くノ一に成りたい!

武智城太郎

第三話 ダンジョン攻略(脚本)

くノ一に成りたい!

武智城太郎

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〇草原の道
家臣「まもなく洞窟に到着します」
胡蝶「良かった。半日で着いたわ」

〇谷
家臣「われわれは、ここでお待ちしております」
家臣「この先は、あなたたちだけで向かってください」
胡蝶「ここまで、ありがとうございました」
胡蝶「さあ、行きましょう」

〇滝つぼ
胡蝶「綺麗な滝ね~」
作蔵「あの吊り橋を渡るのか」

〇ボロボロの吊り橋
胡蝶「このくらい、なんてことないわ」
作蔵「こういうのが嫌なんだ」
又郎「ゲヒヒ」

〇密林の中
胡蝶「なに、この林? 変なの・・・」
作蔵「里では見慣れない草木が多いな」
又郎「グヒヒ」
作蔵「又郎、毒草探しはあとにしろ」

〇岩山
胡蝶「こんな山岳地に、ほんとに人魚なんているの?」
作蔵「わからん。文書の記録だけで、家中には亡骸を見た者さえいないらしいからな、ヒーヒー!!」

〇洞窟の入口(看板無し)
胡蝶「あった! ここが洞窟の入口ね」
作蔵「なんの変哲もなさそうだが」
胡蝶「油断は大敵よ。何人ものツワモノが、ここで命を落としてるんだから」
胡蝶「松明は問題なしね」
胡蝶「行きましょう。二人とも、罠に気をつけて」
胡蝶「きゃあーーっ!!」
作蔵「どうしたっ!!」

〇岩の洞窟
作蔵「胡蝶、無事か!!」
胡蝶「アタタタ・・・ 苔で足を滑らしたわ。最初の罠よ」
作蔵「ちがうだろ」

〇暗い洞窟
胡蝶「いかにも洞窟って感じ」
作蔵「洞窟だからなぁ」

〇洞窟の深部
胡蝶「洞窟といっても、中は広いわね」
作蔵「しかし罠らしいものは見当たらないな」
作蔵「文書にも、罠に関する仔細は記されてないらしいけど・・・」
作蔵「ヒイッ!!」
胡蝶「なに!? キャーッ!!」
胡蝶「あの亡骸って・・・」
作蔵「人魚の肉を獲りに来て死んだ、信隆様の家臣たちだろう」
胡蝶「死体の周りに漂ってる、白いモヤみたいなのは何?」
作蔵「わからん。近くに寄って見てみよう」
胡蝶「キャッ!!」
作蔵「身動きが取れない。こりゃ、ものすごく強力なクモの巣だ!!」
「大蜘蛛の化け物!!」
作蔵「こっちに迫って来るぞ!!」
胡蝶「いきなりラスボス級じゃない!」
又郎「グヒグヒヒッ」
作蔵「なんだ又郎? ああ、両腕は動かせる。そうか!!」
作蔵「左右の部分を開いて──」
胡蝶「なにそれ? 折り畳み式の石弓?」
作蔵「似てるが、そんな古臭いものじゃない。名付けて十字弓だ」
作蔵「そしてこれが矢だ」
胡蝶「そんな細い矢じゃ、ヤマドリくらいしか狩れないでしょ」
作蔵「こいつは又郎の協力で作った特製の毒矢。対巨大獣用のものだ」
作蔵「大蜘蛛だろうが、こいつでイチコロだ」
胡蝶(そんなにうまくいくかな?)
作蔵「くらえっ!!」
  チクッ
大蜘蛛「・・・・・・」
胡蝶「当たったの? 平気そうだけど・・・」
作蔵「まあ、見てろ」
胡蝶「あれ? 体が赤色に変わった・・・」
又郎「グヒグヒヒッ」
作蔵「あれは体中に毒が回って、熱を帯びてるんだと」
胡蝶「あ! すごく体が膨らんでる!?」
作蔵「熱で膨張してるんだ。破裂するぞ!!」
作蔵「木っ端微塵だ!! チョロイもんだぜ!!」
胡蝶「すごい、作蔵!!」

〇洞窟の深部
胡蝶「え!? キャッ!! アッツ!!」
作蔵「こいつは破裂した大蜘蛛の体液だ!! アッツ!!」
又郎「ゲヒヒッ」
作蔵「体液が強酸になってて、大火傷するって?」
胡蝶「あ・・体液の雨でクモの巣も溶けてる!」
作蔵「動けるぞ、逃げろ!!」

〇暗い洞窟
胡蝶「アツツッ! あれ? 水の音がする!!」
作蔵「幻聴かもしれんが走れ!!」

〇岩山の中腹
胡蝶「洞窟の中に川が!?」
作蔵「助かった!! 飛び込め!!」

〇薄暗い谷底
胡蝶(ふぅ~命拾いしたぁ~)
胡蝶(でもまさか、生きてる罠だったなんて・・・)
胡蝶(二人は無事かな?)
胡蝶(又郎は大丈夫そうね。作蔵は?)
胡蝶(ああ、そこに・・・)
胡蝶(・・・て、誰!?)

