〇貴族の応接間
　　◆あらすじ◆
　　心ならずも王を振り回す
　　傾国に近づいてしまうソウビ。
　　そんなソウビの前に現れたのは・・・
タイサイ・アルボル「何しに来たんだ、てめぇ」
ソウビ・アーヌルス「タイサイ、いたの!?」
タイサイ・アルボル「ヒナツに愛されて困ってますぅ、って？ それは姉さんへの当てつけか？」
チヨミ・アルボル「タイサイ、やめて。 ソウビは前王のお姫様よ？」
チヨミ・アルボル「それに王を呼び捨てなんて、不敬だわ。 口の利き方に気を付けて」
タイサイ・アルボル「ヒナツは元々うちの使用人だ。 それにこいつは そんなヒナツの愛妾だろうが」
タイサイ・アルボル「姉さんを苦しめるただの悪女だよ。 優しくしてやる必要がどこにあるんだよ」
ソウビ・アーヌルス「・・・・・・」
ソウビ・アーヌルス「・・・レ野郎」
タイサイ・アルボル「は？」
ソウビ・アーヌルス「このシスコンツンデレ野郎!! うっせぇんだよ!!」
ソウビ・アーヌルス「ちょーっとガネダン人気投票で 一位取ったからって調子乗んなコラァ!!」
タイサイ・アルボル「シス？　ガネダ？　投票？ ・・・何？」
ソウビ・アーヌルス「ぬるま湯のような義弟の地位に 甘んじてないで、とっととチヨミに 告白でもなんでもしてしまえ!!」
タイサイ・アルボル「はぁああああ!? ちょ、お前!!　はぁああ!?」
チヨミ・アルボル「告白？ タイサイ、私に何か隠しごと？」
ソウビ・アーヌルス「えぇ。 実はコイツ、チヨミのこと」
タイサイ・アルボル「あーっ！　あーっ！　あーっ!!」
タイサイ・アルボル「てめぇ、ふざけんなよ！ マジぶっ飛ばすぞ!!」
ソウビ・アーヌルス「ぶっ飛ばされる前に、全部バラしてやる。 チヨミの似顔絵こっそり描いて、 それを枕の下に入れて寝てることとか」
タイサイ・アルボル「おまっ、なんっ、いつ・・・っ!! なんでそれ知ってんだぁああ!!」
チヨミ・アルボル「タイサイ？」
タイサイ・アルボル「なんでもないから！ 姉さんには関係ないから!!」
チヨミ・アルボル「・・・・・・」
ソウビ・アーヌルス「あ～あぁ、 チヨミがしょんぼりしちゃった。 タイサイのせいだ～」
ソウビ・アーヌルス「これはもう、枕の下から 愛情いっぱいの似顔絵引っ張り出して来て チヨミに見せるしかないね」
タイサイ・アルボル「てめぇ、マジ殺すぞ!!」
ソウビ・アーヌルス「口の利き方に気をつけな」
タイサイ・アルボル「くっ・・・！」
ソウビ・アーヌルス（はっはっは、 こちとら中身はれっきとした社会人ぞ？ 十代の少年なんて可愛いもんだわ）
タイサイ・アルボル「こいつ、本当に王家の姫君かよ。 品性のかけらもねぇ ただのならず者じゃねぇか」
ソウビ・アーヌルス「枕の下」
タイサイ・アルボル「だーっ!! しつけぇっ!!」

〇謁見の間
大臣「王よ、少しよろしいですかな？」
ヒナツ・プロスペロ「なんだ」
大臣「ソウビ様のことにございます」
ヒナツ・プロスペロ「ソウビがどうした。 俺はあれを諦める気はないぞ」
ヒナツ・プロスペロ「王家とのつながりを示すに 良い道具だと思っていたが」
ヒナツ・プロスペロ「あの抵抗ぶり、反抗的なまなざし、 愉快でたまらん」
大臣「『簒奪王』と 呼ばれているとしても、ですか？」
ヒナツ・プロスペロ「なに？」
大臣「王よ、あなたのあだ名です。 巷では『簒奪王』と呼ばれているとか」
ヒナツ・プロスペロ「簒奪!? 俺は前王を殺した奸臣を倒し、 皆に望まれて王になったんだぞ？」
ヒナツ・プロスペロ「前王から地位を奪ったわけではない！」
大臣「ソウビ様の態度が一因とか」
ヒナツ・プロスペロ「・・・・・・」
大臣「前王の娘であるソウビ様が、 ヒナツ王を拒絶している。 これはヒナツ王が王座にあることを、 王の血筋が認めていない」
大臣「つまりヒナツ王は正当な後継者ではなく、 その地位を簒奪したも同然ではないかと」
ヒナツ・プロスペロ「・・・・・・」
大臣「ひっ！ 出過ぎた真似をいたしました・・・！」
ヒナツ・プロスペロ「下がれ！」
大臣「はっ、失礼いたします」
ヒナツ・プロスペロ「・・・・・・」
ヒナツ・プロスペロ（盗賊の頭であれば 気の利いた二つ名かもしれんが・・・）
ヒナツ・プロスペロ「一国の王がこの名で呼ばれるのはまずいな」
　　第七話　簒奪王　──終──
　　
　　第八話に続く