君の隣に僕が生きてる

咲良綾

エピソード2.研究所(脚本)

君の隣に僕が生きてる

咲良綾

今すぐ読む

君の隣に僕が生きてる
この作品をTapNovel形式で読もう!
この作品をTapNovel形式で読もう!

今すぐ読む

〇山奥の研究所
小牧穂多美「えーと、ここ、かな。 随分辺鄙な場所だなあ・・・・・・」
小牧穂多美「バスを降りてから30分以上歩いちゃったよ。 携帯は圏外だし」
小牧穂多美「ほんとに、こんなとこで何の研究してたんだろ、節奈おばちゃん」
  ピンポーン
「はい」
小牧穂多美「あ、すみません。小牧穂多美といいます。 こちらに福成章介さんはいらっしゃいますか」
「・・・何の御用ですか」
小牧穂多美「芳田節奈の使いで、預かり物を届けにきました」
「預かり物?」
小牧穂多美「はい。直接渡すようにって・・・」
「・・・ともかく、中へどうぞ」
小牧穂多美「あ、はい」
小牧穂多美「う~っ、緊張した~」

〇研究開発室
黒川鎖衣「はじめまして。 小牧穂多美さん、でしたね」
小牧穂多美「こ、こんにちは。はじめまして。 福成章介さん、ですか?」
黒川鎖衣「いいえ。黒川鎖衣(くろかわさい)といいます」
  そうか、そういえば節奈おばちゃんが好きだった人にしては、若すぎる・・・
小牧穂多美「ええと・・・では、福成さんは」
黒川鎖衣「福成は、残念ながら今はここにいません」
小牧穂多美「お出かけなんですか?」
黒川鎖衣「そういうわけではなく。 今は、ここの研究員ではないということです」
小牧穂多美「えっ。じゃあ、どこへ」
黒川鎖衣「わかりません」
小牧穂多美「・・・わからない?」
黒川鎖衣「半分行方不明のような状態なので」
小牧穂多美「何の手がかりもないんでしょうか?」
黒川鎖衣「さあ。知っていたとしても・・・彼とは関わりたくない」
小牧穂多美「え?」
黒川鎖衣「彼は、研究に溺れて 人としての倫理を踏み越えました」
小牧穂多美「一体、何を・・・」
黒川鎖衣「知らなくていいことです。 そういうわけなので、僕は彼の話をあまり聞きたくない」
小牧穂多美「・・・・・・」
  そんな・・・どうしよう
黒川鎖衣「あなたは、節奈さんの使いと言いましたね。 節奈さんとはどういうご関係ですか」
小牧穂多美「わたしは姪なんです。 5年前から、伯母の家に居候しています」
黒川鎖衣「なるほど。彼女が信頼を置くに足る相手だということですね」
小牧穂多美「黒川さんは、伯母を知っているんですか?」
黒川鎖衣「ええ。昔、お世話になりました。 とても聡明で心優しい女性でした。 研究者としては、優しすぎたかもしれませんが」
  優しすぎた・・・か。
  この人は確かに節奈おばちゃんを知っているのだろう。
黒川鎖衣「ところで、あなたが節奈さんから預かったというのは・・・」
黒川鎖衣「!」
小牧穂多美「どうかしたんですか?」
黒川鎖衣「シアン。 そこにいるな」
「・・・・・・」
黒川鎖衣「盗み聞きとは、趣味が悪いぞ」
シアン「・・・・・・」
  あれ?どこかで見たような・・・
  ・・・あっ!
  あの写真に写ってた子・・・!
シアン「『せつな』って・・・おかあさん?」
黒川鎖衣「・・・!」
小牧穂多美「えっ、お母さんって」
シアン「おかあさんだよね。おかあさんはどこ!?」
黒川鎖衣「シアン、お前、 まだ節奈さんのことをそんな風に・・・」
  な、何??
  この子、まさか節奈おばちゃんの子供?
黒川鎖衣「わかってるだろう。 お前に母親などいない。彼女はただの、」
シアン「おかあさんだよ!血が繋がってなくても、せつなは僕のおかあさんだ」
シアン「ねぇ、どこ? 君は知ってるんだよね?」
黒川鎖衣「やめろ、シアン」
シアン「鎖衣だっておかあさんがいなくなったとき、 泣いてたじゃないか!」
黒川鎖衣「だから何だ、昔の話だ」
  血が繋がってない・・・ということは、ここにいたとき面倒を見ていたとか?
  そういえば、よく見ると黒川さんとこの子って、そっくり。もしかして、兄弟?
シアン「言っとくけど、鎖衣のことはもうおとうさんとか思ってないからね」
黒川鎖衣「当たり前だ」
  お、おとうさ・・・・・・!?
  どういうこと??
シアン「ねえ、教えて。おかあさんはどこにいるの?」
小牧穂多美「え?ええと・・・ それは、ごめんなさい、言うなって言われてて」
シアン「どうして?」
黒川鎖衣「シアン。あまりこの子を困らせるな。 節奈さんにも事情があるんだろう」
シアン「事情って、どんな?」
小牧穂多美「それは、わたしにもわからないけど・・・」
シアン「・・・・・・」
シアン「・・・・・・似てる」
小牧穂多美「え?」
シアン「君、おかあさんに似てる」
小牧穂多美「??」
小牧穂多美「!?!?!?」
シアン「・・・・・・」
小牧穂多美「あの、あのね、ちょっと、君・・・」
黒川鎖衣「こら、シアン!何をしてる!」
シアン「・・・すぅ・・・」
小牧穂多美「え、寝てる?」
黒川鎖衣「すまない、今すぐ連れて行く。 ・・・って、おい。 この子から手を放せ、シアン。シアン!」
小牧穂多美「あ、あはは・・・」

