第1話 不条理の否定(脚本)
〇塔のある都市外観
2040年 ヨーロッパ某国
欧州素粒子物理学研究所
〇魔法陣のある研究室
時任 絢斗(ときとう あやと)「ぐ・・・あああ!!」
時任 絢斗(ときとう あやと)「俺は!」
時任 絢斗(ときとう あやと)「この不条理を・・・!」
時任 絢斗(ときとう あやと)「否定する!!」
〇街中の公園
20年前──2020年
時任 絢斗(ときとう あやと)「うぐ、ひっく・・・」
いじめっ子「で、出た、魔女オババ!! 時任、覚えてろよ!」
いじめっ子「逃げろ! 溶かされちゃうぞ!!」
鳴海 イオ(なるみ イオ)「オバ・・・ 私はなんだと思われてるんだ?」
鳴海 イオ(なるみ イオ)「デリカシーない男はモテないぞ〜!」
鳴海 イオ(なるみ イオ)「・・・大丈夫?あっくん」
時任 絢斗(ときとう あやと)「イオ姉ちゃん、いつもごめん」
鳴海 イオ(なるみ イオ)「そだ、これあげる」
超微小重力場における時空間境界場発現についての考察
時任 絢斗(ときとう あやと)「な、何これ?記号だらけ」
鳴海 イオ(なるみ イオ)「ある科学者の論文 魂のこもった『お守り』だよ」
時任 絢斗(ときとう あやと)「イオ姉ちゃん、こんな難しい勉強してるんだ」
鳴海 イオ(なるみ イオ)「これを書いた蒼井って先生ね」
鳴海 イオ(なるみ イオ)「科学の常識を覆す論文だったから色々言われたんだけど・・・」
鳴海 イオ(なるみ イオ)「最後まで批判に負けず、主張を貫き通したんだって」
鳴海 イオ(なるみ イオ)「後世に何か大事なことを伝えるため・・・」
鳴海 イオ(なるみ イオ)「・・・ねえ、あっくん 不条理に負けないで」
時任 絢斗(ときとう あやと)「・・・うん!」
〇幻想
イオ姉ちゃんは本当の弟みたいに僕に優しくしてくれる
今度は僕がイオ姉ちゃんの支えになりたい
いつか僕が大人になったら・・・
〇田園風景
いつか!
〇女の子の部屋
いつか!
〇お嬢様学校
いつか・・・
野次馬「おい!!消防車まだか!!」
野次馬「まだ高校生の子が取り残されてるらしいわ!!」
野次馬「もう無理だろ!!火の回りが速すぎる!!」
〇葬儀場
参列者「可哀想に・・・ 賢くて綺麗な子だったのにねぇ」
参列者「放火らしいわよ 同級生の男の子がストーカーで・・・」
参列者「火事の日も言い争ってたらしいぞ まだ行方がわからず捜査中らしい」
参列者「もうそっちの方も自殺してるんじゃないか?」
〇炎
こんなのは不条理だ
なぜイオ姉ちゃんが死ななければならない?
イオ姉ちゃんが何をした!?
僕は──、俺は
この不条理を否定する!!
〇塔のある都市外観
20年後──2040年
〇豪華な社長室
所長「Mr.トキトウ、とても残念だ」
所長「10代であの名門大を首席卒業した君がこのラボに来たときは期待でいっぱいだったよ」
所長「君となら科学界に革命を起こせるとね」
時任 絢斗(ときとう あやと)「・・・」
所長「それがどうだ? 君は来る日も来る日もあのガラクタいじりだ」
所長「妄想に取り憑かれた哀れな老人の論文を真に受けてね」
所長「君ほどの頭脳でなぜあれがくだらん戯言だと理解できない!?」
時任 絢斗(ときとう あやと)「所長に不利益をもたらしたことは謝罪します 俺は、今日でここから消えます」
所長「やけに潔いじゃないか?」
時任 絢斗(ときとう あやと)「俺は不条理を否定し続けた そして成すべきことは成せたので」
所長「?」
〇施設のトイレ
研究員A「聞いたか?トキトウの話」
研究員B「ああ ついにクビらしいな」
研究員A「いくら天才様とはいえ『あれ』じゃ当然だな」
研究員B「まあな、あんなイカれた奴 あいつの研究知ってるか?」
研究員A「タイムマシン── 『蒼井レポート』の実用化だろ?」
研究員A「まったく、あんな妄言を信じる科学者が本当にいるとはな」
研究員B「50年以上前の論文だぞ? 当時の科学技術では本来書けるわけがない」
