第四話 おもしれー女(脚本)
〇大広間
◆あらすじ◆
隣国の王子を逃がすチヨミのため
ソウビはヒナツの気を引こうと奮闘する
ソウビ・アーヌルス(あーっ! 相手したくないのに! ヒナツに 気に入られるわけにはいかないのに!!)
私はフォークの先にフルーツを刺す。
忌々しさに震える手で
それをヒナツの口元へと持って行った。
ヒナツ・プロスペロ「どうした?」
ソウビ・アーヌルス「先ほどは、失礼いたしました」
視界の端で、
チヨミが部屋を出て行ったのを確認する。
ソウビ・アーヌルス(よし!)
ソウビ・アーヌルス「どうぞ、お召し上がりを」
ヒナツ・プロスペロ「ほぉ? 先程とはうってかわった態度だな。 どういう風の吹き回しだ?」
ソウビ・アーヌルス(ぐぎぃ!)
ソウビ・アーヌルス(気に入られないよう、かつ、 この場で口にしてもおかしくない 理由・・・)
私はサッと手首を翻し、
フルーツを自分の口へと運ぶ。
ソウビ・アーヌルス「残念、時間切れ」
ヒナツ・プロスペロ「・・・・・・」
ソウビ・アーヌルス「首尾よく王座を手に入れた男なら、 わずかな機会も逃さぬものと 思っていたけれど、」
ソウビ・アーヌルス「存外、うっかりしておられる。 その調子では、今の地位もいずれ 他の者に取って代わられましょうね?」
ソウビ・アーヌルス(これでどうだ!? イラッとしたかな?)
ヒナツ・プロスペロ「・・・・・・」
ヒナツ・プロスペロ「・・・クク」
ヒナツ・プロスペロ「本当におもしろい女だ。 これほど俺の心を引っ掻き回す女には 出会ったことがない」
ヒナツ・プロスペロ「ソウビ、 お前を屈服させた時こそ初めて 俺は征服欲を満たせるのかもしれんな」
ソウビ・アーヌルス(おい、ソウビ『殿』はどうした? 『殿』どこに落した!?)
ソウビ・アーヌルス(いや、それより・・・)
ソウビ・アーヌルス(『おもしれー女』? これ、ひょっとして 気に入られたパターン?)
ソウビ・アーヌルス(あーっ! そうだった!!)
ソウビ・アーヌルス(ヒナツは自分を振り回す女が好みで ソウビはわざと そう振舞うようになったんだった!)
ソウビ・アーヌルス(まずいまずい! これじゃ原作同様、 傾国ルートに入っちゃう!?)
ソウビ・アーヌルス(ぎゃあああ、違う! 狙ったのはそっちじゃない!!)
「失礼いたします」
その時、私たちの前に
白い液体を満たしたグラスが
運ばれてきた。
ソウビ・アーヌルス(! これって『ドラゴンミルク』?)
『GarnetDance』の中のキーアイテム
『ドラゴンミルク』がそこにあった。
この国の守護獣と崇められている
北の山に住む聖なるドラゴンの
首筋から分泌される液体。
美味で栄養価も高いが、
入手が困難なため、特別な祝いの席でのみ
振るわれる貴重なドリンクだ。
例えば、戴冠式であったり、
王族の結婚式であったり。
ソウビ・アーヌルス(ヒナツが王座から追われ ソウビが殺害される一因になるのが、 このドラゴンミルクなんだよね)
ソウビ・アーヌルス(希少で神聖な液体なのに、 ソウビの美肌のため、 毎日の入浴に使わせちゃって・・・)
ソウビ・アーヌルス(ところでドラゴンの分泌液なんて、 飲んでも平気なの?)
ヒナツ・プロスペロ「どうした、ソウビ。 王となった俺を祝ってくれんのか?」
ソウビ・アーヌルス「・・・・・・」
ソウビ・アーヌルス(わっ、美味しい!)
ヨーグルトのような酸味に
まろやかなコク、ちょうどいい甘さ。
ソウビ・アーヌルス(ラッシーに生クリームを加えた感じ?)
ソウビ・アーヌルス(これをお風呂にするには、 ちょっと抵抗あるけど)
ヒナツ・プロスペロ「ははは、ソウビよ」
ヒナツ・プロスペロ「こうして並んで ドラゴンミルクを飲み交わしていると、 まるで俺たちの婚礼のようだな!」
ソウビ・アーヌルス「私は婚約者のいる身です。 そういうのやめてもらえます?」
ヒナツ・プロスペロ「ふわははは、その嫌そうな顔!」
ヒナツ・プロスペロ「だがソウビ、 どんなに不服でもお前は俺に逆らえん。 そのふくれっ面も愉快でたまらん」
ソウビ・アーヌルス(ぎぃいい!! ドMと思ったらドSでもあるんかい!!)
