転落から始まる幼なじみ系ヒロインの魔王討伐譚 

ロトック

第一話 ヒステリー女と言わないで(脚本)

転落から始まる幼なじみ系ヒロインの魔王討伐譚 

ロトック

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〇村に続くトンネル
デレニス・ツンヴェイル「ねぇクラウス! 本当にあったわ!」
クラウス・ネファリウス「本当だ、こんな森の奥深くに 街があったんだ・・・」
デレニス・ツンヴェイル「だから言ったでしょ、 こっちで合ってるって♪」
デレニス・ツンヴェイル「あんたは方向音痴なんだから、 こういうのは私に任せなさい?」
クラウス・ネファリウス「・・・・・・そうだね、 いつもありがとう」
デレニス・ツンヴェイル「・・・・・・」
デレニス・ツンヴェイル「と、とりあえず、早く入ろ!」

〇荒野
デレニス・ツンヴェイル「結局あんたも 一緒のパーティーになっちゃったね」
クラウス・ネファリウス「・・・このパーティーって、 あの勇者が立ち上げたパーティーなんで しょ?」
クラウス・ネファリウス「本当に、 僕なんかがいていいのかな・・・」
デレニス・ツンヴェイル「・・・・・・あのねクラウス、」
デレニス・ツンヴェイル「この『空白の継ぎ手』ってパーティー名、 ちょっと変わってるけど私好きなんだ」
デレニス・ツンヴェイル「リーダーが考えたんだけどね、 400年後の魔王との戦いに向けた、」
デレニス・ツンヴェイル「空白期間の私たちこそが頑張らなきゃ、 人類は魔王に勝てないんだって」
デレニス・ツンヴェイル「そういう激励の意味を込めたらしいの」
クラウス・ネファリウス「・・・・・・そうか、僕たちが」
デレニス・ツンヴェイル「・・・・・・一緒に頑張らなきゃ、ね」

〇洞窟の入口(看板無し)
デレニス・ツンヴェイル「すごいわクラウス! あの攻撃を防ぐなんて!」
クラウス・ネファリウス「デ、デレニスこそ・・・・・・ 本当に一撃で倒すなんて」
デレニス・ツンヴェイル「ふふーん、相手が骨だろうと どこに当てたら一番痛いか わかっちゃうんだ私!」
クラウス・ネファリウス「な、なんかこわいよそれ・・・・・・」
クラウス・ネファリウス「で、でも・・・・・・」
クラウス・ネファリウス「すごく、カッコ良かった」
デレニス・ツンヴェイル「え、えへへ・・・・・・そうでしょ?」

〇暖炉のある小屋
デレニス・ツンヴェイル「ねぇクラウス・・・・・・」
デレニス・ツンヴェイル「私たちのパーティーなら、 いえ・・・・・・」
デレニス・ツンヴェイル「私たちなら・・・・・・」
クラウス・ネファリウス(えっ・・・・・・なにこれ)
  ────魔王だって倒せるかもしれないね

〇黒
  ──それから三年後──

〇ヨーロッパの街並み
デレニス・ツンヴェイル「もうリーダーに話はついてるんだけど、 私から直接言うわ」
デレニス・ツンヴェイル「あんた、今すぐ荷物まとめてパーティー から出ていきなさい」
デレニス・ツンヴェイル「『空白の継ぎ手』にはあんたの居場所は もうないの」
クラウス・ネファリウス「・・・・・・・・・・・・」
  長い旅路の果てにサイクロプス討伐を
  終え、依頼の達成報告をしたその日の夜。
  私ことデレニス・ツンヴェイルは、
  幼なじみのクラウス・ネファリウスを
  呼びつけ、こう言ってやった
  第一話
   ヒステリー女と呼ばないで
デレニス・ツンヴェイル「悪いけど私以外の4人全員が、もうあんたと組みたくないって言ってるのよ」
デレニス・ツンヴェイル「私だってあんたのワガママにはもう、 ウンザリしてるし」
クラウス・ネファリウス「・・・・・・」
  目の前にいる、無表情で何を考えている
  のかわからないこの男。
  これが私の幼なじみ、
  クラウス・ネファリウス────
  今だって私の話なんか聞いていられないとばかりに、視線が下を向いたりあちらこちら。
デレニス・ツンヴェイル「ちょっと、話を聞いてるの?」
デレニス・ツンヴェイル「あんたはもういらないって言ってんのよ! 少しは反論とかしたら!?」
クラウス・ネファリウス「・・・・・・なにも」
  ご覧の通りマトモな返事すら返さない、
  無愛想な奴である。

