転落から始まる幼なじみ系ヒロインの魔王討伐譚 

ロトック

第五話 チートデイは常識の範囲内で(脚本)

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ロトック

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〇ホテルのエントランス
デレニス・ツンヴェイル(部屋に戻ったはいいものの・・・・・・)
デレニス・ツンヴェイル(結局一睡も出来ず、 夜が明けてしまった・・・・・・!)
  まだ体が重い、頭も痛い。
  それでも、行かなきゃ・・・・・・!
キャドニス・インディーチェ「ちょいストップ」
キャドニス・インディーチェ「様子が心配だったんで見に来たし」
キャドニス・インディーチェ「それと一つ、大事な忠告」
デレニス・ツンヴェイル「忠告・・・・・・?」
キャドニス・インディーチェ「今日は寝ろ」
デレニス・ツンヴェイル「はい?」
キャドニス・インディーチェ「気になって見に来たけどやっぱその目、 昨日ロクに寝れてない感じじゃん?」
キャドニス・インディーチェ「足元もおぼつかない、 体もどこか震えてる」
キャドニス・インディーチェ「そんなんで依頼とか、 普通に足手まといじゃん?」
デレニス・ツンヴェイル「うっ・・・・・・」
デレニス・ツンヴェイル「・・・・・・つまり、 今日の依頼に参加するなって事?」
キャドニス・インディーチェ「端的に言えばそーだね」
キャドニス・インディーチェ「というか今日の依頼についてさ、 忘れてるんじゃない?」
キャドニス・インディーチェ「討伐対象の『ゴーレム』って、 口から炎を吐き出すマモノだよ?」
デレニス・ツンヴェイル「あっ・・・・・・」

