第一話 再会(脚本)
〇中規模マンション
──市内某所──
直之「はぁ~、今日も疲れたなぁ」
直之(朝から晩まで働いて、家に帰れば 魔窟のように散らかった部屋と 機嫌の悪い妻)
直之(あ~、気が重い)
〇おしゃれなリビングダイニング
直之「ただいま~」
直之(うわ、やっぱ散らかってる。 一日中家にいるだけのくせに 茉莉(まつり)はなにやってんだよ)
茉莉「お帰りなさい、直之(なおゆき)。 優芽(ゆめ)、 もう寝てるから静かにね」
直之「・・・・・・。 飯は?」
茉莉「今、用意する」
直之(代り映えのしない飯だなぁ。 これが一日クタクタになるまで働いた 夫に食わせるものかよ)
直之「ん? 何だ、このはがき。 ・・・同窓会?」
茉莉「うん、中学から来た。 懐かしいよね」
直之「へぇ、来月か。 じゃあ、俺ちょっと行ってくるわ」
茉莉「え? 一人で行くってこと? アタシも久々に友だちに会いたいんだけど」
直之「ウチには優芽がいるだろ。 幼児を一人置いて 俺ら二人で出かけてみろ。 ネグレクトだなんだと問題になっちまう」
茉莉「だけど、 アタシだって気晴らししたいよ。 一日だけ預かってくれる保育所、 探してみる」
直之「お前、母親なのに酷いよな。 子ども一人置きざりにして、 そんなに外で酒が飲みたいのかよ」
茉莉「・・・・・・」
直之「だいたい、着てく服ないだろう? お前、出産以来太っちまったし、 収入ねぇから、新しい服も買えないし」
茉莉「それなら、 あそこに吊るしてある服はどう?」
直之「! なんだあの高そうな服! 俺に内緒で無駄遣いしたのかよ!」
茉莉「違うよ。 あれはサンキュッパで買った 安いワンピース」
茉莉「それに刺繡と 100均のビーズでアレンジしただけ。 豪華に見えるでしょ?」
直之「なんだ、手作りか」
直之(冗談じゃない。 そんな安物を着て出歩かれたら 俺の稼ぎが少ないみたいじゃないか!)
それに
育児でくたびれきった茉莉を、
かつての級友に見せたくない。
直之(あの頃の茉莉は 学年一の美人って言われてたけど、 今や見る影もないんだよな)
直之「やっぱだめだ。 同窓会には俺だけで行く。 優芽がいるし、 お前は留守番に決まってんだろ」
茉莉「・・・・・・」
直之(なんて目つきだ。 うらめしや~、って感じだな)
直之(今のコイツ、 絶対クラスのやつに見せたくないな)
〇セルリアンタワー東急ホテル
〇ホテルのレストラン
──市内ホテル──
直之(『雛丘中学同窓会』 ──ここだな)
直之(へぇ、結構みんな来てるな。 まぁ、仲のいいクラスだったし?)
一也「もしかして、直之か? 久しぶりだな!」
直之「お、一也(かずや)か? 隣は継雄(つぐお)? はは、お前ら全然変わってねーな」
継雄「お前が言う?」
一也「茉莉ちゃんはどうした? 今日連れてこなかったのか?」
直之「あぁ、 子育てで大変そうだったからな。 ゆっくりさせてやろうと思って」
継雄「子どもがいるんじゃ、仕方ねぇか」
直之「ん? なんかあの辺、人だかりできてんな? 先生か?」
一也「それがさ、来てんだよ! あの悠城(ゆうき)あこやが!」
直之「悠城あこや!? あの女優兼脚本家の有名人が!? なんで俺らの同窓会に来てんだよ!」
継雄「はは、知らないんだなお前。 悠城あこやの正体は あの雪屋文(ゆきや あや)なんだぜ!」
直之(雪屋文・・・だって!?)
〇学校の校舎
──15年前──
〇教室
一也「なぁ雪屋、お前 直之のこと好きって本当かよ!?」
文「!? どうして、それを・・・」
継雄「おい、マジだぜ! どうする、直之?」
茉莉「・・・・・・」
直之「いや、ねーわ。 無理無理」
文「・・・っ」
一也「だよなー」
継雄「直之には茉莉ちゃんがいるしなー」
直之「まぁ、勇気だけは認めるわ。 彼女いんのに 割り込んでこようとか、すげーね」
茉莉「アタシから直之を奪うつもりだった? 暗いオタクちゃんの分際で? その顔で?」
- このエピソードを読むには
会員登録/ログインが必要です! - 会員登録する(無料)
直之は同窓会などで旧友と会ったときに白い目で見られる手本みたいな男ですね。学生時代の関係性や価値観を、大人になってからも引きずっている残念なご様子で。そんな彼がどんな目に遭うのか、これからの展開に期待です。
良くない事が起こるであろう予感に背筋がゾワゾワします!
間違いなく主人公は酷い人ですが、モラハラされている奥様も昔はいじめっ子側だったんですね…。
それも含めて、続きがどうなっていくのか、楽しみでもあり怖くもあります。
背景がわかっただけで、まだ何の展開もないのになぜか嫌な予感だけが漂います!同窓会って、昔の恋愛を再燃してしまう傾向があるみたいなだけに、彼の不満足な日常をそれにぶつけないといいですが!