異世界化した街で俺の「こん棒」がエクスカリバーを超えるまで

moon&edge3

エピソード1 謎のメールと全ての始まり(脚本)

異世界化した街で俺の「こん棒」がエクスカリバーを超えるまで

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〇古いアパートの居間
トウキ「今日はありがとう。 すごく楽しかったよ。」
サリナ「私もすごく楽しかった! 絶対また遊ぼうね」
サリナ「次会う時は、一緒に行ってほしい所があるの。きっとトウキくん気にいるから!」
トウキ「えっ。も、もちろん行くよ!」
サリナ「やったぁ!じゃあ、約束だよ。約束・・・ね!」
トウキ「うん、約束だ!」
サリナ「ありがとう。じゃあね!」
トウキ「・・・」
  俺はトウキ。
  大学2年生。
  サリナさんは同じ学部で、隣のS市に住んでて・・・
  いや、単刀直入に言おう。
  俺は彼女が好きだ。
  告白する勇気はまだないけど、
  好きなんだ。
  さっきの約束・・・
  
  絶対に行くぞ!
「おい、トウキ。いるか」
トウキ「・・・!」

〇広い玄関
トウキ「な、何だよ、親父・・・」
  この人はトツカ、俺の親父。
  職業は・・・
トツカ「この間の物はもうできているか? 見せなさい」
トウキ「・・・」
トツカ「またか・・・」
トツカ「お前は刀匠の息子だろう。 包丁一本研げないのか。 しかも、なぜいつも棒ばかり作るんだ!」
トウキ「棒じゃないよ。「こん棒」だよ。 俺なりに加工して──」
トツカ「バカか。これを見ろ!」
トツカ「折角任せてやった包丁もこんな姿に。 名匠だったご先祖様に恥ずかしいわ!」
トウキ「し、知ってるだろ! 俺、金属アレルギーなんだよ! それも、特別にひどい。 鉄にさわれないんだ」
トウキ「親父の跡を継ぐのは無理だよ。俺だって悔しいけど!刀匠にはなれないんだ。 俺は・・・」
トツカ「・・・」
  別に親父が嫌いなわけじゃない。
  刀匠としての腕は確かだ。
  世が世なら名刀を打ってただろう。
  でも、俺は親父の期待には応えられない・・・。
  そんな自分が、本当はいやだ。
  ──と、その時。
トウキ「パソコンにメールが届きました? 誰からだろ?」

〇本棚のある部屋
トウキ「知らない宛先からメールが。 誰だ?」
トウキ「怪しいな。開けない方がいいな」
  なのになぜか、操られるように開けてしまっていた。
メールの差出人「はじめまして。この手紙を読んでいる頃には、もう手遅れだろう。だが、せめて誰かに伝えたくてこれを記す」
メールの差出人「私はT市に住んでいる者だ。先に言っておくが、これから書くことは事実だ。 悪戯ではない」
トウキ「T市?この街の人間だって?」
メールの差出人「私は先刻、神と名乗る人物に会った。 近所の居酒屋でな」
トウキ「は?」
メールの差出人「神は私と意気投合し、一つ願いを叶えてやると言った。 酔っていた私はよく考えず答えた」
メールの差出人「「異世界に転生して悠々自適で暮らしたい」と」
  何だよこの変な内容?
  何いってんだコイツ?
メールの差出人「神は「わかった!」と言って去った。 だが、私は会話中に告げられた、ある大切なことを忘れていた」
メールの差出人「相手は【現世利益】の神だったのだ。 つまり、転生とか来世とかいうのは、範疇ではない。 だが神は二言は吐けない」
メールの差出人「その時私の頭の中に声が響いた。 「異世界とやらのイメージは理解した。望み通り住まわせてやる!」と」
メールの差出人「まもなく私の周りの空気が急激に変わり始めた──」
メールの差出人「ざらざら・・・ゆらゆら・・・と」
トウキ「・・・?!?! 俺にまで、なんか見えるぞ・・・?!」
メールの差出人「その時私は、神がしようとしていることがわかった。 来世の異世界転生が無理なら。 今ここに創れば良いのだ」
メールの差出人「このT市を、異世界に創り変えれば良いのだ。と。」
トウキ「ち、ちょッ!! 何だよ! 嘘だろ! おい!」
メールの差出人「まもなくT市は異世界へと「進化」する。 あらゆる記憶は改変されるだろう」
メールの差出人「この街と住民についての記憶はこの世界から消える。 この街の住民の、この世界についての記憶も」
メールの差出人「このメールを読んでいるかも知れない、あなたの記憶も。 すまない。 もしあなたがT市の人間なら 良い異世界ライフを祈る」
トウキ「ま、待て!」
  まさか、もしかして。
  この異様な感覚が──
  夢とか幻覚じゃないとしたら。
  この話は本当で。
  
  そして隣の市・・・、つまり「T市の住人」ではないサリナさんは、「範囲の外」ってことか?!
  冗談じゃない。俺は約束したんだ。
  
  サリナさんとデートするんだ。
  忘れるわけない!
  俺はとっさにそのメールを、アドレスの一番上にあった彼女へと転送した。
  ただ知ってほしかった。
  俺に起きたことを。
  例え忘れられても。
トウキ「・・・!!」

〇街中の道路

〇ヨーロッパの街並み

〇大企業のオフィスビル

〇西洋の城

〇黒
  ・・・
「おーい」
「おーい、起きてくれよ」
  ・・・
  ・・・?!

