後宮!功夫娘娘物語

秋山ヨウ

第十三話『玉兎、名推理をする』(脚本)

後宮!功夫娘娘物語

秋山ヨウ

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〇皇后の御殿
  怪我を負ってからというものの、玉兎は落ち着かない日々を過ごしていた。
玉兎「あ、麗華さん! 荷物なら玉兎が運びますよ」
麗華「何言ってるのよ。 あなたは大人しくしてなさい」
玉兎「あっ、小宝さん! お使いですか? それなら玉兎が──」
小宝「行かせられるかっ! 娘娘にも寒月にも、大人しくしていろと言われただろう」
玉兎「うぅっ。落ち着きませんーっ!」
皇后「何を騒いでいるの?」
麗華「娘娘。玉兎を縛り付けておいてください」
玉兎「それは嫌ですーっ!」
皇后「怪我を治すのがおまえの仕事でしょう、玉兎。その有り様ではわたくしの影武者はさせられないわ」
小宝「そうだぞ。娘娘に成り代わる体なのに、怪我などしおって!」
玉兎「それはすみません・・・でも!」
皇后「でもじゃないの。 命令されないとわからないのね」
玉兎「考えてみてください、娘娘。怪我をしたからといって動けなかったら、野生では殺されてしまうのですよーっ!?」
麗華「・・・何を言っているの?」
玉兎「生まれたての牛も、鹿も、すぐに立つじゃありませんか!! そういうことなのです」
皇后「部屋で大人しくしていなさい。命令よ」
玉兎「あうっ」

〇後宮の一室
玉兎「暇です。落ち着きません!」
玉兎「少し体を動かすくらいなら・・・」
  こっそりと立ち上がった瞬間、部屋の入口から麗華が顔を覗かせた。
麗華「玉兎、言い忘れていたわ。室内での運動は禁止よ。娘娘のご命令だから、守りなさいね?」
玉兎「ももも、もちろんですっ」
麗華「なら結構。ゆっくり休むのよ」
玉兎「やること、やること・・・そういえば、怪我をした夜に、焼け残りの本を見つけたんでしたっけ」
  玉兎は今にも崩れそうな本を取り出すと、慎重にそれを開いた。
玉兎「こ、これはっ!!」
  詩文にも経文にも似た、難解な文字の羅列。
  時折挟まれる人の絵。
玉兎「これはまさしく──武術書です!」
玉兎(独特の軽功と歩法を基礎とした、女人のための武術・・・ところどころ読めなくなっていますが、間違いありません)
玉兎(幽鬼が使っていたのはこの武術です。 麗華さんには禁止されましたが・・・)
玉兎(これを黙って読むだけとは、武術迷(ぶじゅつまにあ)の名がすたります!)
  やにわに立ち上がると、玉兎は断片的な情報から武術の再現を始めた。

〇後宮の一室
  音をたてないように扉が押し開かれ、暗い室内に寒月が滑り込む。
寒月「さすがに寝ているか」
玉兎「誰ですか?」
寒月「うわっ、起きていたのか!?」
玉兎「まだ寝る時間じゃありませんよね?」
寒月「明かりも点けずに何をしていた。 私は安静にしていろと言ったはずだが?」
玉兎「それよりも! 聞いてください、寒月さん!」
  玉兎は焼け残りの武術書のことを話す。
玉兎「というわけで、幽鬼の使っていた武術を分析していたのです。これで対策はばっちりですね!」
  満面の笑みで胸を張る玉兎の頭に、拳骨が落ちた。
玉兎「ほあ・・・っ!? な、なんでぶつんですか!」
寒月「武術の再現をしていたと。 休みもせず。折れた腕を動かして」
玉兎「こちらのほうが重要だと思ったからです!! 彼を知り己を知れば百戦して危うからず!」
寒月「おまえはまず己を知れ!」
寒月「まったく・・・なぜそれほど必死になるんだ。普通に考えれば、怪我を治すのが先決だとわかるだろう」
玉兎「だって、それは・・・」
寒月「おまえ、『秘花宝典』が見たいと言っていたが、それだけが目的なのか?」
寒月「秘伝書のために、己も顧みずにここまで必死になると?」
玉兎(『秘花宝典』のこと、最近はあまり思い出していませんでしたね・・・)
寒月「どうして黙り込んでいる。命よりも武術が大切だと、本気で思って──」
玉兎「玉兎は・・・皇后娘娘や寒月さん、玉兎を受け入れてくれたみなさんに、報いたいんです」
寒月「・・・何の話だ?」
玉兎「破門されたって話しましたよね。父の手によって滝つぼに落とされたあの日から、玉兎は江湖を放浪してきました」
玉兎「長く腰を落ち着けたのは、ここ──後宮が初めてなのです」
寒月「騙されて来たのではなかったか。影武者にしても、断れば命はないと脅したはずだ」
玉兎「それでも玉兎は部屋をもらって、役割をもらって・・・ここが居場所だって思えるようになったんです」
  黙り込む寒月をちらりと見て、玉兎は誤魔化すように笑った。
玉兎「玉兎は侍女の仕事もダメダメですし、影武者も失敗ばかりです。でも・・・ここにいたくて」

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次のエピソード:第十四話『初夜再び? 二人きりの潔斎』

コメント

  • 心臓が破れる😇
    ふふ……可愛かったです。
    ……今、このお作品を効果音やBGM、エフェクト付きで拝見したいものです🙂

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