転落から始まる幼なじみ系ヒロインの魔王討伐譚 

ロトック

第四話 そんな笑顔を見せないで(脚本)

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〇村に続くトンネル
  ──グオォォォォ!!──
クラウス・ネファリウス「・・・やはりマモノを倒すのなんて、」
クラウス・ネファリウス「俺一人で十分じゃないか」
デレニス・ツンヴェイル「ク、クラウス・・・・・・」
デレニス・ツンヴェイル「あんた、何やってんの?」
リミカルド・ヒヨク「君は勝ち誇った顔をしているが、 その敵は────」
リミカルド・ヒヨク「僕が弱体スキルを掛けて 弱らせた相手じゃないか・・・・・・」
デレニス・ツンヴェイル「そうまでして目立ちたいのはわかるけど、」
デレニス・ツンヴェイル「もしあんたの攻撃で倒しきれなかった時、 その敵の攻撃を誰が受けんの?」
デレニス・ツンヴェイル「ちょっと冷静になってよ、クラウス・・・」
クラウス・ネファリウス「・・・・・・・・・・・・」
クラウス・ネファリウス「・・・・・・はぁ、 まだ認める気がないのか」
クラウス・ネファリウス「・・・・・・金輪際、」
  お前らとは会話したくもない

〇草原の道
クラウス・ネファリウス「やはりやめだ、ハイネ ただ殺してもつまらない」
クラウス・ネファリウス「────自分がしてきた事を 後悔させないとな」
デレニス・ツンヴェイル「えっ・・・・・・ なに、後悔って・・・・・・」
デレニス・ツンヴェイル「それに・・・・・・」
デレニス・ツンヴェイル「こ、ここに転がってるの・・・・・・」
デレニス・ツンヴェイル「私の、腕?」
クラウス・ネファリウス「見たらわかるだろ?」
クラウス・ネファリウス「もし俺がハイネを止めていなかったら、 その腕だけでは済まなかっただろうな」
デレニス・ツンヴェイル「なんで・・・・・・ こんな事に・・・・・・?」
クラウス・ネファリウス「早く止血でもしておけよ そのままじゃ死ぬぞ?」
デレニス・ツンヴェイル「なによこれ! なにが起こってるの!?」
クラウス・ネファリウス「簡単な話だ」
クラウス・ネファリウス「俺が使役しているドラゴンの爪が掠り、 お前の腕を吹き飛ばした」
クラウス・ネファリウス「・・・止めた俺に感謝の言葉もないのか?」
デレニス・ツンヴェイル「私が聞きたいのはそれじゃない!」
デレニス・ツンヴェイル「なんであんたがそんなもの使役できてん のよ!」
クラウス・ネファリウス「何故って・・・・・・」
クラウス・ネファリウス「それはあのパーティーにいた時に 散々説明してきただろ?」
デレニス・ツンヴェイル「せ、説明って・・・・・・ そんな話、聞いた事も・・・・・・?」

〇暖炉のある小屋
オットー・サンディエール「攻撃は自分に全て任せろだぁ!? 盾職のくせに冗談も大概にしろよ!」
クラウス・ネファリウス「いつもそうやって盾職盾職と、 俺の意見は聞かないな」
クラウス・ネファリウス「ジョブを持ち出す役割論ばかりだ・・・」
クラウス・ネファリウス「いい加減認めたらどうだ? この中で誰が一番強いのかを」
オットー・サンディエール「お前がなったパラディンというジョブに、 攻撃スキルなんて一つしかねぇだろ!」
オットー・サンディエール「【シールドバッシュ】だけで どうやって敵を倒すってんだよ!」
オットー・サンディエール「大人しく役割に従えっての!」
デレニス・ツンヴェイル「そうよクラウス、 みっともない・・・・・・」
デレニス・ツンヴェイル「あんたいい加減、 ワガママなんてやめなさい」
デレニス・ツンヴェイル「後でなにかミスをした時に、 そのワガママの件で責められるだけよ」
クラウス・ネファリウス「・・・・・・はぁ」
クラウス・ネファリウス「・・・・・・明日、証拠を見せるか」
オットー・サンディエール「な、なんだぁアイツ・・・・・・?」

