第八話 獅噛みつけ(脚本)
〇河川敷
充(あたる)「その目くらましは旭川で経験済みだぜ。 何度も同じ手にかかると思ったのか?」
蒼斗(あおと)「チッ・・・綿火薬を避けながら発砲しやがった・・・伊達に警部じゃないってか」
優心(ゆうしん)「蒼斗!」
充(あたる)(だが、こちらも残り一発になってしまった。今ので仕留められなかったのは、大きい。後は、心理戦だな)
充(あたる)「さあ、もう足掻くネタはないだろう? 大人しく話せば、命だけは助ける」
蒼斗(あおと)「話した途端にズドンじゃ、死にきれない・・・」
蒼斗(あおと)「優心と銃弾1発を交換するのはどうだ?」
充(あたる)「オイオイ、随分優しい友達だな!」
充(あたる)「友達を人質に差し出してくれるって? この拳銃の残弾が1〜2発なら、自分が生き残れるかもしれないからな!」
充(あたる)「そうそう。 家出少女の中村優心チャン」
充(あたる)「お母さんが必死に探しているよ。 電話口だけど、泣いていたみたいだったなあ」
充(あたる)「『男だって認めてあげたら良かった』って」
優心(ゆうしん)「・・・」
蒼斗(あおと)「騙されるな優心、ハイジャックの時みたいにアイツのスキをついて、合気道の技で拳銃を取り上げるんだ」
蒼斗(あおと)「俺が奴を煽って銃口は俺に向けさせる! だから、交換条件を飲んでくれ!」
優心(ゆうしん)「分かってるよ、蒼斗。 心配しなくても、僕の母が僕を認めてくれるなんて、ありえない」
優心(ゆうしん)「あいつの嘘に反吐が出るよ!」
優心(ゆうしん)「僕が貴方の側に行くから、蒼斗の言うとおりにしてください」
充(あたる)「色男の言いなりで良いの? もしかして2人は、デキてる?」
優心(ゆうしん)「いい加減・・・」
優心(ゆうしん)「エエッ!?」
〇河川敷
充(あたる)「ぐはぁ!」
蒼斗(あおと)「なっ、何だあの装甲車!? 警部を後ろから跳ねやがった!!」
優心(ゆうしん)「運転席に乗っているの・・・家系ヤクザじゃない!?」
〇走行する車内
三郎(さぶろう)「オンナに拳銃向けるとは、腐ったサツだぜ!」
三郎(さぶろう)「このお助けマン・三郎様が来たからには、もう安心だ! 2人とも、早く乗れ!!」
〇河川敷
樹(いつき)「コイツは大丈夫だ! 蒼斗、優心乗ってくれ!!」
蒼斗(あおと)「エエッ!?樹!?」
充(あたる)「三郎め、裏切りやがった・・・! ヤクザなんか信用するんじゃなかったぜ!!」
三郎(さぶろう)「馬鹿め!! この軽装甲機動車装に、ハザクラごときの銃弾が刺さるかよ! フワッハッハー!」
〇走行する車内
樹(いつき)「うまくいったな!」
三郎(さぶろう)「丁度、駅前のコンビニに自衛隊の軽装甲機動車があって良かったぜ。 あいつら、コンビニに寄るときは鍵をかけないからな!」
三郎(さぶろう)「だが、この車じゃ目立つから、乗り換えねえとな!」
蒼斗(あおと)「あの・・・なんで助けてくれたんだ?」
蒼斗(あおと)「俺たちを追ってるはずだろ?」
三郎(さぶろう)「そこは、愛だろ愛ッ!!」
優心(ゆうしん)「よくわからないけど、助かったよ。 ありがとう」
三郎(さぶろう)「どっ、どういたまして!? いたしましまして?」
三郎(さぶろう)「実は、事情が変わったのよ」
三郎(さぶろう)「歌舞伎町のボスから連絡が来てな。人違いでボスグループのミッションを託してしまい、最初は取り返すのが俺の使命だったが、」
三郎(さぶろう)「お前たちが素直にミッションを続けていることで、ボスも心境の変化があったらしい」
三郎(さぶろう)「お前たちに随行して、ミッションを助けてやれと言われたんだよ」
蒼斗(あおと)「信じて・・・良いのか?」
三郎(さぶろう)「この装甲車を運転できるヤツ居るのか? 居ねえよな? じゃあ黙って揺られていろ!」
三郎(さぶろう)「あと、富良野のボス襲撃の件で、旭川警察署に匿名で、田中充の拳銃を調べろとタレこんでおいてくれ」
三郎(さぶろう)「しばらくは動けないだろうが、キチガ●は何するかわかんねえからな」
今日の敵は明日の友なんて、本当かな?
