第2話 イケメン探偵は河童を追う(脚本)
〇デザイナーズマンション
〇ダイニング(食事なし)
ゴミの山をじっと見つめる皇
〇川に架かる橋
〇ダイニング(食事なし)
皇伽耶斗「だからイケメンはそういう意味じゃないんだって」
皇伽耶斗「僕がイケメンだから、そう取られちゃうかもしれないけどさ」
如月春香「マジでムカつく」
皇伽耶斗「え?」
如月春香「いや、だから、本当の意味なんて知らない人にはわからないじゃないですか」
如月春香「電話に出るこっちの身にもなってくださいよ」
インターフォンが鳴る
皇伽耶斗「ほら、お客さんだよ」
如月春香「まったく・・・」
皇伽耶斗「あれ、どうしたボク?」
皇伽耶斗「迷子にでもなっちゃった?」
近藤陸「ううん」
近藤陸「ここ、探偵事務所でしょ?」
近藤陸「名前変だけど」
如月春香「ププッ」
皇、春香をひと睨み
皇伽耶斗「そうだけど、何か用かな?」
近藤陸「ぼく、お願いしたいことがあって来たんだ」
皇伽耶斗「あー、えっと、お母さんが後から来るとか?」
近藤陸「ううん、ぼくひとりだけど」
近藤陸「子供じゃダメなの?」
皇伽耶斗「いや、そういうわけじゃ・・・」
近藤陸「もし追い返すようなら、SNSに拡散するよ」
近藤陸「イケメン探偵事務所は子供を見捨てたって」
皇伽耶斗(マジかよ・・・)
如月春香「ププッ」
如月春香「あ、大丈夫だよー」
如月春香「このお兄さん、すごく優しいから」
近藤陸「ほんと!?」
皇伽耶斗「・・・とりあえず、話を聞こうか」
皇伽耶斗「ご依頼の内容は?」
近藤陸「えっと、武東川知ってる?」
皇伽耶斗「ああ、隣の市との境にある川だよな?」
近藤陸「そう」
皇伽耶斗「川がどうした?」
近藤陸「河童を探してほしいんだ」
如月春香「河童!?」
皇伽耶斗「カッパヲサガス・・・」
皇伽耶斗「あのさ、少年」
近藤陸「近藤陸だよ」
皇伽耶斗「陸くんさ、悪いけどお兄さんはいま忙しいんだ」
皇伽耶斗「冗談なら他所で・・・」
近藤陸「冗談じゃないよ!」
皇伽耶斗(猫の次は河童ですか・・・)
〇デザイナーズマンション
〇ダイニング(食事なし)
皇伽耶斗「もう一度聞くけど、陸くんは川でその河童を見たんだね?」
近藤陸「うん」
皇伽耶斗「で、その河童を見つけたらすぐに連絡してほしいと」
近藤陸「うん」
皇伽耶斗「わかった、引き受けるよ」
近藤陸「ほんと!?」
如月春香「良かったね、陸くん!」
皇伽耶斗「うん、この件はこのお姉さんが担当する」
近藤陸「え?」
如月春香「ええ!?」
如月春香「ちょ、所長、どういう事ですか!?」
皇伽耶斗「僕は、この間受けた家出女子高生の調査があるから忙しいし」
皇伽耶斗「如月君がやるしかないだろう?」
如月春香「え、私、事務じゃないんですか!?」
皇伽耶斗「そんな契約をした覚えはないし、助手としてちゃんと探偵をしてもらわないと困る」
皇伽耶斗「君のデビューにはちょうど良い案件じゃないのかな」
如月春香「そんなぁ・・・」
近藤陸「ねぇ、大丈夫なの?」
皇伽耶斗「ほら、陸くんが心配しちゃったじゃないか」
皇伽耶斗「大丈夫だよ陸くん」
皇伽耶斗「このお姉さん、探偵としては新米だけど、とても正義感が強い人だから安心して」
近藤陸「うん・・・」
如月春香(そういうとこだよ、このイケメンがムカつくのは・・・)
近藤陸「お姉さん、よろしくね!」
如月春香「あ、うん、任せといて!」
如月春香(いつか寝てる間に顔に落書きしてやる・・・)
皇伽耶斗「お金の心配はしなくていいよ」
皇伽耶斗「さっきも言ったように、このお姉さんの訓練にもなるから」
近藤陸「ありがとう!」
〇空
〇ダイニング(食事なし)
如月春香「本当に私は河童を探すんですか?」
皇伽耶斗「如月君は、河童が存在すると思う?」
如月春香「いいえ・・・陸くんには申し訳ないですが」
皇伽耶斗「じゃあ、彼がどういう少年で、なぜそんな非現実的なお願いをしてきたか」
皇伽耶斗「その辺りを調べてみたらどうだろう?」
如月春香「それだと、陸くんをはなから疑ってるみたいで気が引けますね」
皇伽耶斗「なら、彼を信じて河童を探してもいい」
皇伽耶斗「如月君の思うようにやったらいいよ」
〇学校の校舎
如月春香(疑ってるってわけじゃなく、まずは陸くんについて知らないと)
〇田舎の学校
体育の授業かな
あ、陸くんだ!
