異世界化した街で俺の「こん棒」がエクスカリバーを超えるまで

moon&edge3

エピソード2 最弱マイスターとして(脚本)

異世界化した街で俺の「こん棒」がエクスカリバーを超えるまで

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〇田舎町の通り
  一方その頃・・・。
サリナ「ふう・・・。まさか、ホントに街が「消えてる」なんて・・・」
  私はサリナ。
  先日、同じ大学のトウキくんから、
  奇妙なメールを受け取った。
  内容は誰かのメールの転送。
  彼の説明は一切書かれていない。
  神と会話した誰かが、異世界に住むことを望んだとか。
  それでT市の街は異世界になり、住人ごと、記憶から消えたとか。
  そんなバカなと思って、私はT市に行こうと思ったのだけど・・・。
サリナ「ここを右に曲がって・・・」
サリナ「・・・!!」
サリナ「やっぱり、いつもの道に出ない。 しかも気持ち悪い感じ・・・ まるで空間が、この周りだけねじれてるみたい」
  今朝から、何度やっても同じ。
  違う道を通ってきても、
  T市のあったところを「避けて」、
  違う道に出てしまう。
サリナ「嘘みたい・・・。 変なメールだけど、信じるしかない」

〇役所のオフィス
  役所にも行ってみた。
サリナ「あの、T市について聞きたいんですが・・・」
役所の人「T市?そのような名前の街はございませんが?」
サリナ「じゃあ、地図を・・・」
役所の人「どうぞ」
サリナ((地図からも消えてる・・・))
サリナ「じゃあT駅はどこですか?」
役所の人「はぁ・・・ここに載ってなければないと思いますよ」
サリナ「やっぱりないか・・・」
  記憶からも、記録からも、
  呆れるほど懇切丁寧に消えていた。

〇大学の広場
  大学の友達にも聞いてみた。
サリナ「ねえ、トウキくんって覚えてる?」
大学の友達「えっ?知らないなぁ。誰?男の子?」
サリナ「覚えてないの?一緒に喋って、連絡先だって登録したじゃないの 一週間前の昼休みに」
大学の友達「ヤダなぁ、その時だったら、あたしとサリナ、二人で遊んだんじゃん」
大学の友達「ほら、写真にだって私とサリナしか写ってないでしょ。勘違いじゃない?」
  確かに、私のスマホからも、トウキくん始め、T市に住んでた人の連絡先はみんな消えていた。
  もちろん写真やブログからも。
サリナ「ここまでできるなんて、やっぱり相手は人間じゃない。本当に神・・・?」
大学の友達「え?」
サリナ「な、なんでもない」

〇田舎町の通り
  ・・・
  ううん、だからって、何もしないでこのままトウキくんに会えなくなるなんて嫌だ。
  きっと戻す方法はあるはず・・・。
サリナ「手がかりは、あの変なメールね」
  このメールの主が、トウキくんにメールを送ったってことは
  ①トウキくんの知人の誰か
  か
  ②認識はないが偶然に送られた
  か。
  私がトウキくんやT市のことを覚えてる理由は、メールを見たから、くらいしか思いつかない。
  相手は異世界化した街にいて、痕跡が消えているはずだから直接は会えないけど、知人なら手がかりはあるはず。
  ②だったら、ランダムに複数の宛先にメールを送ってる可能性が高い。
  CC(同時送信)には誰のアドレスもなかったけど、BCC(宛先隠し送信)で送ったのかも。
  それなら私のほかに、誰か記憶が消えてない人がいるかもしれない。
サリナ「トウキくん、待っててね。 あなたのこと、諦めないで探すから」
サリナ「だって約束したもんね。 あなたもきっと、諦めてないんでしょ。 そこが、どんなところでも」
サリナ「私も、あなたにもう一度会いたい・・・!」

