そのイケメンは幸福の鐘を鳴らす

たかぎりょう

第3話 イケメン探偵は家族について語る(脚本)

そのイケメンは幸福の鐘を鳴らす

たかぎりょう

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〇ダイニング(食事なし)
皇伽耶斗「如月君、これじゃないか?」
如月春香「何ですか?」
如月春香「ネットの掲示板ですか・・・」
皇伽耶斗「都市伝説に関するサイトの掲示板なんだけどね」
皇伽耶斗「ほら、ここ」
如月春香「えーっと・・・」
如月春香「武東川の河川敷に河童が現れることがあって」
如月春香「その河童にお願いすると人を殺してくれるらしい!?」
皇伽耶斗「武東川と河童というキーワードが一致してるから、これで間違いないんじゃないかな」
如月春香「それじゃ、陸くんが誰かを殺してもらおうとしてるってことですか!?」

〇勉強机のある部屋
近藤陸(今日も公園に行こうかな・・・)
近藤陸「もしもし」
近藤陸「ああ、春香さん」
近藤陸「え、見つかったの!?」
近藤陸「わかった、すぐに行く!」

〇河川敷
河童「・・・」
近藤陸「あなたが噂の河童ですか?」
河童「オレ、噂になってるのきゃ?」
河童「すごいにゃ!」

〇黒背景
如月春香「その変な語尾はなに?」
如月春香「ったく、所長は誰に河童役頼んだのよ」
如月春香「でも、声に聞き覚えがあるような・・・」

〇河川敷
河童「で、オレに何か用かにゃ?」
近藤陸「うん・・・」
河童「まさか人殺しの依頼きゃ?」
近藤陸「はい」
近藤陸「河童さんに頼むと、人を殺してくれるって聞いてきました」
河童「こんな子供ぎゃ・・・」
河童「驚いたにゃ」
近藤陸「もう限界なんです・・・」
河童「そんなに苦しんでるのきゃ・・・」
河童「誰を殺してほしいにゃ?」
近藤陸「・・・」
河童「大丈夫、君からの依頼ってことはバレないようにするから」
近藤陸「ごめんなさい、ごめんなさい・・・」
河童「・・・」
近藤陸「・・・お父さんを殺してください」

〇ダイニング(食事なし)
近藤君代「陸・・・」
近藤満「これはいったい何の冗談だ?」
近藤満「だいたいこの河童みたいのは何なんだ?」

〇河川敷
河童「理由を聞いてもいいかな?」
近藤陸「お母さんへの暴力が毎日ひどくて・・・」
近藤陸「このままだと、お母さんがお父さんに殺されちゃうんです」
河童「なるほど・・・」

〇ダイニング(食事なし)
近藤満「陸の奴・・・」

〇河川敷
河童「わかった」
河童「引き受けよう」
河童「私は絶対に失敗しない」
河童「だからもう安心しなさい」
近藤陸「ほんと?」
近藤陸「そんな簡単なの?」
近藤陸(・・・絶対に失敗しない)
近藤陸「あっ!」

〇大樹の下
近藤陸「あー、もう!」
近藤陸「上手くできないよー」
近藤満「陸、あのな」
近藤満「サッカーというのはミスをするスポーツなんだよ」
近藤陸「そうなの?」
近藤陸「ミスしたら、コーチに怒られちゃうけど・・・」
近藤満「ミスを怒るコーチというのは、自分が強いチームを作ってみんなに自慢したいだけだ」
近藤満「真剣に陸たちのことを考えてなんかいないよ」
近藤陸「そうなのかなぁ・・・」
近藤満「そうさ」
近藤満「だから、今はたくさん失敗しなさい」
近藤満「そうすれば、きっといつかは失敗しない方法が見つかるさ」
近藤陸「ミスしてもいいんだ・・・」
近藤陸「ありがとう、お父さん!」
近藤満「ただ・・・」
近藤満「それでも、ミスしちゃうのがサッカーなんだけどな」