〇暖炉のある小屋
  こいつは今日に至るまで、パーティー内での喧嘩や嫌がらせ、

〇村に続くトンネル
  盾職としての役割を無視し、勝手な行動を取るなどの問題行動を何度も繰り返し────

〇黒背景

〇ヨーロッパの街並み
  ついに今日、仲間へ暴力を振るう事件が
  起こり────
  彼の追放が決まってしまったのである。
デレニス・ツンヴェイル「あんたね・・・・・・自分が何したか わかってるでしょ?」
デレニス・ツンヴェイル「なんであんな事をしたのか、理由くらい 言ったらどうなの!?」
クラウス・ネファリウス「・・・・・・」
デレニス・ツンヴェイル「まただんまりなの・・・・・・?」
デレニス・ツンヴェイル「昔はもっと、言いたいことは素直に 言ってたじゃない・・・・・・」
  今でこそクラウス・ネファリウスは、
  無愛想で失礼な奴ではあるけれど、
  子供の頃は少し気弱な性格で、
  何をするにも意志が弱かった。

〇児童養護施設
  クラウスはその性格から、
  村の子供同士の喧嘩でもよく負けて
  いじめられていた。
  あんたたち、何やってんの?
デレニス・ツンヴェイル(幼少期)「またあいつら・・・・・・ ロクな大人にならないわ」
デレニス・ツンヴェイル(幼少期)「ほら立ちなさい もうあいつらいないわよ」
クラウス・ネファリウス(幼少期)「・・・・・・えっ」
クラウス・ネファリウス(幼少期)「ひっ!?」
デレニス・ツンヴェイル(幼少期)「えぇ・・・・・・ 助けた人にそれ・・・・・・?」
クラウス・ネファリウス(幼少期)「ご、ごめんなさい! だってあの子たちつよいのに!!」
デレニス・ツンヴェイル(幼少期)「ふふん、これでも「たいまん」で あいつらに勝ったことあるのよ」
クラウス・ネファリウス(幼少期)「ひっ、ひいぃぃぃっ! ごめんなさいごめんなさい!!」
デレニス・ツンヴェイル(幼少期)(うぅっ、助けなきゃよかった かも・・・・・・)
クラウス・ネファリウス(幼少期)「あっ・・・・・・」
クラウス・ネファリウス(幼少期)「うぅ・・・・・・っ」
クラウス・ネファリウス(幼少期)「で、でも、 本当に、」
クラウス・ネファリウス(幼少期)「本当に、ありがとう」
デレニス・ツンヴェイル(幼少期)(この流れで お礼言えるんだ!?)
  でもクラウスはいつだって、
  怖がったり泣いたりしながらも、
  自分の素直な気持ちだけは、
  絶対に相手に伝えるすごい奴だった。
デレニス・ツンヴェイル(幼少期)(・・・・・・)
デレニス・ツンヴェイル(幼少期)(それなら 悪い気しない、かも)
デレニス・ツンヴェイル(幼少期)「ど、どうしてもって言うんなら、 また助けてやってもいいわよ」
クラウス・ネファリウス(幼少期)「えっ・・・・・・」
クラウス・ネファリウス(幼少期)「ひぃっ!? 暴力やだぁ!!」
デレニス・ツンヴェイル(幼少期)「この流れで!?」

〇ヨーロッパの街並み
  それから時が過ぎ────
  私とクラウスは二人で村を飛び出し、
  この神樹の街ユグドルートにたどり着いた。
  私はかねてからなりたかった
  後衛魔法職の≪ソーサラー≫に就き、
  クラウスは盾職の≪パラディン≫に
  就いた。
  『空白の継ぎ手』へは私から誘って
  クラウスを入れたのだ。
  私が誘った時だってクラウスは、
  誰にも誘われなかった孤独のつらさに
  泣きながらも、
  素直な「ありがとう」を
  言ってくれたのだ。
  それが今ではどうしてこうも、
  変わってしまったのか────
  今ではクラウスの考えていることなんて、
  本当に何一つわからない。
  そう、だからこそ────

〇暖炉のある小屋
  あいつを追放するの、
  私がやるわ!