〇草原の道

〇ホテルのエントランス
デレニス・ツンヴェイル(あの一連の流れって、 まさか・・・・・・!)
キャドニス・インディーチェ「足の震えが酷くなってるよ」
デレニス・ツンヴェイル「・・・・・・ッ!」
  あいつ・・・・・・
  こんなくだらない事のために!
キャドニス・インディーチェ「無理っしょその様子じゃ、 今日は大人しく部屋にいなよ」
キャドニス・インディーチェ「別に今日のは休んでも誰も咎めないよ」
キャドニス・インディーチェ「消化試合みたいな相手だし、 すぐ終わるから」
デレニス・ツンヴェイル「だ、だけど・・・・・・!」
デレニス・ツンヴェイル「ク、クラウスが今日────」
キャドニス・インディーチェ「言い訳にその名前は無しでしょデレニス」
キャドニス・インディーチェ「最近その名前を挙げる時は ロクに頭回ってないの、」
キャドニス・インディーチェ「自分でも薄々わかってるはずだよ」
キャドニス・インディーチェ「てか今だって、」
キャドニス・インディーチェ「自分からアイツの事は忘れるって 昨日あの二人に言ったの忘れてんじゃん?」
デレニス・ツンヴェイル「で、でも!」
デレニス・ツンヴェイル(い、今私一人で抜けたとして、)
デレニス・ツンヴェイル(もしクラウスがみんなに何かしたら!?)
デレニス・ツンヴェイル(あいつの凶行を止められるのって、 私だけなんじゃないの!?)
キャドニス・インディーチェ「どうせアイツ「今日邪魔してやる」とか、 そういう事言ってたんでしょ!」
デレニス・ツンヴェイル「なっ、なんでそれを・・・・・・!」
キャドニス・インディーチェ「もうそういう話しかないでしょ! アイツ絡みは!」
キャドニス・インディーチェ「いいから!」
キャドニス・インディーチェ「ね!」
キャドニス・インディーチェ「ろ!」
デレニス・ツンヴェイル「・・・・・・っ!!」
デレニス・ツンヴェイル(な、なにも言い返す余地がない・・・!)
デレニス・ツンヴェイル(だっ、だけど・・・・・・ このままみんなを見送って・・・・・・)
デレニス・ツンヴェイル(あいつの思い通りには・・・・・・)
デレニス・ツンヴェイル「ぜっ・・・・・・ 絶対に・・・・・・」
デレニス・ツンヴェイル「行ってやる・・・・・・!!」
キャドニス・インディーチェ「む!」
キャドニス・インディーチェ「り!」
キャドニス・インディーチェ「喋るのも苦労してんじゃん! 脈拍でも測ったるか? お?」
デレニス・ツンヴェイル「・・・・・・・・・・・・」
デレニス・ツンヴェイル「要は、体調が良くなればいいんでしょ」
キャドニス・インディーチェ「・・・・・・うん?」
デレニス・ツンヴェイル「っつぅ!」
キャドニス・インディーチェ「えっ、急に自分のお腹殴ってどうした?」
デレニス・ツンヴェイル「今、気合い入れてんの」
キャドニス・インディーチェ「急に体育会系になってどうした? 突然の体罰は問題になるんだけど?」
デレニス・ツンヴェイル「・・・・・・でもさ、」
デレニス・ツンヴェイル「ほら、少しは体の震えが止まったわ」
キャドニス・インディーチェ「・・・・・・うっわぁ」
デレニス・ツンヴェイル「うっわぁて」
キャドニス・インディーチェ「その治療法だけはないでしょ・・・・・・」
デレニス・ツンヴェイル「いいでしょ、 別に本当の病気じゃないんだから」
デレニス・ツンヴェイル「それに、 こうして治まっちゃったんならさ」
デレニス・ツンヴェイル「単に私の気持ちの問題って事じゃない」
デレニス・ツンヴェイル「だったらどうにでもなる」
キャドニス・インディーチェ「いやだから、 それで治ったって言い出すのおかしいし、」
キャドニス・インディーチェ「第一気分は悪いままでしょ!」
キャドニス・インディーチェ「とにかく、 まだ全然治ってる訳じゃ────」
キャドニス・インディーチェ「む、無言でやるなし!!」
デレニス・ツンヴェイル「私は治るまでやるけど」
キャドニス・インディーチェ「わ、わかったから! 連れてくようみんなに言うから!」
キャドニス・インディーチェ「ほ、ほとんど恫喝じゃんこれ・・・・・・」
デレニス・ツンヴェイル「いいから早く行こっ! みんな外にいるんでしょ?」
デレニス・ツンヴェイル「なんかちょっと調子も戻ってきた感じ!」
  ────あいつが今更何をしようと、
  私たちは今日の依頼を終えてみせるんだから!
キャドニス・インディーチェ「ちょっ、それぜったい空元気! ヤバいから!」