〇草原の道
クラウス・ネファリウス「あの時もこの時も、 お前たちは断固として、」
クラウス・ネファリウス「俺の言うことに 耳を貸さなかったじゃないか」
デレニス・ツンヴェイル「いやだってそんなの! どう考えてもおかしな妄想じゃない!」
デレニス・ツンヴェイル「盾職なのに敵を倒せるとか! あんたがパーティーの誰よりも強いとか!」
デレニス・ツンヴェイル「あんたの選んだパラディンってジョブで、 そんな活躍が出来た人なんていないのに!」
デレニス・ツンヴェイル「そんな話、 どうして信じろっていうの!?」
デレニス・ツンヴェイル「そ、それに!」
デレニス・ツンヴェイル「今の話じゃあんたが伝説上のドラゴンを 使役出来てる理由になってない!!」
クラウス・ネファリウス「・・・・・・はぁ、 これも単純な話のはずだというのに」
クラウス・ネファリウス「マモノを使役できる条件は お前にだってわかるだろ?」
クラウス・ネファリウス「そのマモノの力を上回り、 徹底的に屈服させればいい」
クラウス・ネファリウス「────試しに鳴け、ハイネ」
  ────ゴギャアアァァァアアァ────
デレニス・ツンヴェイル「ひっ!?」
クラウス・ネファリウス「はははっ、みっともないな!」
デレニス・ツンヴェイル「・・・・・・っ!!」
クラウス・ネファリウス「ほら・・・・・・ 証明出来てるじゃないか」
クラウス・ネファリウス「俺はたった一人でコイツを倒した」
クラウス・ネファリウス「それだけのことだというのに」
  なに、なんなのこれ!?
  ほ、本当にコイツが私達の誰よりも・・・
  こいつの真後ろにいるドラゴンよりも、
  強いっていうの!?
  ────だけど、なんで
デレニス・ツンヴェイル「な、なんで・・・・・・ 私にこんなことを・・・・・・?」
デレニス・ツンヴェイル「わ、私は あんたの味方してたはずなのに!」
クラウス・ネファリウス「・・・・・・はぁ」

〇暖炉のある小屋
  そうよクラウス、
  みっともない・・・・・・
  あんたいい加減、
  ワガママなんてやめなさい
  後でなにかミスをした時に、
  そのワガママの件で責められるだけよ

〇草原の道
クラウス・ネファリウス「俺の話を頭ごなしに否定してまで、」
クラウス・ネファリウス「お前が味方していたのはどっちだ?」

〇村に続くトンネル
  ク、クラウス・・・・・・
  あんた、何やってんの?

〇草原の道
クラウス・ネファリウス「何をやっているかを 理解しようとすらしていない、」
クラウス・ネファリウス「あの仕草のどこで庇っているなんて 酔いしれることが出来たんだ?」
クラウス・ネファリウス「現にお前はこうして 俺が証明してやらないと、」
クラウス・ネファリウス「話を聞く気もなかったじゃないか・・・」
デレニス・ツンヴェイル「そ、そんな訳・・・・・・」
クラウス・ネファリウス「この際ハッキリ言うか」
クラウス・ネファリウス「俺は少しばかり復讐したかったんだ」
デレニス・ツンヴェイル「復・・・・・・讐?」
クラウス・ネファリウス「あのパーティーは全員死んでもいいと 思っている位には嫌いだが、」
クラウス・ネファリウス「中でもお前は一番嫌いだったよ」
  えっ・・・・・・、
  私が・・・・・・?
クラウス・ネファリウス「だから最初に痛めつけるのは お前にしたかった・・・・・・」
クラウス・ネファリウス「しかしまぁ、 いらない盾を宿に置いていくだけで、」
クラウス・ネファリウス「見事にお前一人で 結界のない街の外まで来てくれた」
クラウス・ネファリウス「面白いよ、お前」
クラウス・ネファリウス「結界の中には流石のハイネも 入ることはできなかったから助かった」
  こいつは最初から私を、
  ドラゴンで襲うつもりで・・・!
  街の外におびきだしたのも────

