私立桜田高校演劇部 ~春は舞台で青く色づく~

YO-SUKE

第二話「才能が泣いてる!」(脚本)

私立桜田高校演劇部 ~春は舞台で青く色づく~

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〇体育館の舞台袖
  体育館には、部活紹介を見に来た沢山の新入生たちが集まっていた。
青野沙也加(舞台前は、いつも恐怖と緊張で足がすくむ。でも・・・)
海東三鈴「そろそろ出番だけど、準備はいい?」
青野沙也加「・・・うん、いつでも行ける」
青野沙也加(大丈夫。舞台に立てば、緊張も不安も全てが吹き飛んで没頭できる)
  沙也加は意を決して、体育館の舞台上へと足を進めた。

〇体育館の舞台
青野沙也加「王よ、あなたには人の心がないというのか!」
青野沙也加「メロスは必ず来る!!」
  沙也加の迫力に、観客たちが息を飲む。
青野沙也加(思い出した。 私がずっと忘れていた感覚)
青野沙也加(身体中の細胞が覚えてた、芝居の感覚──)

〇花模様
  第二話「才能が泣いてる!」

〇おしゃれなリビングダイニング
青野雄一郎「なあなあ、今日の目玉焼きどうだ? 沙也加の好きな半熟にしたんだ」
青野沙也加「うーん。50点?」
青野雄一郎「あ、相変わらず厳しいな、沙也加は・・・」
青野雄一郎「高校はどうだ? 明日から授業だろ」
青野沙也加「別に。普通かな」
青野雄一郎「沙也加は昔から友達作りが苦手だからな。お父さん心配で・・・」
青野沙也加「・・・・・・」
青野雄一郎「そういえば、桜田高校には演劇部もあるって──」
青野沙也加「お父さん。演劇の話はやめてって、いつも言ってるでしょ」
青野雄一郎「ご、ごめん!」
青野雄一郎「・・・でもお母さん喜ぶんじゃないかって。日本に帰った時、沙也加がまた演劇やってたら」
青野沙也加「・・・・・・」
青野雄一郎「見てみたいんだよ。沙也加がお母さんと一緒に舞台に立っているところ」
青野沙也加「・・・ごちそうさま。行ってきます」
青野雄一郎「また余計なこと言っちゃったか・・・」

〇教室
  沙也加が授業の支度をしていると、女子生徒たちが集まってきた。
女子生徒「ねえねえ・・・青野さんって、ほんとにあの青野沙也加なの?」
青野沙也加「・・・うん、そうだけど」
女子生徒「マジで!? すごっ・・・!」
青野沙也加(面倒くさい・・・こんな風に声かけるのが嫌だから黙ってたのに)
???「青野沙也加~!!」
青野沙也加「!」
青野沙也加(最悪・・・また来た・・・)
海東三鈴「おはよう! 昨日はありがとう! 演劇部入るよね? うん、ありがとう!」
青野沙也加「・・・一気にまくし立てないで。 それにここ、一年生の教室だから」
海東三鈴「昨日さ、すっごい楽しかったんだよね。 やっぱ芝居っていいな~って」
海東三鈴「あなたもそう思うでしょ?」
青野沙也加「・・・別に。芝居なんて何が楽しいか全然わからない」
海東三鈴「あ、嘘の芝居は下手なんだ」
青野沙也加「嘘じゃない」
海東三鈴「昨日はあんなに上手かったのに」
青野沙也加「あのレベルの芝居なんて・・・子供の頃から死ぬほどやってるの。仕事としてね」
海東三鈴「演劇部は仕事じゃないよ」
青野沙也加「じゃあ何?」
海東三鈴「演劇部は情熱!」
青野沙也加「・・・あっそ」
海東三鈴「うちの学校は何か部活入らなくちゃいけないんだよ。どこに入るの?」
青野沙也加「・・・・・・」

