Riverside Baron ~蓬莱番外地~

山本律磨

エネミー・オブ・エンパイア(5)(脚本)

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〇川沿いの原っぱ
お蝶親分「・・・」
義孝「朝からなんだ」
義孝「俺は遅くまでバイオリンの練習をしていたんだぞ」
義孝「顎は痛いし指はつるし近所のオヤジはうるさいと怒鳴りこんで来るし」
お蝶親分「諦めな。アンタごときに楽器は無理だよ」
お蝶親分「というか、もういい」
義孝「新聞?」
義孝「ふむ。加東内閣支持率上昇。また軍縮か、けしからん」
お蝶親分「その下、写真も載ってないちっこいところ」
義孝「大芸能博爆発事故において・・・」
義孝「憲兵司令来栖川男爵死亡だと!?」
義孝「どういうことだこれは!」
お蝶親分「手前が言ったんだろ?バロンはもう死んでいるって」
義孝「・・・!」
お蝶親分「つまりはそういう事さ」
お蝶親分「フフッ・・・」
お蝶親分「フフフフフ・・・」
お蝶親分「哀しいねえ。偽物の道化と間違えられたままで」
お蝶親分「誰も本当のアンタだと気付いてくれなかったんだね」
義孝「黙れ!」
義孝「貴様・・・」
お蝶親分「バロンが死んだ!」
お蝶親分「お前のせいだ!お前が死ねばよかったんだ!」
義孝「・・・」
お蝶親分「お前が!お前が!お前が!」
お蝶親分「・・・」
義孝「・・・」
お蝶親分「生きてここから出られると思うなよ・・・」
義孝「やめておけ。憲兵司令の肩書は伊達ではないぞ」
お蝶親分「ほざけ!」
お蝶親分「!?」
義孝「無宿者の刃が俺に届くと思うな」
お蝶親分「それでも・・・」
  『なんだ手前ら!勝手に入って来んじゃねえ!』
お蝶親分「ど、どうしたヒナ!」
義孝「何があった?」
義孝「ええい!世話のかかる!」

〇暖炉のある小屋
警官「娘!根室清濁なる叛徒を知っているな!」
警官「ここに、奴と思しき男が入っていったとの調べはついているのだ!」
ヒナ「なんでえなんでえ!官憲だかケンケンだから知らねえイヌッコロが!」
ヒナ「同じようなツラしやがって!おととい来やがれべらぼうめい!」
警官「こ、こんな子供がなんたる暴言」
警官「おそるべし蓬莱街」
伝八「お嬢ちゃんさ。もうちょっと上品に喋ってくんねえかな」
伝八「部下が引いてんだけどよ」
ヒナ「がるるるる!がるるるる!」
伝八「この街の若い連中も何人か根室に感化されてるらしいな」
ヒナ「ふん!誰があんな青病単・・・」
伝八「やっぱり知ってたか」
ヒナ「・・・あ!」
ヒナ「ひ、卑怯だぞ髭ゴリラ!」
伝八「ガキゴリラに言われたかねえな」
伝八「連行するぞ」
お蝶親分「待ちな角袖野郎!」
伝八「お蝶」
義孝「下がっていろ、ヒナ」
伝八「お前さんがバロン吉宗か?」
伝八「娘にどういう教育してんだ?猿にでも成長させたいのか?」
ヒナ「うるせえ!」
義孝「貴様こそ所轄の三下といったところか?」
義孝「せめて署長格でも出張ってくれば諸々早く片付くのだが。どうせ下っ端では話にならんだろうな」
伝八「ああ?どういう意味だ」
義孝「独り言だ。気にするな」
義孝「今はこの顔に免じて引いた方が得策だぞ」
伝八「黙れよ道化。父子ともども引っ張ってやる」
お蝶親分「石塚。そいつの言う通りだ」
お蝶親分「いたいけな少女を連れ去って折檻したとあっちゃあ、署長閣下が黙っちゃいないだろうからね」
義孝「下衆な新聞屋どもも大喜びの醜聞だな」
ヒナ「きゃーたすけてーへんなおじさんにへんなことされるー(棒)」
伝八「チッ!」
伝八「帰るぞ!」
ヒナ「ばーかばーか!う○こち○んち○ん!」
義孝(まあ、あの刑事の言い分も一理あるようだがな・・・)
ヒナ「助かったぜバロン」
義孝「如何わしい連中とつるむからだ。お前も反省しろ」
ヒナ「つるんでんのはトラとデンキだよ」
義孝「では奴らとも縁を切れ」
義孝「そして学校にでも行って、もう少し教養というものを身につけろ」
義孝「このままでは本当に、女郎だの夜鷹だのに身をやつしてしまうぞ」
ヒナ「学校って・・・そんな金どこにあるんだよ」
義孝「それは俺が責任を取って・・・」
義孝「・・・!」
お蝶親分「・・・」
義孝「・・・」
ヒナ「・・・何だよ」
ヒナ「言いたい事あるんならはっきり言えよ」
義孝「・・・」
義孝「バイオリンの練習をして来る」
義孝(まだ喋るな)
お蝶親分(え?)
義孝(その時が来たら、俺が話す)
義孝(俺が詫びる)
義孝(頼む)
お蝶親分「さてと、飯にしようかね」
ヒナ「ないよ朝ごはんなんて」
お蝶親分「たまにはお蝶さんが作ってやらあな!」
ヒナ「見ヶ〆何割増しですか?」
お蝶親分(・・・学校、入れさせようかね)

〇川沿いの原っぱ
  『おいバロン!朝っぱらからうるせえぞ!』
義孝「うるさいそうだ。バロン吉宗」
義孝「・・・すまない」
義孝「すまなかった」

〇中世の街並み
美島「・・・あ」
最上「や、やあ」
美島「非番?」
最上「ああ、うん」
最上「やっぱり、少し手を貸してほしくてさ」
美島「?」
最上「件の爆発事故。どうにも腑に落ちないんだ」
最上「閣下がバイオリンを手に亡くなってったって事実も含めて」
最上「・・・俺は」
最上「閣下が生きているような気がするんだ」
最上「確かに姿形は似ていたけど、あの黒こげの遺体が閣下だったとは思えない」
最上「思いたくないんだ・・・」
美島「そう・・・」
美島「ごめんなさい。手伝えない」
最上「・・・」
最上「分かった」
美島「来栖川義孝は私達の敵だった」
美島「新しい時代を築く帝都の・・・敵だった」
美島「この取材はもう終わり」
最上「終わり・・・か」
男「どうしたんだい扶美枝?早くしないとまた鰻屋並ばないといけないよ」
美島「うん。分かってる」
美島「じゃあ。さよなら」
最上「ああ」
最上「さようなら」
猪苗代「・・・」
猪苗代「あれが最上少尉。来栖川男爵第一の部下」
猪苗代「メモメモ・・・」

〇川沿いの原っぱ
義孝「お!」
義孝「鳴ったぞ!はははははっ!」
  第三話 エネミー・オブ・エンパイア(終)

次のエピソード:GoToフェス!(1)

コメント

  • ヒナちゃんに言わなかったのは義孝が変わり始めたからでしょうか。実の娘が再会した時に彼の変化に気づくかどうか気になりますね。

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