〇鍛冶屋
  ・・・
  ・・・
トウキ「とまぁ、意気込んではみたものの。 どうやってメールの差出人を見つけるかだな」
トウキ「あいつはなんで俺のアドレスを知ってたんだろ? 俺にT市の知り合いで、メアド教えるような相手はいない」
  となるとランダムに複数のアドに送って偶然ついたのか。或いは俺が忘れてるだけ、T市民と知らないだけで知人かもしれない。
  勿論、勝手に俺のアドレスを誰かが教えたり、スマホ落としてデータ抜かれたりしたかも。
  とにかく心当たりはない。
  この線から知るには、記憶を徐々に洗い出すしかない。
  となると、どう探すか。
トウキ(あのメールに書かれてたことを整理しとこう)
  俺は記憶力が特別いいわけじゃないけど、あのメールのことは鮮明に思い出せる。
トウキ(まず奴は「街の居酒屋で神と知り合った」って言ったな。てことは成人か、最低でも居酒屋で怪しまれないくらいの年だ)
トウキ(それから、街の居酒屋にいたという「神」も、同じくこの世界にいる可能性があるな。どんなやつかは書かれてなかったけど)
トウキ(文面からは差出人も神も、男か女かはわからない)
トウキ(でも「悠々自適に暮らしたい」って願いが叶ってるなら、悠々自適に暮らせる立場やチート的なスキルを持ってる可能性が高い)
トウキ(悠々自適の解釈にもよるけどね・・・。 A、王宮関係者や金持ち B、貴族や王族などの血筋 C、勇者や大魔女などの強キャラ)
トウキ(反対に田舎住みとか地味キャラの可能性もあるけど。 それでも苦労するようにはなってないはずだ。趣味で暮らすにもスキルがいる)
  ──それから、あの「神」とやらの一言。
トウキ(「異世界とやらのイメージは理解した」と。 これは誰のイメージだ?)
トウキ(順当に考えれば、「メールの差出人が抱いている異世界のイメージをもとにした」だよな)
  つまり──
  メールの差出人は
  ①成人かそれに近い年齢で
  ②悠々自適に暮らせる力か立場があり
  ③この世界に自分のイメージを反映している
トウキ(これをもとに情報を集めるしかないってことか。よし、店に来る客に聞き込みだ!)

〇鍛冶屋
  ・・・

〇鍛冶屋
  ・・・

〇鍛冶屋

〇鍛冶屋
  ・・・
  ・・・
トウキ「──客がこなーーーい!!!」
トウキ「考えてみたらそりゃそうだよな?! こん棒しか作れないマイスターの店になんか、普通来ないよな?!」
  たまに来る客がいても、冷やかしか、からかいだし・・・
  こりゃもう仕事してるよりも、外に聞きに行ったほうが早いかな・・・

〇暖炉のある小屋
  情報収集といえば酒場・・・。
  ・・・
  ・・・
トウキ「・・・」
トウキ「知らない人に話しかけるの・・・ ハードル高ッッ!!!」
トウキ「なんて話せばいいんだよ?」
  ん?
  
  あれは?
  大学で会ったことがある?
  トモアキと、それから、ミユだっけ?

〇大学の広場
  そのはずだ、多分!

