さつらもん

Saphiret

エピソード2(脚本)

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〇カラフルな宇宙空間
田中真司(たなかしんじ)「うわああ!」
  まるで強い磁石みたいな猛烈な勢いで
  身体がドアの向こうに引っ張られていった
田中真司(たなかしんじ)(あっ、足が、足が浮いている!)
  そこは、床も壁も天井もない、とてつもなく広い『空間』だった
田中真司(たなかしんじ)(いや、広いっていうか・・・ 奥行とか高さの感覚が全然掴めない。 ここ、ホントにこのマンションの部屋!?)
田中真司(たなかしんじ)(それにあちこちに浮かんでいる、これは何だろう? ん? 文字? 文字が空中に・・・!?)
  舞っているその文字は、漢字のようだけど漢字とは少し違う感じがした
田中真司(たなかしんじ)「あちっ!」
  肩にかかった何かが熱くて、思わず払いのける
田中真司(たなかしんじ)(あ、文字が・・・)
  肩にかかったのは文字だった。
  舞いながら、じりりと小さな音を立てて燃え尽きた
田中真司(たなかしんじ)(そういえばさっきから焦げ臭かった。 あと、ずーっと鳴っているこの雑音はなんだろう?)
田中真司(たなかしんじ)(音・・・? いや違う。誰かが喋っている声か?)
  声の方向を見据えると何かが見えた
田中真司(たなかしんじ)(なんだろう? あのゆらゆらした黒い塊・・・うねっていて何だか気味が悪いな)
  ・・・
田中真司(たなかしんじ)(え、目が合った!? 人か!? いや、あれは・・・ 人の形をした「何か」だ!)
  よこせ・・・
  瞬間、背骨の髄に氷水を流し込まれたような寒気に襲われた。雨に濡れたせいじゃない、何かもっといやな感じの・・・
田中真司(たなかしんじ)「うっ、苦しい! なんだ、身体の中からひりつくような痛みは・・・!?」
  全部よこせ!
  それもこれも、全て吾れのものだ!
  突然、人型のモノの全身を縁取るように火がついた
田中真司(たなかしんじ)「えっ!」
  そして周囲の文字を焼き尽くしながら、信じられない速さでこっちに向かってきた!
殺裏比可理(さつうらひかり)「危ない!!」
田中真司(たなかしんじ)「わっ!」