〇けもの道
クラウス・ネファリウス「【シールドバッシュ】」
オットー・サンディエール「は?」
オットー・サンディエール「いってぇ・・・・・・」

〇草原の道
  ────ジョブによる攻撃スキルの効力は
  人間同士では無効化される。
  そのルールを掻い潜るために、
  マモノであるドラゴンを呼べる所まで
  私をおびきよせたんだ・・・!
クラウス・ネファリウス「・・・・・・」
クラウス・ネファリウス「安心しろ、 お前を殺すかどうかはまだ決めていない」
クラウス・ネファリウス「それにドラゴンの咆哮一つに怯える お前の情けない顔を見て、」
クラウス・ネファリウス「俺の気が少し晴れてしまったのは事実だ」
クラウス・ネファリウス「だがこのまま終わっては物足りない」
クラウス・ネファリウス「だから、次は奴らに復讐する」
デレニス・ツンヴェイル「あんた、 まだ何かする気なの・・・・・・!」
クラウス・ネファリウス「少し身の程をわからせてやりたいんだ」
クラウス・ネファリウス「どこまでも能天気で、意識も低く、」
クラウス・ネファリウス「ジョブだの定石だのに甘えきって、 他人を迫害するだけの連中にも関わらず・・・」
クラウス・ネファリウス「あのパーティーがどうして今まで 全滅もせずにやってこれたのだろうな?」
  こ、こいつ・・・・・・!
  全部自分のおかげだって、
  言いたい訳・・・・・・?
クラウス・ネファリウス「《ゴールドⅤ》というランクに 浮かれ真実を直視出来ないお前らに、」
クラウス・ネファリウス「明日その身をもって、 本来のランクを教えてやる・・・・・・!」
クラウス・ネファリウス「名声だの絆だのに覆い隠された、」
クラウス・ネファリウス「醜い本来の姿をさらけ出させて、な」
  あ、明日・・・・・・?
  明日の依頼に何するっていうの・・・?
  や、やめさせなきゃ・・・・・・
  でも・・・・・・
  ────フシュゥゥゥゥゥ────
デレニス・ツンヴェイル「ひっ・・・・・・」
  クラウスの後ろのドラゴンが、
  私を見つめて動かない・・・・・・!
  か、体が震えて、声が・・・・・・!
クラウス・ネファリウス「・・・・・・ふふっ」
クラウス・ネファリウス「明日の依頼がどうなるか、 楽しみに待っていてくれ」
デレニス・ツンヴェイル「かっ・・・・・・あっ・・・・・・」
クラウス・ネファリウス「ん?」
クラウス・ネファリウス「何か言いたそうにしているな? 喋れるようになるまで少し待ってやるか?」
  ・・・・・・落ち着かなきゃ。
  ・・・・・・深呼吸で、なんとか。
デレニス・ツンヴェイル「・・・・・・・・・・・・」
デレニス・ツンヴェイル「い、今のあんたの顔・・・・・・」
デレニス・ツンヴェイル「最低よ」
デレニス・ツンヴェイル「む、昔の・・・・・・ 臆病でも真っ直ぐだったあんたの方が、」
デレニス・ツンヴェイル「何倍もカッコ良かった!」
クラウス・ネファリウス「まだ減らず口を叩く余裕が あるんだな」
デレニス・ツンヴェイル「なにがあんたをそんな風にしたの?」
デレニス・ツンヴェイル「ちゃんと答えて!」
クラウス・ネファリウス「・・・・・・これが本来の俺なんだよ」
クラウス・ネファリウス「お前はこうあるべきだと俺に押し付け、 目を背け続けていただけで、」
クラウス・ネファリウス「俺は昔からこうだったんだ」
  本当に・・・・・・
  そうなの・・・・・・?
クラウス・ネファリウス「・・・・・・はぁ」
クラウス・ネファリウス「やはりくだらない質問だった」
クラウス・ネファリウス「お前と話すのはもううんざりだ、 二度と会わなくて済むようにするか」
クラウス・ネファリウス「ここを焼き払え、ハイネ」
デレニス・ツンヴェイル「なっ!?」
  こ、こんなの私一人じゃ、
  防げな
  あっ
         死

