星売りのメテオシスター

オカリ

2. 疑惑の石(脚本)

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〇源泉
長岡茉莉「これ、オークションにかけます」
長岡茉莉「目標額は3億」
長岡茉莉「全国でご覧の皆様 奮ってご参加くだ──」

〇黒

〇諜報機関
長官「オークションにかける、か 馬鹿げた事態になったが・・」
長官「そもそも、アレは本物なのか?」
ウィラメット「いくつか不可解な点があります まず隕石・・と思しき物体のサイズ」
  長岡茉莉はこの物体を
  片手で持って見せました
  推定直径で10センチ弱
  ソフトボールに近いサイズです
  隕石のサイズとしては
  珍しくありません
  ただし

〇源泉
  問題はあのクレーターの大きさ
  空気抵抗の影響を考慮すると
  あの隕石では小さく軽すぎる
  10メートル四方の凹みを
  作るのにまるで足りていない
  隕石サイズとして、せめて
  直径50センチは欲しいですね
  もちろん、落下の衝撃でバラバラに
  小さくなった可能性もありますが・・
  隕石は大気圏突入時の空気の圧縮で
  激しい衝撃波にさらされます
  地面との衝突で爆散する程度の
  強度なら、上空で崩壊するでしょう
  クレーターの規模に対して
  矛盾だらけなんですよ

〇諜報機関
ウィラメット「ゆえにあの隕石はフェイク 本物は別にあるか、ただの自演」
長官「なんだ、やはりニセモノ・・」
ウィラメット「──と、常人なら考えるでしょう」
長官「・・・」
ウィラメット「あの隕石は本物ですよ」
ウィラメット「恒星間天体『U-1』から分離した 小破片で間違い無いですね」
長官「・・なら最初からそう言え」
ウィラメット「いえ、今の話も重要でして」

〇SNSの画面
ウィラメット「「隕石として小さ過ぎる」 「クレーターがおかしい」・・など」
ウィラメット「沢山の指摘が入るでしょう あれはフェイクだと」
ウィラメット「それでいいんです 無価値な隕石もどきと印象付けたい」

〇諜報機関
長官「まどろっこしい 3億なら購入も・・」
長官「待て、通貨は円か? ドルじゃないだろうな」
ウィラメット「円ですよ、日本なんだから」
ウィラメット「確かに購入する手もありです 物好きを雇って買い取らせれば良い」
ウィラメット「私が懸念しているのは U-1の小破片だとバレること」
ウィラメット「『高値で買おうとして隕石の価値が  敵国に悟られる』、コレが心配です」
ウィラメット「悪事も汚職も、大抵は 金の動きで露見しますからね」
ウィラメット「とにかく騒ぎを大きくしたくない 世間の波が収まった段階で・・」
長官「買い取る、か」
長官「だがユーラシアの連中が 先に動いたらどうする?」
長官「我々と違って手段を選ばんヤツらだ 強奪する可能性もあるだろう?」
ウィラメット「その際は手を打ちますが・・ まだ無用の心配でしょう」
ウィラメット「現状確認できた動きは 日本のいち研究所のみ」
ウィラメット「Dr.糸魚川が統括する組織です 我々の『お願い』は断れません」
ウィラメット「今のところユーラシアの介入も 目立った動きは確認できず・・」
ウィラメット「それにご安心を」
ウィラメット「人員だけなら既に配置済みです 対応が後手に回る心配もない」
長官「独断で人を動かしたのか?」
ウィラメット「子飼いの私兵ですよ 大目に見て下さい」
長官「・・まあいい この件は任せる」
長官「うまくやるんだな」
ウィラメット「ありがとうございます」
ウィラメット「──・・」
ウィラメット「不可解な点はもう一つある」

〇源泉
ウィラメット「U-1の小破片はなぜ あの少女の家に落ちたか」
ウィラメット「落ちることを予見していたか それともただの偶然か・・」
ウィラメット「今は置いておきますか・・ いずれ分かることだ」
  第2話
  疑惑の石

〇山並み

〇病院の入口

〇病室のベッド
長岡花陽「お星がっ!家にっ! 落ちたのッッ!?」
長岡花陽「ッッキャアアアアアア! スゴいスゴいスゴい!」
長岡花陽「うぐっ・・うぅ・・・」
長岡茉莉「ちょっと!興奮し過ぎ!」
長岡茉莉「ゆっくり深呼吸しな 週末に転院するんだから」
長岡茉莉「まあ、隕石で服も本も全部 吹っ飛んじゃったけどね・・」
長岡花陽「じゃあ、新しいの買う?」
長岡茉莉「そうなるかな 貯金ならまだあるし・・」
長岡花陽「やったー!ちょうラッキー!」
長岡花陽「それにお星も落ちた! 世界で一番ラッキーかも!」
長岡茉莉「かも、ね」
  ハナビの心臓は深刻だ
  転院の理由は伝えたが
  余命1年は伝えていない
長岡茉莉「あんな宣告、絶対させないから 言うつもりもないけど・・・」
長岡花陽「ねえちゃ?」
長岡茉莉「何でもないよ」
長岡花陽「そっか!」
長岡花陽「ところで、ねえちゃ」
長岡花陽「あのオジちゃん ねえちゃのお友達?」
長岡茉莉「あのオジちゃん・・?」

