アンノウン/バディ

R・S・ムスカリ

ファーストコンタクト(脚本)

アンノウン/バディ

R・S・ムスカリ

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アンノウン/バディ
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〇渋谷駅前
????「・・・・・・ここは、どこだ?」
????「俺は・・・」
????「俺は誰だ?」
????「何も思い出せない・・・」
女学生A「キャーッ!」
女学生B「怪人っ! 怪人が出たぁ~~っ!!」
????「ま、待ってくれ! 怪人て・・・どういうことだ!?」
女学生A「逃げましょう! 殺されちゃうわっ!!」
女学生B「た、助けてぇ~~っ!」
????「一体どうなってるんだ・・・」
????「・・・・・・!?」
????「ショーウィンドウに映ってるのは──」
????「──俺、か!?」
  スクランブル交差点に怪人が確認されました。付近の方は至急避難してください
????「俺の・・・ことか・・・」
  H.E.R.O.S(ヒーローズ)の到着まで、警察官の指示に従ってください。繰り返します。H.E.R.O.Sの到着まで──
????「H.E.R.O.S・・・覚えてるぞ」
????「たしか怪人迎撃のために結成された政府公認の特殊武装組織・・・」
????「ここにいたら危険だ」

〇デパートのサービスカウンター
????「・・・」
受付嬢「ひっ」
????「・・・きみも逃げた方がいい」
受付嬢「ひいいっ!」
????「さて、これからどうするか」

