君の隣に僕が生きてる

咲良綾

エピソード6.温もり(脚本)

君の隣に僕が生きてる

咲良綾

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〇綺麗な部屋
  途中で出会った時夫の協力もあり、
  シアンをなんとか自宅へ連れ帰った
  穂多美だったが──
シアン「ごちそうさま」
小牧穂多美「もういいの?」
シアン「・・・・・・」
小牧穂多美「シアン、大丈夫?疲れた?」
シアン「ほた・・・僕、体弱いの嫌だ」
小牧穂多美「え?」
シアン「時夫はずっと元気に運転して、ほたとおしゃべりして楽しそうだったのに、僕は寝てた」
シアン「僕ももっと、一緒に話したかった」
小牧穂多美「シアン・・・」
シアン「今だって、せっかくほたと二人でたくさん話せるはずなのに、もう眠い」
小牧穂多美「無理しないで。長距離移動したんだもの、疲れて当たり前だよ。もう寝ようか」
シアン「嫌だ。僕、ほたと、もっと話す。 時夫と何話したの、僕にも教えて」
小牧穂多美「何って、くだらないことばっかりだよ」
小牧穂多美「時夫さんが鎖衣さんと初めて会ったとき、女の子と間違えて惚れかけたとか」
小牧穂多美「モテたくてヤマトのりで髪のセットしたら大変なことになったとか」
小牧穂多美「合皮の上着の保管が悪くてデート中にボロボロに朽ちたとか」
小牧穂多美「巨大な焼おにぎりを作ったら崩壊してただの焼き飯になったとか」
シアン「ずるい・・・面白そう」
小牧穂多美「明日も会うから話してもらえばいいよ」
シアン「ほたのリアクションが見たかった。 絶対可愛かったのに」
小牧穂多美「え、そんな、可愛くなんて・・・」
シアン「僕はなんにも面白い話知らない。 ほたを笑わせられない・・・」
シアン「・・・うっ」
小牧穂多美「シアン、どうかした?」
シアン「ちょっと、気持ち悪い」
小牧穂多美「え!? 吐きたい感じ?」
シアン「そこまでじゃないけど・・・」
小牧穂多美「やっぱり疲れてるんだよ、もう休もう? そっちの部屋に、節奈おばちゃんのベッドがあるから」
シアン「おかあさんの・・・」
小牧穂多美「そうだよ。おかあさんのにおいがするよ」
シアン「僕ね、ほたのにおいも好き・・・」
小牧穂多美「そ、そう?」
シアン「ほたにくっついてると、気持ち悪いのがちょっとなくなるみたい」
シアン「・・・・・・」
小牧穂多美「え、寝ちゃった!? シアン、もうちょっと頑張って。 ベッドで寝よう?」
シアン「・・・・・・」

〇部屋のベッド
小牧穂多美「ほらこっち、頑張って。 すぐそこだから・・・」
小牧穂多美「うわあ!?」
シアン「・・・ほた?」
小牧穂多美「あ、シアン!気がついたのね」
シアン「・・・一緒に寝るの?」
小牧穂多美「え!? いや、違うの、そんなつもりじゃ」
シアン「一緒に寝て」
小牧穂多美「えっ・・・!」
シアン「離れないで。 離れると苦しくなる」
  涙目になって、震えて・・・
  こんなの、振り払えるはずがない。
小牧穂多美「わかった、そばにいるから」
シアン「ありがと・・・」
  安心したように目を閉じたシアンは、すぐに寝息をたて始めた。
  まだ線も細いし、かわいい顔してるけど、
  こうして見るとやっぱり、首とか肩とか、男の子だなあ。
  これが成長して鎖衣さんみたいになるのか・・・。
  ・・・・・・
  想像したら、恥ずかしくなってきちゃった。
  余計なこと考えてないで、寝る準備しよう。

〇綺麗な部屋
「う・・・う・・・・・・」
小牧穂多美「え?」

〇部屋のベッド
シアン「はあ、はあ・・・」
小牧穂多美「シアン、大丈夫?」
  どうしよう?どうしたら・・・!
  ぎゅっ
  手を握ると、シアンの表情がふっとゆるんだ。
  わたしがそばにいると気分が良くなるって、本当なんだ。
  ・・・・・・
  必要とされてる。
  わたしは今、必要とされてる。
  嬉しい。
  ここにいていいんだ。
  ひとりじゃないんだ──

〇部屋のベッド
  ・・・・・・
  そっと、シアンの隣に滑り込んで寄り添った。
  人の温もりって久しぶりだ。
  あったかい・・・
  ・・・・・・
  顔を近づけると、呼気が鼻をくすぐった。
  ああ。生きてる。
  生きてる温もりが、こんなにそばにある。
  深い安らぎに、胸が震えた。