〇岩山の中腹
胡蝶「プハッ!!」
又郎「グハッ」
胡蝶「さっきの何!? 作蔵じゃないよね?」
作蔵「おーーい!!」
胡蝶「作蔵だわ。腕力がないから、崖を上れないのよ」
胡蝶「又郎、助けてあげて」
  腕を取って引き上げてやる。
作蔵「そっちじゃない! 誰と間違えてるんだ!!」
胡蝶「何これ? 河童!?」
胡蝶「昔話に出てくるのとイメージがちがーう!!」
胡蝶「キャッ!! あぶな!!」
胡蝶「しかもこいつ、牙が生えてて肉食みたい」
胡蝶「あ、周りをよく見ると!!」
胡蝶「人骨がいっぱい散乱してる・・・!!」
胡蝶「もしかして、こいつが食べちゃった?」
胡蝶「え? 又郎? 何か策があるの?」
又郎「グヒヒッ」
  懐から取り出した生肉を、河童のほうに投げる
河童「ガツガツ!!」
又郎(畜生の浅ましさ)
河童「ゲッ!?!?」
河童「!?△×!!×!!×!!」
胡蝶「あ、逃げちゃった」
胡蝶「どうなったの?」
又郎「・・痺れ毒」
作蔵「おーーい、早く助けろ!!」
胡蝶「あ、作蔵のこと忘れてた。まだ崖にしがみついてる」

〇暗い洞窟
胡蝶「長い洞窟ね」
作蔵「さすがに、もう着いてもいい頃だろう」

〇洞窟の深部
胡蝶「また広い場所に出たわ」
作蔵「しっ、物音が・・・!!」
工 械之介「よくぞ、ここまで参られた」
工 械之介「われこそは、工 械之介(たくみ かいのすけ)なり」
工 械之介「ここを通りたくば、拙者を討つしか道はない」
工 械之介「いざ尋常に勝負せよ!」
作蔵「こんな場所に鎧武者?」
胡蝶「あの・・・あなたのような立派なお侍が、どうしてこんなことを?」
工 械之介「拙者のお役目は、人魚を盗まんとする不届き物をここで成敗すること」
工 械之介「お役目果たすためならば、この命惜しくはない」
  脇のほうに、台にのせた頭蓋骨が三つ並んでいる。丁寧に祀られているようだ。
工 械之介「あれらはここまで辿り着き、拙者と刀を合わせた武士たちの亡骸だ」
工 械之介「いずれも誇り高き者たちであった」
工 械之介「さあ、貴殿らもいざ尋常に勝負せよ!」
作蔵「わっ、抜いた!!」
胡蝶「ど、どうするの?」
作蔵「あわてるな。俺の新工夫兵器第二弾を使うときだ!!」
胡蝶「え? またそのパターン?」
胡蝶「普通の焙烙玉じゃない」
作蔵「これはあくまで弾にすぎん」
作蔵「こっちこそが画期的な新工夫。名付けて〈国崩し砲〉だ!!」
作蔵「これに焙烙玉を込めてっと──」
  国崩し砲を肩に乗せ、バズーカのように構える。
作蔵「手投げにくらべて、これなら命中率は十倍だ」
作蔵「松明で着火してっと」
作蔵「発射!!」
作蔵「アッツ!!」
工 械之介「さあ、いざ尋常に──」

〇洞窟の深部
胡蝶「うっわ、卑怯!!」
作蔵「いいんだよ。俺たちは忍びなんだから」

〇洞窟の深部
作蔵「やっと煙も治まってきたな」
胡蝶「南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏・・・」
工 械之介「やれやれ、高価な鎧が砕け散ってしまったか」
作蔵「なにっ!?」
作蔵「バカな!? 大岩をも砕く焙烙玉の直撃をくらって生きてるとは・・・」
作蔵「この侍も妖怪変化の類い・・・てあれは!?」
胡蝶「どうしたの?」
作蔵「侍の襟の部分を見てみろ!!」
作蔵「あの亀の紋章は、工夫名人亀吉の作であることの証だ!!」
胡蝶「このお侍、亀吉っていう人の息子なの?」
作蔵「ちがう! こいつは亀吉が作った精巧なカラクリ人形だ!!」
胡蝶「あ、言われてみれば、手とか口元とか人形っぽい」
工 械之介「さあさあ、いざ尋常に勝負せよ」
作蔵「すごい・・・!!  まるで本当に生きてるみたいだ」
作蔵「やはり亀吉の腕前はネ申級だ・・・!!」
胡蝶「感心してる場合じゃないわよ。どうするの?」
作蔵「これはどうだ!!」
工 械之介「矢なぞ通じぬぞ。拙者の身体は鉄製であるからな」
作蔵「そりゃ、強いわけだ」
又郎「ゲヒゲヒ」
作蔵「ダメだ。焙烙玉に予備はない」
作蔵「胡蝶、あとは任せた」
胡蝶「え、ちょっと・・・」
作蔵「こういうときのために、忍び稽古をしてたんだろ」
胡蝶「う、うん・・・」
胡蝶(そうだ。こういう時こそ、偉大な黒揚羽を見習わないと!!)
工 械之介「参る!!」
胡蝶「キャッ!!」
作蔵「敵は鉄製だ。短刀を抜いても、文字通り太刀打ちできん」
胡蝶(黒揚羽は、危機に陥った時こそ冷静に状況を判断してた)
胡蝶(あたしも・・・)
胡蝶(今一瞬、背中に見えたのは何!?)