〇カラフルな宇宙空間
  突然、また磁石のように引っ張られて、僕は後ろ向きに転んだ
田中真司(たなかしんじ)「痛って・・・」
  気づくと目の前に札浦さんが立っていた
殺裏比可理(さつうらひかり)「ったく、ただでさえしつこくて厄介なのに手間かけさせないで」
田中真司(たなかしんじ)「札浦さん、無事なんですか!?」
殺裏比可理(さつうらひかり)「無事って、誰に向かって言ってるの!? 私が助けなかったら大学生、あなた死んでたよ!」
田中真司(たなかしんじ)「え!?」
殺裏比可理(さつうらひかり)「ぼやぼやしていないで、さっさと立って私の後ろに隠れて!」
田中真司(たなかしんじ)「は、はい!」
殺裏比可理(さつうらひかり)「アレは『無間』っていう欲の化身。 大学生、いい具合に標的になっちゃってるね。 財産、狙われてるよ」
田中真司(たなかしんじ)「む、けん・・・!? 財産って、僕今ほぼ一文無しですけど──」
殺裏比可理(さつうらひかり)「浅はかね。 お金の価値しか知らないの?」
  その言葉が終わる前に、『無間』がまた炎をまとい、咆哮を上げて迫ってきた
  うおおおおおお!
田中真司(たなかしんじ)「うわあ!」
  僕は札浦さんの後ろで目をつむる
殺裏比可理(さつうらひかり)「オン、キリキゾゴウリョウ、キュウキュウニヨリツリョウ!」
  札浦さんが何かの言葉を叫ぶと、宙に舞っていた文字が一斉に『無間』に向かっていった
  ぐうう・・・邪魔立てするな!
  この、さつらもんが!
田中真司(たなかしんじ)「札浦さんの攻撃が効いているんだ。 それにしても、なんて声だ。頭が割れそうだ!」
  よこせ、よこせ、よこせ!・・・その力、命まるごと全部差し出せ!
  うおお、ううう・・・!
田中真司(たなかしんじ)「ダメだ、『無間』の言葉がしつこく耳につく。思考ごと持っていかれそうだ!」
殺裏比可理(さつうらひかり)「やはり、ね。大学生、耳、大丈夫?」
田中真司(たなかしんじ)「ひどい叫び声です。 とても聞いていられない!」
殺裏比可理(さつうらひかり)「つらいなら耳をふさいでおいで。 今は簡単な守りしかしれやれないから──」
田中真司(たなかしんじ)「わ、わかりました」
殺裏比可理(さつうらひかり)「・・・凶つ者より守りはえませ」
  札浦さんが何か呪文を唱える間、僕はしっかり耳をふさぎ、目もむつった
  少しして、静かになったのでそっと目を開けてみると、『無間』はすっかり文字で包まれた塊になっていた
殺裏比可理(さつうらひかり)「ふう・・・」
田中真司(たなかしんじ)「札浦さん、ありがとうございました」
殺裏比可理(さつうらひかり)「大学生、約束守らなかったね どうしてドアを開けたの?」
田中真司(たなかしんじ)「す、すみません。 でも火が燃える音とかうめき声とか聞こえて心配で・・・」
殺裏比可理(さつうらひかり)「何があっても絶対勝手に開けないでって言ったよね?」
田中真司(たなかしんじ)「だけど・・・鍵開いてましたよね?」
殺裏比可理(さつうらひかり)「帰宅するなりアレが待ち構えてたの。 いきなり祓いをするはめになって、私だって災難だったのよ」
殺裏比可理(さつうらひかり)「ったく、修羅場にのこのこ入ってくるなんて危なっかしいったら・・・」
田中真司(たなかしんじ)(そんなこと言われても・・・)
田中真司(たなかしんじ)「それより札浦さんって、いったい何者なんですか? この部屋で何しているんですか?」
殺裏比可理(さつうらひかり)「私は・・・」
殺裏比可理(さつうらひかり)「私は『無間』みたいな魔物を除く仕事をしているの」
田中真司(たなかしんじ)「霊能者・・・みたいな感じですか?」
殺裏比可理(さつうらひかり)「そんな気楽なものじゃないけどね。 ま、大学生はそう思ってればいい」
田中真司(たなかしんじ)(妖怪退治みたいなこと!? じゃあここは、この場所はいったい・・・)
  辺りを見回していると、札浦さんが見透かしたように言う
殺裏比可理(さつうらひかり)「ここは、洞(どう)といって祓いや魔封じを行う神域なのよ」
田中真司(たなかしんじ)「どう?」
殺裏比可理(さつうらひかり)「ま、この領域じゃ落ち着かないだろうからここはいったん閉じよう」
殺裏比可理(さつうらひかり)「大学生、悪いけどもう少し付き合ってもらうよ」
  札浦さんがまた呪文のような言葉を唱え始め、指を不思議な形に結んだり開いたりすると・・・
田中真司(たなかしんじ)「え!」
  ぐらりと世界が回転した!

〇綺麗な部屋
田中真司(たなかしんじ)「あ、ここ、こうちと同じ間取りの部屋・・・ってことは」
殺裏比可理(さつうらひかり)「ようこそ私の部屋へ」
田中真司(たなかしんじ)(さっきまでの空間はどこに・・・?)
殺裏比可理(さつうらひかり)「洞は閉じた。いつまでも開けてると危ないしね。 で、大学生。耳は大丈夫?」
田中真司(たなかしんじ)「耳? あ~、はい。さっきは死ぬかと思いましたけど」
殺裏比可理(さつうらひかり)「・・・ホントに聞こえるんだね」
田中真司(たなかしんじ)「札浦さんは何ともないんですか?」
殺裏比可理(さつうらひかり)「・・・」
殺裏比可理(さつうらひかり)「だいたい、部屋の音が聞こえるって時点で気づくべきだったか・・・」
田中真司(たなかしんじ)(あ、もしかして、 この部屋から聞こえた物音って・・・)
殺裏比可理(さつうらひかり)「洞の音は聞こえちゃうし、無間にはいち早く眼をつけられるし」
田中真司(たなかしんじ)(まずい・・・)
  札浦さんにじいっと見つめられ、耐えきれず目をそらした
殺裏比可理(さつうらひかり)「大学生、あなた何者?」
田中真司(たなかしんじ)「え、何者って・・・僕は田中真司。隣の部屋の住人ですよ」
殺裏比可理(さつうらひかり)「とぼけないで。 質問の意味、分かってっているでしょう?」
田中真司(たなかしんじ)「・・・」
殺裏比可理(さつうらひかり)「『聞こえ』なんでしょう?」
田中真司(たなかしんじ)「・・・!!」

次のエピソード:エピソード3

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