〇ヨーロッパの街並み
建築家「約束通り『ゴーレム』の核から取れる 高純度ダイアモンドを頼むよ」
建築家「しかし・・・・・・」
建築家「こんな緊急でもない 単純な依頼だけど・・・・・・」
建築家「本当に君たち 『空白の継ぎ手』がやってくれるんだね?」
リミカルド・ヒヨク「依頼内容で やるやらないなんて決めませんよ」
リミカルド・ヒヨク「流石に優先順位はありますけど、 捨てた依頼は今まで一つもないんです」
リミカルド・ヒヨク「どんな内容でも必ず僕たちの経験値になる」
リミカルド・ヒヨク「────それが冒険者というものですから」
アシュリー・トレッドミーナ「はい! 富める人や貧しい人の分別なく、」
アシュリー・トレッドミーナ「鍛えた体を駆使し、 全ての人に奉仕と布教をする────」
アシュリー・トレッドミーナ「それが≪クルセイダー≫である、 私の使命!」
オットー・サンディエール「まぁ真ん中のコイツが所属するギルドは ちょっと変わってるけど、」
オットー・サンディエール「俺たちの理念はみんな同じだぜ、 依頼人に貴賎なしだ」
オットー・サンディエール「正規の手順さえ踏んでいれば、 ちいさな子供のおねがいでも受けてきた」
オットー・サンディエール「俺たちゃひたすら数だけを積み重ねて ここまで来てんだ」
建築家「ははは、 噂に違わぬ真面目なパーティーだねぇ」
建築家「では、どうかお願いします」
リミカルド・ヒヨク「かしこまりました、 必ず今日中に」
デレニス・ツンヴェイル「ごめん、みんな!」
リミカルド・ヒヨク「なっ、どうして!?」
オットー・サンディエール「・・・・・・おいおい、来ちまったのか?」
アシュリー・トレッドミーナ「あれ、結局デレニスさんも行くんですか?」
キャドニス・インディーチェ「ごめん、止めるの無理でした・・・・・・」
キャドニス・インディーチェ「連れてくしかないっぽい」
リミカルド・ヒヨク「なっ、無理って・・・・・・」
オットー・サンディエール「昨日あんな目にあったばっかなのに、 行くってのかよ?」
アシュリー・トレッドミーナ「ん? どういう状況なんですこれ?」
リミカルド・ヒヨク「・・・・・・昨日の件と 地続きの理由でここへ来たなら、」
リミカルド・ヒヨク「君を連れていくことは出来ない」
デレニス・ツンヴェイル「ええそうよ、 私はクラウスの件でここに来た」
オットー・サンディエール「マジかよ・・・・・・」
リミカルド・ヒヨク「彼のことを忘れると言ったのは 君の方じゃないか・・・・・・」
デレニス・ツンヴェイル「はっきり言うわ、 クラウスは絶対に何かろくでもない事を しでかす」
リミカルド・ヒヨク「今日の依頼についてのことだろう?」
リミカルド・ヒヨク「そんなことは僕たちもわかっているさ! だが彼の身一つで何ができる?」
リミカルド・ヒヨク「例え何をしようが今日の依頼には 支障は起こり得ない!」
デレニス・ツンヴェイル「昨日あんな不自然な火災が 起きたというのに?」
デレニス・ツンヴェイル「火の中心にいた私だけが無事で、 後はみな火の海で・・・・・・」
デレニス・ツンヴェイル「ドラゴンの存在を信じないにしろ、 誰かの作為的なものは感じたはずでしょ?」
リミカルド・ヒヨク「うっ・・・・・・」
デレニス・ツンヴェイル「依頼をやめるつもりはないのよね」
リミカルド・ヒヨク「あぁ、僕たちのくだらない諸事情と それによる杞憂を理由に、」
リミカルド・ヒヨク「今受けた依頼を反故にはしたくない」
