ひずむ回転木馬

香久乃このみ

第三話 やりなおし(脚本)

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〇大学の広場
文「ナオ君が本庄君にしたこと、 私全部知ってる」
直之「! あ、あれは・・・」
直之「大事な彼女が 他の男から言い寄られてたら 彼氏としてはやっぱ、なぁ? 見逃せないだろう?」
文「二人で被害届出すことにしたから。 大学にも防犯カメラの映像提供の 協力を求めてる」
文「ちゃんと法で裁かれて」
直之「ちょっと待てって。 文は何か誤解を・・・」
文「さようなら。 二度とその顔見たくない」
直之「あこや! じゃなくて文!!」
直之「行くなよ、なぁ!! おい!!」
直之(なぜだ、どうしてこんなことに!? 俺はただ、悠城あこやをあの男に 取られたくなかっただけだ!)
直之(くそっ、どこで間違えた!? 俺は何をどうすべきだった!?)
(もう一度、やり直せたら・・・!)

〇教室
一也「なぁ雪屋、 お前直之のこと好きって本当かよ!?」
直之(っ!! ここは・・・)
文「!? どうして、それを・・・」
直之(またここへ戻ってこられたのか!?)
継雄「おい、マジだぜ! どうする、直之?」
直之(よし、やり直せるぞ! 今度こそつまらないミスはしない)
茉莉「直之ぃ、 あの子、あぁ言ってるけど、どうする? 嬉しい?」
直之(まずはここが ひとつめの『運命の分岐点』だ)
直之「すっげぇ嬉しいよ、文!」
一也「は?」
継雄「え? 『あや』?」
文「・・・!」
茉莉「ちょ、ちょっと、直之・・・」
継雄「お前、雪屋のこと 名前で呼び捨て・・・」
一也「・・・・・・」
茉莉「ねぇ、直之、やりすぎだよ? そんな冗談・・・」
直之「うるせぇな。 ウゼェよ、お前。 消えろ」
茉莉「なっ!?」
一也「・・・・・・」
継雄「ウソだろ・・・」
直之「行こう、文」
文「ぁ、あの・・・」

〇黒
  俺はこの日から文と付き合い、
  前回と同じように高校、大学は
  恋人として隣に居続けた。
  文を脚本家として成功させるため、
  小説の勉強に付き合い、
  女優にするため、見た目も磨かせる
  本庄のことは巧みにけん制し、
  ついに俺は文と
  結婚までこぎつけることが出来た。
  ──だが

〇ダイニング(食事なし)
直之(おかしい! いつになれば文は 『悠城あこや』になるんだ!)
  文は俺と結婚して
  間もなく新たな命を授かった
  出産して以来、
  文は毎日
  育児と家事しかしなくなってしまった
直之(本来ならこの時期にはすでに シナリオ賞か何かを取って 映画化されていたはずだ!)
直之(そして、 女優としてもデビューを・・・!)
直之「なぁ、文、 シナリオ書かないのか?」
文「・・・・・・」
直之「ほら、これ見ろよ。 シナリオを募集してるぜ? 締め切りは二ヶ月後だってよ」
直之「お前、才能あるんだからさ。 挑戦しないと勿体ないぞ?」
文「・・・・・・」
文「そんなの書く時間、どこにあるの?」
直之「は?」
文「365日24時間、 自由になる時間なんてない。 ずっと子どもの世話があるし」
文「ナオ君は書け書けって言うけど、 そのくせ私の時間を作るための協力を なにひとつしてくれないじゃない」
直之「それは・・・、 俺は仕事で疲れてるんだ。 家でくらいゆっくりさせてくれよ」
直之「大丈夫! お前はすごい才能があるんだから、 ちょちょっとやれば・・・」
文「物語を書くには集中する時間が必要なの。 深い海の底まで潜って、その光景を スケッチするようなものだから」
文「ちょっと水面に足をつけた途端に 陸に呼び戻されるような環境で 出来るわけない」
直之「・・・・・・」
  文が俺に向ける眼差しは
  ひどく疲れて恨めし気だった。
直之(まるでタイムリープ前に見た 茉莉の目そのものだ・・・)
直之「ふざけるなよ・・・。 なんのためにお前を選んだと思ってんだ」
文「・・・?」
直之「俺が茉莉を捨ててお前を選んだのは 寄生させるためじゃねぇんだよ!!」
文「痛っ! ナオ、くん?」
直之「なぁ、賞を取れよ! 映画になれよ、女優になれよ! 金持ちになってくれよ!!」
文「やめて! 痛い、ナオくん!?」
直之「あいつが持ってた高級腕時計はどこだよ! スーツは!? 靴は!?」

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コメント

  • 特に今話を読むと、”成功”とか”幸せ”って細かな配慮や努力の積み重ねなのだなーって実感させられますね。それを怠る最低な直之には”成功”や”幸せ”を掴んでほしくないと心底思ってしまいます。

  • ああ、とことん人や環境のせいにして自省しないタイプ……いますよね、関わりたくないけど~!😂
    しかし、子どもがいたのに「作らなきゃいいじゃん」って、どんだけ関わってなかったのよ??リセットして存在を消されてもなんとも思ってないところが一番ぞっとしますね。

  • 絶対に次は子供さえ作らなければ…と言い出すと思ってました。そうじゃあないんだよおおおぉ。やり直しが出来ることの代償はいったい何なのか。次の神(作者)の采配をお待ちしています。

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