミ・アルボル「ヒナツ、お願いだから・・・」
ヒナツ・プロスペロ「俺は、前王の血を引く女であれば ソウビでなくとも構わない」
ヒナツ・プロスペロ「ソウビが俺を嫌っているのに 気づいていないと思ったか? 成り上がり者と見下しているのだ」
ヒナツ・プロスペロ「あの気位の高さは刺激的であったが、 いささか鼻についてきた」
ヒナツ・プロスペロ「それに比べ 素直に愛情を示すラニの愛しいこと」
チヨミ・アルボル「ヒナツ! いい加減にしないと怒るよ!!」
ヒナツ・プロスペロ「・・・・・・ 怒る?」
ヒナツ・プロスペロ「何様のつもりだ、王に向かって!!」
チヨミ・アルボル「ヒナツ・・・?」
ヒナツ・プロスペロ「ソウビだけでなく、お前もそうか。 俺を卑しい男と侮っているのだな」
チヨミ・アルボル「ヒナツ!? 私はただ・・・!」
ヒナツ・プロスペロ「あぁ、そうだ。 俺はお前の家の使用人だった男だ」
ヒナツ・プロスペロ「盗賊に襲われたお前を守った手柄で お前の父親に気に入られ、お前と 身分を手に入れただけのただの野良犬」
ヒナツ・プロスペロ「・・・お前の目には、 今もそう映っているのだろうな」
チヨミ・アルボル「違う! どうして私がそんなことを・・・!」
ヒナツ・プロスペロ「黙れ!!」
チヨミ・アルボル「・・・っ」
ヒナツ・プロスペロ「俺はもう見下されるのはごめんだ。 自分が俺を王位につけてやったのだと お前に恩を着せられるのもまっぴらだ!」
チヨミ・アルボル「私、そんなこと少しも・・・!」
ヒナツ・プロスペロ「お前の策が俺に勝利をもたらせたと ソウビが知っていた。 それを知る者は他にもいるのだろう」
ヒナツ・プロスペロ「お前がそばにいる限り、 俺は女の力で地位を得たという 謗りから逃れられない」
チヨミ・アルボル「ヒナツ・・・」
ヒナツ・プロスペロ「俺を解放しろ。 チヨミ、俺の前から消えてくれ」

〇貴族の部屋
ソウビ・アーヌルス「ラニ、ヒナツのものになるって 本気で言ってるの?」
ラニ・アーヌルス「えぇ、そうよお姉さま。 私、あの男の妻になるわ」
ソウビ・アーヌルス「あんな色ボケ男やめたほうがいいって! だいたい、ラニみたいな少女に 手を出す時点で人として・・・」
ラニ・アーヌルス「お姉さまは何もわかってないのよ! 私が牢を出てから どんな思いをしてきたか!」
ラニ・アーヌルス「あの男がお姉さまに気に入られようと あれこれしていたことは 私の耳にも届いているわ」
ラニ・アーヌルス「お姉さまが全てをはねつけていたことも!」
ラニ・アーヌルス「私がそのたびに、 どれだけ身の縮む思いをしていたか、 お姉さまに分かる!?」
ラニ・アーヌルス「お姉さまが不興を買って、 あの王に斬られるようなことがあれば、 私だって無事でいられない」
ラニ・アーヌルス「またドレスを取り上げられ、 地下牢に押し込められ、 処刑に怯える日が来るんじゃないかって」
ラニ・アーヌルス「私、ずっと恐怖に震えていたのよ!?」
ソウビ・アーヌルス(あ・・・)
ラニ・アーヌルス「だからね、私、もうお姉さまの力に 頼らないことに決めたの。 自分の命は自分で守ろうって」
ソウビ・アーヌルス「それが、 ヒナツの愛妾になるってことなの?  愛妾って何をするのかわかってるの!?」
ラニ・アーヌルス「・・・だいたいはね」
ソウビ・アーヌルス「だったら・・・!」
ラニ・アーヌルス「殺されるよりましよ!」
ソウビ・アーヌルス「・・・っ」
ラニ・アーヌルス「お姉さま、私上手くやるわ。 あの卑しい野蛮人に媚びを売ってでも、 生き延びて見せる」
ラニ・アーヌルス「・・・だから、もう ヒナツにちょっかい出さないでね。 お姉さま」
ソウビ・アーヌルス「・・・・・・」