〇鍛冶屋
トウキ「・・・は?」
客の男「まったく。 寝ぼけてんのか? 店主、早く素材を加工してくれ」
トウキ「・・・?」
客の男「何、びっくりした顔して。 ここは造り武器屋だろ。 製造スキルで剣を一振り作ってくれ」
トウキ「・・・」
  いやいやいやいや?!
  ええええええ?
トウキ「ちょ、ちょっと失礼します!」
  ・・・
  裏へ慌てて引っ込み、鏡の前に立つ。
トウキ「なんだ・・・これ。 俺なのか? この格好・・・髪も?」
  俺は、先程までのことを思い出す。
  どこかの誰かから受け取った、謎のメールのこと。
  
  その内容。
  T市のこと。
  サリナさんのこと。
  俺自身のこと・・・。
トウキ「何一つ、忘れちゃいない。 なぜだ? あのメールを読んだから?」
トウキ「街は本当に異世界になっちまったのか?」
  見回してみるが、スマホもパソコンも見当たらない。
  世界観に合わない、と排除されたのか。
  外は?
  窓を開けてみよう。

〇ヨーロッパの街並み
街の人「さて、素材集めに行こうかな。 北の廃墟のモンスター共がいい」
街の人「私も行くわ。 魔法で送ってあげるね」
街の人「おお、転送系スキルは助かる」
街の人「じゃあ行くね〜」
  消えた!!
街の人「南のダンジョン行きたいな」
街の人「妖精女王様、どこですかぁ〜」
  ・・・

〇鍛冶屋
「おーい!店主、どうかしたのか?!」
トウキ「はーい!今戻ります・・・」
トウキ「あの、つかぬこと聞きますが T市ってご存知です?」
客の男「はぁ? 何のことだ? それより早く仕事を」
トウキ「えっと──」
  ガチャッ!
  その時、ドアが開いて、もうひとりの客が入ってくる。
大柄な客「そいつには無理だぜ」
大柄な客「あんた、知らんのか。 コイツは造り武器屋──「ウェポンマイスター」のスキル系統を持つくせに」
大柄な客「「こん棒」しか造れないんだ」
トウキ「え、ええ──!?」
客の男「そ、そんなことってあるのか?!」
大柄な客「生まれつきの体質「金属不可触」が、スキルと食い合っちまった結果よ」
  ・・・!!
トウキ「金属・・・不可触? ここでも?!」
大柄な客「お前、自分のスキルツリーも忘れたのか。 「マド」開いて見ろよ」
  何かと思ったが、自分の右肩越しに振り返ると、それは出現して見えた。
  なにか書いてある。
  ステータスってやつ?
  レベル:17 クラス:初級マイスター
  固有スキル:武具ノ理解者【ウェポンズフェロー】
  スキル:武器制作
  レベル1 こん棒作成
     2 こん棒作成
     3 こん棒2本作成
     4 こん棒の硬度上昇
  どこまで先のスキル獲得予定を見ても
  こん棒・・・
  こん棒・・・
  何この呪いみたいなスキルツリー?!!
客の男「じゃあ店の金属武器は?」
大柄な客「他人の作ってことさ」
客の男「こん棒といえば最弱武器。 オークや平ゴブリンの装備品。 進化もほとんどしない・・・」
大柄な客「ホント、残念すぎるやつだよなぁ! あの王宮付グランドマイスター、 トツカ様の息子なのに」
トウキ「えっ?」
大柄な客「おっと、噂をすればだぜ。 こんな息子のためにご苦労なこった」
  まさか・・・?
トウキ「なッ!親父!」
  店にツカツカ入ってきたのは、見た目こそ変わっているが確かに親父だ。
  しかも人を何人も引き連れて。
お付きの男「こら。 グランドマイスター様だぞ。 息子でも、トツカ様と呼べ!」
トウキ「いや、だって・・・」
トツカ「いい。構わん。 それよりトウキ。作ったものを見せろ」
トウキ「・・・」
トツカ「またか・・・」
  失笑。溜息。
  親父の付き人らしい連中や、
  店にいる客たちの。
トウキ「で、でも。 俺は金属アレル・・・いや、 金属不可触で・・・!!」
トツカ「もういい。 所詮は親の欲目だったか・・・」
トウキ「・・・?」
トツカ「帰るぞ」
お付きの男「はい!先生!」
トウキ「あっ・・・」
  ・・・
トウキ「く、くそぉーっ!」
  何だよこのクソ設定!
  何なんだよこの世界は!
トウキ「何が「良い異世界ライフを祈る」だ?! あのメールの奴!」
トウキ「T市に住んでるって書いてたよな。 なら、この世界のどこかにいるはずだ。 絶対に探し出してやる! そして──」
  この街をもとに戻させてやる!
  俺はサリナさんに会うんだ・・・!

次のエピソード:エピソード2 最弱マイスターとして

コメント

  • 街が異世界化してしまったのに、やっぱり棍棒を作ってる彼が好きです。
    なんか棍棒の呪いにかかってるみたいですね。
    サリナちゃんと再会できるのでしょうか?

  • サリナちゃんと再会するため、この異世界現象を引き起こす元となった人物を探し当てなければですね。市から何か手段を使って逃げ出すこともできるかも。異世界のようなリメイク現象ですね。

  • 異世界は異世界でも元の世界をモチーフになってる異世界なのですね!
    だから登場人物も同じだけど…違う人になってるのですね。
    中々面白い設定で楽しませて頂きました!

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