研究員A「全部、蒼井とかいうボケ老人の妄想ってことか」
研究員B「大体、あのレポートには一番重要なポイントが抜けてる」
研究員A「あれって、マイクロブラックホールで時空間境界場とやらを作れば過去に転移可能ってトンデモ理論だよな?」
研究員B「あのな、あれをもし現代科学で実現できたとして、せいぜい原子1個サイズしかそのトンネルを抜けられないんだよ」
研究員A「あ〜、もしかしてトキトウの研究って?」
研究員B「そう、物質を原子1個ずつに分解して、境界場を抜けさせた先で再構築する」
研究員A「つまり人間をバラバラにして過去に送って、その先で組み立てる研究ってことか」
研究員A「頭のネジが吹っ飛んでるぜ! トキトウもそのジジイと同類だな!」
研究員B「・・・お、おい!」
研究員A「あ!」
時任 絢斗(ときとう あやと)「・・・」
〇魔法陣のある研究室
時任 絢斗(ときとう あやと)「チャンスは1回だけ・・・ 理論は自分の身体で実証するしかない」
時任 絢斗(ときとう あやと)「最後に計画書を確認しよう」
時任 絢斗(ときとう あやと)「太陽系の磁場、気候など種々の条件から、時空間境界場を開けるのはイオ姉ちゃんが死ぬ10年前・・・」
時任 絢斗(ときとう あやと)「その時点のあの町に飛び、10年後に姉ちゃんを殺す男を俺が前もって殺害する・・・」
〇モヤモヤ
等々力 遥太(とどろき ようた)・・・
鳴海イオの高校の同級生であり、事件直後から行方不明
事件当日に被害者と口論する様子が目撃されている
何らかの理由で逆上し、放火殺人に至ったとみられている
〇魔法陣のある研究室
時任 絢斗(ときとう あやと)「今から飛ぶ先では奴はまだ7歳の少年・・・ 殺害するのは造作もないだろう」
時任 絢斗(ときとう あやと)「今まで長かったな イオ姉ちゃん、いま助けに行くからな・・・」
〇幻想
・・・
???「・・・じ・・・ん」
なんだ?
・・・イオ姉ちゃん?
???「・・じ・・さん」
やっと、会えた・・・
???「おじさん、危ない!!」
〇街中の道路
運転手「おい、危ねぇだろうが!! いきなり飛び出し・・・たか?」
運転手「なんかピカーって光って、そんで急に道の真ん中に・・・?」
時任 絢斗(ときとう あやと)「ここは?」
少年「おじさん、大丈夫?」
時任 絢斗(ときとう あやと)「おい!今は何年・・・ウォロロロロ!!!」
少年「うわ!酔っ払って忘れちゃったんだね」
少年「今日は2010年の10月5日だよ お家わかる?」
時任 絢斗(ときとう あやと)(やったぞ・・・!!! 身体への負担は多少あるが転移成功だ!!)
時任 絢斗(ときとう あやと)(蒼井先生、あんたと俺の理論は正しかった!!)
少年「ニヤニヤしてて元気そうだから大丈夫だね!」
少年「おじさん、それじゃ僕は帰るね」
時任 絢斗(ときとう あやと)「ああ、助かった少年 それとおじさんじゃなくてお兄さ・・・」
〇街中の道路
時任 絢斗(ときとう あやと)「・・・おい」
時任 絢斗(ときとう あやと)「ちょっと待て、お前!!」
時任 絢斗(ときとう あやと)「こんなに早く見つかるとはな・・・」
間違いない!
あいつが7歳の等々力 遥太!!
〇街中の階段
時任 絢斗(ときとう あやと)「はぁはぁ・・・ ここが奴が祖父と暮らしている家のはず」
時任 絢斗(ときとう あやと)「確か今日は・・・」
〇平屋の一戸建て
消防隊員「放水開始!! クソっ!火の回りが速いぞ!」
時任 絢斗(ときとう あやと)(記録では奴はこの日、火事で自宅を失った そして・・・)
遥太(ようた)「じいちゃん!! まだ中にじいちゃんがいるんだ!!」
消防隊員「なんだって!? ・・・おい、待ちなさい!!」
時任 絢斗(ときとう あやと)(・・・みずから火事の中へ? 死ぬぞ!?)
時任 絢斗(ときとう あやと)(こんなの記録にあったか!?)
時任 絢斗(ときとう あやと)(まさか俺が転移してきた影響で過去が微妙に変わったのか?)