あれ、でも体操着じゃないから見学?
〇学校脇の道
如月春香(どこか体調でも悪いのかな)
如月春香(昨日は元気だったけど・・・)
田代勇太「もしかしてあなた、あの事務所に入ったんですか?」
如月春香「え?」
田代勇太「皇のところで働くことになったのかと聞いてるんです」
如月春香「いきなり何ですかあなた」
如月春香「失礼じゃないですか!」
田代勇太「これは失礼」
田代勇太「私はこういう者です」
如月春香「フリーライター?」
田代勇太「奴には気をつけた方がいいですよ」
如月春香「どういう意味ですか?」
田代勇太「いずれあなたにもわかるでしょう」
田代勇太「まあ、私はすぐに辞めることをお勧めしますが」
如月春香「所長の事で何かご存知なんですか!?」
田代勇太「さぁ、どうでしょう」
田代勇太「では」
如月春香「あ、ちょっと、待って!」
如月春香(行っちゃった・・・)
如月春香(もう、何なのよ・・・)
如月春香(もしかしてあの大金と何か関係あるのかな・・・)
〇ファミリーレストランの店内
女子高生A「これ本当にゴチになっちゃっていいんですか?」
皇伽耶斗「もちろん!」
皇伽耶斗「他に食べたい物があったら注文しちゃっていいよー」
女子高生B「やったー! どれにしようかな・・・」
皇伽耶斗「それで、さっき話した碧さんの事だけどね」
皇伽耶斗「家出したのが1週間前くらい前になるんだけど」
皇伽耶斗「その頃に何か変わった事や気づいた事はないかな?」
女子高生A「うーん、わかんない」
女子高生A「だって碧が学校に来なくなったの、1ヶ月くらい前だもん。ね?」
女子高生B「あー、そうだっけー。パフェもいいなぁ・・・」
皇伽耶斗「それは確か?」
女子高生A「中間テスト終わってすぐだったから間違いないよ。ね?」
女子高生B「うんうん、間違いない。台湾カステラもいいなぁ・・・」
皇伽耶斗(ってことは、うちに来るまでの3週間ほどは自分で探したのか)
皇伽耶斗(あの父親、「居場所がわかったら、娘には接触せずに居場所を自分に知らせてほしい」)
皇伽耶斗(ってやけに念を押してたのが気になるんだよなぁ)
女子高生A「それよりもお兄さん、私の彼氏になりませんか?」
女子高生B「やっぱりパンケーキかなー」
〇タワーマンション
学校から帰宅して、もう今日は動きはないかな
あ、出てきた
どこに行くんだろう
〇公園の砂場
こんな夕方からひとりで公園?
表情が暗いな・・・
〇空
〇公園の砂場
いつまでひとりでブランコに揺られてるつもりなんだろう・・・
近藤君代「こんな所にいたの!?」
近藤陸「お母さん・・・」
近藤君代「携帯にかけても出ないし」
近藤陸「ごめんなさい」
近藤君代「早く帰ろう」
近藤君代「お母さん、陸が一緒にいないと困るの」
近藤陸「うん・・・」
近藤君代「お母さんを守ってね、陸」
今のどういう意味・・・?
〇ダイニング(食事なし)
皇伽耶斗「そんな事があったか・・・」
如月春香「どういう意味なんでしょう?」
皇伽耶斗「うーん・・・」
皇伽耶斗「実はね、如月君」
皇伽耶斗「僕の方も今日、驚くことがあったんだ」
如月春香「驚くこと、ですか?」
皇伽耶斗「ゲームセンターで、家出した碧さんと仲良くなったっていうカップルに運良く出会ってね」
皇伽耶斗「そのカップルがこんな事を言ってたんだ」
〇ゲームセンター
カップル女「私が声かけたんだ。優しいでしょー?」
カップル男「制服着てなくても高校生ってわかったもんな」
カップル女「学校で嫌な事でもあるのかーとか、いろいろ聞いてあげたんだけどさ」
カップル男「自分の事はあまり話さなかったな」
皇伽耶斗「そうですか・・・」
カップル男「あ、でも、ひとつ気になる事を言ってたよ」
皇伽耶斗「何ですか?」
カップル男「河童を探さなきゃって呟いてた」
皇伽耶斗「えっ!?」
カップル女「そうそう、私ビックリしたよ。河童!?って」
皇伽耶斗「確かに河童って言ったんですか!?」
カップル男「え、ああ、うん、確かに」
カップル女「私もさ、冗談かと思って笑い飛ばそうとしたんだけど」
カップル女「彼女、めっちゃ真剣な顔してるからちょっと引いちゃったよ」
〇ダイニング(食事なし)
如月春香「河童!!」
如月春香「どういう事ですか!?」
如月春香「それって、陸くんの河童と同じってこと?」
如月春香「いや、そもそも河童が本当にいるの!?」
皇伽耶斗「わからない・・・」
皇伽耶斗「どういう事なんだ・・・」