〇黒

〇児童養護施設
  今日はありがとう、デレニス・・・
クラウス・ネファリウス(幼少期)「・・・・・・・・・」
クラウス・ネファリウス(幼少期)(よし、おっきな石あった)
クラウス・ネファリウス(幼少期)(じゃあ後は小さな石を集めて・・・)
クラウス・ネファリウス(幼少期)「ここにまとめて・・・・・・よし」
クラウス・ネファリウス(幼少期)「ふっ、ふふふっ・・・・・・」
クラウス・ネファリウス(幼少期)「ぼっ・・・ おれに近づくなザコども・・・」
クラウス・ネファリウス(幼少期)「おれは闇に染まったんだ・・・ おれをいじめたおまえらに復讐するため!」
クラウス・ネファリウス(幼少期)「くらえっ! ダークネスライトブリンガー!」
クラウス・ネファリウス(幼少期)(こ、粉々だ・・・!)
クラウス・ネファリウス(幼少期)「ふっ、ふふふっ・・・・・・」
デレニス・ツンヴェイル(幼少期)「ク、クラウス・・・・・・?」
クラウス・ネファリウス(幼少期)「はうあっ!?」
  それは流石に────

〇草原の道
デレニス・ツンヴェイル「その口調ダサいからやめようクラウス!?」
デレニス・ツンヴェイル「はっ・・・・・・?」
  あれ・・・・・・夢・・・・・・?
  もしかして、
  走馬灯ってやつ・・・・・・?
デレニス・ツンヴェイル「だとしても、 どうしてまた、」
デレニス・ツンヴェイル「こんな微妙な記憶を・・・・・・」
  デレニス!!
リミカルド・ヒヨク「よかった、目が覚めたか!」
リミカルド・ヒヨク「どこに行ってたのか心配してたんだ!」
オットー・サンディエール「なにかものすごい雄叫びが聞こえたから 飛んできたんだが、」
オットー・サンディエール「おいここで何があったんだよ!?」
デレニス・ツンヴェイル「な、なにがって・・・・・・ たしか・・・・・・」
  最後にあいつがドラゴンに命令して──
デレニス・ツンヴェイル「っていうか、私生きてる?」
オットー・サンディエール「生きてるって・・・・・・ 俺たちが言いたいセリフだぜ全く」
オットー・サンディエール「お前の周りを見てみろ・・・・・・」

〇霧の立ち込める森
魔法おっさん「水属性スキル持ちは集まったな! 一気に終わらせるぞ!」
  よし、次!

