第ニ話 生き抜け(脚本)
〇プライベートジェットの中
機長「クソッ!」
機長「旋回し続けて救援を待つ作戦は、すぐにバレてしまった」
機長「管制官への通信も遮断された!」
機長「このまま、ハイジャック犯の言うとおりにするしかないのか?」
機長「副機長、この場を切り抜けるアイディアはないか!?」
副機長「そうですね・・・」
副機長「あと、機長は私の言うことを聞いてもらえたら助かります」
機長「なっ、何を言っているんだね! 副機長!?」
正臣(まさおみ)「そういうことやで、機長さん♪ ほんなら、うちの仲間と運転を代わってもらおうか〜?」
〇飛行機内
乗客(ヤバイヤバイ! 家族に連絡しなきゃ・・・!)
乗客「キャア!」
CA「みなさ~ん。 スマホは通路に捨てて下さい!」
CA「今は殴りましたけど、次見つけたら、順番に刺します!」
CA「連帯責任!忘れないでねー」
樹(いつき)「あのCA、仲間だったのか!」
蒼斗(あおと)「何が目的かは知らんが、大人しく降りてはくれなさそうだな」
優心(ゆうしん)「アッ!」
CA「綺麗なコねえ。肌もキメ細かくて・・・あら? 手首がためらい傷の跡だらけじゃない!」
CA「死にたがりなのかしら? 丁度いいわ」
CA「アンタを人質にするわ。 もし、乗客に裏切り者が居て刺されることになっても、アンタは本望でしょ?」
優心(ゆうしん)「ぼ、ボクは・・・いつ死んでも構わない」
優心(ゆうしん)「でも、友達は助けて!」
CA「泣かせるわね!」
CA「とりあえず私と一緒に、機内にいる他のCAたちに手錠をかけるのを手伝ってもらうわね」
〇飛行機の座席
樹(いつき)「優心がCAに連れて行かれた!」
蒼斗(あおと)「樹、CAがここを離れた今がチャンスだ! 罠を仕掛けるぞ!!」
樹(いつき)「どうやって?」
蒼斗(あおと)「俺に考えがある。あのアフロ頭が機長室から帰ってくる前に、優心だけでも助けよう!」
〇飛行機内
CA「見廻り&脅迫完了♪」
CA(フフ、この計画が成功すれば、ヤクザの愛人から足を洗える!)
CA(大金を持ってドバイあたりに飛んで、一生遊んで暮らしてやる!)
CA「エッ!」
CA「足に何か引っかかった・・・危なッ!!」
CA「ナイフを落とした・・・銃を・・・」
透明なPEラインを足元に張っていた俺らは、前に転んでナイフを手放したCAの身体に飛びかかった。
樹(いつき)「こんのやろー!」
俺は夢中でCA目がけて拳を振り下ろした。
蒼斗「このCA銃も持っていたのか。 危なかったな。 なあ、樹」
蒼斗「樹?」
蒼斗「樹!やり過ぎだ!もう、大丈夫だ!」
樹(いつき)「ハアハア・・・」
一緒に飛びかかった蒼斗に止められるまで、初めて人を殴った俺は、震えが止まらなかった。
生まれて初めて拳から血が出るまで人を殴ったのに、妙な恍惚感と興奮を感じている自分に、吐き気がした。
まるで、俺を虐待していた両親になってしまったような罪悪感と敗北感──
〇飛行機内
正臣(まさおみ)「そーこーまーでーだッ!」
優心(ゆうしん)「・・・!」
正臣(まさおみ)「ガキが、調子に乗るなや!」
正臣(まさおみ)「あーあ? もう誰か分からんくらい顔面フルボッコ・・・末恐ろしいガキやな!」
正臣(まさおみ)「見えるかいな?ホンモノの銃やで!? 手を上げて、大人しく座席に戻れ!」
蒼斗(あおと)「チッ、遅かったか・・・」
樹(いつき)「俺とそのコの人質を交代してくれ!」
正臣(まさおみ)「ハア?」
優心(ゆうしん)「樹・・・!」
正臣(まさおみ)「オマエは女を気絶するまでボコボコにしちまう、ヤバイガキだ。違うか?」
正臣(まさおみ)「人質にはしない。まず、オマエから痛い目見てくれや」
銃口が俺に向けられた、その時
優心(ゆうしん)「樹、屈んで!!」
優心(ゆうしん)「ハアアッ!」
正臣(まさおみ)「げへえっ!?」
優心の後ろへの肘打ちがアフロ頭の鳩尾に決まり、
拳銃を持つ手を抑えたまま、鮮やかに反転した優心は、あっという間にアフロ頭を床に叩きつけた!
