恩暮呂堂の 貧乏絵師

福山 詩(フクヤマ ウタ)

2秀仙堂の、兼巻さん(脚本)

恩暮呂堂の 貧乏絵師

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〇古びた神社
  売れない絵師、惣七は
  貧乏神の天才絵師、縁の絵を盗んだ為
  版元になりその絵を売る羽目に
  
  はてさて どうなることやら
惣七「家もない 職もない 絵を売る以前の問題だ」
縁(えにし)「じゃあここに住めば? 問屋(絵を売る場所)も兼用にしてさ」
惣七「いいのか ここはお前が住んでいるんだろ 問屋にすればお客がやってくるんだぞ」
縁(えにし)「そうゆう心配は客が来るようになってから言うもんさ」
惣七「それもそうだな ありがとう縁」
縁(えにし)「しかし こんな所に客なんて来んのかい」
惣七「それなんだよ この神社は町から離れている」
惣七「つまり 通りすがりに客の方から ここを見つけることは難しい 何か策を練らないと」
お菊「惣ちゃん!」
惣七「お菊さん 引っ越しは?」
お菊「もう出るよ はいこれ 少ないけど」
惣七「一両!? こんな大金」
お菊「受け取って あなたは私達の息子同然よ」
お菊「引っ越し、あなたも一緒に と思ったけど かえって迷惑になるからって うちの人が」
惣七「重兵衛さんは?」
お菊「あの人 別れが苦手でね それと」
お菊「これは伝言 困ったら俺の元弟子のやってる 町で一番の問屋 秀仙堂を訪ねろ だって」
惣七(ありがとう お菊さん 重兵衛さん)
縁(えにし)「で これからどうやって アタシの水龍の絵を売るつもりなんだい」
惣七「まずは町で一番大きな問屋 秀仙堂へ行って 縁の絵を置いてもらおう」
惣七「重兵衛さんの元弟子 兼巻さんとは会ったことがある きっと力になってくれるはずだ (ちょっと苦手だけどなあの人)」
縁(えにし)「ここはどうするんだい?」
惣七「今 店を開いても誰も来ないだろう」
惣七「まずは縁! お前の絵を町中の連中に知らしめてやれ!」
縁(えにし)「・・・あいよ 版元さん」

〇畳敷きの大広間
町民「兼巻の旦那! この絵は貰ってくよゥ! いくらだい!?」
兼巻さん「はい そちらは3文です(今の600円) いつもご贔屓に ありがとうございます」
町民「ちょいと兼巻さん この絵について詳しく教えとくれよ」
町民「私も私も 兼巻さ~ん」
兼巻さん「いいですよ」
惣七「凄い人だかりだなぁ 兼巻さ~ん!」
兼巻さん「ん?あぁ、惣七君ですか 久方振りですね」
惣七「良かった あの、俺最近問屋を始めることになったんだけど場所が辺境で」
惣七「絵師も無名だし 良かったら暫くここに絵を置いてもらえないだろうか? とても良い絵を描く絵師がいるんだ」
兼巻さん「うーん 残念だが惣七君 うちは人気絵師しか置かな」
惣七「この絵なんだが」
兼巻さん「!? なんという迫力 まるで水龍がその場にいるかの如く!」
兼巻さん「この絵を描いたのはどちら様ですか? まだ無名の絵師と言いましたね!」
惣七「悪いが素性を明かさない主義らしくて 詳しくは言えないんだ」
惣七(貧乏神が描いたとは言えんしな)
兼巻さん「せめて雅号(ペンネーム)くらいは聞かせてください」
惣七(考えるの忘れてた!)
惣七「え~と 石鎚 縁です!」
惣七「置いて貰えますか」
兼巻さん「・・・」
兼巻さん「そうだ 今思い出しました ちょうど店に空きがあります そこでよければどうぞ」
惣七「ありがとうございます!」
兼巻さん「その代わりと言ってはなんですが もし仮にこの絵が売れたら 代金の分配は私が決めてもいいですか」
惣七「勿論! ありがとうございます!本当に!」
惣七「では 明日また来ます よろしくお願いします」
兼巻さん「さて驚きました こんな迫力の絵は生まれて初めてです あの人ならきっと高く買う そろそろいらっしゃる」
異国の民「こんにちは兼巻さん」
兼巻さん「ようこそおいで下さいました 大変珍しい上物が手に入りまして・・・」

〇古びた神社
縁(えにし)「おかえり どうだった」
惣七「なんとか置いてもらえたよ」
惣七「あ そうだお前の雅号だが 石鎚縁になったから」
縁(えにし)「雅号ってなんだい」
惣七「絵師が自分を売り出すときに使う名のことだ」
縁(えにし)「勝手に決めちまったのかい!?」
惣七「まあ そう怒るな」
惣七「よし!次はこの店の名だ 秀仙堂の様な 粋なやつ」
縁(えにし)「あァ~それならもう決めてるよ」
縁(えにし)「恩暮呂堂にするのさ」
惣七「すぐに潰れそうな名だな」
縁(えにし)「既にオンボロじゃないか 落ち着く名だろ?」
縁(えにし)「それに雅号とやらはアンタが決めたんだ 店の名前はアタシに決めさせておくれよ」
惣七「わかったよ だからってこれ以上オンボロにするなよ」
惣七「そうだ さっきの一両でこの神社を修理しよう ・・・あ!」
惣七「服に穴が!」
縁(えにし)「おや裾に何か」
惣七「え?あ」
  それはかろうじて裾にひっかかっている
  一文であった
「・・・」
惣七「うわー-------! 畜生!貧乏め!負けてたまるか! くそー腹も減ってきた!」
縁(えにし)「何だい それならそうと 言いなよ」
縁(えにし)「うちの畑の野菜やら 今日釣った魚やら あるよ」
惣七「え?あるのか食い物」
縁(えにし)「友人が来たときに 振舞うのさ」
惣七「友人か!」
惣七「絵師は自分で描いた絵を友人に譲って、誰かに自慢させるのさ この狭い世間だ 噂話から仕事が舞い込むこともある」
縁(えにし)「譲る?売らないのかい?」
惣七「時にはな 噂の効果というのは その場一度の金よりも 大きな価値を生むことがあるんだ」
縁(えにし)「アタシも友人に絵をやろうとしたことがあるよ」