〇デパ地下
????「こんなところにいても、H.E.R.O.Sから逃げられるわけがない・・・」
????「・・・逃げる? 戦えばいいんじゃないか?」
????「でも、何のために戦うんだ? 俺は一体何のために存在するんだ・・・」
  見つけたわよ怪人!!
????「!?」
????「こんなところで呑気に買い物!?」
????「誰だ?」
????「怪人対策課の佐伯央美(さえきおみ)よ! 抵抗するなら撃つわ!!」
????「物騒だな」
佐伯央美「・・・手配書にない怪人ね。 どこの所属?」
????「どこって・・・何のことだ?」
佐伯央美「ヤタガラス? それともトライアド!? まさか欧州の組織じゃないわよね」
????「それは怪人の組織のことを言っているのか?」
佐伯央美「とぼけないで! 渋谷に現れた目的は何!? 銀行でも襲いに来たわけ!!」
????「・・・わからない」
佐伯央美「はぁ?」
????「俺は自分が何者かわからないんだ」
佐伯央美「何を言ってるの?」
????「俺は記憶喪失らしい」
佐伯央美「は・・・え?」
????「何も思い出せないんだ。 どんな力を持つ怪人なのかも覚えていない」
佐伯央美「じょ・・・冗談でしょ!?」
????「どうすればいいと思う?」
佐伯央美「知らないわよっ!!」
????「そうか・・・」
佐伯央美「・・・」
佐伯央美「敵意がないなら、とりあえず出頭しなさい」
????「H.E.R.O.Sに引き渡されたら、俺は殺されてしまうんじゃないか?」
佐伯央美「それはあなたの余罪次第ね。 破壊活動に関わっていたらアウトだけど」
????「何も覚えてないからな・・・」
佐伯央美「まぁいいわ。 とりあえずここを出ましょう」
佐伯央美「あなた、名前は?」
????「すまないが、それも思い出せない」
佐伯央美「う~ん・・・。 名前がないと不便ね」
佐伯央美「アンノウン13号、ってことにしましょう!」
????「アンノウン13号?」
佐伯央美「今年確認された所属不明の怪人。 その13番目ってことよ」
????「・・・」
佐伯央美「な、何よ。ご不満っ!?」
アンノウン13号「いや、それで構わない。 ありがとう」
佐伯央美「べ、別にあなたのためじゃないわ。 私たちに都合がいいってだけだから!」
アンノウン13号「名前があると落ち着く。 感謝するよ、央美」
佐伯央美「そう? 喜んでくれたのなら嬉しいわ」
  怪人相手にずいぶん呑気な刑事だな
佐伯央美「だ、誰っ!?」
????「イチャついているところ悪いが、仕事をさせてもらうぜ」
佐伯央美「い、イチャ・・・!? 誰と誰がよっ!!」
佐伯央美「って、あなた・・・怪人!?」
????「騒がしいお嬢さんだ。 一人で怪人を捕まえようと突っ込んでくるし、あんた後先考えない性格だろう」
佐伯央美「うるさいわねっ! あなた、どこの所属よ!?」
????「さて、本題に入ろうかアンノウン13号。 俺もそう呼ばせてもらうぜ」
佐伯央美「無視するなっ!」
アンノウン13号「何者だ?」
????「お前の抹殺を依頼されてな」
????「記憶喪失とは都合がいい。 今なら本来のパワーは発揮できないだろう」
アンノウン13号「俺のことを知ってるのか!?」
????「最低限のことは聞かされているよ」
アンノウン13号「教えてくれ! 俺は一体何者なんだ!?」
????「知らない方がいいと思うぜ。 まぁ、俺に教える義理はないけどな」
????「俺の名は、暗殺怪人アーサー・シン! 死んでもらうぜ13号!!」
佐伯央美「私を無視して話を進めないで!」
アーサー・シン「・・・やれやれ。 女を傷つけるのは気が進まないんだがな」
アンノウン13号「よせ! 俺が相手をしてやる!!」
アーサー・シン「元々そのつもりだぜ。 行くぞ!!」
アンノウン13号「ぐあああっ!」
アーサー・シン「ふっ! やはり力を発揮できなければこの程度か!」
アンノウン13号「つ、強い・・・」
アーサー・シン「とどめだ!!」
佐伯央美「やめなさい!」
アーサー・シン「男の戦いに割って入るな!」
佐伯央美「一方的な暴力を止めに入って何が悪いの! 卑怯よ、あなた!!」
アーサー・シン「無力な人間は引っ込んでいろ!」
佐伯央美「警察官を舐めんじゃないわよ!!」
アーサー・シン「ふはははっ! そんな豆鉄砲で怪人を相手にする気か!?」
佐伯央美「やれるかやれないか、今から確かめるわ!」
アンノウン13号「よせ、央美・・・」
アーサー・シン「二人仲良くあの世に送ってやるぜ!!」
アンノウン13号「させるかぁーーーっ!!」
アーサー・シン「何っ!?」
アンノウン13号「はあぁぁぁーーーっ!!」
アーサー・シン「ぐああっ!!」
アンノウン13号「はぁっ、はぁっ・・・」
佐伯央美「す、凄い・・・! 今のがあなたの本当の力!?」
アーサー・シン「やって・・・くれたな・・・」
佐伯央美「タフな人ね。 すぐに迎えが来るからそのまま寝てなさい」
アーサー・シン「本当、呑気なお嬢さんだぜ・・・。 いくらなんでもH.E.R.O.Sの到着が遅いとは思わないのか?」
佐伯央美「え?」
アーサー・シン「直にH.E.R.O.Sに擬態した別動隊が突入してくる。もちろん俺の同業者さ」
佐伯央美「なんですって!」
アーサー・シン「だが、俺以外の奴に標的を仕留められるのは癪だ。さっさと逃げな」
アンノウン13号「借りを作ったとは思わん」
アーサー・シン「アンノウン13号。 お前を倒すのは俺だってことを覚えておけ」
アンノウン13号「行こう、央美」
佐伯央美「えっ。 わ、私も!?」