リミカルド・ヒヨク「依頼の優先度などは関係ない、 これはパーティーの信用の問題だ」
デレニス・ツンヴェイル「信用を取るなら依頼が失敗するリスクを 少しでも減らすべきでしょ!」
リミカルド・ヒヨク「それを言うならなおさら、 昨日の件で不安定になっている君を 連れて行くことはできない!」
デレニス・ツンヴェイル「ドラゴンのこともくだらない妄想だと 思っているならそう思いなさい!」
デレニス・ツンヴェイル「たとえ誰に止められようとも 今日の依頼だけは意地でもついていくわ!」
リミカルド・ヒヨク「・・・・・・・・・」
リミカルド・ヒヨク「・・・・・・はぁ」
リミカルド・ヒヨク「なにか確信めいたモノを得た時の君は、 本当に止めようがないな」
リミカルド・ヒヨク「わかった、今日の依頼は一緒にこなそう」
オットー・サンディエール「待てって!勝手に話を進めるなよ!」
オットー・サンディエール「俺にだって口出しする権利はあるぜ?」
リミカルド・ヒヨク「オットー、 ここでデレニスを放置しても」
リミカルド・ヒヨク「大人しく宿で待ってくれる空気じゃない のはわかるだろう」
リミカルド・ヒヨク「だったら最初から近くで 見守ってた方が気楽だ」
オットー・サンディエール「まるで爆発物みたいな扱いだな、 いいのかそれで?」
デレニス・ツンヴェイル「いいわよ、実際傍からみたら 私の方が暴走してるんでしょ?」
オットー・サンディエール「暴走してる自覚はあるんだな・・・・・・」
オットー・サンディエール「なら俺から言うことはねぇな、 そこまでしてついてくるのなら」
オットー・サンディエール「お前の言うクラウスの凶行ってのも 気になってきた」
オットー・サンディエール「人手は多いに越したことはないな、 行こうぜ」
デレニス・ツンヴェイル「オットー・・・・・・」
アシュリー・トレッドミーナ「さっきからぼんやりとしか 話がわからないですけど、」
アシュリー・トレッドミーナ「まぁ一緒に来れば いいんじゃないですかね!」
アシュリー・トレッドミーナ「クラウスさんがなにかしてくるって いっても私がなんとかしますよ!」
キャドニス・インディーチェ(クラウスとデレニス、 どっちも暴走してる・・・・・・!)
デレニス・ツンヴェイル(誰も警戒心ないのかなと思ってたけど、 案外みんな話を聞いてくれるな・・・)
  これで今日の依頼が失敗するなんて
  ありえなさそうだけど・・・・・・
おじさん「おっ、いよいよか!」
おじさん「今日のは応援しなくてもいいとはいえ、 やっぱり来ちまったよ!」
おじさん「とっとと終わらせてきな! また俺の料理を振る舞うぜ!」
見物人おねえさん「きゃー!リミカルドー!」
見物人おねえさん「彼!彼が私の推し勇者なんです! おじさんもそうなんですか!?」
魔法おっさん「ついにあのパーティーがプラチナか、 時の流れとは早いな・・・・・・」
魔法おっさん「ぬっ? あのパラディンの青年はどこへ?」
「ワーワー!」
「ワーワー!」
オットー・サンディエール「け、結構、 とんでもない人数集まってきたな・・・」
リミカルド・ヒヨク「数十年ぶりに出るプラチナランクだ、 こうもなるだろうさ」
デレニス・ツンヴェイル「本当は依頼自体やめさせたかったけど、」
デレニス・ツンヴェイル「今更やめる空気じゃなくなったわね」
リミカルド・ヒヨク「どの道やるしかないだろ?」
リミカルド・ヒヨク「色々な思い出があったが、 ついに憧れのプラチナランクだ」