〇研究開発室
黒川鎖衣「シアンが迷惑をかけた」
小牧穂多美「いえ、わたしは大丈夫です」
小牧穂多美「それより、なんだか突然力尽きたみたいでしたけど、あの子、どこか悪いんですか?」
黒川鎖衣「・・・君は、この研究所について、どれだけのことを知ってるんだ?」
小牧穂多美「どれだけって・・・ この前初めて存在を知ったばかりで、何の研究をしているとか、そういう具体的なことは何も」
黒川鎖衣「そうか・・・」
小牧穂多美「ただ、伯母は、「行けばわかるかも」と言ってました」
黒川鎖衣「・・・なるほどな」
小牧穂多美「あの子と黒川さんって、兄弟ですか?」
黒川鎖衣「いや、違う」
小牧穂多美「じゃあ、」
黒川鎖衣「お父さんじゃないぞ」
小牧穂多美「う。 でも、似てますよね」
黒川鎖衣「まあな。他人ではない」
黒川鎖衣「・・・節奈さんに、今連絡はつかないのか。 できれば、直接聞きたいことがあるのだが」
小牧穂多美「ええと・・・それは無理です」
  わたしの携帯は圏外だから使えないし・・・
  ここの機器で発信履歴を残すのもまずそう。
  どこまで用心すべきかわからないけど、事情がわからない以上、迂闊なことはできない。何より、病気に障りそうだ。
黒川鎖衣「そうか。ではさっきの話に戻ろう。 シアンと僕の関係だが・・・」
黒川鎖衣「あいつは、僕だ」
小牧穂多美「・・・え?」
  どういうこと? まさか・・・!
小牧穂多美「こ、この研究所って、もしかして・・・」
小牧穂多美「タイムマシンの研究をしてるんですか!?」
黒川鎖衣「は!?」
小牧穂多美「あの子は、過去からやってきた黒川さんで、 もとの時代に戻れなくなってずっとここに」
黒川鎖衣「いくらなんでもそれはない」
小牧穂多美「だって、さっき、『僕』って・・・」
黒川鎖衣「正確には、僕と同じ遺伝情報を持つ個体。 僕の複製。 いわゆる、クローンだ」
小牧穂多美「クローン・・・」
  そういえば、あの写真・・・
  あの、右側に写っていたのは
小牧穂多美「伯母のクローンも、いるんですね?」
黒川鎖衣「!」
  次回へ続く
  黒川鎖衣が語る、研究所の真実。
  そして明かされる節奈の役割とは?
  
  次回、エピソード3.節奈の過去

次のエピソード:エピソード3.節奈の過去

コメント

  • 音が加わるとやっぱり盛り上がりますね~(^^
    綾りんの作品を再びこうしてプレイできるの楽しい♪

  • シアンくんに再び会えて、あの切なくて美しい感動を思い出しました。

成分キーワード

ページTOPへ