シュレーディンガーの方程式

Nazuna

第三話:ウィグナーの友人(脚本)

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Nazuna

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〇散らかった研究室
葛城大河「『デルタ』に自己破壊プログラムを起動させたのはあなたですか、」
葛城大河「ノイマン教授・・・!」
ノイマン「・・・・・・」
ノイマン「・・・『デルタ』の自己破壊プログラム?」
ノイマン「何の話だい、クズ」
葛城大河「なっ!?」
葛城大河「とぼけ・・・!」
葛城大河(・・・いや、落ち着け)
葛城大河(まだ教授が犯人だと決まったわけじゃない)
葛城大河「・・・・・・」
葛城大河「『デルタ』が置かれた部屋で何があったのか、本当に知らないんですか」
ノイマン「ああ。だから教えてくれ」
ノイマン「私と別れた後、一体何があったのか」
葛城大河「・・・あなたと別れた後、俺たちは『デルタ』の本体が保管されている部屋に入った」
ノイマン「ああ、『デルタ』に用があったんだろ?」
葛城大河「そしてしばらくすると、部屋に警報が鳴り響いた」
葛城大河「・・・それは、『デルタ』内のデータと、」
葛城大河「『デルタ』自身を破壊するプログラムが起動した合図だった!!」
ノイマン「なに!?」
葛城大河「廊下ですれ違った時、あなたは部屋のすぐ近くにいた」
葛城大河「『デルタ』に細工をした後だったからじゃないのか?」
ノイマン「クズ、それは違うよ」
葛城大河「・・・信じられるか!!」
葛城大河「あれは才のものだ!俺は、俺は・・・」
葛城大河「・・・才が戻ってきたとき、何の心配もないようにしたいんだ」
ノイマン「・・・君の言うことはよくわかったよ、クズ」
ノイマン「もし君の言ったことが本当なら、犯人探しに躍起になるのもわかる」
ノイマン「でも、犯人は私じゃない」
葛城大河「だから、信じられ・・・」
ノイマン「クズ、私にはアリバイがあるんだ」
葛城大河「・・・アリバイ?」
ノイマン「そうだ」

〇廊下のT字路
  大学内 通路
  葛城たちとノイマンが出会う少し前
生徒A「あの、ノイマン教授」
ノイマン「やあ、こんにちは」
生徒A「質問なんですけど・・・」
ノイマン「ああ、構わないよ」
生徒A「えっと、ここがわからなくて・・・」
ノイマン「どれどれ・・・」

〇散らかった研究室
ノイマン「君たちと出会う直前まで、私は他の生徒からの質問に答えていたんだ」
ノイマン「信じられないというなら、その生徒の名前を教えてもいい」
葛城大河(そうだったのか・・・)
ノイマン「質問に答えて、私は研究室に向かう途中だったんだ」
ノイマン「君たちが研究室からあの部屋に向かったのなら、」
ノイマン「私と君たちがすれ違うのは当然のことだろう?」
葛城大河(確かに、教授の言うことは筋が通っている)
葛城大河(だが・・・)
葛城大河「それならなぜ」
葛城大河「唯にあんなことを言ったんですか・・・!!」
ノイマン「あんなこと?」

〇廊下のT字路
ノイマン「ユイ」
ノイマン「・・・サイを追いかけるのは、やめなさい」

〇散らかった研究室
葛城大河「あなたはあの時、唯に、」
葛城大河「『才を追いかけるのは止めろ』と言った」
ノイマン「・・・聞こえていたのか」
葛城大河「才のことを調べられたら何か不都合なことがあるんじゃないですか」
葛城大河「だから俺たちが調査するのを止めようとしたり、」
葛城大河「『デルタ』を破壊してデータを削除しようとしたんじゃないですか」
ノイマン「・・・・・・」
葛城大河「どうなんですか、教授!」
ノイマン「・・・それは違うよ、クズ」
葛城大河「それなら、なぜ・・・!!」
ノイマン「・・・・・・」

