2話 翼竜 VS サピエンス(脚本)
〇暗い洞窟
どれくらい歩き続けただろう。
時間の間隔がない。
???「シャアアア!」
宿利ユウ「はぁ、はぁ」
『レベルが上がりました』
『反撃のスキルレベルが上がりました』
これで5体目だ。
体力の限界が近い。
このまま戦い続けたら、今度こそ死ぬ――。
誰か・・・
いや、助けてくれるわけないよな。なんとか、僕の力だけで切り抜けないと。
宿利ユウ「ん?」
『システム外スキルを検出しました』
『解析中・・・』
『システム外スキルの効果は、HP自動回復です』
システム外って、どういうことだ・・・?
いや、そもそもシステムってなんだ?
たしか、僕の自殺が実行されたのも、『システム』のせいだった。
まったく意味が分からない。
でも、HPが少しずつ回復していく。
・・・助かったんだ。
ここで少し休もう。
クラスメイト「のど乾いた・・・。もう疲れたよ・・・」
不思議なことに、お腹はすかないしのども乾かない。
攻撃を受けた痛みはあるけれど、歩き続けた疲労はなかった。
・・・もう人間じゃないんだな。
それでもいいか。人間のままでは、戦うことができなかったのだから。
〇洞窟の深部
HPが回復するのを待って、また歩き始めた。MPはすでに回復している。
クラスメイト「宿利、置いて行かないでよっ」
二宮叶恵「・・・宿利くん」
知らない。僕がモンスターの前に突き出されたときには、皆黙って見ていたじゃないか。
〇暗い洞窟
あれからずいぶん歩いた。
出口はもうすぐだ。
〇岩穴の出口
〇森の中
・・・・・・
洞窟を出たら町があるなんて、期待していなかった。
でも、実際に目にすると、やはり落胆が大きい。
突然飛ばされた異空間。
マップ。ステータス。モンスター。
ここは僕が知っている現実の世界じゃない。
まるでゲームのようだ。
だけど、ゲームの世界でもない。
種族:ゴーストの体と、僕が感じるこの痛みは、本物だ。
これは、もうひとつの現実世界なのか・・・?
???「その見慣れぬ服装は・・・」
鳥人間!?
???「探したぞ。貴様らが異世界から召喚された勇者か」
喋れるのか!?
宿利ユウ「勇者? なんのことですか?」
宿利ユウ「僕たちは気が付いたらここにいただけです」
こいつ、敵なのか? 味方なのか?
???「ふむ。何も知らされておらぬか。どうやら一方的に召喚されたようだな」
さっきから何を・・・?
宿利ユウ「知っているなら教えてください」
宿利ユウ「異世界の勇者って何ですか? 僕たちはなぜ召喚されたんですか?」
???「この世界のサピエンス――いや、人間どもは、レベルシステムに適応できない弱い種族だ」
???「だから戦いのために、異世界からシステムに適応できる人間を呼ぶのであろう」
宿利ユウ「レベルシステムって、あのステータス画面のことですか?」
???「やはりそうか。人間でありながらレベルシステムを使う貴様らは──」
???「魔王様の脅威となり得る!」
魔王!?
宿利ユウ「待ってください。まだ理解も追いついていなくて・・・」
???「事情も知らず異世界の地に呼び出されたことは気の毒だ」
???「だが、魔王軍に敵対する勢力を生かしておくわけにはいかぬ」
宿利ユウ「て、敵対って、僕は何も──」
???「異世界のサピエンスよ、ここで滅べ!」
宿利ユウ「ぐっ」
???「むっ」
攻撃を返しきれなかった。
力の差がありすぎるのだ。多少のダメージは与えられたようだが、致命傷にはほど遠い。
僕はもう立っているのもやっとだ。
次の攻撃が来たら──
???「返し技か。迂闊に攻撃できぬ・・・・・・」
奴は様子をうかがっている。
その隙に考えるんだ。
これまでの戦闘で分かったことがある。僕のスキルは、タイミングが命だ。
攻撃が当たるタイミングでスキルを発動できれば、スキルの効果は最大限に発揮される。
その瞬間を見極めるんだ!
宿利ユウ「・・・・・・」
???「・・・・・・」
・・・攻撃してこない。
???「どうした、人間。戦わぬつもりか?」
宿利ユウ「いや、そっちこそ」
???「ぐぬぅ」
・・・もしかしてこの鳥、凄まじく慎重なのではないか。
だけどこちらにも、自分から攻撃する手段はない。
ゲームの対人戦なら、このままタイムオーバーによる判定にもつれこむだろう。
宿利ユウ「・・・あの、睨み合っているのも何だから、話し合わないか?」
???「・・・うむ」
この隙に逃げるという手もあるし、今までの僕ならそうしていただろう。
でも、逃げるだけでは、奪われ続ける人生を変えられない。
宿利ユウ「まずは誤解を解きたいんだけど、僕は『人間』じゃない」
???「何!?」
宿利ユウ「僕の種族はゴーストだ。だから、君たちに敵対する種族じゃないよ」
???「・・・ゴースト族か」
???「魂でできた肉体を持つ、きわめて特殊な種族だ」
???「しかし、異世界から来たならば、元の種族は人間であろう」
???「ならば、貴様の習性も人間と同じ」
???「自らと姿の異なる生き物を蹂躙し、殺し尽す本能を持っているはずだ」
宿利ユウ「!?」
宿利ユウ「そんなことない! 僕は意味もなく誰かを傷つけたりなんかしない!」
???「姿が違うだけでは敵にならないと?」
宿利ユウ「当たり前だ!」
???「――そうか」
???「・・・いや、信じられんな。人間は嘘にたけた種族だ」
???「人間族を相手にするためには、どこまでも非情であらねばならぬ」
どうしてここまで人間に敵対感情を持っている?
宿利ユウ「僕はこの世界に召喚されたせいで死んだ」
宿利ユウ「だから、僕を召喚した人間たちの味方になることは絶対にない!」
???「どうだろうな。貴様らと共に召喚された20ほどの人間が、奴らの側につくはずだ」
???「それは貴様らの仲間であろう」
20人・・・。ここにいる僕たちを除いた、クラスの人数だ。
つまり、白崎もこの世界に来ている。
宿利ユウ「――敵だ」
宿利ユウ「その20人の中に、僕の敵がいる!」
宿利ユウ「僕はそいつを倒す。そのためなら手段だって選ばない」
宿利ユウ「もし君たちもその20人を倒すつもりなら、僕と目的は同じだ」
宿利ユウ「だったら、一緒に戦わないか?」
???「・・・」
???「私は翼竜。人間のような嘘や駆け引きは得意ではない」
???「安全を第一に考えるなら、ここで貴様らを葬るのが無難だ。悪く思うな」
宿利ユウ「くっ」
正直、戦っても勝ち目がない。この鳥が極端に慎重でなければ、僕は今ごろ死んでいる。
極端に、慎重・・・。
あ、そうだ。
めちゃくちゃいいとこで終わったので、続きが気になります❗次回も楽しみにしています😆✊
弱い主人公のステータスが成長すると自分まで成長している気が嬉しいです。
精神的にも成長し始めた主人公のこれからの展開を楽しみにしています!
なぜ人間をわざわざサピエンスと呼ぶか…
つまり、現生人類とは異なる旧人類、
ネアンデルタール人もいる…ってコト!?
いや、なんか違う気がしますね…
うーん?