第七話 疑え(脚本)
〇警察署の入口
〇個別オフィス
充(あたる)「失礼します」
警視「田中、呼ばれた理由は分かっているな?」
警視「札幌、旭川のヤクザからクレームが来ている」
警視「少々やり過ぎたようだな?」
充(あたる)「札幌のボスは、ハイジャック事件の重要参考人を匿い、旭川のボスは銃刀法違反」
充(あたる)「どちらも同じ、新宿のトー裏キッズが関係しているのです!」
充(あたる)「麻薬や銃器の密売に少年少女の売春の斡旋など、」
充(あたる)「十分に疑わしい、事件性のある捜査です!」
警視「疑わしきは罰せず」
警視「君のようなエリートは、この件に首を突っ込むべきではない」
警視「1週間の謹慎で済ませるから、その間に頭を冷やせ。 いいな?」
〇丘の上
富良野──美瑛町に接する丘陵地帯から、空知川流域の富良野盆地一帯にかけての通称。
ドラマ『北の国から』の舞台となったことで、その美しい自然と景色が多くの人の心を捉え、放送終了後も観光客が後を絶たない。
樹(いつき)「スゲー! 大自然〜!!! 北海道はデカイんだな!」
蒼斗(あおと)「日本で1番長いストレートの道路もあるんだって」
優心(ゆうしん)「丘が、バームクーヘンみたいだ! ラベンダー畑見たい!!」
蒼斗(あおと)「ヤニで真黒な俺の肺も、洗われる気がする」
口では楽しそうに喋ったが、
俺は、急に絵本の世界に迷い込んだような気がしていた。
でもそれは決して、居心地の良いものではなく、
どこか遠くの知らない土地に捨てられてしまった捨て猫みたいに、
これから先の運命への薄ら寒い予感しか抱けなかった。
〇山中の坂道
樹(いつき)「今日は、登山かよ!」
蒼斗(あおと)「ノートによれば、この山の中腹に富良野のボスが居るロッジがあるんだ」
優心(ゆうしん)「山道か。 家系ヤクザに追いかけられたら、逃げ場が無さそう」
蒼斗(あおと)「まあ、さすがにここまでは来ないことを祈ろう」
蒼斗(あおと)「いざとなったら本コースを外れるか・・・。 携帯の電波も届かなそうだから、方位磁針と地図を頼りに行くしかないな」
樹(いつき)「うしっ!行くぜ!」
〇森の中の小屋
樹(いつき)「やっと着いた・・・3時間かかったぜ!」
樹(いつき)「ホントにここに富良野のボスが居るのかな?」
樹(いつき)「こーゆーポツンと一軒家に住んでるのって、仙人とか変わり者じゃない?」
富良野のヤクザ「トー裏キッズかな?」
樹(いつき)「ギャッ!」
富良野のヤクザ「よく来たな。 ボスがお待ちだ」
〇怪しいロッジ
富良野のボス「トー裏キッズか。 噂は聞いているよ」
富良野のボス「ほらよ、鍵持って行きな」
富良野のボス「大したモノはないが、外にラム肉用意してるから、食ってから行きな」
〇山の展望台
樹(いつき)「肉・・・!メチャクチャ美味そう!」
富良野のヤクザ「羊のラムとサフォーク肉を用意した! ボスに感謝しろよな」
蒼斗(あおと)「ラム肉ってジンギスカンだけじゃないんだな。 普通にステーキが美味いぜ」
優心(ゆうしん)「この景色と一緒に食べるのも、贅沢だね! これが最期の晩餐かもよ?」
樹(いつき)「全部の『鍵』が揃ったから、次は大街町に行くの?」
優心(ゆうしん)「そう。明日で最後のページだね」
蒼斗(あおと)「大樹町といえば、格安ロケットの本場だな。今から☓☓☓年前、初めて再利用できる民間ロケットを開発したんだ」
蒼斗(あおと)「と言っても、今でも一部のセレブたちしかその恩恵は受けていないけど、飛行機くらいカジュアルに宇宙に行けたらいいよな」
優心(ゆうしん)「・・・そこに行ったら、僕たち、トー裏に戻れるのかな?」
樹(いつき)「戻れるよ!死ぬ思いで『鍵』を集めたんだから」
樹(いつき)「そして、退屈しのぎの仲間がいっぱいいるトー裏に、3人で帰ろう!」
蒼斗(あおと)「銃声!! ロッジから聞こえたぞ!?」
〇怪しいロッジ
樹「ボス!」
蒼斗「駄目だ!頭を銃弾で撃ち抜かれている」
富良野のヤクザ「お前たち! ボスに何てことをしてくれたんだ!!」
優心「誤解だ!僕たちじゃない。 銃声がしたから来てみたら、ボスが倒れていて、火の手が上がっていた!!」
富良野のヤクザ「捕まえろ!」
〇山中の川
インストラクター「というわけで、皆さんにもこのドライスーツを着てラフティングを楽しんでもらいます!」
インストラクター「何だ、お前ら!?」
インストラクター「ブッ!」
樹(いつき)「悪いけど、先にレンタルさせてくれ!」