〇暖炉のある小屋

〇ホテルのエントランス

〇教会の中

〇大広間

〇ヨーロッパの街並み
リミカルド・ヒヨク「さぁ行こう」

〇ヨーロッパの街並み
リミカルド・ヒヨク「そうだアシュリー、 昨日みたいに彼女を背負ってやってくれ」
デレニス・ツンヴェイル「・・・・・・え?」
アシュリー・トレッドミーナ「承知しました!」
デレニス「うわぁっ!?」
リミカルド・ヒヨク「君がついてくるのは許可したが、 気分が優れないのは事実だろう?」
リミカルド・ヒヨク「流石に歩かせる訳にはいかない」
デレニス「ちょっ、自分で歩けるって!」
アシュリー・トレッドミーナ「────なにも心配しなくたって」
アシュリー・トレッドミーナ「私なら一人背負って 走りながら山越えもできますよー?」
リミカルド・ヒヨク「よし出発!」
  そうじゃなくて!
  私、今アシュリーと
  二人っきりになるのはちょっと────

〇村に続くトンネル
アシュリー・トレッドミーナ「えっほ、えっほ・・・・・・」

〇草原の道
アシュリー・トレッドミーナ「えっほ、えっほ・・・・・・」

〇けもの道
アシュリー・トレッドミーナ「えっほ、えっほ・・・・・・」

〇山道
アシュリー・トレッドミーナ「えっほ、えっほ・・・・・・」
アシュリー・トレッドミーナ「ふぅ・・・・・・」
デレニス・ツンヴェイル「・・・・・・・・・・・・」
アシュリー・トレッドミーナ「うーん、みんな遅いですね! まだグリンピースみたいな大きさです!」
デレニス・ツンヴェイル「あなたが人背負ってるのに 速すぎるのよ!」
アシュリー・トレッドミーナ「そうですかね?」
デレニス・ツンヴェイル「あの、アシュリー・・・・・・」
デレニス・ツンヴェイル「背負ってもらって言うのは 気が引けるのだけれども・・・・・・」
デレニス・ツンヴェイル「あなた、危機感なさすぎじゃない?」
アシュリー・トレッドミーナ「?」
デレニス・ツンヴェイル「だってここ、 街道から遠く離れた山の中よ!?」
デレニス・ツンヴェイル「そこら辺にマモノがいるってのに、 私背負ったままみんな置いてっちゃって どうすんの!」
デレニス・ツンヴェイル「それに置いてっちゃった みんなだって心配に────」
アシュリー・トレッドミーナ「えー、だって、 言ってはなんですけど・・・・・・」
アシュリー・トレッドミーナ「ここら辺の敵って雑魚じゃないですか?」
デレニス・ツンヴェイル(わ、わかりやすい程の慢心・・・・・・!)
アシュリー・トレッドミーナ「別に私一人でもというか、」
アシュリー・トレッドミーナ「教典読みながら 片手で消し飛ばせる程度の雑魚相手に、」
アシュリー・トレッドミーナ「なにをそこまで怖がる必要があるんです?」
デレニス・ツンヴェイル「そ、それは そうなんだけど、」
デレニス・ツンヴェイル「もし伝説上のドラゴンとかが 急にここに現れたり・・・・・・」
アシュリー・トレッドミーナ「それ絶滅したマモノじゃないですかー、 夢でも見てたんじゃないです?」
アシュリー・トレッドミーナ「あっ、そんな事言ってたら 雑魚発見です!」
アシュリー・トレッドミーナ「先手必勝っ」
アシュリー・トレッドミーナ「ほら片手でやれちゃいました! しかもスキルなし!」
アシュリー・トレッドミーナ「この速度、 まさに神業!」
デレニス・ツンヴェイル「神職が そんな事言っていいの・・・・・・?」
アシュリー・トレッドミーナ「はい大丈夫です! 神は私の筋肉に宿ってますから!」
デレニス・ツンヴェイル「どういう理屈!?」
アシュリー・トレッドミーナ「知らないんですかー?」
アシュリー・トレッドミーナ「限界まで鍛え上げた身体には “力の神”が宿る────」
アシュリー・トレッドミーナ「力の神を信仰する、 我々クルセイダー界隈では常識ですよー?」
デレニス・ツンヴェイル「そんな知られざる世界の真実みたいに 言われても・・・・・・」
  あ、頭が痛くなってきた・・・・・・
  どうしてだろう・・・・・・?
  たしかにアシュリーは
  どこか変な子ではあったのだけれども。
  こうも彼女と一緒にいるだけで、
  頭を抱えたくなるほどの違和感に
  包まれたことなんて、
  今までなかったはずなのだ。

〇黒
  あのパーティーがどうして今まで
  全滅もせずにやってこれたのだろうな?

〇山道
デレニス・ツンヴェイル(・・・・・・そうか、私は今、)
デレニス・ツンヴェイル(またクラウスの言葉を思い出して しまってる・・・・・・!)
  昨日あの炎の海から
  助け出されてからというものの、
  何故かパーティー全体の印象が
  ひどく歪んで見え始めたのだけれども、
  それはみんなの何かが
  変わってしまったから、ではない。
  アシュリーは普段から、
  大体こんな感じ!!
  クルセイダーとしては申し分ないけど、
  どこかすごいぬけた所がある人!!
  変わってしまったのは、
  アシュリーを見る私の方!!
  みんなを見る私の心の、
  何かがおかしくなっている・・・・・・
  あいつの言葉のせいで!
アシュリー・トレッドミーナ「あのー・・・・・・どうかしましたか?」
デレニス・ツンヴェイル「い、いや、 なんでもないの・・・・・・」
デレニス・ツンヴェイル「ちょっと頭を休める時間が 欲しいかなぁって」
アシュリー・トレッドミーナ「あーっ!  そろそろお昼の時間ですもんね!」
アシュリー・トレッドミーナ「みんなが来る頃を見計らって、 先にお料理作っちゃいましょうか!」
アシュリー・トレッドミーナ「私が準備してますので、 デレニスさんはゆっくり休んでてください!」
デレニス・ツンヴェイル「あっいや、そういう事じゃ・・・・・・」
アシュリー・トレッドミーナ「さーってとー、 今日のお昼の準備ーっと」
デレニス・ツンヴェイル「それより みんなの所に戻らないと・・・・・・」
デレニス・ツンヴェイル「ねぇ聞いてる・・・・・・?」
  めまいまでしてきた・・・・・・
  私一人じゃ動けそうにない・・・・・・
  ────ようやく理解出来てきた。
  昨日から続く、
  私の体調不良の原因。
  それは決して、
  ドラゴンの恐怖にやられたとか、
  クラウスの理解不能な行動に
  怯えてるからだけではない。
  というよりも多分、
  一番の原因は────

