さつらもん

Saphiret

エピソード1(脚本)

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〇黒
  知らなかった。
  この国にもう一つの世界があったなんて。
  ましてや、
  その「まつりごと」に
  この僕が関わることになるなんて
  思いもよらなかった。
  ほんの半日前のこの時までは・・・

〇川に架かる橋
田中真司(たなかしんじ)「はぁ、ツイてない・・・」
  3つ目のバイト先の古書店がついに店を閉めることになった。
  1つ目の博物館のバイトも、2つ目の洋食屋も、折からの不況でとっくに休業している。
  古書店も、とても儲かっているとは思っていなかったけど・・・
田中真司(たなかしんじ)「せっかく好きなバイトだったのにな・・・」
  高齢の店主が骨折したのをきっかけに、息子さんが閉店を決めてしまった。
田中真司(たなかしんじ)(実家の親もギリギリで仕送りしてくれているからこれ以上とても頼れないな)
田中真司(たなかしんじ)(そもそもバイト掛け持ちもそれをカバーするためだったのに。)
田中真司(たなかしんじ)「これからどうしよう・・・」
  橋の手すりに寄りかかり、さっき渡された今日までの分の薄い給料袋の中身をのぞく。
田中真司(たなかしんじ)(はぁ、何度見ても悲しくなる金額・・・ ま、無いよりましだと思うしかないよな。)
  ため息とともにうつむくと、急に吹いてきた強い風に給料袋がさらわれていく。
田中真司(たなかしんじ)「あっ!」
  給料袋はあっという間に風にさらわれて目の前の川に落ちて流れていってしまった。
田中真司(たなかしんじ)「そんな・・・」
  とにかく追いかけようと走り出したとたん、大粒の雨が降り出した。

〇川に架かる橋
田中真司(たなかしんじ)「えっ、こんなタイミングで雨って・・・」
  みるみるうちに激しくなる雨に、勢いを増した川の流れがあっという間に給料袋を遠くへ運んで
  ついに見えなくなってしまう。
田中真司(たなかしんじ)「あー、もう、何でだよ・・・」
  そんな間にも風雨はみるみる激しさを増していく
  絶望するいとまもゆるされず、僕は激しい雨に追われるようにアパートへと走るしかなかった。

〇二階建てアパート
  橋からアパートまでは歩いて五分とかからない距離なのに、着く頃には全身びしょ濡れになってしまった。

〇おしゃれな廊下
田中真司(たなかしんじ)「あ~もう、ツイてないにもほどがあるだろ・・・っと、鍵、鍵・・・」
  鍵を取り出し、急いでドアを開けようとした時、
  ガタン!!
  隣の部屋から大きな物音がして、思わず身構える。
田中真司(たなかしんじ)「また・・・」
  隣の部屋のドアを見つめていると、
  ボワッ!!
田中真司(たなかしんじ)「えっ!? 火!?」
  炎が上がるような音がして、おそるおそる隣の家のドアに近寄って様子をみる。
田中真司(たなかしんじ)「こんな音は初めてだ、大丈夫かな?」
  ”大丈夫ですか?”と言いかけて、3か月前、隣人・・・札浦さんに言われた言葉を思い出した。
  あの日も同じように大きな物音がして心配になり、隣家をたずねてみた。
  『札浦』と書かれた表札の下の呼び鈴を推すと、
殺裏比可理(さつうらひかり)「・・・誰?」
田中真司(たなかしんじ)「初めまして。おととい隣に越してきた田中真司と言います。」
殺裏比可理(さつうらひかり)「・・・何の用?」
田中真司(たなかしんじ)「あ、あの結構大きな音がしたんで、大丈夫かなと思って、何でもないならいいんです。」
殺裏比可理(さつうらひかり)「音・・・聞こえたの!?」
田中真司(たなかしんじ)「はい。結構大きな音が・・・」
  すると札浦さんは上から下まで僕をじろじろと見つめた。
殺裏比可理(さつうらひかり)「あなた、大学生かなんか?」
田中真司(たなかしんじ)「え? はい、隣駅の東西大学に通ってます。」
殺裏比可理(さつうらひかり)「ふうん・・・悪かったわ、うるさくして。」
田中真司(たなかしんじ)「いえ、文句を言いたかったわけじゃ・・・」
殺裏比可理(さつうらひかり)「これからのこともあるから言っておくけど」
田中真司(たなかしんじ)「は、はい。」
殺裏比可理(さつうらひかり)「うちは物音がするかもしれない。仕事上のことなの。 まあ、大抵の人は気にならないと思うんどけど。」
田中真司(たなかしんじ)(え、あんな音がしたら、普通気になるけどなあ・・・)
殺裏比可理(さつうらひかり)「とにかく、そちらに危害は及ぼさないから気にしないように」
殺裏比可理(さつうらひかり)「あ、勝手にドア開けたりしないで。 絶対に。 わかった?」
田中真司(たなかしんじ)「はぁ、それはもちろ・・・」
殺裏比可理(さつうらひかり)「なら、いいわね。じゃ」
  それきり、僕の鼻先でバタンとドアが閉められたられた。
田中真司(たなかしんじ)「なんだよ、あれ。」
  不愛想で高圧的な隣人の態度に戸惑いと軽い苛立ちを覚えたのだった。
  あの時のことを思い出すと、これ以上の関りは避けたいところだけど・・・
  ガタガタガタガタ!!!
  再び激しいもの音がして、思わずドアに耳を近づける。
  すると大きな物音に交じって女性の微かなうめき声が聞こえる!
「うう・・・」
  インターフォンを鳴らしてみたけど、返事はない。
  ドアを叩いてみる。
田中真司(たなかしんじ)「札浦さん!? どうかしたんですか!?」
田中真司(たなかしんじ)(これ、もしかして何か事件に巻き込まれているんじゃないだろうか。)
  ドアノブに手をかける。でも・・・
殺裏比可理(さつうらひかり)「勝手ににうちのドアを開けたりしないでね」
田中真司(たなかしんじ)(どうしよう。)
  その時、またしても炎の上がるような音がしてドアがびりびりと振動した。
田中真司(たなかしんじ)「これは絶対事件だ。火事にでもなっていたら大変だ。」
田中真司(たなかしんじ)「札浦さん!」
  ドアを叩きながらドアノブをまわしてみると・・・
田中真司(たなかしんじ)(えっ、開いている・・・!?)
田中真司(たなかしんじ)(いや、今考えている暇はない)
田中真司(たなかしんじ)「札浦さん、開けますよ!!」
  思い切ってドアを大きく開けた。
  すると・・・
田中真司(たなかしんじ)「えっ」
  いきなり身体が部屋の中に強い力で引っ張られた。
田中真司(たなかしんじ)「うわああ!」

次のエピソード:エピソード2

コメント

  • 物語の展開の見せ方が、面白いなと思いました。ずっと緊張感があって、あの女性は何をしているのか、中で何が起こっているのかなど、先が気になる作りになってしました。世界観も、和風なテイストの混じったファンタジーで、面白いと思います。これから主人公が仕事を手伝ううちに、どんな風に巻き込まれていくのか、気になります!

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