君の隣に僕が生きてる

咲良綾

エピソード5.時夫(脚本)

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咲良綾

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〇オフィスビル前の道
  バスから降りた穂多美とシアンの前に
  鎖衣の知人らしい男性が現れたが──
小牧穂多美「どなたですか?」
久我山時夫「ああごめん、あやしいものじゃないんだ。 俺、久我山時夫(くがやまときお) っていうんだけど」
久我山時夫「この子が、友達のガキの頃に そっくりだったもんだから」
小牧穂多美「そんなに似てるんですか?」
久我山時夫「ああ。もう5年くらい音信不通で、 ちょっと心配しててさ。 なあ、知り合いじゃないのか?黒川鎖衣」
シアン「知ってる・・・」
小牧穂多美「ちょ、シアン!」
久我山時夫「ほんとか!あいつ、今どうしてるかわかる?」
シアン「わからないけど、僕のこと探してるかも」
久我山時夫「お前を探してるって、どういうことだ?」
小牧穂多美「いや、あの・・・ 弟! この子は黒川鎖衣さんの弟なんです!」
小牧穂多美「わたしたちも居場所は知らなくて。 探しに来たけど、諦めて帰るところなん ですよー」
久我山時夫「弟?あいつは天涯孤独なはずだけど・・・」
  しまった、咄嗟の嘘が下手すぎた
久我山時夫「そうか、あいつ、生き別れの弟がいたのかー!!」
  あれ?信じてる
久我山時夫「時々ぼーっと子どもを見たりしてると思ったら、弟を探してたのか・・・」
久我山時夫「オッケーオッケー。 俺が知ってることは教えてやる。 ちょっとその辺で座る?」
小牧穂多美「で、でも、この子体が弱いから、 今日は早く帰りたいんです」
久我山時夫「じゃあ、俺車出してやるよ。 それなら車の中で話せるだろ」
小牧穂多美「ええっ・・・!」
小牧穂多美「あの、でも、ちょっと遠いんです。 多分片道2時間以上かかっちゃう」
久我山時夫「あー、そのくらい全然オッケー。 俺、明日仕事休みだし、独り身で自由きくし。 ドライブとか小旅行、好きなんだよ」
  す、すごいフットワークの軽い人だな・・・
  っていうか、信用してもいいのかな。
久我山時夫「警戒してる?まあするよな」
久我山時夫「これ、俺の名刺。 勤め先に電話してくれてもいいよ」
  全くそんな風に見えなかったが、
  なんとこの人、公務員だ。
  名刺に胡散臭そうなところもない。
シアン「ほた、どうする?」
小牧穂多美「うーん・・・」
  正直、車に乗せてもらえるのは助かる。
  シアンの体力のこともあるけど、
  研究所から追いかけてこられても
  見つかりにくいというのが大きい。
  ええい、ここは思い切って!
小牧穂多美「じゃあ、お願いします」
久我山時夫「よっしゃ!お願いされたぜ」
  だ、大丈夫かな・・・