優心(ゆうしん)「樹、蒼斗!一緒に押さえて! 誰か、クルーバンクからロープか何か持ってきてくれ!!」
「・・・」
優心(ゆうしん)「ボサッとすんな!!」
樹(いつき)「ハイイッ!!」
〇プライベートジェットの中
副機長「さっきは客席がうるさかったが、正臣が静かにさせたか」
樹(いつき)「もうあの2人は捕まえたよ」
蒼斗(あおと)「観念して、機長の居場所を教えろ」
副機長「2人がこんなガキにやられただと!?」
副機長「オマエたち、何か勘違いしてないか?」
副機長「俺が今、この旅客機全員の命を握ってるんだよ!」
副機長「このレバー傾けると、どうなるか知ってるか!?」
スゴイ振動とともに、身体がフワッと浮くような感覚になり、俺と蒼斗は椅子にしがみついた。
副機長「乗客の皆様〜これから我が旅客機はスピード違反とローリング運転を開始しま〜す」
副機長「機長を見つけてもいないのに、俺は刺せないよな?」
副機長「心中したくなかったら、機長である俺に従えよ!」
〇飛行機内
乗客「なんだ、なんだ! こんな乱暴に運転して、この旅客機を落とす気なのか?」
優心(ゆうしん)「揺れすぎて、立っていられない!」
優心(ゆうしん)「オイ! アンタらの仲間、ヤケになってるよな!?」
優心(ゆうしん)「機長をどこに隠したか早く教えないと、みんなまとめてあの世行きだ!!」
「・・・!!」
〇プライベートジェットの中
副機長(さて、これだけ怖がらせればいいだろう。 隠してある銃であいつらをコクピットから追い出して、)
副機長(あらかじめ用意していた緊急脱出用のパラシュートで逃げるとするか)
副機長「ん?」
副機長「計器の数値が、おかしい!」
副機長「やり過ぎて、ピトー管が損傷したのか!?」
樹(いつき)「嘘だろ!?この飛行機、堕ちていないか?」
蒼斗(あおと)「何やってる!建て直せよ!!」
副機長「お、俺の実力ではもう無理だ・・・!」
副機長「機長を・・・機長を呼んでくれっ!!!!!!」
〇空
副機長「堕ちる堕ちる堕ちる堕ちる堕ちる!!!!!!!!」
〇空港のロビー
充(あたる)「北海道警察警部田中充です! 皆様、今回のハイジャック事件の操作協力お願いします!」
乗客「死ぬかと思った!」
乗客「私、犯人に殴られました!」
乗客「でも、あの若い人たちがカラダ張ってくれなかったら、今頃墜ちていたかもな!」
充(あたる)「若い人?」
〇個室のトイレ
乗客「犯人から機長がトイレに閉じ込められているのを聞き出して、ギリギリ助かったんだよ」
〇空港のロビー
充(あたる)「どの乗客も若い3人組と口を揃えて言うが、降りた乗客には見当たらなかった・・・」
充(あたる)「調べる必要があるな!」
〇駅のホーム
樹(いつき)「酷い目にあったな!」
蒼斗(あおと)「こんなのもう、懲り懲りだぜ」
樹(いつき)「それにしても、蒼斗の作戦はハマッたな! アタマ良いのな!」
蒼斗(あおと)「いや、俺なんか・・・それより、優心のほうが意外だったよ」
蒼斗(あおと)「武道でも習っていたの?」
優心(ゆうしん)「合気道やってたよ」
優心(ゆうしん)「いちお、日本一」
「えー!」
優心(ゆうしん)「この電車で札幌に行けるらしいね。 やっと、指示ノートのとおりに・・・」
樹「!」
ススキノのヤクザ「もしかして、お前らがトー裏キッズだべか?」
〇黒
よっぽど俺たちは、前世での行いが悪かったんだな
一瞬で、世界が真っ暗になった気がした。
尚継とサクアに意識を注ぎすぎて、こちらの更新を見落としていました^^;
息つく暇もないスリリングな展開、すっかり見入ってしまいました。無事ハイジャックは解決と思いきや、まだまだ困難が続きそうですね……
余談ですが、直近の国内線ハイジャック(といっても20年以上前ですが)も羽田発新千歳行ですので、不思議なリンクを感じてしまいます。
ずっと飽きない展開で面白いです。
キャラクターの闇深めな設定も独特で素敵です。
樹くんマジでバイオレンスですね😱
あとなんかヤバそうなヤクザがでてきた。
裏社会系のストーリー好きなので期待です👍