3話 魔王城の戦い(脚本)
〇森の中
宿利ユウ「あのっ」
宿利ユウ「味方になるかもしれない者を殺して、『魔王』に怒られないのか?」
???「むっ」
宿利ユウ「僕は召喚された人たちのこともよく知ってる」
宿利ユウ「でも、殺してしまったらその情報はなくなるぞ」
宿利ユウ「取り返しのつかないことだからこそ、一度魔王に確認した方がいいんじゃないか?」
???「むむっ」
・・・悩んでる。
こいつ、石橋を叩きすぎて壊すタイプだ。
宿利ユウ「僕は自分から攻撃できないわけだし、いったん保留にしても『安全』だろ」
宿利ユウ「異世界の情報を持つ僕を独断で殺してしまう方が、『危険』じゃないか?」
???「むむむっ」
???「・・・それもそうだな」
???「勝手に殺したなどと知れたら、魔王様が何とおっしゃるか・・・」
???「うむ。貴様が嘘をついていたとしても、真実は魔王様が見極めてくださるだろう」
い、言いくるめられたっ!
本当に駆け引きが苦手な種族のようだ。
???「攻撃の手段を持たぬ者たちよ、魔王城へ来るがよい」
クラスメイト「あのー、俺たち、助かったんですよね?」
クラスメイト「・・・よかったね」
どうして? 僕は僕を見捨てた奴らを命がけで助けてやるほど優しくないけど。
宿利ユウ「この人たちは、関係な──」
二宮叶恵「宿利くんっ」
二宮叶恵「ごめんね。宿利くんが戦ってくれてるのに、私たち、何もできなくて」
二宮叶恵「・・・怒ってるよね」
二宮さんが、ハンカチで血を拭いてくれる。
この中の全員が敵だったわけじゃない。
みんな、怯えていただけだ。
白崎や、モンスターや、この鳥に。
・・・板東だけは、積極的に危害を加えてきたけど。
宿利ユウ「この人たちも、一緒に」
???「うむ。転移魔法を使う。 跳ね返すなよ、ゴースト」
宿利ユウ「宿利ユウだ」
???「フン。私のことはヴィオと呼べ」
〇闇の要塞
ここが魔王城・・・
宿利ユウ「魔王って、どんな人なんだ?」
ヴィオ「我ら魔族の中で、最も強いお方だ。 無礼な口をきくなよ」
なんとしてでも、魔王を味方に付けなければならない。
できなければ、死ぬだけだ。
ヴィオ「どうした!?」
魔族「敵襲! 敵襲だー!」
魔族「ヴィオ様、フローラ島の転移陣から奇襲を受けています!」
ヴィオ「人間軍か!?」
魔族「いえ、それが・・・」
〇空
〇闇の要塞
ヴィオ「なぜだ!? 奴らはフローレス族! 敵ではないはず・・・!」
ヴィオ「魔王様はどうした?」
魔族「ご不在です」
ヴィオ「ぐぬぬ。 今すぐ伝令を!」
ヴィオ「戦えるものは各自応戦せよ! 魔王様のご帰還まで持ちこたえるのだ!」
魔族「御意!」
ヴィオ「ユウといったな。魔王軍に付くと言うなら、この戦場で手柄を立ててみせよ!」
宿利ユウ「え、ちょっと──」
戦うとは決めたけど、いきなり戦場に!?
宿利ユウ「うわっ!」
・・・乱戦状態だ。
魔族「ギャァァア──」
魔族「ぐあああ」
奇襲を受けた魔王軍が押されているようだ。
ヴィオと話していた時間で、HPがいくらか回復した。
なんとか、戦える。
フローレス族「首をよこせ!」
宿利ユウ「ッ──」
フローレス族「ギャッ」
彼らはヴィオたちと同じ『魔族』ではないのか?
どうして魔王の城を襲ってくるんだ?
