第四話 駆け抜けろ(脚本)
〇バスの中
樹(いつき)「蒼斗、優心、海が見えたぞ! 時間あったら泳がない!?」
蒼斗(あおと)「日本海はよっぽど暑くならないと、水温低くて泳いだら風邪引くぞ」
樹(いつき)「え〜!目の前にあるのに?」
優心(ゆうしん)「僕はムリ」
充(あたる)「おっとっと」
樹(いつき)「あ・・・大丈夫すか?」
充(あたる)「支えてもらって悪いね〜! 膝が悪くて、たまにグラつくんだよ」
樹(いつき)「じゃあ、この席譲ります」
充(あたる)「ありがとう! 君たちも小樽に行くの?」
樹(いつき)「ハイ・・・オルゴール堂に・・・」
充(あたる)「観光かな?」
充(あたる)「私もオルゴール堂さんと、今日取引があってね。 良かったら、案内するよ」
樹(いつき)「ありがとうございます!」
蒼斗(あおと)(なんで樹って、すぐに声かけられるんだ?)
優心(ゆうしん)「あれ?」
優心(ゆうしん)「対向車線で今すれ違った車に、あの家系ヤクザが乗っていた気がする・・・」
蒼斗(あおと)「マジか? まあ、こっちの車高が高いし、普通は俺たちに気づかないよな?」
優心(ゆうしん)「・・・Uターンした」
蒼斗(あおと)「ハアアアッ!?」
〇オープンカー
三郎(さぶろう)「2.0の俺の視力が、トー裏キッズを捉えたぜ!」
三郎(さぶろう)「どけ、コラァ!道を開けんかい!!」
〇バスの中
樹(いつき)「ヤクザがすごいスピードで追いついて来ている!!」
樹(いつき)「逃げ場がないバスは、失敗だった!」
蒼斗(あおと)「クソッ、次の停留所で追いつかれる! いっそ、窓から飛び降りるか?」
スピード違反!
前の赤いオープンカー、停車しなさい。
蒼斗(あおと)「ら、ラッキー!パトカーに捕まるぞ」
充(あたる)(仲間割れか? 何で追われているか知らんが、さっき通報して良かった)
〇オープンカー
三郎(さぶろう)「っざけんな!今更、止まれるかよ!!」
〇バスの中
充(あたる)「馬鹿な!加速しやがった!!」
樹(いつき)「アイツ・・・何する気だ!?」
家系ヤクザの車がバスに並んだ瞬間、
オープンカーの運転席に立ち上がったのを見て、
そこに居る全員の鳥肌が立った。
充(あたる)「バスに飛び移る気だ!!」
充(あたる)「後ろの席の、窓を閉めろ!!」
〇走る列車
三郎(さぶろう)「グギギィィ!!」
樹(いつき)「ホントに飛び移りやがった!!」
樹(いつき)「バケモノかッ!」
開いていた窓ガラスの隙間に指を引っ掛けて、車に張り付いているヤクザ。
こんなの、アクション映画でしか、見たことないだろ!
〇バスの中
充(あたる)「ガラスを、割って入る気か? クソ、運転代われ!?」
バスの運転手「エッ、エッ!? アンタ、何なんだ!?」
充(あたる)「道警の警部だ!! 緊急事態だから、運転を代われと言っているんだ!!」
優心(ゆうしん)「あの人、警察だったのか!」
蒼斗(あおと)「前門の虎、後門の狼! どっちの道もヘビーだぜ!」
〇走る列車
「ウオッ! 俺を振り落す気か!?」
「クソーッ!」
〇バスの中
樹(いつき)「バスの蛇行運転に振り落されて、耐えきれなくて落ちた・・・!」
蒼斗(あおと)「後続のパトカーに轢かれたか? あの体格ならしぶとく生きてはいるだろうが、無事では済まないだろう」
優心(ゆうしん)「まだ警察が車内に居るよ・・・」
蒼斗(あおと)「逃げるなら、アイツが運転席に居る今しかない!」
2人の生唾を飲む音が、やけに大きく聞こえた。
〇走る列車
「いまだ!飛び降りろ!!」
俺ら3人は、左折のタイミングで左側の窓から外に飛び出した!!