〇河川敷
近藤陸「お父さん・・・」
近藤陸「ちょっと待って!」
河童「なんだ小僧」
近藤陸「待って!」
河童「いや、だからこうして止まってるじゃないか」
近藤陸「そうじゃなくて、お父さんを殺さないで!」
河童「どういうことだ?」
河童「お母さんはいいのか? お父さんに殺されちゃいそうなんだろ?」
近藤陸「そうだけど、ぼく、もう少し頑張ってみる!」

〇黒背景
如月春香「陸くん・・・」

〇河川敷
河童「良く分からないが承知した」
河童「この話は聞かなかったことにしよう」
近藤陸「ごめんなさい」
河童「なーに、オレはいつでもここに現れるにゃ」
河童「どうにもならなくなったら、またここに来ればいいにゃ」
近藤陸「ありがとう」
河童「では、サラバじゃ」
近藤陸(河童、怖かった・・・)
如月春香「陸くん!」
  陸を抱きしめる春香
近藤陸「ちょ、春香さん・・・」
如月春香「頑張ったね、偉かったね・・・」

〇ダイニング(食事なし)
近藤満「・・・」
皇伽耶斗「これでも、まだ奥様への暴力を続けますか?」
近藤満「私だって、殴りたくて殴ってるわけじゃない・・・」
皇伽耶斗「おそらく、暴力の原因は会社でのストレスなのでしょう」
近藤満「知ったような口をたたくな」
皇伽耶斗「そこまで苦しい思いをして働くのは何故ですか?」
近藤満「そんなの家族ために・・・」
皇伽耶斗「家族のために働いてるのに、その家族に暴力振るって苦しませてるんですか?」
皇伽耶斗「本末転倒ですね」
近藤満「なんだと!?」
皇伽耶斗「近藤さんが家族を支えなきゃと、ひとりで抱え込むことはないと思いますよ」
皇伽耶斗「家族で話し合って、みんなが幸せに暮らすために会社を変えるのもひとつの手段です」
近藤満「あんたは他人事だから言えるんだ」
近藤満「今はそんな簡単に転職なんかできなんだよ!」
皇伽耶斗「簡単じゃないから、家族の力が必要なんじゃないですか?」
皇伽耶斗「家族が力を合わせたら、乗り越えられない事なんてないと僕は思います」
近藤君代「もしあなたが転職するなら、私も働きに出てサポートするわ」
近藤満「君代・・・」
皇伽耶斗「陸くんも相当苦しかったと思いますよ」
皇伽耶斗「でも、立派です」
皇伽耶斗「楽な道を選ばず、さらに苦しむかもしれない道を選んだんですから」
近藤君代「陸のためにも、ここからみんなで頑張りましょうよ!」
近藤満「・・・そうだな」
近藤満「帰ったら、陸も含めて話をしよう」
近藤君代「はい!」
近藤満「これまで済まなかった」

〇デザイナーズマンション

〇ダイニング(食事なし)
如月春香「それで、あの河童は誰だったんですか?」
如月春香「途中、キャラ変わってたし」
皇伽耶斗「本人の名誉のために内緒だにゃ」
如月春香「え、所長!?」
如月春香「なわけないよな」
  インターフォンが鳴る
如月春香「陸くん、いらっしゃい!」
近藤陸「こんにちは!」
皇伽耶斗「家族会議の方はどうなった?」
近藤陸「話し合った結果、会社を辞めて新しい会社を探すことになりました」
近藤陸「今の会社でひどいパワハラがあったみたいで」
近藤陸「弁護士さんにお願いして会社を訴えるみたい」
皇伽耶斗「そうか」
如月春香「お父さんの暴力は?」
近藤陸「あれからなくなりました」
如月春香「本当!? 良かったー!」
近藤陸「皇さんと春香さんには、本当にお世話になりました」
皇伽耶斗「陸くんも、お母さんから暴力受けなくなった?」
近藤陸「え?」
如月春香「ええっ!?」
皇伽耶斗「体育は見学してたっていうし」
皇伽耶斗「お母さんと2人になる時間を避けていたみたいだから」
皇伽耶斗「陸くんは、お母さんから虐待されているんだろうと思っていた」
近藤陸「お見通しですね、皇さんは」
皇伽耶斗「お見通しってほどでもないよ」
近藤陸「大丈夫です、お母さんの暴力もなくなりました」
如月春香「じゃあ、とりあえずは解決したのね?」
近藤陸「はい!」
如月春香「良かった・・・」
近藤陸「ところで、お母さんから僕がここの顧問になるって聞いたんですけど・・・」