〇歯車

〇洞窟の深部
胡蝶(背中の一部が剝がれて、カラクリが露出してる・・!!)
胡蝶(そうか、焙烙玉のダメージはあったんだ)
胡蝶(あの歯車を止めれば・・・!!)

〇歯車
胡蝶「よし!! 歯車に突き刺さった!!」

〇洞窟の深部
工 械之介「さあさあ、いざ尋常に──」
胡蝶「動かなくなったわ」
胡蝶「勝ったの・・・?」
作蔵「よくやった、胡蝶!!」
胡蝶「うれしそうね」
作蔵「ああ、なにせ天才亀吉の傑作を手に入れたんだからな」
作蔵「家に持って帰って分解して、仕組みをゆっくり検分してやる」
工 械之介「オ見事。拙者ハ潔ク切腹シテ果テマスル」
作蔵「ギャーーッ!!」
  械之介は部品の一つにいたるまで、木っ端微塵になってしまう。
作蔵「あ~これじゃあ、どうにもならん。 トホホ・・・」
又郎「ゲヒヒ」
胡蝶「そうね、先を急ぎましょう」

〇暗い洞窟

〇岩穴の出口
胡蝶「あ、光が!!」
作蔵「出口みたいだな」

〇湖畔
胡蝶「きれいな湖・・・」
作蔵「ここに人魚がいるのか?」
胡蝶「あ、あそこに!!」
作蔵「いたのか? こういうのか?」
西洋人魚「ハ~イ!」
胡蝶「ちょっとちがうみたい」
作蔵「ヒィ!!」
人魚「いや~人が来んのひさしぶりやわ」
作蔵「しゃべった!! しかも上方弁!!」
胡蝶「あ、あの・・・あたしたち、人魚さんの肉をもらいに来たんですけど・・・」
作蔵「アホ、正直に言ってどうする」
作蔵「今からこいつのことを殺して、肉を持ち帰るんだぞ」
胡蝶「あ、そうか」
人魚「そうそう、秀ちゃんは息災してはる?」
胡蝶「秀ちゃんて?」
作蔵「大俵一族の領主のことだろ。一族が滅んだことを知らないんだ。適当に話を合わせろ」
胡蝶「あ、はい。ピンピンしてます」
  作蔵が、コソコソと十字弓を取り出す。
人魚「一回につき、一片ちゅう取り決めやからな。それでええか?」
胡蝶「あ、はい」
人魚「最近太り気味みやさかい、脇腹の肉でいくわ」
  人魚は包丁で、自分の脇腹の贅肉を切り取る。
人魚「ああ、痛ったーっ!! ほんま痛ったーっ!!」
人魚「これが当世流行りの〝切腹ダイエット〟 て、そんなもんあるかい!!」
人魚「はい」
人魚「これでしばらく足りるやろ。アタタ」
胡蝶「ありがとうございます。大丈夫ですか?」
人魚「傷口はすぐにふさがるけどな、人魚やから。でも痛いんは普通に痛いから」
人魚「まあ、その代わりに狩られずにすむんやから。文句は言えへんわ」
作蔵「では、われわれはこれで」
人魚「そうか、名残惜しいけどな。あんたらもお務めやからな」
人魚「ほな、さいなら」

〇暗い洞窟
胡蝶「これで、麟太郎さまの病も治るのね」
作蔵「ああ、報酬はいただきだ」
胡蝶「あたしも惣領にくノ一になることを認めてもらえるし。万事解決ね」
胡蝶(それに信隆様、あたしにお褒めの言葉をくれるかな)
胡蝶(もしかしたら、言葉だけじゃ済まなかったりして・・・)

〇黒
  つづく
  次回 
  第四話 黒揚羽の真実と〝作り話〟の功罪
  
       お楽しみに!

次のエピソード:第四話(最終話) 黒揚羽の真実

コメント

  • 作蔵、大活躍!とてつもない大荷物ですねw
    スリリングな洞窟攻略を経て、ついに登場した人魚が……落差に笑ってしまいました。。

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