〇荒れた倉庫
  翌 日
アンノウン13号「どうだった?」
佐伯央美「嫌な予感が的中したわ。 あなたを狙う連中の仲間が、警察上層部に入り込んでるみたい」
アンノウン13号「そうか・・・」
佐伯央美「渋谷の件も誤報で片付けられたようね。 ニュースにもなってないわ」
佐伯央美「おまけに、私には横領疑惑で逮捕状が出ていて同僚にも連絡できない始末よ」
佐伯央美「あなたが私を連れ出してくれなかったら、口封じに殺されてたでしょうね」
アンノウン13号「すまない。 俺の問題にきみを巻き込んでしまって」
佐伯央美「気にしないで。 元はといえば、警視総監賞を狙って一人で突っ走ったのが原因だし」
佐伯央美「むしろ警察内部に悪党がいることがわかって、やる気が出てきたわ!」
アンノウン13号「ポジティブだな、きみは」
佐伯央美「それが取り柄ですから」
アンノウン13号「しかし、これからどうするか・・・」
佐伯央美「今後の方針を決めるに当たって、ダークウェブであなたの組織のことを調べてみたの」
佐伯央美「結局何もわからなかったけど、アーサー・シンって刺客の情報は掴めたわ」
アンノウン13号「奴は何者なんだ?」
佐伯央美「フリーの怪人専門暗殺者よ。 組織に属さないはぐれ者だけど、裏の世界ではかなり有名みたい」
アンノウン13号「怪人を暗殺する怪人か。 あの強さも頷けるな」
佐伯央美「しかも、怪人対策課が内偵を進めてた何人かは、こいつに殺害されてたわ」
アンノウン13号「俺以外のアンノウンたちのことか」
佐伯央美「ええ。所属不明の怪人は脱走兵や裏切り者のケースが多いから」
アンノウン13号「・・・ずっと考えてたんだが」
佐伯央美「ん?」
アンノウン13号「俺は記憶を取り戻したい。 だが、逃げ回るだけでは難しそうだ」
佐伯央美「まさか組織に接触するつもり!?」
アンノウン13号「ノコノコ出ていけば、やられるだけなのはわかってる。しかし──」
佐伯央美「あなたには借りがあるから、私もできるだけ協力したいけど・・・」
アンノウン13号「・・・焦っても仕方ないな。 組織の手がかりが掴めるまでは身を隠して行動しよう」
佐伯央美「それがいいわ。 こっちは私とあなた二人だけなんだし、焦らずじっくりいきましょう」
アンノウン13号「・・・」
アンノウン13号(俺自身のこともあるが・・・)
アンノウン13号(俺といる限り央美には危険が付きまとう。 時間が経つほど彼女の危険は増すばかりだ)
アンノウン13号(央美を元の生活に戻してあげたいが・・・)

〇商店街
  数 日 後
佐伯央美「急ぎましょう13号。 深夜とはいえ、誰に見られてるか」
アンノウン13号「ああ」
佐伯央美「この数日で三度も刺客に襲われるなんて。 気を休めることもできないわね」
アンノウン13号「相手がアーサー・シンほどの手練れでないことが幸いしたな」
佐伯央美「そうね。でも、また奴が来たとしても、あなたならなんとかしてくれるでしょう?」
アンノウン13号「もちろんだ。 きみには指一本触れさせない」
佐伯央美「ふふっ。頼りになる言葉だわ」
アンノウン13号「このまま東京を出るのか? 情報を集めるなら都市部に留まりたいが」
佐伯央美「だけど刺客は肝心な情報を持ってないし、このまま襲撃され続けてもねぇ」
アンノウン13号「・・・そうだな」
佐伯央美「ま、このまま逃避行ってのも悪くないかも」
アンノウン13号「央美!」
佐伯央美「あっ! いや、別に変な意味で言ったんじゃ──」
アンノウン13号「あれを見ろ! 電気屋に飾ってあるテレビだ!」
佐伯央美「え?」

〇新橋駅前
  ──駅前広場にて、怪人同士の戦闘が繰り広げられております!!
  あっ!
  スーツの怪人が逃げました!
  鎧の怪人が追いかけていきます──

〇商店街
佐伯央美「アーサー・シン! しかも、相手はアンノウン7号だわ」
アンノウン13号「・・・」
佐伯央美「13号、まさか・・・」
アンノウン13号「央美、今日はもう遅い。 休めるところを探して、明日に備えよう」
佐伯央美「え、ええ。そうね!」
佐伯央美(・・・なんだ、よかった。 私を置いて行ってしまうのかと思ったわ)
佐伯央美「13号、私たちはバディよ。 戦う時は私も一緒に戦うわ!」
アンノウン13号「そうだな。 その時は央美に俺の背中を預ける」

