〇けもの道
ソウビ・アーヌルス「はぁ、はぁ、はぁ・・・」
ソウビ・アーヌルス（どうして・・・ どうして私がこんな目に・・・！）
ソウビ・アーヌルス（私はただ、 生きるために必死だっただけなのに・・・）
「いたぞ！」
「毒婦のソウビだ!!」
ソウビ・アーヌルス「!!」
テンセイ・ユリスディ「・・・・・・・・・」
ソウビ・アーヌルス「テンセイ・・・、 お願い、見逃して」
ソウビ・アーヌルス「ねぇ、 仮にも私はあなたの婚約者だったのよ？ 王の命令で別れさせられたとはいえ、 今でも私はあなたを・・・」
テンセイ・ユリスディ「・・・・・・ソウビ殿」
テンセイ・ユリスディ「簒奪王ヒナツの寵愛を良いことに、 民の命を軽んじ国を傾けたこと 断じて許されることではない」
テンセイ・ユリスディ「──御免！」
ソウビ・アーヌルス（どうして・・・）
テンセイ・ユリスディ「ソウビ殿・・・、 他の者に蹂躙されるよりは せめてわが手で・・・！」
ソウビ・アーヌルス（なぜテンセイが・・・）
（私を殺すの──!?）

〇女性の部屋
上水流　めぐり「はっ！」
上水流　めぐり（夢・・・）
上水流　めぐり「・・・・・・」
上水流　めぐり（まだ心臓がバクバクいってる・・・）

〇オフィスビル前の道

〇オフィスのフロア
下江朋美「おっはよ、めぐり！」
上水流　めぐり「・・・・・・おはよ」
下江朋美「なに、その顔色！」
下江朋美「あ、わかった！ 徹夜でゲームしたんでしょ。 最近発売されてたよね、 めぐりの欲しがってた乙女ゲーが」
下江朋美「オタクだねー」
下江朋美「タイトルはなんだっけ？ 確か、ルビー・・・」
上水流　めぐり「『Garnet Dance（ガーネットダンス）』 あと、徹夜はしてない」
上水流　めぐり「昨夜クリアしたんだよ。 推しのテンセイとラブエンド迎えて 幸せな気持ちで布団に入ったのに・・・」
上水流　めぐり「なのに私、悪女ソウビになって、 テンセイに殺される夢見ちゃったんだよ!? ひどくない!?」
下江朋美「いや、知らんがな・・・」

〇謁見の間
　　『Garnet Dance』
　　主人公チヨミは
　　イクティオ王国の王正妃であるが
　　夫である王ヒナツは
　　愛妾ソウビに溺れ、
　　国をかえりみなくなってしまう
　　チヨミは亡国にならんとする
　　イクティオ王国を救うため、
　　愛する夫と決別し、戦うことを決意する
　　麗しく
　　心強く
　　信頼できる仲間たちと共に
　　乙女ゲーの中でも
　　骨太のシステムと評価が高い、
　　恋愛戦略シミュレーションゲーム
　　それが『GarnetDance』だ

〇女性の部屋
上水流　めぐり「とにかく！」
上水流　めぐり「今夜こそは 夢でテンセイといちゃラブする！」
上水流　めぐり「テンセイの恋愛イベントと ラブエンドとトゥルーエンド 見直してから寝よう！」
「『めぐり殿、 　自分は貴女のことを愛しております。 　初めて出会った 　あの日より変わらず・・・』」
上水流　めぐり「はぁう♡　テンセイ♡ 私もしゅきぃ～♡」

〇黒背景
（だーかーらー・・・・・・）

〇牢獄
　　※注：めぐり↑
ソウビ・アーヌルス「なんでまたソウビになってんだよぉお！」
ソウビ・アーヌルス（ソウビになって テンセイに殺される夢なんて 一度で充分だってのに!!）
ソウビ・アーヌルス「チェンジー!! とっとと目を覚まして 次こそは甘い夢をお願いしまーす！」
ラニ・アーヌルス「お、お姉さま？ 突然どうかなさったの？」
ソウビ・アーヌルス「な、なんでもないの、ラニ。 おほほほほほほほほ」
ソウビ・アーヌルス（くそっ、 大声出してもだめか。 目を覚ませよ、自分！）
ソウビ・アーヌルス（ここは牢獄。 そして妹ラニがいるってことは・・・）
ソウビ・アーヌルス（悪の宰相フリャーカが ソウビやラニの父である前王を倒し、 つかの間の王位を満喫してる時）
ソウビ・アーヌルス（つまり、まだ物語の序盤！ となると、次に来るのは・・・）
ラニ・アーヌルス「お、お姉さま！ 大きな声、それに足音が・・・！ ついにフリューカが 私たちを処刑しに・・・!?」
ソウビ・アーヌルス「いいえ、大丈夫。 この足音は・・・」
ヒナツ・プロスペロ「ソウビ殿はここにおられるか！」
ヒナツ・プロスペロ「忠臣ヒナツ、 麗しの姫君をお救いに参った！」
ソウビ・アーヌルス（簒奪王ヒナツと ソウビの出会いのシーン・・・！）
ヒナツ・プロスペロ「ははは、お美しゅうなられたなソウビ殿！ 前にお目にかかった時は まだまだいとけない少女でおられたが」
ヒナツ・プロスペロ「奸臣フリャーカは すでに俺がこの手で討ち取った。 安心召されよ、 これからは俺がソウビ殿をお守りいたす！」
テンセイ・ユリスディ「・・・・・・」
チヨミ・アルボル「・・・・・・」
ソウビ・アーヌルス（テンセイ、 それにチヨミ・・・）
ヒナツ・プロスペロ「さぁ、ソウビ殿、お手を」
ヒナツ・プロスペロ「亡きお父上に代わり、このヒナツが ソウビ殿の力となりますゆえ！」
ソウビ・アーヌルス「ありがとう、ヒナツ。 その忠心に心からの感謝を」
ソウビ・アーヌルス（原作では、ここから ソウビのヒナツへの依存が始まり、 彼の歓心を得ようと あらゆる手を講じるようになる）
ソウビ・アーヌルス（振り回されるのを好む ヒナツの気を引くため、 わざと気まぐれでわがままな言動を くりかえしてみたり・・・）
ソウビ・アーヌルス（そしてその結果、 ソウビは傾国として民の怒りを買い、 ヒナツともども殺害されることになる）

〇黒背景
（これはその悲劇の始まりの瞬間!!）
　　第一話　傾国の夢　──終──
　　
　　第二話へ続く