第四話「私に似てるのかも」(脚本)
〇広い公園
朝の登校時間。
沙也加は公園の木に引っかかった風船を取ろうと、ムキになっていた。
少女「お姉ちゃん、大丈夫?」
青野沙也加「ま、任せて! ただ結構高いところにあって──」
沙也加の身長では、手を伸ばしても風船には届かない。
そのときだった。沙也加たちの前を、颯爽と駆ける人影があった。
青野沙也加(すごい・・・!)
摂津亜衣「ほら。これ君のだろ?」
少女「お姉ちゃん、ありがとう・・・!」
摂津亜衣「お礼なんていいよ」
少女「小さいお姉ちゃんもありがとう」
青野沙也加「わ、私は別に──」
摂津亜衣「ごめんね。 手柄を横取りしちゃったかな」
そう言い残して立ち去って行った。
青野沙也加(あれだけの美形で、あの身のこなし・・・舞台映えしそう)
青野沙也加(あの竹刀ケースは剣道部の子かな?)
〇花模様
第四話「私に似てるのかも」
〇教室
海東三鈴「え~!? 万里子がやめるってどういうこと!?」
小山内陽菜「メインでやってる陸上部のほうに集中したいって」
小山内陽菜「元々掛け持ちで無理してお願いしてたし、引き留められなかったの」
青野沙也加「何か問題あるの?」
平井智治「部として認められるのは五人から」
平井智治「三年生が抜けたから、僕と青野さんを合わせても四人。つまり、一人足りない・・・」
海東三鈴「ぐっ・・・部活届けの提出まであと三日しかないというのに」
小山内陽菜「この際だから、誰でもいいから名前借りてみない?」
海東三鈴「いや、それじゃあ万里子と同じ・・・せっかくならちゃんと演劇部に本腰を入れてくれる仲間・・・戦力が欲しい」
青野沙也加「本腰をいれてくれるかどうかはわからないけど・・・戦力になりそうな人なら一人心当たりがある」
海東三鈴「え!? どこの誰!?」
青野沙也加「名前はわからないけど・・・多分剣道部の子だと思う」
海東三鈴「よーし! じゃあ放課後に剣道部乗り込もうよ!」
小山内陽菜「って、あんたは放課後追試でしょ」
海東三鈴「そうだ! 今朝の漢字の小テスト、ボロボロだったんだ・・・」
平井智治「僕も委員会の仕事があるから」
青野沙也加「はあ・・・先が思いやられる・・・」
〇まっすぐの廊下
小山内陽菜「ねえ、沙也加。一つ聞いていい?」
小山内陽菜「あのとき三鈴と対決した後、どうして急に部活入る気になったの?」
青野沙也加「どうしてって・・・」
小山内陽菜「勝負に勝ったのは沙也加でしょ? それに最初はあんなに嫌がってたから」
青野沙也加(三鈴の演技を見て悔しかったから・・・なんて言っても、多分信じてもらえないかな)
小山内陽菜「今だって、部のためにこんな前向きに協力してくれるしさ」
青野沙也加「しいて言うなら、演技を嫌いになったはずなのに、演技に対するプライドだけは自分を支えていることに気づいたから」
小山内陽菜「ん? どういうこと?」
青野沙也加「ごめん。独り言」
小山内陽菜「はあー? わけわかんない」
〇体育館の舞台
体育館の中では、剣道部員たちが素振りの稽古をしていた。
その中に、ひと際目立つ人物──沙也加が今朝出会った摂津亜衣がいた。
摂津亜衣「はっ・・・! はっ・・・!」
女子生徒「亜衣さん、ファイトっ~!」
青野沙也加「見て。一番背の高い女の子」
小山内陽菜「・・・ん?」
青野沙也加「舞台映えのする彫りの深い顔立ち、そしてあの長身と人気・・・男役だってできそうだし、最高の役者になりそう──」
小山内陽菜「ちょっ! なにあの子!? かなりイケメンじゃん!」
青野沙也加「いや、あの──」
小山内陽菜「私さ、イケメン系の女子って超タイプなんだよね! あ~、お姫様抱っこされたい」
青野沙也加「・・・・・・」
小山内陽菜「あ、見て! 試合やるんじゃない?」
亜衣は道着に着替えてお面を被り、対戦相手に向かって礼をする。
摂津亜衣「はぁぁぁ・・・!!」
叫び声を上げて突進すると、部員を竹刀で吹き飛ばした。
摂津亜衣「もっとだ! もっと来い!」
次々と亜衣に向かっていく部員たち。
亜衣はそれを一人、また一人となぎ倒していく。
摂津亜衣「はぁ・・・はぁ・・・そんなものか。 それがみんなの本気なのか?」
青野沙也加「・・・・・・」
摂津亜衣「中途半端なら最初から何も目指すべきじゃない・・・! そうだろ!?」
小山内陽菜「強い! そしてかっこいい~!」
青野沙也加「確かに強い。それにすごい熱気。 でもあの子、なんだか・・・」
〇野球のグラウンド
沙也加と陽菜は、水飲み場で休憩している亜衣の元にやってきた。
小山内陽菜「あ、あの・・・私と付き合ってください!」
摂津亜衣「え?」
摂津亜衣「いや、私は一応女だし──」
青野沙也加「ちょっと、違うでしょ」
小山内陽菜「ハッ・・・しまった、つい!」
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