〇草原の道
リミカルド・ヒヨク「今はオットーが要請した人たちによって 火は食い止められているけど、」
リミカルド・ヒヨク「ここら一帯の草木は火の海だった」
オットー・サンディエール「ここに来るのも少し苦労したんだぜ、 結構な勢いだったからな」
リミカルド・ヒヨク「オットーが人を呼びに行っている間に 僕の水属性スキルで消火しつつ、」
リミカルド・ヒヨク「なんとか君のいる所まで 来れたんだが・・・・・・」
リミカルド・ヒヨク「────デレニス、 もう一度自分の周りを見て欲しい」
  私は言われるがまま周囲を見てみると、
  一つ不思議なことに気づいた。
  ――――今私がいる場所を中心に、
  およそ半径2メートル弱だろうか
  ここだけ何も、
  草の葉すら焼けた痕跡がないのである。
オットー・サンディエール「来た時にゃビックリしたぜ 服に灰すらついていない」
リミカルド・ヒヨク「まさかこの炎の中で、 君だけ無事だとは思いもしなかった」
デレニス・ツンヴェイル(この円の形に、この大きさ・・・・・・ これって・・・・・・)
  パラディンを代表する防御スキル、
  【ファランクス】の効果範囲そのもの。
デレニス・ツンヴェイル(クラウスが・・・・・・ ファランクスで私を・・・・・・?)
オットー・サンディエール「見ての通りお前の倒れていた場所だけ 燃え広がっていなかったし、」
オットー・サンディエール「マモノの仕業というよりはなにか、 事件めいたものを感じるなこりゃ・・・」
デレニス・ツンヴェイル「・・・・・・あれ?」
デレニス・ツンヴェイル「そういえば・・・・・・」
デレニス・ツンヴェイル「私の腕、繋がってる・・・・・・?」
オットー・サンディエール「どうした、 腕がどうとかって?」
リミカルド・ヒヨク「な、何があったデレニス!?」
デレニス・ツンヴェイル「わ、私の右腕が・・・・・・治ってるの」
デレニス・ツンヴェイル「確か、ドラゴンに斬り飛ばされて・・・」
リミカルド・ヒヨク「・・・・・・ドラゴン、だって?」
オットー・サンディエール「おそらく別のマモノの見間違いだろうが、 ひとまず話をさせてみようぜ」
デレニス・ツンヴェイル「さっきまでここに腕が転がってたのに、 いつの間にかくっ付いてる」
リミカルド・ヒヨク「僕たちが来た時に、 そんな傷は見当たらなかった・・・」
オットー・サンディエール「んー、試しにグーパーしてみ?」
デレニス・ツンヴェイル「・・・・・・大丈夫みたい」
リミカルド・ヒヨク「良かった・・・・・・」
オットー・サンディエール「腕が斬れたのが勘違い・・・・・・ って訳は流石にないだろうしよ、」
オットー・サンディエール「ここにを通った誰かが、 回復魔法で治してくれたんじゃねぇの?」
デレニス・ツンヴェイル「い、いやでも、 あの時いたのは・・・・・・」
デレニス・ツンヴェイル「私とクラウスだけで・・・・・・」
リミカルド・ヒヨク「・・・・・・またクラウス、なのか」
デレニス・ツンヴェイル「あっ・・・」
デレニス・ツンヴェイル「・・・・・・」
デレニス・ツンヴェイル「ごめん、 私クラウスに忘れ物を届けてたの」
リミカルド・ヒヨク「・・・また一人で行ったっていうのか」
リミカルド・ヒヨク「いい加減にしてくれデレニス! 彼にまたなにかされたんじゃないのか!」
デレニス・ツンヴェイル「な、なにかはされたわ・・・・・・ ドラゴンをけしかけたのあいつだったし」
リミカルド・ヒヨク「だからドラゴンだなんてボカさずに、 本当は何があったんだ!?」
デレニス・ツンヴェイル「嘘じゃないってば! あいつちゃんとドラゴンに命令してたのよ!」
デレニス・ツンヴェイル「あの時は他に誰もいなかったけど、 実際にここら一帯燃えてるのが証拠よ!」
デレニス・ツンヴェイル「そ、それに!」
デレニス・ツンヴェイル「・・・・・・それに」
デレニス・ツンヴェイル「それに、 私を炎から守ってくれたのも・・・・・・」
デレニス・ツンヴェイル「回復魔法を掛けてくれたのも・・・・・・ あいつなの・・・・・かも?」