〇病室の前
粟島研究員「げ、覗いてるのバレた?」
粟島研究員「マズイな、ここは退散・・」
長岡茉莉「こんにちわ〜!」
長岡茉莉「何かご用ですか・・ってのんびり 聞くほど甘くありませんよ〜」
長岡茉莉「ストーカー行為ですね 通報します」
粟島研究員「ちょっと待ってくれ! 激しい誤解がある!」
粟島研究員「ストーカー行為は特定の人へ 好意があって成立する!」
粟島研究員「僕はキミに恋愛感情を持ってない!」
粟島研究員「さらに後を追いかけたのは今回初! 正式な拒絶も今が初めて!」
粟島研究員「以上からストーカー行為と言えない! 言えないけど・・・」
粟島研究員「次回からはストーカーと 見なせる・・かな?」
長岡茉莉「はぁ・・」
長岡茉莉「いいでしょう 通報は勘弁してあげます」
長岡茉莉「要件だけ手短にどうぞ」
粟島研究員「あ、ありがとう 少し質問したくてね」
粟島研究員「隕石、競売にかけるって 言ってただろう?」
粟島研究員「それも3億だなんて強気な値段だ 本気で売れると思っているのかい?」
長岡茉莉「・・難しいでしょうね」
粟島研究員「おや、意外だね」
長岡茉莉「もちろん、3億で売れたら 最高ですけど・・」
長岡茉莉「私なりに調べましたから」

〇美術館
長岡茉莉「隕石は高額で売れる、 それは分かりました」
長岡茉莉「だけど、価格帯は高くても 3000万円から5000万円」
長岡茉莉「有名な月の石でも2.5億円ほど 3億円には届きません」
長岡茉莉「素性のわからない隕石じゃ 言うまでもなく難しい・・」
長岡茉莉「なので、隕石だけじゃなく 全部賭けるつもりです」

〇病室の前
粟島研究員「全部、とは?」
長岡茉莉「全部ですよ」
長岡茉莉「隕石だけじゃない 吹っ飛ばされた残骸」
長岡茉莉「クレーターのある土地 散らばったもの・・」
長岡茉莉「隕石ゆかりのものは 全て売ります」
長岡茉莉「親が残してくれた 土地と家でしたけど・・」
粟島研究員「そこまでするのかい?」
粟島研究員「いや、そもそも売れるのかな?」
長岡茉莉「海外では穴の空いた犬小屋が 500万円で売れた話もあります」
長岡茉莉「高値の理由は隕石で空いた穴だから ・・らしいですよ?」
粟島研究員「・・・」
長岡茉莉「・・喋り過ぎました これで満足ですか?」
長岡茉莉「なので隕石を調べたいなら 相応の額を用意して下さい」
長岡茉莉「即金で3億頂けるなら競売も 必要ありませんから」
粟島研究員「その額がポンと出せる 研究室なら良かったけどね」
粟島研究員「それに僕がここに来た目的は 隕石だけじゃない」
粟島研究員「コレを渡しに来たんだ」
長岡茉莉「これ、私たちの・・」
粟島研究員「そ、クレーター周辺に 散らばってた落とし物だ」
粟島研究員「小物とか、比較的原型の あるモノを入れてきた」
粟島研究員「野晒しのままだと風で 飛ばされそうだったからね」
粟島研究員「余計なお世話だったかな?」
長岡茉莉「いえ、助かりました」
長岡茉莉「今は1秒でも妹の側にいたいので・・ 家に戻れるか厳しかったんです」
粟島研究員「キミさえ良ければ、家の周りの 掃除も僕がやろうか?」
長岡茉莉「・・理由のない親切ほど 不気味なものはありませんケド」
粟島研究員「ちょ、ニラまないで! 理由ある親切だから!」
粟島研究員「掃除する代わりにさ・・ 跡地を調べる許可が欲しいんだ」
粟島研究員「あそこの家主はキミなんだろ?」
長岡茉莉「まぁ、その位なら・・」
粟島研究員「よしっ!決まりだ!」
粟島研究員「そうと決まれば・・ はいコレ」
長岡茉莉「えーっと、地惑研究・・?」
粟島研究員「『日本地惑研究開発機構』 通称“JEPRA”」
粟島研究員「読み方はジェプラ、僕の所属組織だ 携帯番号も書いてるから」
粟島研究員「何か買って来て欲しいものとか 雑用で電話してもイイからね」
粟島研究員「じゃ、今後ともよろしく!」
長岡茉莉「・・・」
長岡茉莉「変な人・・」

〇病院の待合室
粟島研究員「ま、最初はこんなもんか」
粟島研究員「とにかく3億円にこだわってたな そんなに金が欲しいか・・」
粟島研究員「いや、そりゃ欲しいよな 家吹っ飛ばされてるし」
粟島研究員「まあいい」
粟島研究員「焦らずじっくり距離を詰める 必ずチャンスはあるハズだ」
粟島研究員「──隕石を奪うチャンスが」

次のエピソード:3.オークション特番

コメント

  • 実家吹っ飛んだのに興奮してる妹ちゃんが可愛いです!貯金でなんとかなるんや...

  • オカリさんこんばんは!

    隕石を狙う人達がどんどん出てきてさらに気になります!
    病気の妹が無邪気で可愛いです!
    とても勉強されてますよね!?リアルな設定で現実味が凄くありました!

  • 金額や隕石争奪戦の様相など、生々しさが出てきていいですね~😊
    隕石って大気圏で摩擦で燃え尽きるんだと思ってたんですが、空気圧縮で衝撃波が発生するんですね!? 雑学(常識…?)も楽しいです!
    クレーターと隕石のサイズ・質量が釣り合わないけどU-1由来なら整合性がある…?隕石に3億は高いけどU-1由来なら即決で出す?物語冒頭の宇宙起源説…U-1が見せた不自然な加速…謎が謎を呼び興味が尽きません!😆

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