〇草原の道
デレニス・ツンヴェイル「えっとアシュリー・・・・・・、」
デレニス・ツンヴェイル「背負ってもらって言うのは、 気が引けるのだけれども・・・・・・」
デレニス・ツンヴェイル「あなたのいる《クルセイダー》ギルドは、 近接職らしくとにかく身体が資本で、」
デレニス・ツンヴェイル「毎日長時間のトレーニングもそうだけど、 なにより食事制限が厳しいはずよね?」
アシュリー・トレッドミーナ「はいそうですよー?」
アシュリー・トレッドミーナ「魂の穢れは肉体の穢れ!」
アシュリー・トレッドミーナ「人間には肉体の穢れをそそぐ 積極的に食べるべき“浄化の食べ物”と、」
アシュリー・トレッドミーナ「肉体に穢れが溜まってしまう 忌避するべき“業の食べ物”があるんです!」
アシュリー・トレッドミーナ「例えば空飛ぶ勤勉なトリさんのお肉は 浄化の食べ物!」
アシュリー・トレッドミーナ「地に横たわる怠惰なブタさんのお肉は 業の食べ物、といった感じです!」
アシュリー・トレッドミーナ「それが私たちクルセイダーの信仰する “力の神”の教えですね!」
デレニス・ツンヴェイル「あえて穢れを体に蓄え、 それに抵抗する力の糧とする、」
デレニス・ツンヴェイル「“チートデイ”という特別な日があるのも 前に教えてくれたよね」
アシュリー・トレッドミーナ「はい! 週に一回しかない楽しい日ですよ!」
アシュリー・トレッドミーナ「ちなみにチートデイがあったのは つい昨日のことですね!」
アシュリー・トレッドミーナ「楽しかったですよー?」
デレニス・ツンヴェイル「その・・・・・・ ちょっと聞きたいんだけど・・・・・・」
アシュリー・トレッドミーナ「はい?」
デレニス「その右手に持ってるの何?」
アシュリー「祝宴で残ったブタの串焼きですけど?」
デレニス「・・・・・・は?」