ソウビ・アーヌルス(いや、どっちでもいい! とにかく私のこと気に入るな!)
ソウビ・アーヌルス(あと、人気声優さんの声帯でしゃべるの 勘弁してもらえますかね? 複雑な気持ちになるから!)
攻略キャラ3人の方に
私はちらりと目をやる。
タイサイ・アルボル「・・・・・・」
ソウビ・アーヌルス(うわ、こっちすごく睨んでる)
ソウビ・アーヌルス(タイサイにとって私は 大好きな義姉と夫の間に割って入る 邪魔者なんだよね)
ソウビ・アーヌルス(ここの彼のセリフ覚えてるよ)
ソウビ・アーヌルス(『あんな子どもに手を出すとは! 義兄上は何を考えてるんだ!』)
ソウビ・アーヌルス(いや、ソウビ子どもじゃないし! お前より年上だし! チヨミと年齢そう変わらんし!)
ユーヅツ・アモル「・・・・・・」
ソウビ・アーヌルス(ユーヅツは祝宴に飽きて、 寝ちゃってるな。 うん、原作通りだ)
ソウビ・アーヌルス(テンセイは・・・)
テンセイ・ユリスディ「・・・・・・」
ソウビ・アーヌルス(形ばかりの婚約者とはいえ、 こんな場で手を出されて 不愉快ではあるけれど)
ソウビ・アーヌルス(忠誠心の高いキャラだから、 不満を押し隠して 静かな表情で食事をしている、と)
ソウビ・アーヌルス(うわぁん、テンセイ! もっと怒って! 私をさらって! 婚約者が手を出されてるんだよ!?)
ソウビ・アーヌルス(テンセイの隣に避難させて~! 誰か助けて~!)
〇洋館の廊下
ソウビ・アーヌルス(何とか抜け出せた・・・)
ソウビ・アーヌルス「ん? あれは・・・」
チヨミ・アルボル「・・・・・・」
ソウビ・アーヌルス「チヨミ! メルクはうまく逃がせた?」
チヨミ・アルボル「なぜ、それを・・・」
ソウビ・アーヌルス「あ、怯えないで。 私もそうしなきゃと思っていたから」
チヨミ・アルボル「・・・・・・」
ソウビ・アーヌルス(チヨミはこの段階では知らないけど、 メルクは隣国の王子で、後に 追放されたチヨミを助ける人物なんだよね)
ソウビ・アーヌルス「メルクには無事に 国境を超えてほしいよね」
チヨミ・アルボル「え、えぇ・・・」
ソウビ・アーヌルス(警戒されちゃったかな・・・)
チヨミ・アルボル「あの、ヒナツは? 私がいないこと、何か言ってた?」
ソウビ・アーヌルス「ううん、特に。 今も宴席ではしゃいでると思う」
チヨミ・アルボル「そう・・・」
ソウビ・アーヌルス「私、逃げてきちゃったんだ」
チヨミ・アルボル「え」
ソウビ・アーヌルス「ヒナツが前王の娘である私を使って、 王家の正統な後継者アピール したがってるの、見え見えだもん」
ソウビ・アーヌルス「そんなことに利用されるのはムカツク! だいたい私が好きなのはテンセイだし!」
チヨミ・アルボル「!」
チヨミ・アルボル「ふふっ、そうなんだ」
ソウビ・アーヌルス(ほっとした顔してる。 今のチヨミはヒナツのこと、夫として 大切に思ってるんだもんね)
ソウビ・アーヌルス(少なくとも、私がヒナツのこと 眼中にないのに安心してくれたかな?)
ソウビ・アーヌルス(それもしても、こんないい子を ないがしろにするなんて)
ソウビ・アーヌルス(ヒナツあの野郎! 許さん!)
ソウビ・アーヌルス「ねぇ、チヨミ、お願いがあるんだ」
チヨミ・アルボル「なに? 私に出来ること?」
ソウビ・アーヌルス「うん」
ソウビ・アーヌルス「今後、私を チヨミの側に置いてほしいんだけど、 許可してもらえる?」
チヨミ・アルボル「えっ、ソウビを私の側に・・・!?」
第四話 おもしれー女 ──終──
第五話へ続く
ソウビとチヨミが、仲良くなっていくといいですね。ヒナツのキャラが面白いです!ソウビがんばれ!応援してます。
グギイイィ…とソウビと一緒に歯ぎしりしてしまいました。好感度を下げる振る舞いをするのも大変ですね。女性陣ふたりの絆がかたく結ばれるように祈ってます!
原作を知っていると、ついうっかりな事も言ってしまいがちですよね。
チヨミと仲良くなれますように!