〇走行する車内
久我山時夫「すげーなー。 ほんと鎖衣にそっくりだよ、お前」
久我山時夫「でもなんで生き別れてたんだ? もしかして、親父さんの隠し子とか?」
シアン「え・・・ええと・・・ ほた、かくしごって何?」
小牧穂多美「シアンは気にしなくていいから」
久我山時夫「あっ、ごめんなー。 俺、いつもこんな調子でさ」
久我山時夫「デリカシーないって言われるんだけど、 気がついたら思ったこと口走ってるんだよね」
小牧穂多美「あ、いえ・・・」
久我山時夫「あんたは何?そいつの彼女?」
小牧穂多美「ち、違います。 ええと・・・従姉です」
久我山時夫「ああ、なるほどね」
小牧穂多美「時夫さんは、 鎖衣さんのこといつから知ってるんですか?」
久我山時夫「小学3年生のとき引っ越してきたあいつと 同じクラスになって、それからだな。 あのころは素直でかわいかったんだよな~」
久我山時夫「両親が事故で亡くなってから、 陰険なガリ勉野郎になっちゃったけどな。 なんでも、お偉い教授様に引き取られたとかで」
シアン「福成教授?」
久我山時夫「ああそうそう、そんな名前だった」
久我山時夫「大学までは鎖衣もこの町にいて、なんだかんだつるんでたけど、卒業してから疎遠になったっていうか、音沙汰なくなったんだよな」
久我山時夫「研究がどうとか言ってたけど、 就職先については口を割らなくてさ・・・」
久我山時夫「お前ら、どこまで鎖衣のこと知ってんの?」
小牧穂多美「えっと。あまり知らないです」
久我山時夫「そうかそうか。 じゃあ、俺に出会えたのはラッキーだったな」
久我山時夫「俺はあいつの学生時代には相当詳しいぞ。 初恋のこともご存知だぞ~」
小牧穂多美「ぶっ! そ、そんなの知らなくていいです!」
久我山時夫「そうか? あいつの意外な側面が明らかになるかもよ?」
シアン「僕、聞きたいな」
  興味ありですか!?
久我山時夫「では教えてしんぜよう。実はあいつの初恋ってさー、なんとグラビアアイドルでさ」
シアン「ぐらびああいどる?」
久我山時夫「なんだ少年、まさか、 グラビアアイドルを知らないのか・・・!」
シアン「うん」
小牧穂多美「いやー!シアンに余計なこと吹き込まないで!」
久我山時夫「なんでだよ。グラビアアイドルは余計なことじゃなくて、男の必須科目だろ」
小牧穂多美「別に必須でもなんでもないでしょ!」
久我山時夫「いやいや、青少年の健全な成長には不可欠な要素だぞ。あんまり抑圧すると歪むぞ?」
小牧穂多美「うぅ・・・」
久我山時夫「グラビアアイドルってのは、エロ可愛い姿が見たい男の願望を満たしてくれる女神だよ」
シアン「ふーん・・・鎖衣は女神様が好きだったの?」
久我山時夫「そうそう。その女神様にファンレターを出したら返事が返ってきて、文通してるつもりになって舞い上がってさ」
久我山時夫「俺は嫉妬に狂ってハンカチを噛みしめながら負けずに手紙を」
小牧穂多美「お前もかい」
久我山時夫「いやー、若かったねぇ」
小牧穂多美「はあ・・・」
  鎖衣さん、生まれたときからクールですみたいな顔してたくせに、全く男ってやつは・・・
シアン「その女神様って、ほたみたいな感じかなぁ」
小牧穂多美「! ? ! ? ! ? ! ?」
シアン「可愛くて、鎖衣が好きになっちゃう感じなんでしょ? 多分、僕と鎖衣の好みって似てるはずだから」
小牧穂多美「ちょ・・・!何言って・・・!」
久我山時夫「なんだ少年、すげー口説くじゃん!? そうか・・・従姉って、結婚もできるもんな」
小牧穂多美「で、でも、わたしエロくないもん! 胸ないし!!」
シアン「え?ないの?」
  ぺた
シアン「ほた、胸あるよ?ちゃんと女の子だよ」
小牧穂多美「・・・!っ・・・!」
久我山時夫「大胆だな、少年・・・!だがそれはさすがにまずいと思うぞ?セクハラだぞ!」
シアン「せくはら?」
久我山時夫「許可を得た者にしか許されない聖域の侵害だ。 違反すると、嫌われる可能性が極めて高い」
シアン「えっ・・・そんなの嫌だ。 ほた、ごめんなさい。嫌いにならないで」
小牧穂多美「うん、あの・・・ 胸とかお尻とか触るのは、やめてね」
久我山時夫「随分浮世離れした少年だな。 アマゾンの奥地にでもいたのか?」
小牧穂多美「体が弱くて、隔離されてたんです」
久我山時夫「ああ、そういう・・・それは大変だったな」
久我山時夫「やっぱり、お前鎖衣に似てるな。見た目以上に、空気がさ。あいつも純粋なやつなんだよ」
久我山時夫「陰険な感じになってからも、根は素直でさ。 淋しがりで、愛情深くて」
シアン「時夫さんは、鎖衣が好きなんだね」
久我山時夫「・・・そりゃ、好きだけどさ。 純粋に友人としてだぞ? あっちの意味はないぞ?」
シアン「あっちの意味?」
久我山時夫「つまり、俺と鎖衣はボーイズラブ関係ではないと・・・」
シアン「ぼーいず?」
小牧穂多美「ストーーーップ!! もうこれ以上シアンを汚さないで!」
久我山時夫「汚す?おいおい、それこそ偏見だぞ!俺は男に興味はないが、BLは汚いもんじゃないぞ」
小牧穂多美「でも、これからよからぬ話に なりそうなんだもの!」
久我山時夫「なんだよー、俺はデリカシーがないだけの 品行方正な大人だぞ」
小牧穂多美「デリカシーがない時点で問題です!」
小牧穂多美「シアン、疲れてない? 横になった方がいいんじゃない?」
シアン「膝まくらしてくれるの?」
小牧穂多美「うん」
シアン「ありがとう」
久我山時夫「膝まくらかぁ、いいなーうらやましいなー。 俺もショタキャラになりてぇ」
シアン「しょた?」
小牧穂多美「時夫さんは黙って!」