〇山道
アシュリー・トレッドミーナ「できましたー! ブタさんのカツレツです!」
デレニス・ツンヴェイル「まだチートデイやってんの!?」
  第五話 チートデイは常識の範囲内で
デレニス・ツンヴェイル「三日連続でチートデイしてない!?」
アシュリー・トレッドミーナ「まだ四日目ですけどー?」
デレニス・ツンヴェイル「予想より一日早く墜ちてた!」
デレニス・ツンヴェイル「・・・・・・あのねアシュリー、」
デレニス・ツンヴェイル「背負ってもらって言う事じゃないし、 これもう三度目の下りで悪いんだけどさ」
デレニス・ツンヴェイル「アシュリーの背中・・・・・・ すごいふにふにしてた・・・・・・」
アシュリー・トレッドミーナ「おっ、力が育つ土壌が出来てますね! チートデイさまさまです!」
デレニス・ツンヴェイル「受け入れちゃっていいの!?」
アシュリー・トレッドミーナ「────ふふっ」
デレニス・ツンヴェイル「・・・・・・・・・・・・?」
アシュリー・トレッドミーナ「やっとデレニスも すこし元気になったみたいですね!」
デレニス・ツンヴェイル「・・・・・・えっ」
アシュリー・トレッドミーナ「詳しい事情はわからないですけど、」
アシュリー・トレッドミーナ「なんだか昨日から落ち込んでるなとは 思っていたので、」
アシュリー・トレッドミーナ「どうやったら元気になれるかなって、 少し考えてたんですよ!」
デレニス・ツンヴェイル「えっと、もしかして・・・・・・ さっきリミカルドが命令したのも?」
アシュリー・トレッドミーナ「はい、今こうしてデレニスさんと 二人っきりになってるのも さっき私が提案したんです!」
デレニス・ツンヴェイル「そ、そうなんだ・・・・・・ 気にしてくれて・・・・・・」
アシュリー・トレッドミーナ「気分が落ち込んでる時って、」
アシュリー・トレッドミーナ「自分から受動的に気分を変えるってのは 中々難しいじゃないですか」
アシュリー・トレッドミーナ「例えば誰かが笑わせようとしたりとか、 明るい話をしたりとか、」
アシュリー・トレッドミーナ「そういった善意を 否定する訳じゃないですけど、」
アシュリー・トレッドミーナ「そんな些細な出来事で 変わっていける強さがあるのなら、」
アシュリー・トレッドミーナ「そもそも気分が落ち込むような事態には なっていないはずなんです」
デレニス・ツンヴェイル「・・・・・・」
アシュリー・トレッドミーナ「今弱ってる人が一番やってほしい事って、」
アシュリー・トレッドミーナ「これはあくまで、 私個人の意見ではあるんですけど・・・」
アシュリー・トレッドミーナ「やっぱり、 強く手を引っ張ってほしいのかなって」
デレニス・ツンヴェイル「アシュリー・・・・・・」
アシュリー・トレッドミーナ「でも手を引っ張るといっても 色々なやり方がありますよね、」
アシュリー・トレッドミーナ「落ち込んでる人の手の引っ張り方を、 私なりに一生懸命考えてみたんです」
アシュリー・トレッドミーナ「やっぱり一番は、」
アシュリー・トレッドミーナ「その人自身から能動的に、 気分を変えられる事なのかなって」
アシュリー・トレッドミーナ「だから、私はデレニスと 秘密の共有をしたくなったんです!」
アシュリー・トレッドミーナ「それも、とびっきりにおかしな秘密! ちょっと脚色はしましたけどね!」
デレニス・ツンヴェイル「・・・・・・そういう事だったんだ」
デレニス・ツンヴェイル「たしかに少し、 気分良くなったかも」
デレニス・ツンヴェイル(実際はアシュリー自身が 私の悩みのタネではあったんだけど、)
デレニス・ツンヴェイル(事情を聞いてしまえば、 そんなのどうでも良くなるわね)
デレニス・ツンヴェイル「ありがとね、アシュリー」
アシュリー・トレッドミーナ「御役に立てたのであればなによりです!」
アシュリー・トレッドミーナ「誰かの御役に立てる生き方をする、 それがクルセイダーの使命ですから!」
デレニス・ツンヴェイル「ふふっ 別に落ち込んでた訳じゃないんだけどね!」
アシュリー・トレッドミーナ「おっ、いつもの強がりですね!」
「あははははっ」
デレニス・ツンヴェイル「でもさ、」
デレニス・ツンヴェイル「アシュリーも中々体を張るもんだよね」
デレニス・ツンヴェイル「あのクルセイダーギルドの 厳しい食事制限の戒律を破ってます、」
デレニス・ツンヴェイル「なんて嘘までつくなんてさ、」
デレニス・ツンヴェイル「もし私がそれを信じてギルドに報告したら即刻追放ものなんじゃないの?」
アシュリー・トレッドミーナ「ん?」
アシュリー・トレッドミーナ「チートデイを一人で こっそり延長してるのは事実ですよ?」
アシュリー・トレッドミーナ「だって秘密を共有するんですから」
アシュリー・トレッドミーナ「本当の事を打ち明けなきゃ 意味ないじゃないですかー!」
デレニス・ツンヴェイル「・・・・・・・・・・・・えぇ?」
アシュリー・トレッドミーナ「脚色したのは四日目ってところですねー、」
アシュリー・トレッドミーナ「ちょっと恥ずかしくて、 一日少なくしちゃいました・・・・・・」
デレニス・ツンヴェイル「は?」
アシュリー・トレッドミーナ「昨日今日の話は、みんなに内緒ですよ?」
アシュリー・トレッドミーナ「今の私、バリバリに欲望に弱いです!」
アシュリー・トレッドミーナ「それでも私、 一応クルセイダー最強なので!」
アシュリー・トレッドミーナ「それにそれに! チートデイは今日で終わりの予定ですし!」
アシュリー・トレッドミーナ「今日の依頼なんかさっさと終わらせて、 パーっと打ち上げ楽しみますよー!」
  ・・・・・・・・・・・・
  あれ、どうしましたデレニスさん?
  そのカツレツ、
  食べないならもらっちゃいますよー?
  あのぅ、聞こえてますー?