〇空

〇宮殿の部屋
ヒナツ・プロスペロ「入れ」
ソウビ・アーヌルス「・・・・・・」
ヒナツ・プロスペロ「ソウビか、何の用だ」
ソウビ・アーヌルス「・・・・・・」
ソウビ・アーヌルス「妹に、手を出さないで・・・」
ヒナツ・プロスペロ「手を出す? これはとんだ誤解だ」
ヒナツ・プロスペロ「ラニは自ら望んで 俺の腕の中へと飛び込んできたのだぞ?」
ソウビ・アーヌルス「・・・・・・」
ヒナツ・プロスペロ「安心しろ。 少なくともあと5年はなにもせん」
ヒナツ・プロスペロ「さすがにあの幼顔に そんな気は微塵も起きん」
ソウビ・アーヌルス「だけど、それでも・・・っ」
ヒナツ・プロスペロ「・・・・・・」
ヒナツ・プロスペロ「ならば今、俺を請え」
ソウビ・アーヌルス「請う?」
ヒナツ・プロスペロ「あぁ、そうだ」
ヒナツ・プロスペロ「許しを請え、愛を請え、俺を請え!! ラニが自分を妻にするよう、 俺に熱く激しく迫ったように」
ヒナツ・プロスペロ「ラニは愛らしかったぞ」
ヒナツ・プロスペロ「俺の足元に身を投げ出し、 頬を染め、目を潤ませ すがるように小さな手を俺に差し出した」
ヒナツ・プロスペロ「初めてだ、 あんなに懸命なまなざしで 求められたのは・・・」
ソウビ・アーヌルス「・・・っ」
ヒナツ・プロスペロ「お前もやって見せろ。 ラニの純粋でまっすぐな求愛を うち消すほどにな」
ヒナツ・プロスペロ「俺を満足させられたなら ラニのことは忘れ お前だけを愛すると約束しよう」
ソウビ・アーヌルス「・・・っ」
ヒナツ・プロスペロ「どうした、ソウビ」
ソウビ・アーヌルス(まだ幼いラニが、 この男の毒牙にかかるのはいやだ)
ソウビ・アーヌルス(だけどヒナツの手を取れば、 私はやがて国を滅ぼし殺される)
ソウビ・アーヌルス(それに私が好きなのは、 テンセイだけ・・・!!)
ヒナツ・プロスペロ「・・・・・・」
ヒナツ・プロスペロ「たった1人の妹への愛情よりも 俺への嫌悪が勝るか・・・」
ソウビ・アーヌルス「っ! 違う! ただ、私は・・・!」
ヒナツ・プロスペロ「もういい」
ソウビ・アーヌルス「でもヒナツ、ラニはまだ・・・!」
ヒナツ・プロスペロ「不愉快だ! 今すぐここから出ていけ!! 二度とのその顔を見せるな!!」
ソウビ・アーヌルス「・・・っ、ヒナツ!!」

〇洋館の廊下
ソウビ・アーヌルス「ヒナツ・・・」
ソウビ・アーヌルス(私はどうすべきだったの・・・?)
ソウビ・アーヌルス(ラニ・・・!)

〇宮殿の部屋
ヒナツ・プロスペロ「・・・・・・」
ラニ・アーヌルス「ずいぶんな大声でしたのね。 私の部屋まで聞こえてきましてよ」
ヒナツ・プロスペロ「あぁ、起こしてしまったか。 すまんな」
ラニ・アーヌルス「いいえ、 ヒナツ様のことを考えていたら、 胸苦しくて眠れませんでしたから」
ヒナツ・プロスペロ「ラニ・・・」
ヒナツ・プロスペロ「お前だけだ、 俺に一途な愛を注いでくれるのは」
ヒナツ・プロスペロ「下賤の者よと見下す目はもううんざりだ。 見返りを求め媚びる目にも吐き気がする」
ヒナツ・プロスペロ「ラニ、俺を愛してくれるか」
ラニ・アーヌルス「えぇ、 ・・・もちろんですわ」
  第十一話 幼い決意 ──終──
  
  第十二話に続く

次のエピソード:第十二話 追放

コメント

  • まさかラニが…。

  • 主人公の情報チートが完全に裏目に出ましたね。あああああ~チヨミは悪くないのに~!
    そして中身がプレイヤーなため、肉親に割く意識が薄くてフォローに気が回らなかった……異世界転生の穴を突かれた気分です。

  • 戦いの中でだけ輝く男…なるほど確かにヒーローにはなれない存外小さいやつでしたね。
    そしてまさかの、ラニ傾国ルート!??いろいろ心配です😱

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