私立桜田高校演劇部 ~春は舞台で青く色づく~

YO-SUKE

第三話「お手並み拝見させてもらいます」(脚本)

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〇花模様
  第三話「お手並み拝見させてもらいます」

〇中庭
小山内陽菜「青野沙也加とエチュード(即興劇)対決~!?」
海東三鈴「そう、勝ったら青野沙也加が入部するの! 5人揃ったら、やっと部活届けが出せるね」
小山内陽菜「バカ! 勝てるわけないじゃん!」
海東三鈴「やってみなきゃわかんないよ」
小山内陽菜「あの子の母親知ってるの? 大物女優の青野寿子だよ」
海東三鈴「ええーーー!?」
小山内陽菜「さすがに知ってたか。 主演作の『風と共に遊ぶ』は正真正銘の超名作だし」
海東三鈴「それ、DVDで100回は観た・・・」
小山内陽菜「その娘の沙也加は演技の超英才教育を受けてるに決まってるじゃん」
  陽菜の言葉を聞いて、三鈴はぷるぷると震えだす。
小山内陽菜「まあそうだよね。怖いのもわかる──」
海東三鈴「あははっ! 超楽しそうじゃん! 相手にとって不足なし!」
小山内陽菜「はあ? 怖がってたんじゃないの?」
海東三鈴「武者震いってやつだよ! あー、早く放課後にならないかな~」
小山内陽菜「はぁ・・・怖いもの知らずで羨ましい」

〇黒
  そして放課後──。

〇生徒会室
平井智治「じゃあ・・・お題を発表します」
海東三鈴「ドックン、ドックン・・・」
小山内陽菜「いやそういう臨場感いらないから」
青野沙也加「・・・・・・」
平井智治「お題は・・・『自分の部屋に届いたオーディションの通知を開いて、合格を確認する』です」
小山内陽菜「え? そんだけ!?」
海東三鈴「よーし。わかった!」
青野沙也加「・・・私からでもいい?」
海東三鈴「もちろん。 お手並み拝見させてもらいましょう」
小山内陽菜「それはどちらかというと向こうの台詞なんだけど・・・」
  沙也加は一歩前に出ると、大きく深呼吸しながら部室の隅へと移動した。
青野沙也加(大丈夫・・・こんなの演技のうちに入らない。呼吸するようにナチュラルに、サラっとやってみせる)
  スッと息を吐くと、演技を始める。
  手でドアを開ける仕草をして部屋に入ってくると、脱いでいた上着をハンガーにかける動きを見せる。
小山内陽菜「すごい・・・ほんとにコートを着てたみたい」
平井智治「季節は冬だね。 時折、冷え切った手を温めている」
海東三鈴「・・・・・・」
  沙也加は、机の上にある合格通知に気づいた素振りを見せた。
  しかし、すぐに手を出そうとはしない。
小山内陽菜「あれ? 今見たよね? なんですぐ手に取らないの?」
平井智治「結果を知るのが怖いんだ。 この時点では合格かどうか、本人はわかってないから・・・」
  怯えた表情で、遠くから合格通知の封筒を眺める沙也加。
  少しずつ近づき、封筒を手に取った。
  震える手で封筒を開封する仕草をする。
青野沙也加「・・・っ!」
  封筒の中身を確認すると、ギュッと胸の前で抱きしめて涙を流した。
小山内陽菜「・・・すごっ。一瞬、合格の喜びが伝わって私まで泣きそうになっちゃった」
青野沙也加「・・・以上です」
  パチパチパチ
  演技を終えると同時に、智治と陽菜が拍手を送った。
海東三鈴「さすが・・・! すごい臨場感だった」
青野沙也加「・・・どうも」
海東三鈴「よーし・・・次は私の番だよね!」
青野沙也加「さっきの言葉をそのまま返すけど、お手並み拝見させてもらうから」
海東三鈴「へへへ~。見ててね!」
  三鈴も部室の隅に行くと深呼吸をした。
  手でドアを開ける仕草をして、部屋に入ってくる演技をする。
  すると突然、歌いながら踊り始めた。
海東三鈴「エーデルワイス~♪ エーデルワイス~♪」
小山内陽菜「いきなり歌!?」
平井智治(・・・でも、悪くはない。 インパクトはあるし、掴みにもなる)
  歌って踊りながら室内を周る三鈴。
  花の匂いを嗅いだり、空を仰いだりと楽しそうな様子を見せる。
海東三鈴「う~ん! いい匂い!」
小山内陽菜「なんで部屋の中で野花の香りを楽しんでるのよ・・・」
  三鈴はテーブルの上にある合格通知に気が付いた様子だ。
海東三鈴「オーディション通知発見~! もちろん私は合格だよね~!」
小山内陽菜「わ、わざとらしい台詞・・・ダメだこりゃ・・・」
  テーブルに近づき、無造作に合格通知の封を開封する。
  その時、三鈴の動きが止まった。
海東三鈴「・・・・・・」
青野沙也加(・・・空気が、変わった?)
海東三鈴「・・・お母さん? お母さんどこ?」
海東三鈴「受かった! 合格したよ!!」
青野沙也加「・・・っ!!」
海東三鈴「あっ・・・以上です!」
  三鈴は我に返ったように笑顔で言った。
小山内陽菜「はぁ・・・最後まで微妙。 まあ最初からわかっていたことだけど」
平井智治「・・・ということで、勝敗を付けるんですよね」
平井智治「青野さんの演技か、三鈴さんのサウンドオブミュージックか」
青野沙也加(そう・・・最初はサウンドオブミュージックの名シーンだった)
青野沙也加(あの歌を歌うことで、なんのオーディションを受けていたのかまで表現した・・・)
平井智治「そ、それでは発表します!」
海東三鈴「ドックン、ドックン・・・」
小山内陽菜「だからそういう臨場感はいらないって」
平井智治「三鈴さんの演技も面白かったけど・・・」
平井智治「総合的に見て、僕は青野さんのほうが上だと思います」
海東三鈴「えーーー!!」

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