オットー・サンディエール「うっ・・・・・・うーん? 矛盾してねぇか?」
リミカルド・ヒヨク「それはつまり、」
リミカルド・ヒヨク「クラウスはドラゴンを利用して 君の腕を斬り飛ばしておきながら、」
リミカルド・ヒヨク「君に炎を吐くよう命令した上で、 何故か君を炎から守り、」
リミカルド・ヒヨク「何故か君の腕を元に戻した、 という事になる・・・・・・」
リミカルド・ヒヨク「話を整理してみても訳が分からない・・・」
リミカルド・ヒヨク「一体そんな回りくどいやり方に、 なんの意味があるんだ?」
リミカルド・ヒヨク「君は本当に自分の言っている事を、 理解出来ているのか?」
デレニス・ツンヴェイル「うっ・・・・・・」
デレニス・ツンヴェイル(私、どうかしてしまったんだろうか・・・)
デレニス・ツンヴェイル(どう考えてもおかしな話よ、 あんな奴が助けてくれたなんて思うのは)
リミカルド・ヒヨク「第一、盾職でしかないパラディンが 回復魔法を使える訳がないだろう!」
デレニス・ツンヴェイル「そ、そうよね・・・・・・」
リミカルド・ヒヨク「君が彼に会って本当は何をされたのか、 それは今は問わないでおく────」
リミカルド・ヒヨク「でも君の一人の知人として、 これだけは言わせてくれデレニス」
リミカルド・ヒヨク「君の幼なじみだからと 今までは我慢してきたが、」
リミカルド・ヒヨク「あんな得体の知れなくなった男なんて、 放っておいた方が良い!」
デレニス・ツンヴェイル「・・・・・・」
デレニス・ツンヴェイル「で、でも私は、 どうしても知りたかったの・・・・・・」
デレニス・ツンヴェイル「なんであいつがああなったのかを・・・!」
リミカルド・ヒヨク「・・・・・・それは、僕もだ」
リミカルド・ヒヨク「彼がどうしてああなったのかは、 本当は僕だって知りたいさ」
リミカルド・ヒヨク「君たち二人のことは このパーティーを立ち上げた当初から 近くで見てきたのだからね」
リミカルド・ヒヨク「本当はああいう奇行をするような 人間じゃなかった事くらい、」
リミカルド・ヒヨク「僕にだってわかる」
リミカルド・ヒヨク「だが命を張ってまで、 確かめようとする事じゃないだろ!」
オットー・サンディエール「まぁそこまでだ二人共」
オットー・サンディエール「多分デレニスも今回でわかったろ」
オットー・サンディエール「人が変わった理由なんて、 たとえ幼なじみでも 詮索するもんじゃないって事だ」
オットー・サンディエール「そうやって探ろうとする事こそが あいつの神経を逆撫でしてしまっている」
オットー・サンディエール「あいつも時間が経っておっさんになれば、 少しは落ち着きが出て反省してくれると 思うぜ」
オットー・サンディエール「焦らなくてもわかりあえる日は来るさ 今じゃないってだけでよ」
  ・・・・・・
  この二人の言う事は、ずっと正しい。
  ────というよりも私自身、
  心のどこかではわかっていた事なのだろう
  わかっていたのに、
  あいつを理解してやれるのは私だけ、
  私だけなんだと酔いしれて、
  直視出来ずにいたことなんだろう・・・
デレニス・ツンヴェイル(私は一人で、 ずっと暴走してたんだな・・・・・・)
  現にお前はこうして
  俺が証明してやらないと、
  話を聞く気もなかったじゃないか・・・
デレニス・ツンヴェイル(なんだ、 結局あいつの言うとおりじゃない・・・)
デレニス・ツンヴェイル(あんな目にあって、 みんなに必死に諭されて、)
デレニス・ツンヴェイル(ようやくこんな 簡単な事に気づけたなんて・・・・・・)
デレニス・ツンヴェイル「・・・・・・そうね、私バカだった」
デレニス・ツンヴェイル「心配かけて、本当にごめんなさい!」
デレニス・ツンヴェイル「私、もうあいつの事は 綺麗に忘れることにする」
デレニス・ツンヴェイル「後ろ髪引っ張られることばっか 言われてまだ腹も立つけど、」
デレニス・ツンヴェイル「それも全部、もう気にしない」
オットー・サンディエール「随分キッパリ決断したな・・・・・・」