〇散らかった研究室
ノイマン「・・・サイがいなくなって、一番落ち込んでいたのはユイだった」
ノイマン「自身の研究にも身が入らなかったようだし、講義中もどこか上の空だった」
葛城大河(・・・そうだ)
葛城大河(才を慕っていた唯にとって、あの出来事はあまりにも大きかった)
ノイマン「しかし、事件から一週間が経った時から、」
ノイマン「彼女の様子が変わっていったのに私は気づいた」
ノイマン「いつも何かを真剣に考え、」
ノイマン「悩んでいるようだった」
ノイマン「サイに関することだろうとはすぐ察しがついたよ」
葛城大河(事件から一週間後・・・)
葛城大河(才のメッセージか)
ノイマン「彼女がいくら悩んでも、サイが戻ってくるわけではない」
ノイマン「このまま彼女が悩み続けていたら、いつか壊れてしまう」
ノイマン「私はそう思っていたんだ」
葛城大河「そうだったんですか・・・」
ノイマン「それで、君たちが『デルタ』を見に行くと言ったとき、」
ノイマン「彼女が何か、危ういことをしようとしてるんじゃないかと思った」
ノイマン「・・・サイのことは諦めさせた方が、ユイのためだと思ったんだ」
葛城大河「心配、してたってことですか」
ノイマン「・・・そうだ」
葛城大河「・・・わかりました」
葛城大河「でも、唯は教授が思っているほど弱くありません」
葛城大河「頼りになる、良い後輩です」
葛城大河「少なくとも、俺にはそう見えます」
ノイマン「そうだね」
ノイマン(それはきっと、君がいるからさ、クズ)

〇散らかった研究室
ノイマン「・・・それで?」
葛城大河「え?」
ノイマン「『デルタ』だよ」
ノイマン「プログラムが作動して、『デルタ』は破壊されてしまったのかい?」
葛城大河「ああ。いえ、」
葛城大河「唯がプログラムを阻止してくれました」
ノイマン「そうか、ユイが・・・」
ノイマン「やるじゃないか」
ノイマン「私は少し、過保護だったかもしれないね」
葛城大河「・・・・・・」
ノイマン「自分が何も出来なかったことが、悔しいのかい?」
葛城大河「う・・・」
葛城大河「まあ・・・そうなんです」
ノイマン「気にすることはないさ」
ノイマン「君は君のやりかたで、ユイを助けてあげればいい」
ノイマン「そして、サイのこともね」
葛城大河「俺のやり方で・・・」
ノイマン「・・・まあ、やれるだけやってみなさい」
ノイマン「レポートの提出期限、遅らせておくから」
葛城大河「・・・ありがとうございます!!」
ノイマン「さあ、もう外は真っ暗だ」
ノイマン「今日はもう帰りなさい」
葛城大河「はい。そうします」
ノイマン「・・・クズ」
葛城大河「はい」
ノイマン「あまり気負いすぎないように」
ノイマン「サイがいなくなったのは、君のせいじゃない」
葛城大河「・・・わかってます」
ノイマン「じゃあ、また明日。今日はゆっくり休むんだよ」
葛城大河「教授、ありがとうございました。また明日」

〇男の子の一人部屋
  22:30
  葛城の自宅
葛城大河「ふう・・・」

〇男の子の一人部屋
  葛城は、ベッドに倒れこんだ
  目を閉じて、考える

〇黒
  ノイマン教授は犯人じゃない
  ・・・とすれば、一体誰が?
  俺は、あの部屋の存在すら知らなかった・・・
  『デルタ』のことを知っていて
  それに細工を施すなんて
  それが可能なのは、唯かノイマン教授くらいじゃないのか・・・?
  ・・・駄目だ
  考えがまとまらない──

〇男の子の一人部屋
  翌朝
葛城大河「ん・・・」
葛城大河「朝か・・・」
葛城大河(結局、考えはまとまらないままだ・・・)
葛城大河(とりあえず、大学に行って唯と話をしよう)