インストラクター「ムチャクチャだ〜!!」
蒼斗(あおと)「金はおいていくぜ!」
インストラクター「いち、に、さん、し、ご、ろく・・・ 10万!? あざ〜す!!」
〇小さい滝
樹(いつき)「川の流れが早い!」
樹(いつき)「蒼斗、川下りが早いって言っていたけど、ボートを操れるのか!?」
蒼斗(あおと)「逃げるときに目に入ったから言っただけで、ラフティングしたことは無い!」
「マジか!」
優心(ゆうしん)「下手したら岩に激突して、川に投げ出されるぞ! オールを使うんだ!!」
樹(いつき)「ウワアアア!!」
〇森の中の小屋
富良野のヤクザ「オイ!トー裏キッズはどっちに逃げたんだ!?」
富良野のヤクザ「それよりオヤジを運ぶのが、先だ!」
富良野のヤクザ「それか、他の奴らと一緒に火事を消してくれ!!」
富良野のヤクザ「嫌だね」
富良野のヤクザ「なっ・・・!」
充(あたる)「ボスを撃ったのも、火事を起こしたのも俺だからな」
充(あたる)「今度こそ捕まえてやるぜ」
〇山中の滝
樹(いつき)「デカイ滝だッ!ボートに掴まれ!!」
「ウワアアアア!!」
〇河川敷
蒼斗(あおと)「何とか、下ってこれたな!」
蒼斗(あおと)「ここでボートを乗り捨てて、駅まで行くぞ!」
優心(ゆうしん)「いっつ!足に銃弾がかすめた!」
充(あたる)「ラフティングは楽しめたかな?」
充(あたる)「トー裏キッズ、富良野のボス殺人未遂と放火の現行犯で逮捕する!」
樹(いつき)「俺らじゃないっつーの! 富良野のボスは撃たれていた」
樹(いつき)「アンタこそ拳銃持ってるのが、アヤシイじゃん!」
充(あたる)「心配無用! お前たちはこれからお互いに殺し合い、みんな死ぬ」
充(あたる)「この拳銃はその3人の遺体の側で俺が発見するというストーリーさ。 オーケー?」
優心(ゆうしん)「センスが無さすぎる。 誰が信じるんだよ、そんな話!」
充(あたる)「お前たちと俺とでは、世間の目が違うのさ!」
充(あたる)「同じ犯罪をしたとしても、お前らと俺では命の種類が違うんだよ」
〇河川敷
充(あたる)「さあ死にたくなかったら、何を運んでいるのか、洗いざらい話してもらおうか」
充(あたる)「麻薬か?カネか?」
樹(いつき)「どうする、蒼斗?」
蒼斗(あおと)「警察の拳銃M500Jハザクラなら、銃弾は最大5発。 支給品だから予備弾はないはず」
蒼斗(あおと)「ボスを撃ったのとさっきの一発で、無駄撃ちしてなきゃ残りは3発か」
蒼斗(あおと)「一発躱せたら、1人は生き残れる」
蒼斗(あおと)「樹、お前にリュックを任せる」
樹(いつき)「何言ってんだよ、蒼斗!」
蒼斗(あおと)「この目くらましの手榴弾は最後の1個なんだ。 頼む、お前だけでも──」
樹(いつき)「嫌だ!!」
蒼斗(あおと)「背ぇ向けて、振り返んな!! 行け!!」
〇黒
反射的に走り出した俺は卑怯者だった。
走って、走って、走りまくって、
あれ?
俺は、何で生きていたいんだろう。
〇田舎の駅舎
樹(いつき)「ハア、ハア・・・ 駄目だ! 戻らなきゃ・・・」
樹(いつき)「でも、銃持ってるイカれた警察に、どうやって立ち向かう!?・・・」
樹(いつき)「あ」
三郎(さぶろう)「ゲッチュ! この駅に来ると思っていたぜ。 お前1人か?」
樹(いつき)「たっ、頼む!リュックは返すから、蒼斗と優心を一緒に助けてくれ!!」
三郎(さぶろう)「今更なんだよ」
三郎(さぶろう)「こちとら、リュックさえ歌舞伎町に返せばいいんでね。お前の願いを聞く理由がねえな!」
樹(いつき)「お前が好きになった女が、ピンチなんだよっ!!」
三郎(さぶろう)「ぬわぁんとっ!?」
〇黒
いつ死んでもいい、誰が死んでも構わないと思っていたはずなのに、
情けないくらい、命にしがみついてしまうんだ。
アクションを見ているかのような目まぐるしい展開と緊張感が伝わってきました( ; ゜Д゜)
助けられるのか⁉️気になるところです😲😲
急展開にびっくりしました。サフォーク肉は知らなかったです。水際のああいう遊びがあることも知りませんでした。本筋とは別の要素も楽しんでます。
毎回ですが、想像を超えるアクティブな展開に引き込まれます!まさかのラフティングまで、臨場感のある表現ですね!
このピンチを切り抜けられれば、次は大樹町、、、今まででダントツのイナカですが、近年話題のアレを物語に組み込むのでしょうか?大樹町は老舗のチーズ工房のナチュラルチーズが好きです(ローカル私信)