私立桜田高校演劇部 ~春は舞台で青く色づく~

YO-SUKE

第六話「一緒に演劇やろう!」(脚本)

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〇事務所
  昼休憩の時間。
  三鈴と陽菜は、顧問の二階堂護(にかいどうまもる)と話すために職員室へやってきた。
二階堂護「まあいいんでないの? 同好会だって演劇はできるんでしょ?」
二階堂護「個人的には部活の顧問より同好会のほうが気は楽だなって──」
海東三鈴「先生! それだと大会に出られないって何度も言ってるでしょ!?」
二階堂護「す、すいません・・・」
小山内陽菜「部活届けの提出・・・タイムリミットは、今日の5時ですよね?」
二階堂護「うん。どの部活もそういう決まりになってるけど」
海東三鈴「なんとしてもあと一人説得します! こうなったら強硬手段だ!」
小山内陽菜「はぁ・・・嫌な予感しかしない」

〇花模様
  第六話「一緒に演劇やろう!」

〇教室
平井智治「青野さん。 亜衣さんのことだけど、どうするの?」
青野沙也加「どうするって、私たちはやるだけのことはやったじゃない」
平井智治「まあ、そうなんだけど・・・」
青野沙也加「最後は本人の意思が大事だと思う。 無理強いするべきじゃない」
平井智治「・・・・・・」
青野沙也加「不満そうな顔ね」
平井智治「いや、僕もそうなんだけど・・・世の中には何度も背中を押されないとダメなタイプの人もいるんじゃないかなって」
青野沙也加「・・・・・・」
???「全校生徒の皆さん! お昼休み中に失礼します!」
青野沙也加「今の声は!?」
平井智治「三鈴さんだ! 校庭から聞こえたけど」
  沙也加と智治が窓から外を覗くと、校庭の真ん中に三鈴と陽菜が立っていた。
平井智治「青野さん、あれ!」
青野沙也加「ったく、何やってんのよ・・・」

〇野球のグラウンド
  三鈴は校庭の真ん中で、拡声器を持って声を張り上げていた。
海東三鈴「皆さん、少しだけお時間をください!」
小山内陽菜「三鈴のバカ! やめなって!」
  多くの生徒たちが、教室の窓から顔を出して三鈴に注目した。
  その様子を、亜衣は校庭の隅から伺っていた。
摂津亜衣「なんであんなことを・・・」
海東三鈴「演劇協議会に加盟している高校は全国で二千を超えます!」
海東三鈴「その頂点、最優秀賞を取れるのはたった一つの高校です!」
海東三鈴「都大会、関東大会、全国大会に進むにはいくつもの高いハードルがある」
海東三鈴「でもそれを仲間と共に乗り越えていく。 気力と体力と精神力、そして情熱で駆け抜けるのが高校演劇なの!」
小山内陽菜「三鈴! ヤバイ! 先生たち来た!」
海東三鈴「演劇部は部員があと一名足らなくて・・・ だから皆さん、私たちと一緒に全国に行こう!」
教師「何バカなことやってんだ!」
海東三鈴「ごめんなさいっ! でもあと少しだけ喋らせて~!」
  亜衣の近くにいた生徒たちから、クスクスと笑い声があがる。
生徒「ぷっ! なにあれ?」
生徒「演劇部ってさ、ほとんどコント集団じゃね? 冗談好きだよねー」
摂津亜衣(冗談なんかじゃない・・・あの子は、本気で全国に行こうとしているんだ)

〇教室
平井智治「あちゃー。青野さん、どうしよう?」
青野沙也加「・・・あなたはあのバカを止めてきて」
平井智治「へ? 青野さんは?」
青野沙也加「ちょっと用事思い出した」
平井智治「え!? ちょっと待ってよ・・・!」

〇野球のグラウンド
海東三鈴「お願いします! ま、まだ話したりないことがあるんです!」
教師「いい加減にしろ!」
小山内陽菜「てか、なんで私まで一緒に連行されてるの!」
摂津亜衣「どうしてそこまで──」
???「悩んでるあなたへ!」
摂津亜衣「! この声は・・・?」

〇放送室
  放送室でマイクを握りしめた沙也加が、声を張り上げる。
青野沙也加「演劇部はあなたが思っているより、うんと真面目でうんと真剣だと思う」
青野沙也加「きっと今より夢中になれる環境がある!」
  ドン、ドン、ドン!
教師「おい! 勝手に校内放送してるのは誰だ!?」
青野沙也加「聞いて。私もそうだった」
青野沙也加「自分を偽って、演劇なんて興味ないって強がって、人の声に耳を傾けないで・・・」
青野沙也加「そうやって自分で自分の殻を作ってた。 でもそれじゃダメだって気付いたの!」
教師「こら! いい加減にしなさい!」

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