私立桜田高校演劇部 ~春は舞台で青く色づく~

YO-SUKE

第五話「心の声に正直でいたいの」(脚本)

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〇黒
摂津亜衣「昔から剣道一筋だったのは、父親が道場を開いていたからだ」
摂津亜衣「私はこれまで剣道に打ち込む娘を演じ続けていた」

〇大きな日本家屋
  広い敷地に豪華な庭園がある、昔ながらの日本家屋。

〇道場
  その敷地内にある剣道場で、亜衣は黙々と竹刀を振り続けていた。

〇野球のグラウンド
青野沙也加「本当に、本気で・・・自分の意思で剣道に取り組んでるの?」

〇道場
摂津亜衣(あの時、あんな風に一瞬で見抜かれるなんて・・・)
  素振りをやめて竹刀を下ろす。
摂津亜衣(ダメだ・・・! 集中できない!)

〇花模様
  第五話「心の声に正直でいたいの」

〇田舎の一人部屋
  亜衣は自室に戻ると、大きな棚の前にやってきた。
  そこには、映画やミュージカルのDVDが大量に並んでいる。
摂津亜衣(昔から、物語の世界に耽るのは好きだ。 華やかなステージに憧れもある)
  一本のDVDを手に取って眺めると、その表紙には幼い頃の沙也加の姿があった。
摂津亜衣(あの時は気付かなかったけど、まさかあの青野沙也加と同じ学校だったなんて)

〇中庭
  昼休憩の時間。沙也加たちは中庭でお弁当を食べていた。
海東三鈴「で、どうなの? その剣道部の子、入部しそうなの?」
小山内陽菜「微妙~」
海東三鈴「ちょっと! 部活届けの提出まであと二日しかないんだよ!」
小山内陽菜「ギリギリまで待ちたいの」
海東三鈴「現実は走れメロスと違う! 沙也加もなんとか言ってよ」
青野沙也加「でも、待つだけの価値がある逸材だと思う」
海東三鈴「なっ!」
小山内陽菜「超絶イケメン女子だしね」
海東三鈴「陽菜のタイプってだけじゃん!」
小山内陽菜「ち、違う! 私は部のために総合的な判断をして──」
平井智治「いた・・・! 調べ終わりましたよ」
青野沙也加「どうだった?」
平井智治「はい。亜衣さんについて、色々わかったことがあります」
小山内陽菜「どういうこと?」
青野沙也加「少し仕掛けてみようかなって」
海東三鈴「・・・仕掛ける?」

〇生徒会室
摂津亜衣「だから昨日も言っただろ。 演劇には興味がないって」
小山内陽菜「そんなこと言わずに、ちょっとだけ見学してってよ。ね?」
小山内陽菜「智治くん、準備はどう?」
平井智治「だ、大丈夫でーす」
小山内陽菜「じゃあ始めるね。亜衣ちゃんのために用意した、スペシャルな芝居」
摂津亜衣「私のために・・・?」
  ドアが開くと同時に、廊下から沙也加が転がり出てきた。
  少し遅れて竹刀を持った三鈴も登場する。
海東三鈴「立て! それでも道場の娘か!」
青野沙也加「いい加減にして! 私は剣道なんてやりたくないって言ってるでしょ!」
摂津亜衣「・・・!」
海東三鈴「お前から剣道を取ったら何が残るっていうんだ?」
青野沙也加「そんなのわからない」
青野沙也加「でも、お父さんの言いなりになることが、正しい生き方だとは思わないの」
海東三鈴「ふん。偉そうに」
青野沙也加「中途半端なら最初から何も目指すべきじゃない・・・それよりも、自分の心の声に正直でいたいの」
摂津亜衣「・・・・・・」
青野沙也加「お父さん。私は──」
摂津亜衣「やめろ!」
  突然、亜衣が立ち上がる。
  その場にいる全員が固まった。
小山内陽菜「ちょっと待って。まだ途中だから──」
摂津亜衣「ふざけるな! どうやって調べたのか知らないが、人の家の事情をこんな風に見せるのは悪質だ!」
小山内陽菜「それはその・・・」
海東三鈴「私たちは演劇の面白さを知ってもらおうと思ったんだけど・・・ごめんなさい」
摂津亜衣「人を不快にさせるのが演劇なら、私はそんなものに関わりたくはない」
海東三鈴「・・・・・・」
摂津亜衣「帰る」
  出て行こうとする亜衣の前に、沙也加が立ち塞がった。
摂津亜衣「どけ・・・!」
青野沙也加「ごめんなさい。確かに智治くんに調べてもらった。あなたのお父さんが有名な道場をやってるってこと」
摂津亜衣「・・・・・・」
青野沙也加「それにあなたが映画や舞台を好きだってことも」
青野沙也加「もし悩んでる気持ちがあるなら背中を押せたらなって・・・」

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