明日の道は誰も知らない

ゆきんこ

第一話 トー裏キッズ(脚本)

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〇歌舞伎町
  西暦2×××× 東京 新宿
  人類は相変わらず、汚染されたスモークとともに平和に暮らしている
  令和から変化したことといえば、
  機械工学が発展したこと、
  金さえ払えば、月に一般人も行けるようになったこと。
  後は、トー裏の家出少年少女が、
  年々増えていることくらいだ。

〇入り組んだ路地裏
樹(いつき)「ここがトー裏か」
蒼斗(あおと)「もしかして」
蒼斗(あおと)「ここに来るの、始めて?」
樹(いつき)「うん・・・」
樹(いつき)「インスタで見て・・・みんな地雷系だし、なんか楽しそうかなって」
蒼斗(あおと)「実は俺らも最近来たばっかりなんだ。 仲良くしようぜ」
優心(ゆうしん)「ここは楽しくはないけど、タイクツしのぎにはなるよ」
優心(ゆうしん)「ダンボールあげるから、そこら辺に座ったら?」
樹(いつき)「アノ・・・みなさんは、家出してきた人たちなんですか?」
蒼斗(あおと)「俺は通い組。家出は検討中だな。 あ、敬語は使わんでいいよ!」
優心(ゆうしん)「僕は完全に家出。 家は安心できないからね」
蒼斗(あおと)「お近づきの印に・・・タバコ、吸う?」
優心(ゆうしん)「僕は電子タバコ派。 紙はニオイが嫌だ」
蒼斗(あおと)「優心には聞いてないって」
蒼斗(あおと)「お前は?名前なに?」
樹(いつき)「樹・・・タバコは吸ったことない」
優心(ゆうしん)「マジか?何歳なの?」
樹(いつき)「17歳」
蒼斗(あおと)「じゃ〜試しに吸ってみる?俺のキツイけど」
樹(いつき)「あっ、あざーす!」
樹(いつき)「口から吸って・・・肺に溜めて、口から吐く・・・」
樹(いつき)「ウッ!」

〇入り組んだ路地裏
樹(いつき)「ゲボゲボッ!! 不味い! ゲボゲボゲボッ!グエッ!エッ!」

〇入り組んだ路地裏
蒼斗(あおと)「吸い込みすぎ!ハハハハッ!!」
  これが、情けないけど俺のトー裏デビュー。
  蒼斗と優心と知り合うことができた。
  だけどこの出会いが、このあとの3人の運命を狂わせていくなんて、まだ誰も知らなかった。

〇インターネットカフェ
樹(いつき)「優心、ホントにネカフェに住んでるんだね」
樹(いつき)「金とか、どーしているの?」
優心(ゆうしん)「たまにホストの1日体験とか、ティッシュ配りで小銭稼ぐから、大丈夫」
樹(いつき)「ホスト?」
樹(いつき)「優心て、やっぱり男なの? 女のコみたいにも見えるから、てっきり・・・」
優心(ゆうしん)「戸籍上はオンナだよ。 母は男の格好するのが気に入らないみたいで、だから僕は家を出た」
樹(いつき)「なんか、ナイーブなこと聞いて、ゴメンな!」
優心(ゆうしん)「いいよ。僕は平気。 リスカの跡も・・・見る?」
樹(いつき)「ふえ・・・スゲー・・・痛そうだね」
優心(ゆうしん)「痛いけど、これをしないと簡単にあの世に行っちゃうから」
優心(ゆうしん)「オマジナイ?みたいなもん」
樹(いつき)「じゃあ、俺も・・・! 背中、見てよ」
優心(ゆうしん)「あ・・・」
樹(いつき)「親に17年間虐待されていたんだ。 学校にも行けなくなって、我慢の限界だった」
優心(ゆうしん)「トー裏キッズはみんな闇深いから、大丈夫」
優心(ゆうしん)「一緒だよ!」
  会ったばかりの優心に、自分の闇を見せてしまったのは、自然の流れだった。
  そして俺は生まれて始めて、
  夜を怖がることなく朝まで眠った。

