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サトJun(サトウ純子)

言い訳はマンバブリー(脚本)

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〇通学路
矢島幹夫「僕は、人が嫌いだ」
矢島幹夫「いや、実際は嫌いでは無い。 ただ、人が発している膜に触れると、全身がビリビリ痺れるのだ」
  僕は、これを「マンバブル」
  と呼んでいる。
矢島幹夫「最近、体力がついてきたおかげか、歩くのが楽しくなってきたな」
  この一本道を真っ直ぐ行けば、商店街にでることができる。
矢島幹夫「木の葉が擦れる音、自転車の音、洗濯機の音、赤ちゃんが泣く声・・・」
矢島幹夫「その中に、自分の足音も混ざっている」
  ”ひとりじゃない”を実感しながら幹夫は大きく深呼吸をした。

〇店の入口
矢島幹夫「お、おはようございます!」
望月妙子「あ、みーくん。おっはよー。 朝から肌ツヤいいわねー。うらやましーわー」
矢島幹夫「み、”みーくん”って・・・」
矢島幹夫「き、今日も・・・よろしく、お、願いします!」
矢島幹夫「こんなに朝が似合わない人なのに、 何故か、妙子さんの焼くパンには、おひさまの味がするんだよなぁ」
  幹夫は軽くお辞儀をすると、クリーム色の壁に擦らないように体を横にして店の裏側へ回った。

〇事務所
  ここは手作りパン屋、Deニッシュの事務所。
  しかし、ここはただのパン屋ではない

〇謎の扉
  ここで働いている従業員は全員
  重厚な扉の向こう側にある
  クレセントムーン・プロダクションの
  所属タレントでもある。

〇事務所
月岡紘子「・・・で、出禁になったらしいんですよ。 芳江さん」
三ツ橋榎月「マジかー! ま、現場のこと考えたら、そりゃ怒られるわな!」
矢島幹夫「お、おはようございます!」
三ツ橋榎月「おっ。噂をすればみーくんだ。 おはよー!」
月岡紘子「みーくんさん。 おはようございます」
矢島幹夫「だから”みーくん”って・・・」
三ツ橋榎月「この間、みーくんの撮影の時に、芳江さんが見学に行ったじゃんか。 そん時の話を聞いていたんよ」
矢島幹夫「あ・・・」
月岡紘子「芳江さん、凄かったですよねー」
  確かに、アレは酷かった。

〇結婚式場のレストラン
  先日の式場での撮影時。
矢島幹夫「・・・えっと、こっちの並びの方が、果物が綺麗に見えると思うな」
月城芳江「はい!はい!はーい! 今、うちのみーくんがカメラアングルを考えて、フルーツの位置、変えましたぁ!」
矢島幹夫「あ、花嫁さんのドレスが引っかかりそう」
月城芳江「はい!はい!はーい! 今、うちのみーくんが、撮影の邪魔をしない動きでドレスの先を直してくれましたぁ!」
矢島幹夫「あ、あの。よ、芳江さん。恥ずかし・・・いから、やめてくださ・・・」
月城芳江「あのねぇ、みーくん。 仕事は気付かれるようにやらなくちゃダメなのよー!」
矢島幹夫「あ・・・当たり前、の、こと、し・・・ている、だけ、ですから」
月城芳江「え?本当にそう思ってるの?」
矢島幹夫「・・・は、はい」
月城芳江「・・・」
月城芳江「こういう時こそ、まーくんが言ってた・・・「マンバブリー」だっけ? あれを使うのよ!」
矢島幹夫「ま、マンバブル、です。 つ、ついでに、まーくんじゃなくて、みーくんです」
月城芳江「セリフがない役だから、まだ良いでしょー?」
矢島幹夫「か、監督と、お知り合い・・・ですか?」
矢島幹夫「ギャラが安い仕事は滅多に引き受けないって聞いていたから・・・」
月城芳江「いえ? たまたま、トンカツ屋さんでご一緒した時に、意気投合して」
月城芳江「あー、あの時の高級トンカツ。美味しかったわぁー」
矢島幹夫「あ・・・だから初日の日。 朝からトンカツ弁当食べていたのか・・・」
月城芳江「あ、監督ぅーっ! うちのみーくん、かなり撮影に貢献してるから、ギャラ、上乗せでよろしくねー♪」
  ・・・・・・
  ・・・ん?
  ・・・マンバブルを『使う』?