〇山道
  ・・・・・・
  デレニスさんデレニスさん
  結構時間経っちゃいましたけど、
  大丈夫ですかー?
デレニス・ツンヴェイル「よ・・・・・・」
デレニス・ツンヴェイル「欲望に負けた、聖職者・・・・・・?」
アシュリー・トレッドミーナ「なに言ってるんです?」
アシュリー・トレッドミーナ「あのーやっぱり、 体調悪いのでしょうか・・・・・・」
アシュリー・トレッドミーナ「って、そんなことより!」
アシュリー・トレッドミーナ「ボーッとしてるうちに、 みなさん来ちゃったみたいですよ!」
デレニス・ツンヴェイル「えっ、うそ!?」
アシュリー・トレッドミーナ「カツレツ食べるなら今のうちです!」
デレニス・ツンヴェイル(あっ、残ってるんだ)
リミカルド・ヒヨク「はぁっ・・・・・・ はぁっ・・・・・・」
デレニス・ツンヴェイル(よかった、みんなまだ無事だ)
リミカルド・ヒヨク「きょ、許可したとはいえ、」
リミカルド・ヒヨク「相変わらず 容赦ない速さで進むな・・・・・・」
  仲間最優先でパーティーの現状に
  気づこうとしないリーダーの勇者
オットー・サンディエール「山歩きは得意たったんだが、 おっさんの歳にはキツいなやっぱ」
  おっさんを理由に
  全てが許されると思ってる自称中年、
キャドニス・インディーチェ「この程度でバテるとか、」
キャドニス・インディーチェ「バックパック背負ってるうちより みんな弱いね」
  戦闘以外では万能だけど、
  戦闘に一切参加できない事実上の欠員に、
アシュリー・トレッドミーナ「皆さん来るの遅いですよー、 カツレツ冷めちゃいました!」
アシュリー・トレッドミーナ「来ないなら食べちゃおうかなって、 何度欲望に負けそうになったことか!」
  食欲に連敗中の聖職者・・・・・・
デレニス・ツンヴェイル(仲間を変な目で見たくなかったから、)
デレニス・ツンヴェイル(クラウスの言葉を 意識しないようにしてたのだけれども、)
デレニス・ツンヴェイル(あいつの言いたかったこと、 少しだけわかる気がしてきた・・・・・・)
  《ゴールドⅤ》というランクに
  浮かれ真実を直視出来ないお前らに、
  明日その身をもって、
  本来のランクを教えてやる・・・・・・!
  あ、明らかなプロ意識の欠如・・・・・・
  まるで何かの拍子に
  偶然成り上がっただけの、
  訓練生気分そのままな
  おきらくパーティー・・・・・・!
デレニス・ツンヴェイル(も、もし、ここに・・・・・・)
デレニス・ツンヴェイル(あのドラゴンが やってきてしまったら・・・・・・)
  私たち、生きて帰れるのだろうか?
デレニス・ツンヴェイル「・・・・・・ん?」
デレニス・ツンヴェイル「・・・・・・?」
  えっ、ちょっと待って
  誰この人!?
  どうして混じってんの!?

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