〇歌舞伎町
  歌舞伎町──『眠らない街』
  東洋一の歓楽街。
  裏社会の拠点であり、約120箇所の暴力団と台湾や中国の黒社会が煩雑している。

〇入り組んだ路地裏
三郎(さぶろう)「おい、そこの3人・・・」
蒼斗(あおと)「なんだよ、ヤクザか? ここはトー裏だぜ? 何しに来たんだ!」
三郎(さぶろう)「ピリピリするなって・・・明日の天気は雨だろ?」
優心(ゆうしん)「明日も晴れ・・・」
樹(いつき)「雨!雨です!」
優心(ゆうしん)(樹、どうしたの!)
樹(いつき)(逆らわない方がいいんじゃない?)
三郎(さぶろう)「だよな、うん。 『赤い髪と茶髪と黒髪の子供3人組』 オマエらで間違いねえ」
三郎(さぶろう)「ボスからうまくやれよって言伝だ。 じゃーな!」
樹(いつき)「ふう、なんとかなったか」
蒼斗(あおと)「お前、外面いいのな!」
優心(ゆうしん)「僕たち3人にって・・・なんだろう。 開けてみようか?」
樹(いつき)「これは──」
蒼斗(あおと)「航空チケットが3枚。 札幌行きの片道チケット」
優心(ゆうしん)「こっちはノートだよ。 表紙に『Go to the moon』と書いてある」
蒼斗(あおと)「月に行け? 大したタイトルを付けたな」
優心(ゆうしん)「中には細かい指示が書いてある。 明日、羽田空港発新千歳空港行き8時の飛行機に乗れ・・・」
樹(いつき)「あと金のプレートとスマホ・・・」
樹(いつき)「最後のは・・・エグイぜ」
  現金30万円の入った財布に、俺たち3人は言葉を失った。

〇川沿いの公園
樹(いつき)「どっ、どうする!? この金、何かの間違いだよな?」
樹(いつき)「あのヤクザ探して、返すしかないか?」
蒼斗(あおと)「もし、探すことが出来ても、人違いだったことがバレたら、俺らが危険じゃないか?」
蒼斗(あおと)「むしろ、このまま山分けして逃げるか?」
蒼斗(あおと)「キレイな金じゃなさそうだ」
優心(ゆうしん)「僕たち、トー裏以外に行くところなんてないよ!」
優心(ゆうしん)「このノートに書いてあるとおりなら、旅で使う用の金みたいだ」
優心(ゆうしん)「ただ、1日に1ページしか読めないように機械でロックされていて、それ以後に何をするのか分からない」
樹(いつき)「じゃあ思い切って──」
樹(いつき)「この指示ノート通りに動いてみる!」
蒼斗(あおと)「──嫌いじゃないぜ、そういうの」
蒼斗(あおと)「ミッションさえクリアできれば、なんとかなるかもな!」
優心(ゆうしん)「僕は面倒なのは嫌だけど・・・トー裏に帰れるなら、やってみようかな」
優心(ゆうしん)「2人が一緒なら」
樹(いつき)「よし、決まり! 案外、北海道旅行楽しんで帰ってくるだけかもしれない」
樹(いつき)「神さまが俺たちにくれたプレゼントかもな!」
  神さまはそんなに簡単には、プレゼントはくれない。
  俺たちは後で嫌というほど、思い知ることになるんだ

〇ヨーロッパの空港

〇空港の滑走路

〇空港の出入口
樹(いつき)「飛行機!始めてでキンチョーする!」
蒼斗(あおと)「格安航空の旅客機だから、小さい機体だな」
蒼斗(あおと)「大体、修学旅行とか・・・ああ、学校にほとんど行ってなかったんだっけ?」
樹(いつき)「蒼斗は乗ったことあるの?」
蒼斗(あおと)「祖母の家が函館なんだ。毎年乗らされていたよ」
樹(いつき)(蒼斗からは、セレブなニオイがするんだよな。なんで、トー裏に居たんだろう?)
優心(ゆうしん)「受付してきたよ。搭乗しよ」
正臣(まさおみ)「すんまへん! 8時発札幌行きの飛行機って、ここの搭乗口で合うてる?」
樹(いつき)「俺らも同じ便なんです! ここで合ってますよ!」
正臣(まさおみ)「良かったわ〜! ボク田舎モンやから、若いコに教えられて、恥ずかしいな〜」

