後宮!功夫娘娘物語

秋山ヨウ

第二一話『玉兎の次なる任務』(脚本)

後宮!功夫娘娘物語

秋山ヨウ

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〇豪華な王宮
  寒月が予告した通り、玉兎は皇帝に呼び出された。
玉兎「ぎょ、玉兎がお目にかかります。 ええと、あのう・・・」
皇帝「楽にしてくれて構わない」
玉兎「は、はいっ! それで、あの! どのようなご用件でしょうか!」
  緊張で固まる玉兎を面白そうに眺めて、皇帝は口を開く。
皇帝「葉玉兎、今までご苦労であったな。 本日をもって、皇后・崔甜果の影武者としての任を解く」
玉兎「え?」
皇帝「影武者の仕事については、絶対に口外せぬよう誓約してもらう」
皇帝「また、今後の行動も制限される。 悪いが、そうしなければこちらも安心できなくてな」
玉兎「そ、そうではなく・・・」
皇帝「何だ? どうしてそんなに怯えている?」
玉兎「玉兎はもう、いらないのですか?」
皇帝「まさかとは思うが・・・影武者を続けたいのか?」
玉兎「続けたいです!」
皇帝「・・・・・・」
玉兎「お、お許しがいただけるのなら・・・玉兎は、ここにいたいです。お願いします、陛下!」
  玉兎は勢いよく跪くと、額を床につけた。
皇帝「ちょっ・・・待った待った!! 朕が怒られちゃうから!! もったいぶって悪かったよ!!」
玉兎「お願い、しますーっ!!」
皇帝「顔を上げてくれ、玉兎」
玉兎「いえ! お許しがいただけるまでは!」
皇帝「・・・じゃあそのままでいいから、聞きなさい」
皇帝「影武者としての任を解くが、新たに設ける「宮正(きゅうせい)」という官に就いてもらう」
玉兎「お願いです。何でもしますからーっ!」
皇帝「いやだから、宮正になってよ」
玉兎「はい?」
  玉兎が顔を上げると、皇帝は一つ咳ばらいをした。
皇帝「朝廷の目が届きにくい後宮の不正を暴く役職だ。葉玉兎、おまえを晨国初の宮正に任じる」
玉兎「は、はい! やりますっ、やらせてください!」
皇帝「いい返事だ。宮正は御史台と連携して仕事をしてもらう。御史台については知っている?」
玉兎「ええと、先日の事件解決にすごくいっぱい貢献した・・・」
皇帝「そうだ。その御史台の長官である御史大夫(ぎょしたいふ)を紹介する。入れ」
  皇帝の声に、現れた人物は──。
寒月「御史大夫・陰寒月(いんかんげつ)が陛下にお目にかかります」
玉兎「ほえ?」
寒月「おまえは謁見の場でもまぬけ面をさらすのか」
玉兎「え、だって! 寒月さんは・・・陛下の影武者ですよね?」
寒月「御史大夫を兼任している。というか、むしろこちらが本職だ。陛下の影武者をしていれば、色々と便利でもあるからな」
玉兎「ええええ!? 過労死しますよ!!」
寒月「驚くところはそこか・・・?」
皇帝「まあ、二人は上手く連携してくれると信じているぞ」
玉兎「あ、はいっ!」
寒月「私の負担が増えます」
皇帝「嬉しいくせに」
寒月「なっ・・・」
玉兎「玉兎はとっても嬉しいです!」
寒月「うるさい、お荷物」
玉兎「今後もお荷物としてお世話になります! よろしくお願いしますね、寒月さんっ」
皇帝「まあ、続きは後で存分にやればいい。 玉兎、渡すものがある。近くへ」
玉兎「渡すもの?」
皇帝「魚符(ぎょふ)だ。 絶対に無くすんじゃないぞ」
  玉兎の手のひらに、魚を象った小さな符が落とされる。
玉兎「・・・お守りですか?」
皇帝「それがあれば、おまえは後宮を自由に出入りすることができる」
玉兎「ええっ」
皇帝「同時に、朕からのお手つきが金輪際ないということにもなるが。大丈夫か?」
玉兎「あ、はい。それは結構です」
皇帝「・・・ちょっとくらい惜しんでほしかったぞ」
寒月「陛下」
皇帝「冗談だ」
玉兎「陛下、ありがとうございます。葉玉兎、宮正として今後も陛下と娘娘のためにがんばります!」
  玉兎が元気よく礼を取ると、皇帝は満足げな笑みを浮かべた。
皇帝「──ああ、頼りにしている」

〇豪華な王宮
寒月「おまえには、今後も皇后の侍女としての仕事を兼任してもらう。まあ、私と同じようなものだな」
玉兎「えへへ、嬉しいです。娘娘のもとでまた働けるなんて。しかも、寒月さんと一緒に!」
寒月「宮正は作られたばかりの官位だし、今はおまえしかいないからな」
寒月「有用性が証明されれば、いずれは独立した組織になるだろう」
玉兎「それまでは、力を合わせて頑張りましょうね!」
寒月「・・・ああ。私が先輩だから、引き続き厳しく指導してやる。覚悟しておけ」
玉兎「もちろんですーっ!!」
  飛び跳ねて喜ぶ玉兎を、寒月は柔らかな眼差しで見つめていた。

〇皇后の御殿
  その日の晩、殿舎には皇帝と皇后、寒月と玉兎が集まっていた。
皇帝「では、問題解決とみなの無事を祝い──乾杯」
  玉の杯を掲げて、全員が中身を干す。
皇后「ふふ、玉兎が宮正にねぇ。立派じゃない」
玉兎「娘娘の侍女も続けますよ!?」
皇后「そちらは伸びる見込みがなさそうなのだけれど」
玉兎「そ、そんな・・・」
寒月「諦めろ、玉兎。人には向き不向きがある」
玉兎「宮正は向いているってことですよね? そうですよね!?」
皇帝「・・・・・・」
玉兎「なんで黙るんですかーっ!」
皇帝「冗談だよ。向いているさ。 玉兎は身が軽いし。強いし。小さいし」
寒月「肉体労働だけでできる仕事ではないのですが」
皇帝「まあ、そこは寒月が」
玉兎「娘娘、玉兎の頭を鍛えてください」
皇后「無理言わないで」
玉兎「頭蓋骨は鍛えていますよ! がちごちですので、頭突きは得意技の一つなのです!」
皇后「ほらね?」
  軽やかな笑い声が響く中で、玉兎がふと首を傾げた。
玉兎「娘娘、影武者の任についてお聞きしたいことがあるのですが」
皇后「あら、なあに?」
玉兎「ご褒美についてです!」
寒月「おい、それは──」
玉兎「秘伝書『秘花宝典』を見せてくださる約束でしたよね!」

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コメント

  • いやぁ……皆が可愛かった&BGMや効果音がなくとも、キャラの魅力が一挙一動で引き出されていて良かったです……。制作ありがとうございました!
    饅頭詰めやスチルカワエェ……。そして、秘伝術をぜひとも寒月さんと😇😇😇
    皇后様の「寒月と実践すればいいわ」の台詞がもう笑うしかないです🤣

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