〇ダイニング(食事なし)
皇伽耶斗「最後にひとついいですか?」
近藤君代「何でしょうか?」
皇伽耶斗「陸くんですが、うちの事務所の顧問になってもらう事にしました」
近藤満「顧問って、陸が?」
皇伽耶斗「これからは子供に関する依頼もあると思うので、アドバイザーになってもらおうと思っています」
近藤君代「アドバイザー、ですか」
皇伽耶斗「もうあなた方ご家族は心配ないと思いますが」
皇伽耶斗「今後、万が一その顧問が苦しむような事があった場合は、当事務所としては全力でその脅威を叩きのめす所存です」
皇伽耶斗「そのことをご承知おきください」

〇ダイニング(食事なし)
皇伽耶斗「ああ、うん、まだお願いしてなかったね」
皇伽耶斗「ぜひ、うちのスタッフの一員になってほしいんだけど、どうだろう?」
如月春香「え、そんな話が進んでたんですか?」
近藤陸「もちろん、2人にはお世話になったし、協力はしたいけど・・・」
近藤陸「顧問って何をすればいいの?」
皇伽耶斗「あまり堅く考えずに、子供の視点から感じたことをアドバイスしてくれればいいよ」
如月春香「確かに、それはいいかも!」
近藤陸「ふーん・・・」
近藤陸「じゃあね・・・」
近藤陸「とりあえず、あのゴミの山を何とかした方がいいんじゃない?」
如月春香「それなー!」
近藤陸「あれじゃ、気味悪がってお客さん帰っちゃうよ」
如月春香「だよねー! 生ごみはないから大丈夫だとか言うんだよ?」
皇伽耶斗「あそこはあのままでいいんだ」
皇伽耶斗「ふたりともいいか?」
皇伽耶斗「あそこには絶対に立ち入らないこと」
皇伽耶斗「これを守らなかった場合、即刻事務所は辞めてもらうから」
近藤陸「・・・」
如月春香「何もそこまで怖い顔しなくても・・・」
近藤陸「あ、じゃあ、それから」
如月春香「なに、なに?」
近藤陸「春香さんはアルバイトなんですから、社長の皇さんは絶対に手を出したらダメですからね」
如月春香「ちょ、陸くん何を・・・」
皇伽耶斗「おお、それならお安い御用だ」
如月春香「所長、それどういう意味ですか!?」
近藤陸「絶対ですよ!?」
皇伽耶斗「楽勝だな」
如月春香「どうせ、私なんか魅力ないですよーだ」
皇伽耶斗「というわけで陸くん」
近藤陸「うん」
皇伽耶斗「これからはいつでも気楽にここに来ていいからな」
近藤陸「うん・・・」
近藤陸「ありがとう、皇さん」
如月春香(すごくムカつくけど)
如月春香(やることもイケメンなんだよなぁ・・・)

〇大衆居酒屋
如月春香「碧さんも殺人の依頼をしようとしてたんですよね?」
皇伽耶斗「うん」
皇伽耶斗「おそらく相手は父親だね」
皇伽耶斗「もしかしたら、碧さんの場合は性的な暴力があったかもしれない」
如月春香「最低! 許せない・・・」
皇伽耶斗「でも、河童の正体がわかったから動きやすくなったよ」
皇伽耶斗「僕は父親の方を追うから」
皇伽耶斗「如月君は、ここに居る碧さんを連れて弁護士のところへ行ってくれないか?」
如月春香「えっ、碧さんの居場所、突き止めてたんですか!?」
皇伽耶斗「ああ、不自然に会話に入ってこない友達がいたんでね」

〇繁華な通り
皇伽耶斗(これで碧さんも大丈夫だろう)
皇伽耶斗「皇です」
皇伽耶斗「はい、先日はありがとうございました」
皇伽耶斗「無理を言ってすみませんでした」
皇伽耶斗「ところで」
皇伽耶斗「お願いしてた件は、遂行していただけましたか?」

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