〇白いアパート
小牧穂多美「今朝は気分がいいみたいね」
シアン「うん」
  やっぱり、疲れのせいだったのかな。
  シアンを連れて行ったら、節奈おばちゃん、驚くよね・・・怒るかな。
  でも、会いたいよね。
  こんな写真を大事に持ってるんだもの。
  密かに研究まで進めて・・・
シアン「ほた、それ何?」
小牧穂多美「節奈おばちゃんが持ってた、シアンの写真よ」
シアン「ほんと?見せて」
小牧穂多美「はい」
シアン「・・・おねえちゃんも写ってる」
小牧穂多美「マゼンタっていったよね。 シアンとは仲が良かったのよね」
シアン「うん。 でもおねえちゃんは、教授が好きだったんだよ」
小牧穂多美「えっ、教授って・・・福成教授?」
シアン「そう」
  節奈おばちゃんは福成教授が好きだった。
  マゼンタは節奈おばちゃんのクローンだから、惹かれたのは当然だったのかもしれない。
シアン「でも教授はおかあさんが好きなんだって、 おねえちゃんが言ってた」
小牧穂多美「え・・・」
  節奈おばちゃんは、
  片思いだったんじゃないの?
シアン「僕もおねえちゃんが好きって言ったら、それとは全然違うんだって」
シアン「独り占めしたくて、その人がほかの人を見てたらつらいんだって」
シアン「そのときは説明されてもピンとこなかった。 でもね、僕・・・」
シアン「ほたが時夫さんと仲良くしてたら、嫌だな」
小牧穂多美「!」
シアン「おねえちゃんが言ってたのって、こういうことなのかな」
小牧穂多美「さ、さあ・・・」
  まさかとは思うけど・・・
  昨日あんなに具合が悪かったのは、やきもちのせいだったりする?
久我山時夫「よーう、おっはよう! いい朝だな」
小牧穂多美「おはようございます。 元気そうですね、時夫さん」
久我山時夫「まあな~。 この町のおねえちゃんたちは、キレイだねえ」
小牧穂多美「はいはい、良かったですね」
久我山時夫「ん? 穂多美ちゃん、やきもち?」
小牧穂多美「なんでそうなるんですか」
  ぎゅっ
小牧穂多美「わ、シアン。服ひっぱらないで」
シアン「・・・・・・」
久我山時夫「あー、やきもちはそっちかぁ~」
小牧穂多美「何にやにや笑ってるんですか、からかわないでください!」
久我山時夫「へいへい」
久我山時夫「それでは、病院へエスコートしましょうかね。 さあどうぞ、我が超高級国産自動車のプレミアムシートへ」
小牧穂多美「超高級・・・?」
久我山時夫「この車は、数多の車検を乗り越えたヴィンテージでアンティークな猛者なんだぞ」
小牧穂多美「それって要するに、古いってことでは・・・」
  ぎゅっ
小牧穂多美「わわわ、シアン~~~」
シアン「また、僕だけわからない話してる・・・」
小牧穂多美「ちょっと時夫さん! もっとシアンにもわかりやすい話して!」
久我山時夫「え~っ、オトナな時夫さんには無理難題だなぁ・・・ 善処シマス」
小牧穂多美「『善処』は難しいよ! ほら、泣きそうになってる!」
久我山時夫「ごめんなさいできるだけ気をつけます、 俺の古~い車に乗ってください!」

〇走行する車内
久我山時夫「病院前、混んでるな。 駐車場待ちの列がすごいぞ」
小牧穂多美「ほんとだ。いつもこんなじゃないのに」
久我山時夫「ああ、看板出てる。 第二駐車場でトラブルなんだってさ」
久我山時夫「こりゃ、しばらく動かないな。 ここで降りて、歩いていくか?」
小牧穂多美「そうですね」
久我山時夫「んじゃ、俺はその辺にいるから、終わったら携帯に電話してくれ」
小牧穂多美「わかりました。シアン、行くよ」
シアン「うん・・・」
小牧穂多美「どうしたの。顔色が悪い・・・車に酔った?」
小牧穂多美「シアン!?」
久我山時夫「おい、大丈夫か!」
久我山時夫「穂多美ちゃん、医者を呼んで来てくれ」
小牧穂多美「わかった。シアンをお願い!」

〇総合病院
小牧穂多美「早く、誰か呼ばなきゃ・・・!」
小牧穂多美「・・・あっ」
小牧穂多美「そうだ。シアンって、保険証どころか戸籍もないんじゃない?」
小牧穂多美「それにシアンの体は特別だもの、普通の病院じゃ対応できないかもしれない」
小牧穂多美「どうしよう、どうしよう・・・!」
小牧穂多美「そうだ。節奈おばちゃんなら、詳しいはず」
小牧穂多美「とにかく、まずは節奈おばちゃんに知らせよう!」
  次回へ続く
  節奈に助けを求めた穂多美。
  事態を知った節奈の決断は──
  
  次回 エピソード7.再会

次のエピソード:エピソード7.再会

コメント

  • 意識ある状態での再開こい!
    って願ってたら乳首イボコロリが目に入ってしまい笑ってしまいました。

  • シアンの儚げな雰囲気にヤラれます。
    かーわーいー♡
    これは守りたくなる。
    時夫も明るいキャラで、ほたとくっついてほしいような。でもシアンが…複雑です。
    ウチの通信悪くて、途中中断しちゃったので、タップ数がおかしくなってるかもしれません。
    スミマセン(泣)

  • 時夫さんのエピソードは実話ですか??www

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