〇事務所
矢島幹夫「・・・ま、マンバブルを、つ、か・・・」
三ツ橋榎月「”マンバブルを使うって、どういう事?” だろ?」
月岡紘子「うわっ。 ”お前の言いたいことはわかってる”ってヤツですね。気持ち悪っ」
矢島幹夫「き、”気持ち悪っ”って・・・」
三ツ橋榎月「まぁ、俺、プライベートでは1m以内に近付けたことないけんな!」
月岡紘子「凄いじゃないですか!私なんて、2m以内に入ったことないですよ」
矢島幹夫「そ、そうじゃ、な、くて。 マンバブルの・・・」
三ツ橋榎月「おお!そうだった!」
三ツ橋榎月「みーくんさぁ。 自分もマンバブル出してるって、気付いてる?」
矢島幹夫「ぼ、僕が!?」
月岡紘子「そそ。それも、普通みたいで、普通じゃないヤツですよね」
三ツ橋榎月「なんて言ったらいいのかなぁ・・・」
月岡紘子「うーん。バブルを飛ばすっていうより、自分を覆っちゃってる、みたいな?」
「・・・・・・」
「バブルボール!だ!」
矢島幹夫「ば、バブルボール!?」
如月弥生「さぁ、そろそろ支度してください」
如月弥生「・・・」
如月弥生「芳江さんは連れて行きませんよ?」
月城芳江「・・・あれ、バレた?」
月城芳江「えー。邪魔しないからぁー。 ほら。馴染めるように着替えもしたしぃー」
如月弥生「・・・」
如月弥生「ダメです」
月城芳江「・・・」
月城芳江「そだっ!みーくんに、マンバブリーの使い方教えてあげないとぉ。ねー!みーくん! ・・・みーくん?」
矢島幹夫「・・・ま、マンバブル、です」
如月弥生「・・・」
如月弥生「・・・ところで、なんで榎月さんがここでくつろいでいるんですか?」
三ツ橋榎月「いや、みーくんが現場に出たって聞いたから、俺が必要かと思って」
月城芳江「勝手に手伝ってくれても良いけど、ギャラは払わないわよ? うちは雇ってないものー」
三ツ橋榎月「ホント手厳しいなー」
如月弥生「とにかく、そっちの二人は連れて行きませんから!」
如月弥生「さ、行きますよ!」
「はーい!」

〇車内
矢島幹夫「・・・」
月岡紘子「・・・」
矢島幹夫「・・・な、なんか気不味い。何か話した方がいいかな・・・」
矢島幹夫「・・・あ、あの」
月岡紘子「あ、無理して話さなくて良いですよ。 私も人、苦手なんで」
「・・・」
矢島幹夫「・・・人、が苦手なのに、ど、どうして、クレプロ・・・に?」
月岡紘子「・・・」
月岡紘子「切っ掛けは芳江さんです」
矢島幹夫「よ、芳江・・・さ、ん?」
月岡紘子「初めて会った時、マーガリンを食べていたのですよ。カレースプーンで」
如月弥生「あー。思い出しました。 あの居酒屋で、でしたね」
月岡紘子「私の父を足で壁に押し付けたまま、スプーンについたマーガリンを舐め落としている姿。 本当に格好良かったー」
矢島幹夫「・・・あ、足で!?」
月岡紘子「・・・」
月岡紘子「私の父は、お酒を飲むと、お店やお客様にかなり迷惑をかける人でした」
如月弥生「自分の注文した玉子焼きを横取りされて、怒った芳江さんが病院に監禁・・・あ、失礼。入院させて、アルコール中毒を完治!」
月岡紘子「マスターに『マーガリンじゃなくて、バターない?』って、おねだりしながら、入院手続きしている手際良さときたら!」
月城芳江「やっぱり、マーガリンより、バターの方がコクがあるじゃなーい♪」
「よ、芳江さん!」
矢島幹夫「・・・僕はマンバブルでいるの、気付いてたけど・・・」

〇謎の扉
  その頃、クレプロでは
三ツ橋榎月「・・・」
三ツ橋榎月「・・・留守番頼まれちゃったよ・・・」
三ツ橋榎月「はい! 三ツ橋です!」
三ツ橋榎月「・・・ええ、はい。 みーくん・・・いえ、矢島の件ですね」
三ツ橋榎月「かしこまりました。 はい。もちろん気付かれないように動いてます。お任せください」

次のエピソード:【番外編】主人公(紘子語り)

コメント

  • 相変わらず芳江さんのキャラの濃さと言ったら(笑)魅力的ですねー✨
    みーくんのマンバブルの謎が早く知りたいです。ドキドキしながら待ってます😁
    三ッ橋さん……怪しいですねぇ💦

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