〇教室
  沙也加が選んだ部活は「手芸部」だった。
  沢山の手芸部員に混じって、沙也加は黙々とパッチワークの作業を進める。
青野沙也加(・・・手芸か。興味ないけど、ここなら静かで、一番暑苦しくなさそう)
平井智治「あの、青野さん! 昨日の部活紹介、すごかったね!」
青野沙也加「え? あ、誰?」
平井智治「僕、平井・・・一応、青野さんと同じクラスなんだけど」
青野沙也加「あ、ごめん」
平井智治「昨日の青野さんの演技、すごく迫力あって・・・僕だけじゃなくて、みんなが魅入っていたと思う」
青野沙也加「・・・どうも」
平井智治「でも、昨日は青野さんも凄かったけど、あの相手役の人も面白かったなぁ」
青野沙也加「え?」
平井智治「三鈴さんって言ったっけ? あの人、みんなの心を鷲掴みにしてた」
平井智治「それが演劇なんだなって、ちょっと感動しちゃって」
青野沙也加「あんなのドヘタの素人でしょ?」
平井智治「そうかな? 自由で溌剌で、伸び伸びやってた。凄く楽しそうだったな」
青野沙也加「・・・・・・」
青野沙也加「帰る」
平井智治「へ? いや、部活始まったばかり──」
青野沙也加「そんなに演劇に興味があるなら、演劇部に入ったら?」
平井智治「い、いや! 僕は無理だよ!」

〇一人部屋
  その日の夜。沙也加はベッドに寝転がって天井を見上げた。
青野沙也加(凄く楽しそうだったって・・・バカみたい)
青野沙也加(あんなの素人演技じゃない)

〇体育館の舞台
青野沙也加「くっ・・・! メロスは必ず来るはずだ! 日没までには必ず!」
  沙也加の迫真の演技に、観客の生徒たちが唾を飲み込む。
青野沙也加(大丈夫・・・! うまくやれてる。 抑揚もピッチも完璧)
海東三鈴「セ、セリヌンティウス~!!」
  鼻水を垂らして飛び込んできた三鈴は、手前で転んで顔から舞台に突っ込んだ。
  生徒たちからドっと笑いが起こる。
青野沙也加(バカっ・・・ここは真面目に駆け込んでくるシーンでしょ!)
海東三鈴「わ、私だ、刑吏! 殺されるのは私だ。 彼を人質にした私はここにいる!」
青野沙也加「メロス! 来てくれたのか!」
海東三鈴「私を殴れ。力一杯に頬を殴れ。 君がもし私を殴ってくれなかったら、私は君と抱擁する資格さえ無いのだ。殴れ!」

〇一人部屋
青野沙也加(何日も、何十キロも走ってきたかのように息を切らしていた)
青野沙也加(台詞は掠れ、客席にお尻を見せるその姿は、醜悪としか言いようがなかった)
青野沙也加「はずなのに・・・ああっ! もう!」
  沙也加は寝がえりを打って、枕に顔をうずめた。
青野沙也加「演劇なんて、大嫌い・・・」

〇教室
  翌日。沙也加が手芸部で部活の準備をしていると、三鈴が飛び込んできた。
海東三鈴「青野沙也加! 嘘でしょ?」
海東三鈴「手芸部に入ったって聞いたけど、本気なの?」
青野沙也加「私の勝手でしょ」
海東三鈴「何言ってんの、才能が泣いてる!」
青野沙也加「とにかく私に付きまとわないで。この前のは気まぐれ。演劇部なんて興味ないし、芝居なんて所詮お遊戯でしょ?」
海東三鈴「お遊戯・・・?」
海東三鈴「それ、本気で言ってるの?」
青野沙也加「・・・・・・」
海東三鈴「もう怒った! 青野沙也加・・・私とエチュード(即興劇)で勝負しなさい!」
青野沙也加「はあ? 突然何言ってるの?」
海東三鈴「お遊戯なんでしょ? まさか自信がないってことはないよね?」
青野沙也加「そうじゃないけど、何で私が──」
海東三鈴「もしかして負けるのが怖いとか?」
青野沙也加「・・・・・・」
海東三鈴「やっぱり怖いんだ。だったら──」
青野沙也加「・・・わかった。勝負は受ける」
青野沙也加「ただし、私が勝ったら二度と付きまとわないって約束して」
海東三鈴「約束する! その代わり、もし私が勝ったら、演劇部に入ってよね」
青野沙也加「は? 何で私が・・・」
海東三鈴「自信あるんでしょ?」
青野沙也加「当然。負けるはずない」
海東三鈴「じゃあ決定! 時間は、明日の放課後」
海東三鈴「でも、どっちの演技が優れているか、審判が必要ね・・・」
青野沙也加「審判・・・それなら」
  沙也加が振り返ると、一部始終を見守っていた智治と目が合った。
青野沙也加「あなた、よろしくね」
平井智治「ええっ!! 僕!?」
青野沙也加「この人、結構見る目あるから正当なジャッジができるはず」
海東三鈴「よし、決まりね。 私、絶対負けないから!」

次のエピソード:第三話「お手並み拝見させてもらいます」

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