充(あたる)「クッ、左折のスピードダウンで逃げられたか!」
充(あたる)「逃げるってことは、絶対に裏がある! ヤクザもトー裏も、まとめて検挙してやる!!」
〇ヨーロッパの街並み
小樽──札幌に隣接する港湾都市。山々に囲まれた坂の町。
レトロな歴史的建造物と街中を流れる運河のガス灯が、ロマンチックな異国情緒を醸し出している。
「オルゴール堂に、トー裏キッズが来ていないだと!?」
沢田(さわだ)「バスの充さんから連絡受けて、すぐに張ってたんですが、それらしい3人組や子供は来ていないです」
充(あたる)「馬鹿な・・・俺の正体に、最初から気づいていたとでも言うのか? それともまだ来ていないだけか・・・!?」
〇レトロ喫茶
樹(いつき)「蒼斗の言うとおり、バスに乗る前にボスとの待ち合わせ場所を変更して、良かったな」
蒼斗(あおと)「歌舞伎町ヤクザや警察に追われていると分かった以上、保険は多いに越したことはない」
蒼斗(あおと)「これから先は、俺ら意外はみんな敵だと言うことだ」
小樽のヤクザ「トー裏キッズ」
小樽のヤクザ「ボスがお待ちだ。 地下の部屋に案内する」
〇占いの館
小樽のボス「ススキノのジジイから聞いているよ! 3人とも、なかなかイケてるじゃない」
小樽のボス「それにしても、歌舞伎町のボスは相変わらずイケ好かないねえ」
小樽のボス「自分が送った『鍵』を始末する気でいるらしいね?」
小樽のボス「アイツは潔癖な上に秘密主義だからね。 どういうつもりか分からないけど、『鍵』を独占されちゃ困る」
小樽のボス「とりあえず、小樽のシマにいる間はアタシがアンタ達の安全は保証するよ」
小樽のボス「ただし、ボス同士は不可侵条約に調印しているから、シマ以外は無理だよ」
樹(いつき)(『鍵』は金のプレートのことか)
樹(いつき)(歌舞伎町のボスは、俺たちがニセモノだということを、他のボスたちに知られたくないのか?)
樹(いつき)(なら、好都合だ。 とりあえず、この旅を最後まで乗り切ろう)
小樽のボス「・・・鍵を預ける前に、アタシゃ副業で霊感占いをしていてね」
小樽のボス「アンタ、悪いけど・・・この旅を続けるのはオススメしないよ」
優心(ゆうしん)「どうして・・・ですか?」
小樽のボス「死相が出ている」
小樽のボス「無茶するんじゃないよ」
〇豪華な部屋
優心(ゆうしん)「僕は気にしていないよ」
優心(ゆうしん)「リスカ跡を隠してないから、初対面でもそれらしいことは言えるよね」
そうは言いつつも、優心の顔はいつもより白く、少し震えていた。
優心(ゆうしん)「僕は──」
優心(ゆうしん)「もし、誰かに●されるくらいなら、2人のうちのどちらかに●されたい」
大真面目にそう打ち明ける優心は、まるで普通の女のコみたいだった。
俺たちは、いつの間にか死を意識して旅をしていたのかもしれない。
〇豪華な部屋
蒼斗(あおと)「次は、旭川に移動か」
優心(ゆうしん)「朝の8時の汽車で、向かう」
蒼斗(あおと)「もう、家系ヤクザに追われることはないだろうが、歌舞伎町のボスが代わりのヤクザを送り込んで来てもおかしくはない」
優心(ゆうしん)「逆に今度は顔がわからない分、不利だね」
樹(いつき)「あの警察も、家出捜索にしては随分おかしな行動だったな。 あんなコトして、ホントに警察なのか?」
〇田舎の総合病院
〇綺麗な病室
看護師「退院なんて、無理です! あなたはまだ、事故直後なんですよ!?」
看護師「奇跡的に全身打撲に骨折で済んだからって、1か月は入院が必要です!!」
三郎(さぶろう)「そんなに俺を心配するなんて・・・」
三郎(さぶろう)「惚れたな?」
看護師「・・・ハイ?」
三郎(さぶろう)「悪いが俺はあの日から、一人の女にココロを奪われてしまったのよ」
三郎(さぶろう)「ガキを追いかける合間に、風俗を虱潰しに捜しまくっているが、まだ巡り会えないんだ・・・!」
三郎(さぶろう)「君のキモチに答えられなくて、ゴメン!」
看護師「あっ・・・(察し) じゃあ、今すぐに退院で!」
充(あたる)「退院する前に、俺と話さないか? お互い悪い話じゃないと思う」
三郎(さぶろう)「知らねえ顔だな! 見舞いに来て、土産くらい持ってきたんだろうな?」
充(あたる)「なあに、すぐに、仲良くなれるさ。 窃盗、スピード違反、公務執行妨害、器物損壊・・・」
充(あたる)「全部帳消しにすると言ったら?」
三郎(さぶろう)「だから警察は嫌いなんだ」
三郎(さぶろう)「歌舞伎町の家系ラーメン店のツケも払ってくれよな!」
〇黒
この世には平気で嘘をつく人間が多すぎる。
でも、本当の真実なんて、一体どこにあるのかな。
それがわかる日が来るまで、
俺らは嘘を吐き続けるのだろう。
まさかの三郎のカーチェイスからのアクションシーン、病院の様子も含めて今回は”三郎回”ですね!キッズ3人には申し訳ないですけど(笑)
札幌回もですが、背景画をすごい工夫されてますよね。小樽シーンでの流石のチョイスに驚きました!
いやー、激しい攻防でしたね😂
さすが、北海道の方と申しますか、移動の流れがリアル!
コロナが落ち着きましたら、聖地巡礼させていただきたいと思います👍
カーチェイスめちゃくちゃで面白かったです!
あと三郎の病院でのシーン(笑)。三郎のキャラ自分的にドンピシャで好きです!次回も楽しみにしてます👍