俺たちは装甲車に揺られながら、色々な思惑を思い巡らせていた。
〇野営地
三郎(さぶろう)「終点の大樹町までは車で3時間だ。 今日は少々騒ぎすぎたから、明日の朝、出発しようぜ」
樹(いつき)「キャンプか。ホテルに泊まるより安心だな!」
三郎(さぶろう)「それにしてもお前たち、全然金使ってねーな! 真面目か!?」
樹(いつき)(アンタがしつこく追ってきたから、金使うヒマなかったんだとは言えない)
三郎(さぶろう)「肉いっぱい買ってBBQしようぜ!」
三郎(さぶろう)「肉選ぶの手伝ってほしいから、優心、一緒に行ってくれない?」
優心(ゆうしん)「いいよ。 蒼斗の肩の治療道具も買わなきゃならないしね」
三郎(さぶろう)(やったぜ!)
蒼斗(あおと)「何も考えてないのか、裏があるのか・・・」
蒼斗(あおと)「樹、お前はどう思う?」
樹(いつき)「あのさ、蒼斗に俺、謝らなきゃならなくて」
樹(いつき)「刑事に拳銃向けられてた時に、逃げ出してゴメン」
蒼斗(あおと)「俺が逃げろって言ったんだ。 気にするな」
蒼斗(あおと)「あのバケモノ説得して連れ帰ってくるなんて、大金星じゃね?」
蒼斗(あおと)「タバコ、吸う?」
樹(いつき)「いらねーよ!」
樹(いつき)「それより、あの刑事に撃たれた肩は大丈夫なのか?」
蒼斗(あおと)「応急処置は済ませた。後は薬を飲めば、動かしずらいが大丈夫」
蒼斗(あおと)「こんなところで医学を志したのが役に立つとは、皮肉だよ」
〇テントの中
三郎(さぶろう)「いや〜食ったわ。 お前らのおかげでメシも最近、まともに食えてなかったからな〜」
樹(いつき)「お互い様だし!」
三郎(さぶろう)「そういや・・・優心には買い出しの時に話したが、お前にも一応言っておくわ」
樹(いつき)「は?何だよ」
三郎(さぶろう)「あのイケメン──蒼斗だっけ? アイツには気をつけろ」
樹(いつき)「気をつけろ? 蒼斗のこと何にも知らないくせに、よく言うよ」
三郎(さぶろう)「お前こそ、アイツの何を知っているんだ?」
三郎(さぶろう)「苗字は?住所は?出身校は?」
三郎(さぶろう)「それもアイツが嘘ついてないって、何か証拠あるのかよ?」
樹(いつき)「それは・・・」
三郎(さぶろう)「アイツはな、自分が生き残るために、歌舞伎町のボスに情報流してたんだぜ」
三郎(さぶろう)「歌舞伎町のボスが柔軟な姿勢になったのも、アイツのタレコミが信用できると踏んだからだろう」
三郎(さぶろう)「いざとなったらお前ら2人を、トカゲのしっぽみたいに切り捨てるつもりさ」
〇美しい草原
樹(いつき)(蒼斗が・・・裏切り者?)
優心(ゆうしん)「樹も眠れないの?」
樹(いつき)「優心も、三郎に蒼斗のこと聞いたんだろ? 色々考えたけど、分かんねーよ」
樹(いつき)「今まで一緒にヤバイ状況乗り越えてきた仲間なのに、いきなり疑えない」
優心(ゆうしん)「僕はちょっと・・・銃弾と交換されそうになったから、思い当たるフシがあるけど、」
優心(ゆうしん)「今まで敵だった三郎を全て受け入れる気にもなれないし、樹と同じ気持ちだよ」
優心(ゆうしん)「・・・」
優心(ゆうしん)「この旅が終わったら、3人一緒にトー裏に戻れるのかな」
樹(いつき)「戻りたいよ。3人で」
優心(ゆうしん)「新宿じゃ、夜空見上げてもガスしか見えなかったけど、ここは凄いね」
優心(ゆうしん)「星に飲み込まれそうだ」
樹(いつき)「月も、あんなに綺麗に、大きく見える。 ・・・いつか、俺も月に行きたいな」
優心(ゆうしん)「3人で行けたらいいね」
樹(いつき)「うん。さすがにロケットにハイジャックは居ないよね?」
優心(ゆうしん)「何言ってんの。居たら嫌だよ!」
何でもないことで優心が笑ってくれて、俺もつられて笑った。
こんな世界がいつまでも続いたらいいのに。
叶わない夢だとしても、そう願わずにはいられなかった。
〇黒
明日、僕らの旅は終わりを迎える──
はずだったんだ。
今日までは。
蒼斗がまさかの…!?
ってか三郎はいいやつだったのか🤔
一体どうなってしまうんだぁー😱💨これは読まねば❗
なるほどそういう事情かー
単純に好意があったからかと思ってました。
樹の説得のタイミングと奇しくも重なってしまったわけですが。今後も楽しみです。
いきなり装甲車で突っ込んで来たのは受けました😆
あと、三郎が味方になったときの安心感半端無いですね。次回も楽しみです!