〇和風
縁(えにし)「水龍の絵描いたんだけどいらない?」
縁の友人「お願いだから帰って! 死んでも尚、貧乏になりたくない!」
縁(えにし)「久しぶり 水龍の絵描いたn」
縁の友人?「いやー!貧乏になるー!」
縁(えにし)「あ 坊ちゃん アタシの絵を」

〇古びた神社
縁(えにし)「もう間に合っていたみたいで」
惣七「それ友人!?」
惣七(ろくに話を聞いてもくれないのか やれやれ 貧乏神というのはどこの世でも厄介者なんだな)
惣七「もう寝よう 明日また秀仙堂へ行くよ」

〇畳敷きの大広間
兼巻さん「惣七君 いらっしゃい 君が昨日置いていった あの絵ですが」
惣七「はい」
兼巻さん「売れましたよ 三両で(約30万)」
惣七「三両!? 浮世絵が!? 無名絵師の絵が!?一日で!? 三両!?」
兼巻さん「お金持ちな異国の方が えらく気に入られまして」
惣七(やったぁ 縁喜ぶだろうな)
兼巻さん「それで 分配のお話ですけれどもね」
惣七(分配か 店に置いてもらったんだ 分け前の2割 いや1割だって文句は言わんさ)
兼巻さん「三文で(今の90円) いかがでしょうか」
「・・・」
惣七「今 文と聞き間違えました」
兼巻さん「いえ 合ってますよ 三文です も ん!」
惣七「え」
惣七「え 三文・・・ んっ え いかがでしょうか?ってどうゆう・・・えっ」
惣七(三文て え?じゃ、なに? 俺の分け前)
惣七(団子一串だって買えやしないぞ!?)
惣七(本気かこの人! 本気で言ってんのか?)
兼巻さん「ッフ」
惣七(・・・)
惣七「えー なぜこの分配なのか 聞いていいですか」
兼巻さん「いやお恥ずかしい話ですけれども うちのやりくりがですね 馬鹿にならんのですよ」
兼巻さん「場所料、仲介手数料、その他諸々」
兼巻さん「こちらとしても頑張ったのですが」
兼巻さん「頑張って頑張って 切り詰めて切り詰めて」
兼巻さん「三文です」
惣七(嘘臭!)
兼巻さん「惣七君 顔が真っ青ですが 大丈夫ですか」
惣七「えと あの 兼巻さん」
兼巻さん「どうされましたか まさか今更ご不満でも? 分配は私に一任して下さいましたよね?」
惣七「う はい」
兼巻さん「これがお商売というものですから」

〇古びた神社
縁(えにし)「売れたかいアタシの絵は」
惣七「ああ しかしほぼ巻き上げられた」
縁(えにし)「そうか売れたか」
惣七「まぁ 今回は宣伝だからな ありがとな縁」
縁(えにし)「そんな奴なら 全額分捕りそうなもんだが 良かったじゃないか 三文は貰えて」
惣七「ほぼ全額取られたようなもんで・・・ ん?」
惣七「確かにそうだな 三両の内三文は貰えた 偶然か?」
縁(えにし)「さっきは一両貰ったのに 一文しか残らなかったしねぇ」
惣七「一両が一文 三両が三文・・・ お前の貧乏、何か法則があるんじゃないのか?」
惣七「例えばそうだな 得られるはずだった対価の内 決まった利益しか貰えない・・・とか?」
縁(えにし)「誰かと比較した方が 貧乏てのは感じやすいもんだしね」
惣七「もしそうなら 単純にだぞ」
惣七「百両で売れば 三百文得られるってことじゃないのか?」
縁(えにし)「そんだけありゃぁ 生活は出来るねぇ」
惣七「まぁ あくまで推測だよ そう考えている方が前向きだろ」
縁(えにし)「惣七 アンタ 楽しそうだね 貧乏の癖に」
惣七「お前のせいだけどな」

〇畳敷きの大広間
  一方 秀仙堂
異国の民「縁という絵師の絵はあるか? 友人に自慢され欲しくなった」
兼巻さん「生憎ですがあちらは一点物の絵ですので あれっきりで」
異国の民「ならばここへ連れてこい いくらでも出す」
  縁の水龍の絵は少しずつ話題になっていくのですが
  
  それはまた次回

次のエピソード:3凄い絵、売れる絵、売れない絵

コメント

  • 貧乏神無双状態!
    兼巻さん酷い!と思ったけど、これも貧乏神の霊力か?
    それでも負けない惣七。
    とはいえどうなることやら

    楽しませていただきました。
    ありがとうございます。

  • 金まきあげるから金巻さん😂⁉️
    ボイスも入っててオートで見れるし最高😆✨
    法則があるとは😲次回も楽しみ❗

  • 貧乏なのに前向きな惣七が良きですね👍
    好感度がさらに上がりました!
    これからどんどん縁の絵が売れていくのかなぁ、とワクワクしながら次話も読ませていただきます😊

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