〇暖炉のある小屋

〇ヨーロッパの街並み
  だからこそ今回の追放宣言は、
  私が引き受けたのだ。
  クラウスの事をほんの少しでも
  理解したかったから。
  私は今日に至る日まで、
  パーティー内ではクラウスを庇ってきた側なのだ。
  その私が追放と言ってしまうことで、
  何か変わるかもしれないと思ったから。
  今回の追放宣言には、何かしらの感情を
  見せてほしい。
  「嫌だ」とか「なんでだ」とか、
  せめて一欠片の反応を見せてほしい。
デレニス・ツンヴェイル「クラウス、今日で私たち一緒にいるの、 最期かもしれないんだよ」
デレニス・ツンヴェイル「私は何もわからないまま終わるのなんて 絶対にイヤ」
デレニス・ツンヴェイル「最後になにか答えてよ、クラウス!!」
  だというのに────
クラウス・ネファリウス「俺からは何も言うことはない」
  まさかこの期に及んでまで、
  ロクに語るつもりがないなんて。
デレニス・ツンヴェイル「どうして・・・・・・? パーティーのみんなが何をしたら、 心を開いてくれるの?」
デレニス・ツンヴェイル「どうして・・・・・・ こんな時にまで何も言わないのよ!!」
デレニス・ツンヴェイル「人がこうも心配してるんだから! 何があったかくらい言いなさいよ!!」
デレニス・ツンヴェイル(あっ)
  張り上げた声で喉が痛くなるのを
  自覚した後に、
  自分の両手が重鎧のゴツゴツとした
  腕部分を掴んでしまっていることに、
  やっと気づいた。
  ────いけない。
  慌てて腕を引っ込めた。
デレニス・ツンヴェイル「ご、ごめんなさい、クラウス・・・・・・」
  まさか暴力で訴えようとしたの、私?
  相手が何も言ってくれないからって?
  仲間に暴力を振るったからって?
  ────そんなの、
  何も言わないクラウスをいじめてた奴らと
  同じじゃない。
デレニス・ツンヴェイル「・・・・・・これじゃ私も、あの時の いじめっ子と一緒ね」
  ・・・・・・
  そうだよね・・・・・・
  本当に理解してやれるの、
  今私だけだもんね、クラウス・・・・・・
デレニス・ツンヴェイル「あのさ・・・・・・今はなにか言えない 事情があるのかもしれないけど」
デレニス・ツンヴェイル「最後まであんたの事見捨てないでやれるのって、幼なじみの私だけだからさ」
デレニス・ツンヴェイル「せめて、いつか私にだけでも──── 本当のこと、伝えてよね!」
  えっ
  なんだろう今の顔。
  久しぶりにクラウスが、
  真っ正面から私を見てくれた気がする。
  ────やっと、
  私の言葉が届いたのかもしれない。

〇ヨーロッパの街並み

〇黒背景

〇黒背景

〇黒背景

〇ヨーロッパの街並み

〇ヨーロッパの街並み
クラウス・ネファリウス「ハァーーーーーーーーーーー・・・・・・」
クラウス・ネファリウス「悲劇のヒロイン気取りかよ・・・・・・」
クラウス・ネファリウス「ウザいな・・・・・・」

