エピソード8(脚本)
〇山の展望台(鍵無し)
星桐彦「やった! 頂上だ!」
星桐彦「おーい、委員長! 早く、早く!」
顔もあげずに黙って登る乙女。
星桐彦「なんだよ、冷たいな」
星桐彦「あ、これって、もしかして佐原が言ってた〝ふたりの鍵〟ってやつか?」
鍵に近づく桐彦。
星桐彦「うわ、こんなにいっぱい・・・けっこう有名なんだな」
夏川乙女「くだらないわね」
星桐彦「わあ! いつの間に!」
星桐彦「委員長も知ってるのか?」
星桐彦「永遠の愛をどうとかっていう〝ふたりの鍵〟」
夏川乙女「こんなもので永遠を信じられるなんて、ずいぶんな能天気ね」
星桐彦「能天気って・・・」
桐彦に手を差し出す乙女。
夏川乙女「約束は果たしたわ」
〇山の展望台(鍵無し)
星桐彦「本当に食わないの? せっかく弁当二つ買ったのに」
夏川乙女「ガムの味が変わっちゃうもの」
星桐彦「すごいこだわり。一枚も分けてくれないし」
夏川乙女「やりたくないことをしてせっかく手に入れたのに、どうして分けなくちゃいけないの」
星桐彦「ちぇ。ケチ」
夏川乙女「・・・そろそろ、このガムを買ったコンビニを教えてくれてもいいんじゃない?」
星桐彦「うん。明日な」
夏川乙女「・・・どうしてよ」
星桐彦「だから、俺は委員長と友だちにならなくちゃいけないからさ」
夏川乙女「いくら努力したって、友だちになんかなれないわ」
夏川乙女「仲間なんて・・・」
星桐彦「なんでだよ?」
星桐彦「なんでそんなに頑固に・・・。 俺、そんなに信用ない?」
夏川乙女「・・・・・・」
星桐彦「まあ、俺はあきらめないけど」
夏川乙女「あなたは知らないから・・・」
星桐彦「ん? なにを?」
夏川乙女「・・・・・・」
星桐彦「なんだよ?」
夏川乙女「私、もうずっと・・・357日一人でいるの」
星桐彦「さんびゃ・・・え?」
夏川乙女「その間、何人もあなたみたいに目覚めたわ」
星桐彦「目覚めたって・・・俺みたいに気付いたってこと?」
夏川乙女「そう」
星桐彦「何人も・・・その人たち、今どこに?」
夏川乙女「・・・みんな、また眠っちゃった」
星桐彦「眠った・・・」
夏川乙女「そう。みんな・・・」
夏川乙女「みんな、あっさり昨日のこと、全部忘れて」
星桐彦「そんな・・・」
夏川乙女「例外はないわ。 私だけ、なんの因果かこうして取り残されるの」
星桐彦「・・・だから委員長は、俺も、その、眠ると思ってる?」
夏川乙女「そうよ」
夏川乙女「あなたもきっと、こんな風にすごしたこと、明日には忘れちゃうわ」
星桐彦「忘れないよ! 絶対!」
夏川乙女「絶対なんて・・・」
星桐彦「絶対だよ! 俺は絶対に眠らない!」
夏川乙女「そ・・・そんなの無理よ」
星桐彦「無理でもやるんだよ!」
星桐彦「だって、俺が眠っちゃったら委員長、さみしいだろ?」
夏川乙女「え?」
星桐彦「俺、さみしかったから」
星桐彦「世界でひとりぼっちみたいな気持ちになってさ」
星桐彦「だからあの時、委員長が話しかけてくれたの、本当にうれしかったんだ」
夏川乙女「・・・・・・」
星桐彦「さみしくないわけないよ」
星桐彦「こんな世界に一年もひとりぼっちなんだろ」
夏川乙女「そんなこと・・・もう、慣れたわ」
星桐彦「さみしかったから、あの時、俺に話しかけてきたんじゃないのか?」
夏川乙女「・・・・・・」
星桐彦「だからさ。だから俺、絶対に眠らない」
星桐彦「俺のためにも、委員長のためにも」
夏川乙女「馬鹿みたい・・・そんなの無理よ」
星桐彦「今までのやつらが元に戻ったからって、俺も戻るって決まったわけじゃないだろ」
夏川乙女「・・・・・・」
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