〇白いアパート
久我山時夫「ここでいいのか?」
小牧穂多美「ええ。こんなところまで、どうもありがとう」
小牧穂多美「シアン、着いたわよ。大丈夫?」
シアン「ん・・・」
小牧穂多美「あの・・・これ、ガソリン代です」
久我山時夫「あ? ガキがそんな心配すんなよ、 俺は趣味で付き合ったんだからな」
久我山時夫「明日も暇だし、 どこか行く予定があれば足になるぜ?」
久我山時夫「シアン見てると懐かしいしさ。 お前ら、面白いよ」
小牧穂多美「明日は、病院に行くだけなんですけど・・・」
久我山時夫「じゃあ、その病院まで送るよ」
小牧穂多美「いいんですか?」
久我山時夫「いいんですよ。 じゃあ、明日の朝何時にする?」
小牧穂多美「9時半くらい」
久我山時夫「了解」
久我山時夫「さてと、ぱんつ買いに行くか!」
小牧穂多美「ちょ・・・!ぱんつって」
久我山時夫「替え持ってきてないし。そこ重要だろ?」
小牧穂多美「わざわざ言わなくていいから!」
久我山時夫「あははは、じゃあな」
小牧穂多美「あっ、今日はどうするんですか? よかったら、知り合いに頼んで・・・」
久我山時夫「いい、いい。ぱんつ買ったら きれいなおねえちゃんのいる店に行くから~」
小牧穂多美「もう・・・ほんと、ヘンな人だなあ」
シアン「ほた」
小牧穂多美「ん?」
シアン「僕が寝てる間、ずっと時夫さんと話してたの?」
小牧穂多美「うん。あの人、おしゃべりだよね」
シアン「・・・・・・」
小牧穂多美「じゃあ、中に入ろうか。ドライブスルーでハンバーガー買っておいたけど、食べられる?」
シアン「うん・・・」
  次回へ続く
  シアンと2人で過ごす夜。
  繋いだ手から伝わる想いは──
  
  エピソード6.温もり

次のエピソード:エピソード6.温もり

コメント

  • 旦那さんとの出会いエピソード前回の作者コメントで聞けて嬉しかったです!!✨😍

    そして相変わらず引きこまれるお話です・・・
    凄いです・・・✨😊

  • 修正してこうなってるんですね。
    元ネタ想像するのが怖いです。

    鎖衣のことを知ってるからこそ車に乗ったんだと思いますが、バッドエンドにもなりうる展開にドキドキでした。明らかに人の良さそうな時夫さんでしたがつい怪しんでしまいました。こんないい人いるんですね。

    そしてシアンの身体がどこまでもつか心配です。病院まで頑張って。

  • 彼はいいキャラでした。でも、こんな親切でやさしい人なかなかいないですよね。

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