〇学校の体育館
佐伯央美「ん・・・」
佐伯央美「13号?」
佐伯央美「13号っ!!」
佐伯央美「・・・あのバカッ」
佐伯央美「私に背中を預けるんじゃなかったのっ!?」
佐伯央美「バディを差し置いて、全部一人で背負いこもうなんて・・・!」
佐伯央美「絶対に許さないわよ!!」

〇荒廃した街
アンノウン13号「うおおおおっ!!」
アーサー・シン「はああああっ!!」
アーサー・シン「ぐあああ~~~っ!!」
アンノウン13号「はぁっ、はぁっ・・・」
アーサー・シン「俺の負けだ・・・殺せ!」
アンノウン13号「その前に組織について教えてもらおうか」
アーサー・シン「依頼主のことは口が裂けても話さねぇ!!」
アンノウン13号「そうか・・・」
  待ちなさいっ!!
佐伯央美「そこまでよっ」
佐伯央美「彼を殺せば、あなたを悪性怪人として認定せざるをえなくなってしまうわ!」
アンノウン13号「央美、どうしてここに」
佐伯央美「あの放送を見た後でいなくなれば、察しはつくわよっ!!」
アンノウン13号「・・・きみにはお見通しだったか」
佐伯央美「勘はいい方なの! どうせ私を置いて組織と戦いに行くつもりだったんでしょ!?」
アンノウン13号「うっ」
佐伯央美「私が足手まといだから置いてくの?」
アンノウン13号「・・・」
佐伯央美「私たちはバディでしょ!」
佐伯央美「短い付き合いだけど、私はあなたをバディとして信頼してたっ!」
佐伯央美「あなたは違うのっ!?」
アンノウン13号「・・・すまない。 きみを危険な目に遭わせたくなかったんだ」
佐伯央美「どうしてよ!?」
アンノウン13号「そ、それは・・・!」
アーサー・シン「あぁぁ~~~っ!! お前ら、もう爆発しろっ!!!!」
アーサー・シン「熱々じゃねぇか! 火傷するわ!!」
アーサー・シン「仕事一筋の自分がバカバカしくなってきたわ!!」
アーサー・シン「くそっ。 なんだこの敗北感は!?」
アンノウン13号「アーサー?」
アーサー・シン「お嬢ちゃんみたいな一途な女が、このまま不幸になるのは見ていられねぇ!」
アーサー・シン「受け取れっ」
佐伯央美「これは?」
アーサー・シン「組織との連絡手段に使ったスマホだ」
佐伯央美「えぇっ!?」
アーサー・シン「それを解析すりゃ、連絡係の足取りくらい追えるだろうよ」
アンノウン13号「なぜ手助けしてくれるんだ?」
アーサー・シン「この世に女の涙ほど恐ろしいものはねぇ。 美しいものも、な」
アーサー・シン「・・・あばよっ」
アンノウン13号「アーサー・・・ありがとう」
佐伯央美「お節介焼いてんじゃないわよっ」
アンノウン13号「・・・」
佐伯央美「・・・」
アンノウン13号「俺は、俺が何者なのか知るために戦い続ける」
佐伯央美「ええ」
アンノウン13号「ついてきてくれるか、央美?」
佐伯央美「私たちはバディだって言ったでしょ。 ついていくわよ!」
アンノウン13号「ありがとう、央美──」

〇荒廃した街
  ──背中は任せた。一緒に戦おう!
  終 劇

コメント

  • つ、続きがきになる…!

  • アーサーが意外にいい怪人で笑ってしまいました😁
    愛の物語ですね✨2人に幸せがおとずれますように😌

  • 異色のコンビが面白かったです♪戦闘シーンのテンポやエフェクトの使い方がすごくうまくて映像が脳内再生されました。

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