オットー・サンディエール「ま、無事に終わったなら それでいいってことよ」
リミカルド・ヒヨク「・・・・・・そうだな、それがいい」
リミカルド・ヒヨク「僕たちはここで消火活動を手伝うけど、」
リミカルド・ヒヨク「君は他のマモノが来ないうちに、 早く街へ戻った方が良い」
リミカルド・ヒヨク「神樹の結界が一番強いユグドルートなら、 たとえドラゴンだって破れないはずさ」
デレニス・ツンヴェイル「・・・・・・そうね」
  思い返してみれば、
  あんな奴に構っていたせいで
  今日はせっかくの祝宴に参加出来なくて
  なんだか損をしたな。
  今はそんな慎ましい卑しさにひたって
  宿屋のベッドに入り、
  なんだか嫌な日だったなって、
  さっぱり忘れてしまおう────
デレニス・ツンヴェイル(・・・・・・よし、今度こそ)
デレニス・ツンヴェイル(今度こそ部屋で寝よう・・・・・・)
  そう決心して立ち上がろうとした時、
  ふと二人の様子を見て、
  気になることがあった
デレニス・ツンヴェイル「あ、ところで気になったんだけど、」
「ん?」
デレニス・ツンヴェイル「二人ともやけに軽装だけど、 装備はどうしたの?」
「持ってきてないが?」
デレニス・ツンヴェイル「へー・・・・・・・・・・・・」
デレニス・ツンヴェイル「・・・・・・」
デレニス・ツンヴェイル「・・・は?」
デレニス・ツンヴェイル「なんで?」
オットー・サンディエール「いやだって、たかが街の近くだぜ? 雑魚なんか無視すりゃいいだろ」
オットー・サンディエール「それに武器とか持って走るの、 食後のおっさんにはキツい運動だぞ?」
リミカルド・ヒヨク「酒場には武器を持ってこれないから 宿屋に置きっぱなしだったんだけど、」
リミカルド・ヒヨク「一刻を争う非常事態だったからね、 宿屋に寄る時間すら惜しかった」
デレニス・ツンヴェイル「・・・・・・ちょっと待って」
デレニス・ツンヴェイル「みんなドラゴンの雄叫びで来たんだよね?」
「あぁそうだが」
オットー・サンディエール「《アーチャー》は特に耳聡いからな、 街ん中でもよく聞こえたぜ」
デレニス・ツンヴェイル「・・・・・・素手で戦う気だったわけ?」
「そんな訳ないだろう?」
オットー・サンディエール「いくらなんでもドラゴン?らしきマモノに 素手で真っ向勝負は無理だろ」
リミカルド・ヒヨク「だが武器なんかなくたって、 マモノを撹乱して君を助け 逃げられるスキルくらいは持ってるさ」
リミカルド・ヒヨク「流石に伝説上のドラゴンが相手とは 思ってなかったけどね」
オットー・サンディエール「まぁたとえドラゴン相手でも、 万全の装備なら逃げる必要もなく?」
リミカルド・ヒヨク「今の《プラチナ》ランク目前の 僕たちのパーティーなら、」
「やれなくはないだろうけど?」
デレニス・ツンヴェイル(えっ、なにこの違和感、 今まで感じた事なかったのに・・・・・・)
デレニス・ツンヴェイル(あまりにも過剰な自信というか、 無謀というか・・・・・・)
デレニス・ツンヴェイル(なにこの背筋を伝う悪寒!?)
デレニス・ツンヴェイル(今の私には上手く言い表せないんだけど、)
デレニス・ツンヴェイル(今の二人は何かヤバいって焦燥感がある!)

〇黒
  どこまでも能天気で、意識も低く、
  ジョブだの定石だのに甘えきって、
  他人を迫害するだけの連中にも関わらず・・・
  あのパーティーがどうして今まで
  全滅もせずにやってこれたのだろうな?

〇草原の道
  ────なんで今、
  あいつの言葉を思い出してしまうの!?
  どうして二人の笑顔に、
  不安を感じてしまうの!?
  明日の依頼がどうなるか、
  楽しみに待っていてくれ
  ・・・・・・明日の私たち、
  どうなってしまうの?
  第四話 そんな笑顔を見せないで

次のエピソード:第五話 チートデイは常識の範囲内で

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