フローレス族「ウオオオ!」
敵は四方八方から押し寄せてくる。
『反撃』はタイミングが命だ。つまり、後ろから不意打ちで攻撃されたら打つ手がない。
いったん壁際に逃げよう。
〇空
ヴィオ「貴様ら、なぜ魔王軍に戦いを挑むのだ!?」
フローレス族「首を取れ!」
ヴィオ「何が起こっているというのだ・・・」
〇荒野の城壁
宿利ユウ「ここなら背後から襲われることはない」
宿利ユウ「うっ・・・」
空から死体が降ってくる。
これが殺し合いなんだ・・・。
宿利ユウ「!?」
???「あなたは人間?」
天使が舞い降りたのかと思った・・・
???「――いいえ、違うようね」
宿利ユウ「ッ──」
言葉は通じている。もしかしたら、話し合えるかもしれない。
宿利ユウ「待って! 君たちはどうして魔王軍と戦っているの!?」
???「ごめんなさい。あなたたちの――魔族の首が欲しいの」
宿利ユウ「待って! お願いだから、攻撃しないで!」
???「許して・・・」
宿利ユウ「!?」
こうするしかなかった。スキルを使わなければ、僕が殺されてしまう。
でも、彼女は死んでいない。あの攻撃は致死的なものではなかったのだ。
きっと、何か理由がある・・・!
宿利ユウ「大丈夫?」
???「近づかないで!」
宿利ユウ「動いちゃダメだ! 血を止めないと!」
???「・・・どうして? 私たちは敵同士でしょう?」
宿利ユウ「だけど、君が泣いているから」
???「だったら何だっていうの!? 私はあなたを攻撃したのよ!」
そうだ。人間に似ていても、天使のように美しくても、彼女は敵だ。
宿利ユウ「それでも、わかり合いたいと思ってしまったんだ」
宿利ユウ「僕らは同じにんげ――いや、同じ魔族じゃないか!」
???「同じ・・・? 何を言ってるの? 私たちは家族でも友達でもない」
???「たったそれだけの共通点で『わかり合える』なんて、どうかしてる」
宿利ユウ「できるんだよ、人間なら」
???「人間・・・?」
???「あなた、元人間!? だったら、残虐非道な生き物なんでしょ!」
宿利ユウ「違う!」
宿利ユウ「人間は残酷な種族だって君たちは言うけど、僕はそんなふうになりたくないんだ」
???「・・・」
宿利ユウ「何があったの? 事情を話してくれないか?」
???「・・・・・・」
〇海辺
あの日、私たちの島に、
ひとりの人間が流れ着いた──
ミーア「どうしたの? 大丈夫?」
騎士「うーん・・・」
ミーア「お姉ちゃん、大変! 生きた人間が打ち上げられてる!」
リーナ「人間!?」
騎士「ハッ! ここはいったい・・・?」
ミーア「あ、起きた!」
リーナ「困ったわね。この島に来た人間を帰してはいけない決まりなのに・・・」
騎士「う、美しい・・・!」
ミーア「海に帰すの? サメに食べられちゃうよ」
ミーア「せっかく生き延びたのに、可哀想よ」
リーナ「そうね・・・」
騎士(ん? あれは、転移陣・・・?)
〇島
その人間を帰したのが間違いだった──
騎士「攻め込め! 島を滅ぼして転移陣を占拠するのだ!」
騎士「この島の魔物は人間に似ている。 捕まえれば、好きにできるぞ!」
「おおー!」
騎士「・・・んん? 伝令か?」
騎士「なるほど──」
〇海辺
騎士「子どもと年寄りを生きたまま捕まえろ!」
騎士「戦えぬ者を人質に、戦える者は捕虜にするのだ!」
「うわあああ!」
〇黒
魔王城を攻めよ。魔物の首を取れ。
取った首が少なければ、人質を殺す。
〇荒野の城壁
???「だから私たちは戦わなければならない」
宿利ユウ「人間たち、なんて酷いことを・・・」
だから魔族たちは、この世界の人間を敵視していたんだ・・・
宿利ユウ「だったら、協力して奴らを倒そう! 僕たちが戦う必要なんてない!」
???「簡単に言わないで! 妹が殺されるかもしれないのよ!」
ヴィオ「――話は聞かせてもらったぞ」
宿利ユウ「ヴィオ!?」
ヴィオ「まったく、戦場で敵軍と話し込むとは何事か!」
ヴィオ「早々に裏切ったのかと思ったぞ!」
宿利ユウ「聞いてたならわかっただろ! 彼女たちは敵じゃないんだ!」
ヴィオ「わかっておる」
〇空
ヴィオ「――どうやら魔王様が戻られたようだな」
あのハゲ頭を一瞬で嫌いになりました😱www