時任 絢斗(ときとう あやと)(・・・まあ、何でもいい)
時任 絢斗(ときとう あやと)(奴が自分から死んでくれるなら手間が省けたというものだ)
〇お嬢様学校
〇平屋の一戸建て
時任 絢斗(ときとう あやと)「・・・」
〇古いアパートの廊下
遥太(ようた)「ゴホッゴホッ!! じいちゃん!どこだ!?」
遥太(ようた)「ゲホッ!!煙が・・・」
遥太(ようた)「こんなのやだよ!!」
遥太(ようた)「たった一人の家族が・・・ こんなふうに死んじゃうのかよ!」
遥太(ようた)「ゴホッ・・・!! くそ、頭がボーッと・・・」
遥太(ようた)(もう僕も死んじゃうのかな・・・)
遥太(ようた)(何でなんだよ・・・ じいちゃんと僕が何したって言うんだよ)
遥太(ようた)(ああ、もう・・・ダメか)
???「うおおおおお!!!」
〇狭い畳部屋
遥太(ようた)「・・・さっきのおじさん?」
時任 絢斗(ときとう あやと)「・・・何故だ?」
遥太(ようた)「?」
時任 絢斗(ときとう あやと)「何故こんな不条理を受け入れる!!?」
時任 絢斗(ときとう あやと)「お前が将来起こす事態は不条理極まりない!! しかし!!今はまだただの子供!」
時任 絢斗(ときとう あやと)「子供と老人が焼け死ぬ様を黙って眺めてるのを不条理と呼ばず何と呼ぶ!!?」
時任 絢斗(ときとう あやと)「俺は!! このくだらん不条理を否定する!!!」
???「ふふ・・・ 懐かしいな、そのセリフ」
遥太(ようた)「じいちゃん・・・!!」
時任 絢斗(ときとう あやと)「あんたがこいつの祖父だな どこかで会ったか?」
時任 絢斗(ときとう あやと)(いや、俺はちょうどこの年に産まれた そんなはずは・・・)
老人「はじめまして、だろうな 君にとっては」
時任 絢斗(ときとう あやと)「?」
時任 絢斗(ときとう あやと)「いや、話はあとだ!! 早く来い!!」
老人「私は瓦礫に足を潰されている その子を連れて逃げろ」
遥太(ようた)「何言ってんだよ、じいちゃん!!」
時任 絢斗(ときとう あやと)(クソっ!! 火柱にさえぎられて老人の所へは行けない)
時任 絢斗(ときとう あやと)(もうすぐこちらにも火が・・・)
時任 絢斗(ときとう あやと)「クソクソクソッッ!!!」
時任 絢斗(ときとう あやと)「・・・行くぞ」
遥太(ようた)「じいちゃん!!じいちゃん!!」
遥太(ようた)「うわああぁぁ!!!」
老人「その子を頼んだよ・・・先生、いや」
あっくん──
〇見晴らしのいい公園
2日後──
時任 絢斗(ときとう あやと)「落ち着いたか?」
遥太(ようた)「うん・・・」
遥太(ようた)「じいちゃんはなんで死ななきゃならなかったのかな?」
時任 絢斗(ときとう あやと)「祖父の死を不条理と思うなら・・・」
時任 絢斗(ときとう あやと)「お前は決してするな、不条理な選択を」
遥太(ようた)「え?」
時任 絢斗(ときとう あやと)「なあ、俺たち・・・一緒に、暮らさないか?」
遥太(ようた)「ええ!??」
〇見晴らしのいい公園
時任 絢斗(ときとう あやと)(本当にこいつが10年後にイオ姉ちゃんを殺すのか?)
時任 絢斗(ときとう あやと)(それを確かめるためには、その時まで一番近くで監視するべきだ)
時任 絢斗(ときとう あやと)(そして、もし妙なマネをすれば・・・)
すぐに殺す
〇見晴らしのいい公園
時任 絢斗(ときとう あやと)「まずは家探し、だな」
遥太(ようた)「勝手に話が・・・ え、おじさんお家ないの!?」
時任 絢斗(ときとう あやと)「おじ・・・絢斗だ」
遥太(ようた)「じゃあ、あっくんだね!」
時任 絢斗(ときとう あやと)(懐かしい呼び方だな・・・)
〇黒
時任 絢斗(ときとう あやと)「10年後、イオ姉ちゃんの身に何が起こるのか それを突き止めて阻止する!」
時任 絢斗(ときとう あやと)「そして・・・」
あの不条理を否定する!!
何故十年前なのか…私の頭をフル回転させて考えたいと思います!
神作品の予感がしてきました…!応援してます!
タイムリープもの! 大好きですー!
最初、なぜ殺される10年前に飛んだのかわからなかったので、もう一度読み返しました😅
タイムリープ条件がそこしかなかったのですね。
ああ、もう謎だらけじゃないですか✨
最後の回収を楽しみに、ゆっくり読ませていただきます👏
タイムループの構造が二重三重に重ねられていそうでワクワクしますね!
少年が活躍する話が好きなので、今後の同居展開が楽しみです😊