〇飛行機内
機内アナウンス「皆様、おはようございます。 今日も「〇〇航空 新千歳空港行き 」 をご利用いただきまして、誠にありがとうございます」
樹(いつき)「いよいよか〜!」
蒼斗(あおと)「樹よ、飛行機はな、離陸するときがキモだ。 フワッとして、ちょっと気分が悪くなる・・・」
優心(ゆうしん)「蒼斗、高所恐怖症なんじゃない?」
蒼斗(あおと)「そっ、そんなことは・・・あっ、動いた!」
  これからの旅の、期待と不安に押しつぶされそうになりながら、窓の外を見た瞬間──
正臣(まさおみ)「全員動くなあっ!この飛行機はハイジャックした!!」
CA「・・・!」
正臣(まさおみ)「機長に、利尻島に行けと伝えろ!」
CA「ハ、ハイ!」
樹(いつき)「さ、さっきの田舎者がハイジャック犯だったのか!?」
蒼斗(あおと)「指示ノートには、今日中に札幌に着いてスマホで連絡をしなくてはならないのに、利尻島!?」
蒼斗(あおと)「ムチャクチャだぜ!」
優心(ゆうしん)「どっ、どうしたらいいの!!」
正臣(まさおみ)「黙れ、ガキども!!」
正臣(まさおみ)「死にたいやつから刺していくからなー! 分かったか!?」

〇歌舞伎町
三郎(さぶろう)「ウエッ!?人違い!?」
三郎(さぶろう)「だってアイツ、『雨の合言葉』を言ったから・・・」
三郎(さぶろう)「は、ハイ・・・荷物は全て渡してまして・・・」
三郎(さぶろう)「スンマセン!! 命にかえても、必ずガキどもから『鍵』を取り戻してきます・・・!!」
三郎(さぶろう)「・・・あんのガキども〜見つけ出したら、タダじゃおかね〜からなっ!!」
三郎(さぶろう)「行き先は札幌だな!?」
三郎(さぶろう)「ぶっ●してやる!!」

〇飛行機内
正臣(まさおみ)「オイオイ、何をグルグル回ってんねん? 俺が気づかないと思ったんか?」
正臣(まさおみ)「CA、コクピットに案内しいや!」
CA「こ、コチラです!」
樹(いつき)「羽田上空を旋回して、時間稼ぎしていたのか?」
優心(ゆうしん)「少しでも時間稼ぎになったかどうか・・・利尻島で警察が配備されているのを期待するしかないね」
蒼斗(あおと)「俺が犯人なら・・・わざわざ利尻島で着陸して、捕まるようなヘマはしない」
蒼斗(あおと)「途中でパラシュートで降下するなり、策はあると思う」
樹(いつき)「この高さとスピードでパラシュート? スーツも要るし、持ち込むのは無理だよ」
優心(ゆうしん)「それを言うなら、ナイフもよく機内に持ち込めたよね?」
蒼斗(あおと)「お前らだったら、ナイフ1本、自分の身1つで旅客機のハイジャックをしようと思うか?」
樹(いつき)「仲間が機内に居るのか!?」

〇宇宙空間
  俺らトー裏キッズの終わりの始まり
  明日の道は誰も知らない

次のエピソード:第ニ話 生き抜け

コメント

  • 宝探しのわくわく冒険…とは、とてもならなそうですね。展開がスピーディーでドキドキして楽しいです。これからの展開が少し恐いですが楽しみです。

  • ドラマの第一話を見終えて、このドラマずっと続けてみたい!と思うような感覚です。何となく主人公3人の状況背景がわかり、偶発的な事件にどのように追い込まれていくのか、とっても楽しみです。

  • 闇が深そうな三人がどうなるのか気になります。
    トー裏…うっ頭が。昔モデルになったであろう街に夜に一度行ってみた事がありましたがとても雰囲気が怖かったのを思い出しました(笑)

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