侯爵令嬢アガットは、赤髪皇子の妃になりたい

椎名つぼみ

4.ミカエル皇子vs私 4つの作戦!(脚本)

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〇結婚式場の階段
  ミカエル第1皇子の誕生祭
貴族の令嬢「ラファエル皇子がいらっしゃったわ!」
伯爵令嬢「あら、ヤダ! 何でベリー侯爵令嬢のエスコートを?」
貴族の令息「これじゃあ、どっちが婚約者だか・・・」
ラファエル「兄上、遅れて申し訳ありません」
アガット「改めまして。 お誕生日おめでとうございます」
ミカエル「・・・」
  寄り添うみたいに並ぶ私たちを、ミカエル殿下は黙って一瞥した。
  刺すような視線。
  相変わらず、婚約者に向けるものとは思えない。
アガット(嫌われ作戦、その① 『お祝いの席に遅刻したうえに、他の男性と共に会場入りする』)
ミカエル「・・・ 非公式な催しゆえ、遅刻は目をつむろう」
ミカエル「だがここからは、私が彼女をエスコートする。 ラファエル、お前は下がれ」
ラファエル「いいえ、そうは行きません。 今日はオレがアガットの騎士です」
ラファエル「ベリー侯爵家より、大切な令嬢をお預かりしてきたのですから──」
ミカエル「陛下が認めた『正式な婚約者』はどっちだ?」
アガット「ラファエル殿下・・・」
  腕にそっと触れて、「ここは抑えて」と目で合図を送る。
ラファエル「・・・分かりました。 オレの大切な人を、本日はいったん、兄上にお預けします」
ミカエル「・・・」
アガット(当然、こうなるわよね。 だったら、ここからは私が・・・)
ミカエル「入るぞ」
  ふと、殿下が私に左手を差し出した。
アガット(本当にエスコートする気があったの? 体裁を気にするタイプなのかしら・・・)
  引きつる口元をあえて隠さずに、私はそこに自分のを重ねる。
アガット「あら。 今日は珍しく、お優しいのですわね」
アガット「でも私が殿下に並んでしまうと、何だかバランスが悪いのではないかしら?」
アガット(その② 『不釣り合いな2人』作戦。 そのために、ドレスのカラーをラファエルに合わせてきたわ)
ミカエル「・・・先日贈った、首飾りはどうした?」
アガット「ああ、アレですか? せっかく頂いたのですが、私の手持ちのドレスには合わなくて」
ミカエル「・・・そうか。 では近々、見合うドレスを贈ってやる」
アガット(何なの? また高価な物で釣って、言うことを聞かせようってわけ?)
アガット(そういうところが好きじゃないのよ)

〇結婚式場のレストラン
「乾杯!」
アガット「モグモグ・・・」
アガット「このオードブル、とても美味しいわ。 さすが有名シェフのお料理ね」
ミカエル「・・・」
ミカエル「そこの者、この皿を下げてくれ。 私の口には合わない」
ウェイター「あ、はい! 申し訳ありません!! 只今!!」
アガット(何なの? 口に合わないって。 まだ少しも手をつけていないじゃない)
アガット(作戦、その③ 『好みが合わないことを強調する』)
アガット「残念ですわ。 私の一番好きな、魚介のテリーヌですのに」
アガット「殿下とは食べ物の趣味が、全く違うみたいですわね」
アガット「でもそれって、共に生活するうえで、最も重要なことじゃないかしら」
ミカエル「心配するな。バナナは食べられる」
アガット「え? バナナ?」
ミカエル「君の大好物なのであろう? 邸宅に皮が散乱するくらい」
アガット(『スッテンコロリン大作戦』バレてたのね。 嫌味っぽい・・・)
貴族「殿下、この度はおめでとうございます。 先日の諸国との件も、感動致しました!」
貴族「私もです! あのような素晴らしい策を生み出すとは、敬服致しました」
ミカエル「ああ」
アガット「諸国の件とは?」
アガット「先日、皇帝陛下が仰っていた、ミカエル殿下の『功績』のことでしょうか?」
ミカエル「私に・・・多少の興味はあるのか?」
アガット「いいえ、まさか!」
アガット(作戦、その④ 『まったく関心のない素振り』)
アガット「ふぁわぁぁ。急に眠気が・・・ イヤだわ。退屈なお話ばかりで」
ミカエル「税を課することを条件に、近隣国に対し、 一部の穀物や商品の輸入を許可した」
アガット「え!? 行商人からではなく? 皇室が許可し、異国の品を正式に販売するということですか?」
アガット「でもそれじゃ、帝国の産業や平民の生活に、支障が出るのでは・・・」
ミカエル「いや、逆だ。 諸外国からの税収が増えることで、帝国民への負担は軽くなるだろう」
ミカエル「もちろん対象物は選別している。 貴族が興味をもち、こぞって購入し、経済を回すものが主だ」
アガット「ミカエル殿下! それには、東部で流行りの『糸で描いた織物』もありますか?」
ミカエル「ん?」
アガット「小麦を使わないお菓子も、『米』という名の穀物も! 貴族の女性に、需要があると思います!!」
アガット「ぜひ、欲しいです! 私ならそれらを社交界で・・・」
アガット「ハッ!」
ミカエル「珍しく饒舌だな。考えておこう」
アガット(いけない・・・。 ワクワクして、つい話しすぎちゃった)
ウェイター「失礼致します。 デザートでございます」
アガット(ナッツのジェラートね。 美味しそう❤️)
ミカエル「・・・これも、下げてくれ」
ウェイター「はっ! 申し訳ありません!」
アガット「ちょっと、さっきから何なんですか。 一口も食べもしないで!」
アガット「そういうのが失礼にあたることを、殿下はご存じないんでしょうか?」
アガット「料理人がどれだけの真心をこめ、時間をかけて──」
ミカエル「・・・分かった。 君がそこまでいうなら、頂こう」
ミカエル「パクっ。 モグモグ・・・」
アガット(ふふ。勝ったわね)
アガット「そうですよ。最初から素直に──」
アガット「え、殿下?」
アガット(ウソ、顔が真っ青! 意識も・・・ない!?)
アガット「誰か、お医者さまを呼んでちょうだい!! ミカエル殿下がお倒れになったわ!!️」

次のエピソード:5.急接近?️ デートの条件はファッションとスイーツ

コメント

  • ミカエルも憎めないやつかもしれないですね!気になる展開でした!

  • ちょ…イジメられるミカエルが可愛く思えてきましたが!?
    つぼみさんの術中にハマってますかね🤣
    ミカエルはナッツアレルギーだったのかな〜。なんだか健気。
    ラフも本気剥き出しで対抗していて、アガット幸せ者ですね♪

  • ミカエルwwwバナナねじこんでくれてありがとう、大好きwwwでもアレルギーは頑張ったらダメだよ!
    色々誤解される人っぽくて種明かしが楽しみです。
    可愛いところを見せる度にさすがバナナで滑ってくれた人と思ってしまってもうダメです、バナナを見るたび思い出しそうでむしろミカエルがバナナです🍌
    アガットも素っ気なくしようとしたのに好奇心もりもりで安定の可愛さでした💕

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