第四話:オイラーの公式(脚本)
〇研究所の中枢
葛城大河「手がかりが何かを突き止める手段はあるのか?」
三条唯「・・・正直、見当もつかないですね」
三条唯「『デルタ』の本体は猫先輩が一人で作り上げました」
三条唯「私が手を貸したのは『デルタ』を操作するデバイスの開発のみです」
葛城大河「そうか」
葛城大河「・・・改めて思うが」
葛城大河「才はとんでもないものを開発したんだな」
葛城は『デルタ』を見上げた
葛城大河(世界を変えてしまう可能性がある代物、か)
葛城大河「唯」
三条唯「はい」
葛城大河「俺たちは、才のような天才じゃないかもしれない」
葛城大河「それでも、一人の科学者だ」
葛城大河「科学者らしく、地道にいこう」
葛城大河「きっと何か方法があるはずだ」
三条唯「・・・諦めたわけじゃありません」
三条唯「家に戻って仮眠を取ったら、過去の論文を漁ってみます」
三条唯「ヒントになるものがあるかもしれない」
葛城大河「ああ、そうしてくれ」
葛城大河「俺は、才が消えた原因についてもう一度考えてみる」
葛城大河「『デルタ』の件ではっきりした」
葛城大河「才を消そうとした”誰か”がいる」
三条唯「・・・そうでしょうね」
葛城大河「お前は、『デルタ』に集中してくれ」
葛城大河「俺は俺のやり方で、真実を見つけ出してやる」
〇男の子の一人部屋
葛城の自宅
葛城大河(俺に出来ること・・・)
葛城大河(まずは、情報を整理する。難問を解くときと一緒だ)
葛城大河(まず、今までに起こったことを整理しよう)
葛城大河(昨日から、事がいっぺんに起こりすぎだ)
出来事
1──8月21日、才が研究室から姿を消す
葛城大河(全ての始まりはここだ。8月21日)
葛城大河(才は、俺の前から一瞬にして姿を消した)
葛城大河(直後に唯が研究室に入ってきたから、部屋を出る時間はなかったはずだ)
2──事件から一週間後、唯が『デルタ』に残されたメッセージを見つける
葛城大河(正しくは、『デルタ』を操作するためのデバイスだと唯が言っていたな)
葛城大河(残されたメッセージは二つ)
葛城大河(”I am alive”と、”シュレーディンガーの方程式”)
3──唯と『デルタ』が保管されている部屋に向かう途中、ノイマン教授とすれ違う
葛城大河(教授が部屋の近くにいたのは偶然か?それとも・・・)
4──『デルタ』の破壊プログラムが起動し、唯がそれを阻止
葛城大河(唯がいなければ、手がかりが途絶えてしまうところだった・・・)
〇男の子の一人部屋
葛城大河(才に関係する主な出来事は、こんなとこか)
葛城大河(一見自然に見えるようなことでも、よく考えてみると辻褄が合わないということはよくある)
葛城大河(次は、残っている謎や腑に落ちない点を書き出してみよう)
謎・疑問点
1──才はどのようにして消えたのか?
葛城大河(唯の仮説は、『量子テレポーテーション』だったが、)
葛城大河(俺はいまだに100%納得したわけじゃない)
葛城大河(そもそも、量子テレポーテーションとは何だ?)
葛城大河(昨日は唯に聞きそびれてしまったし・・・)
葛城大河(後で調べてみるか)
2──残されたメッセージが意味するものとは?
葛城大河(あのメッセ―ジ、残したのは本当に才なのか?)
葛城大河(・・・違和感はある)
葛城大河(なぜ最初のメッセージは英文で、二つ目が方程式なんだ?)
葛城大河(もっと直接的なメッセージはなかったのか?)
葛城大河(方程式を俺たちに伝えるというのは、才らしいと言えば才らしいが・・・)
3──『デルタ』の破壊を試みたのは誰か?
葛城大河(才を”消した”人物がいるとすれば、おそらくそいつの仕業だろう)
葛城大河(才を消し、証拠隠滅を図ったのは誰だ?)
葛城大河(そして、動機は?)
葛城大河(目的は才の頭脳か、それとも『デルタ』か・・・)
葛城大河(考え出すときりがないな)
4──才を消した人物の動機は?
葛城大河「まあ、こんなところか」
葛城は大きく伸びをした
葛城大河「これらの謎を解くには、まだ手がかりが足りないか」
葛城大河「それか、何か大事なことを見落としているのか・・・」
葛城大河「何にせよ、今はまだ情報不足だ」
葛城大河(次に俺が出来ることは・・・)
量子力学 基礎
葛城大河「量子力学についての、理解を深めることだ」
〇汚い一人部屋
そのころ 唯の自宅
量子もつれの特異性について
量子力学と我々
量子世界における素粒子の運動方程式
三条唯「はあ」
三条唯(どれもこれも役に立ちそうにない)
三条唯(ん、これは・・・)
量子意識学──脳科学と量子論の融合
三条唯(量子意識学?)
三条唯(聞いたことのない分野だ)
三条唯(・・・ちょっと読んでみるか)
〇男の子の一人部屋
量子というのは、物質を構成する微小な粒のことである・・・
葛城大河「量子は小さすぎて、一般的な物理法則が通じない」
葛城大河「これが、信じられないようなことが起こる原因か」
葛城大河「じゃあ具体的に、量子はどんな挙動をするんだ?」
量子の運動
葛城大河(一つずつ、一つずつ理解していけばいい)
〇汚い一人部屋
三条唯「・・・これは!」
三条唯(使えるかもしれない)
三条唯(まずは理論を理解して・・・)
〇汚い一人部屋
10月26日 9:20
三条唯「・・・・・・」
三条唯(出来た!)
三条唯(理論に矛盾はない!これを完成させれば・・・)
三条唯(『デルタ』内で動く物質が何かを特定することが出来る!)
〇廊下のT字路
大学内 通路
葛城大河「はい、葛城です」
三条唯「おはようございます、三条です」
葛城大河「唯か、どうした?」
三条唯「『デルタ』の件、どうにかなるかもしれません」
葛城大河「おお!」
三条唯「葛城先輩にも共有したいので、今から研究室で会えませんか」
葛城大河「実は、少し調べたいことがあって、大学にいるんだ」
葛城大河「ちょうど今、研究室の前にいる」
三条唯「それは都合がいい。15分ほどで着くので、研究室で会いましょう」
葛城大河「わかった」
〇散らかった研究室
三条唯「ところで、調べものって何ですか?」
葛城大河「ああ。量子力学についてもっと知りたいと思ってな」
葛城大河「過去の論文でも・・・」
三条唯「・・先輩?」
葛城大河「あ、あ・・・」
三条唯「先輩?何かあったんですか?」
葛城大河「お、お前は・・・」
葛城は、持っていた携帯を地面に落とした
三条唯「大丈夫ですか?何があったんです?」
三条唯「葛城先輩!?」
葛城大河「才、なのか・・・?」
「は?」ってリアルに声出ました😇
…え?どういうことなの…?どういう理屈なの…?量子力学に関係あるんですかね…?😨