〇ヨーロッパの街並み
  ────は?
  えっ、何その反応?
  待って、何そのため息?
  そのハァーーーーーーーーーーーー
  って、なに?
  お前は何もわかってないって意味の
  ハァーーーーーーーーーーーーーーーーーーだよねこれ?
  ・・・・・・この流れで出るモノじゃ
  なくない?
デレニス・ツンヴェイル「・・・・・・」
デレニス・ツンヴェイル「えっ」
  私、これまで散々好き勝手やってきた
  クラウスに対して、
  その度に庇って、その度に私だけが
  クラウスに理由を聞こうとしてたのに?
  それら全部、ことごとく無視されてきて?
  せめて今日の追放宣言で何かが分かれば
  って、
  縋る想いで、汚れ役引き受けたのに?
  ようやくひねり出させた感情が、
  このため息?
  ────なにそれ?
  これじゃ、今まで味方してきた
  私って・・・・・・
  本当にバカみたいじゃない?
クラウス・ネファリウス「用件は終わりだよな」
デレニス・ツンヴェイル「た、確かにこれで終わりなんだけど・・・・・・? ていうか何今のため息」
クラウス・ネファリウス「ならこのまま宿に戻って、荷物を持って 出て行くか」
デレニス・ツンヴェイル「無視しないで答えなさいよ、 ねぇヒロイン気取りってなに?」
クラウス・ネファリウス「・・・・・・はぁ。 やはりお前と会話するんじゃなかった、 昔から低かった沸点すら変わってない」
デレニス・ツンヴェイル(コイツまたため息吐いた・・・・・・ それも、かなりわざとらしく!)
デレニス・ツンヴェイル(そもそも何? 昔から沸点低かった?)
デレニス・ツンヴェイル(あんたの横暴に一番耐えてたの、 私じゃない!!)
デレニス・ツンヴェイル「こ、この・・・・・・っ!」
  ・・・・・・はっ!?
  右手が重い。
  気づけば思いっきり、握りしめていた
  ようだ。
デレニス・ツンヴェイル(お、落ち着け。 握りこぶしは握るだけにしなさい。 絶対に振るうな!)
デレニス・ツンヴェイル(何があっても冷静に振る舞う! このまま殴ったら、いじめっ子や 目の前のコイツと同じよ!)
デレニス・ツンヴェイル「あ、あんたさぁ・・・・・・」
デレニス・ツンヴェイル「せめて最後に、みんなに言う事ない訳?」
クラウス・ネファリウス「総合ギルドに話をつけたら一度、故郷に 戻るのもいいな」
クラウス・ネファリウス「母さんに会った後は、どこか遠い所でまた冒険者というのも悪くない」
デレニス・ツンヴェイル「ねぇちょっと聞いてるの!?」
  おそらく静かだったであろう街の片隅に、私の声が響き渡る。
  一瞬で自分の決意と矛盾する声量を出してしまったことに、
  なにより自分が驚いたし、恥ずかしかった。
  そして不思議と────
クラウス・ネファリウス「お前の家族にも挨拶した方がいいよな」
クラウス・ネファリウス「あっちから誘った癖に追い出されました とでも伝えておくか ははっ」
  そうなってしまったのも仕方ないなと、
  納得してしまった
  ダメだコイツ、本当に理解できない
  もうとっとと帰ってしまった方が良い
  これ以上関わっても、良い事がない。
  私はコイツと人生の大半を、
  一緒に過ごしてきたつもりだった。
  でもコイツが何を心に抱えて、
  生きがいにしてるかなんて、
  何一つわかってなかった。
  それを今日、ようやく思い知った。
  ────ここまで性根が腐ってたなんて。
デレニス・ツンヴェイル(・・・・・・私も、さっさとみんなのいる酒場に戻ろう)
  そう結論づけて、
  この場を去ろうとした矢先。
クラウス・ネファリウス「そうか。 最後に言わなければならない事があったな ヒステリー女」
  クラウスの方から、喋りだした。

〇暖炉のある小屋

〇暖炉のある小屋

〇黒背景
クラウス・ネファリウス「俺の抜けた『空白の継ぎ手』は近々 崩壊する」
クラウス・ネファリウス「故郷で仕事を探す準備でもしておけ」
クラウス・ネファリウス「あのパーティーの中じゃ、 お前が一番才能なかったんだからな」
  ・・・・・・は、はいィ???

次のエピソード:第二話 メッセージなんて残さないで

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