〇研究所の中枢
  8:46
  『デルタ』の部屋
葛城大河「おはよう、唯・・・」
三条唯「ん・・・」
三条唯「あ、葛城先輩・・・」
三条唯「おはようございます~」
葛城大河「眠そうだな・・・」
葛城大河「・・・ってお前、まさか昨日からずっとここにいたのか!?」
三条唯「そうです~」
三条唯「おかげで、回路の修復と解析は終了しました~」
葛城大河「おお!そうか!お疲れ様」
三条唯「先輩はよく眠れましたか?」
葛城大河「ああ、いや」
葛城大河「実は・・・」
  葛城は三条に、ノイマン教授とのことを話した
三条唯「・・・なるほど」
葛城大河「ここに来る前、ノイマン教授に質問したという生徒にも会って確認した」
葛城大河「少なくとも、教授が俺たちが来る前に『デルタ』に何かした可能性は」
葛城大河「ほぼないと言っていいと思う」
三条唯「そうですか」
三条唯「まあ、私は教授は犯人ではないと思ってましたけど」
葛城大河「なぜだ?」
三条唯「・・・あの人、自分の生徒が作ったものを壊すようなことはしないですよ」
三条唯「ああ見えて、生徒想いですから」
葛城大河「・・・そうか」
葛城大河「なあ、なんで教授に対して冷たいんだ?」
葛城大河「そうやって教授のことを評価してるのに」
三条唯「ああ、えっと・・・」
三条唯「なんか・・・苦手なんですよ」
三条唯「私の考えてることを見透かされてそうで」
葛城大河「・・・まあ、気持ちはわかるよ」
三条唯「ところで、葛城先輩」
葛城大河「どうした?」
三条唯「『デルタ』の回路を調べていた時、奇妙なものを一つ見つけました」
葛城大河「おお!!」
葛城大河「なんだ?」
三条唯「『デルタ』には、数千もの量子ビットが使われています」
三条唯「そしてそれらは、何か計算をするときに状態を変える」
三条唯「逆に言えば、使われていないときは回路に動きはないはずです」
葛城大河「そうだな」
三条唯「しかし、稼働していないはずの『デルタ』に、微弱な信号を発見しました」
葛城大河「ほう」
三条唯「何かが、『デルタ』の中で動いています」
葛城大河「それが何なのかはわからないのか?」
三条唯「わかりません」
三条唯「回路を作ったのは猫先輩ですし・・・」
葛城大河「そうか、才が・・・」
葛城大河(ん?ちょっと待てよ・・・)
葛城大河(・・・そうか!)
葛城大河(『デルタ』を最もよく知る人物は、唯でもノイマン教授でもない!)
葛城大河(『デルタ』の構造を熟知し、細工も容易に行える人物・・・)
葛城大河(それは、『デルタ』の開発者、猫元才に決まってる!!)
三条唯「・・・先輩?」
葛城大河(才が姿を消す前に時限式のプログラムを起動したのか・・・?)
葛城大河(それとも、才は今も俺たちの近くに・・・?)
三条唯「先輩、聞いてます?」
葛城大河「あ、ああ。すまない」
葛城大河「少しぼーっとしていた」
三条唯「とにかく、これがただのバグではなく、」
三条唯「何かしらの手がかりであることは間違いないと思います」
葛城大河「なぜそう言い切れるんだ?」
三条唯「『デルタ』を破壊しようとする行為は、」
三条唯「『デルタ』内に重要な手がかりがあると言っているようなものですから」
葛城大河「・・・そうか。そうだな」
三条唯「とにかく、これで一歩前進です」
葛城大河「ああ。大きな一歩だ」
三条唯「私たちの次の目標は、」
葛城大河「『デルタ』内で動いている”それ”が、」
葛城大河「何なのかを突き止めること、だな」
三条唯「・・・そうです。頑張りましょう」
葛城大河「ああ」
葛城大河(才・・・)
葛城大河(俺たちはきっと、お前を見つけてみせる)

次のエピソード:第四話:オイラーの公式

コメント

  • まだ手がかりが少ない分、誰を信用していいのか読了後もモヤモヤしてます…各々にはまだ見せてない顔があるのかなって勘ぐってしまいます😂

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