〇暖炉のある小屋
トウキ「あのっ。サクラダ・トモアキさんと、ヤマナカ・ミユさんですよね?」
トモアキ「・・・」
トモアキ「誰?」
ミユウ「てか、名前違うんだけど。 あたし、ミユじゃなくてミユウ。 ミユウ・マントセント中級剣士よ」
トモアキ「ぼくはトモアキ・シェリーズ。 中級魔法師」
  名前が微妙に違う?
  でも、全く遠くはない。
  となると俺の名前も?
トモアキ「あ、もしかしてお前、あのトウキ・マサムネか?」
トウキ「そういう名前なの? 土門刀輝(どもんとうき)だけど・・・」
トモアキ「あの有名な「ダメマイスター」だろ? マイスターのくせに剣作れないっていう!」
ミユウ「ちょっと、かわいそうでしょ? そんなにハッキリ言ったら」
  おいおい最悪かよ。
  酒場の中に、ひっそりと、
  俺を見て笑う気配が広がる・・・。
トウキ「ひどいなぁ。ホントのことだけど。 いや、話したいのは俺のことじゃなくて!」
  俺は、俺の探している人物像について質問する。
トモアキ「あー・・・うん、多分、そりゃ無理だな」
ミユウ「あたしもそう思う」
トウキ「なんで?!」
トモアキ「だって、そんな位の高い人とか有名な人とか、金持ちとかだったら、まず、誰彼構わず会ってはくれないぞ」
ミユウ「そそっ。それ相応に名が売れてるか、力があるか、名誉な何かがないと門前払いね」
トモアキ「お前みたいに、ダメな方で有名だったら、尚更ダメだな」
ミユウ「それに、田舎の方に特殊なスキルの持ち主がいるかとか、あたしたち知らないし。 情報屋なら知ってるかもだけど・・・」
トモアキ「情報って意外と高いんだぜー。 親のすねかじって借物の造り武器屋やってるお前に、そんな金ないだろ?」
トウキ「ひどいなぁ!」
  でも、彼らの言うとおりだ。
  俺には金も、力も、名誉もないらしい。
  これじゃ調査が進まない。
トウキ「どうやって金を手に入れるんだよ、じゃあ」
トモアキ「そりゃ名剣さえ作れたらなぁ。 なんぼでも買い手はいると思うぜ。 でも、剣作れないんだろ?」
ミユウ「または、自分でクエストをこなして報酬をもらって、知名度上げるとか? でも、マイスターは所詮戦士じゃないし」
ミユウ「武器の力を引き出せるスキルを持ってるはずだけど、「こん棒」と「木の鎧」が限界じゃあ、クエストは難しいわね」
トモアキ「有能な仲間を雇うって手もあるが、そもそも金が無いからダメだろうなぁ〜」
トウキ「何だそれ!もういいよ! ありがとね!」
トモアキ「なんか知らないけどがんばれ〜」
トウキ「はぁ・・・。帰るしかないか」

〇鍛冶屋
  ・・・
トウキ「・・・ふう」
トウキ「八方塞がりってやつかなぁ。 マイスターの能力は武器造り中心。 スキルも武具に関するもの」
トウキ「なのに俺に造れるのはこん棒だけ。 こん棒は、最弱武器」
  おそらくあのメールの主は、こん棒などの木製武器に、弱いイメージを抱いていた。
  それを元に神がこの世界を作ったからだ。
  まぁ誰でも弱いと思うよな。
  「こんぼう」と「はがねのけん」
  そりゃはがねのけんを取るわ。
  そうだ、金属以外なら石はどうだ?
  「いしのけん」「だいりせきのつえ」「すいしょうのつるぎ」
  ほら、強そうだぞ。
  スキルツリーは・・・
  こん棒を作ることができる。
  
  以下空白
トウキ「って、ダメじゃん?! そもそも石材加工の分岐すらない!」
トウキ「やれやれ。他のスキルもなぁ」
  クラス:初級マイスター
  固有スキル:武具ノ理解者【ウェポンズフェロー】
トウキ「で、多分、この固有スキルってやつが、トモアキたちの言ってたヤツだな。説明は・・・」
  スキル説明:武具との対話を通じ、武具に秘められた能力を開放し、行使することができる。
  スキルレベル:1
トウキ「なるほど。って、この武器との対話って、何するんだ? こん棒に喋りかけろってのか?」
トウキ「まぁ、やってみる?」
  ・・・
トウキ「ねぇねぇ棒くん、はじめまして。 君は何が好き? 女性のタイプは?」
トウキ「・・・」
  何やってんだろ、俺。
  もう嫌だ。
  何もかもやめたい。
  ──その時。
異形の男「邪魔するぜ」
トウキ「う、うわっ?!?!」
  な、なななな・・・?!
  魔物?!
  ヤバい?!
異形の男「おい店主。 オレにとっておきの「こん棒」を作れ」
  ・・・
トウキ「え? 今、なんて?」
異形の男「聞こえなかったのか?」
「オレに。 とっておきの。 「こん棒」を。 作ってくれ!!!」

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